神出鬼没
海沿いの道は白い陽射しに熱せられ、アスファルトから立ち上る陽炎がゆらゆらと揺れていた。
磯の香りを含んだ熱気が、潮風と共に吹きつけてくる。
サンゴは白いワンピースの裾を手で押さえながら、道端に立つ一人の男性に声をかけていた。
その男は首にタオルを巻き、胸には水族館のロゴが入ったネームホルダーをぶら下げている。
「すみません、この辺りに墓地ってありますか?」
眼鏡の奥の目をわずかに細め、静かな声音で尋ねた。
男はサンゴを一瞥し、汗を拭いながら首を傾げた。
「墓地、か。……ああ、集団墓地なら、この坂を登ったところにあるよ」
サンゴは振り返って坂道を見上げた。石垣が続き、その先に陽炎が揺れている。
男はタオルを握りしめたまま、坂の先を眺めるように目を細めた。
「……でもな、あそこは、今ちょうどお盆だってのに誰も来やしないよ」
彼は蝉の声を聞きながら、乾いた笑いを漏らす。
「みんな、面倒で帰ってこないんだろうな……蝉はこんなに鳴いてるのによ」
サンゴは黙って耳を傾けていた。磯の香りが濃くなる。
男はふっと目を伏せ、吐き出すように呟いた。
「……俺の娘も、そこにいるんだ。凜って名前でさ。事故で……もう、ずいぶん前の話だが」
言葉が風に流されそうになる。蝉の声はなおもけたたましい。
サンゴは、男の首から下がるペンダントに目を留めた。
銀の鎖に、小さな珊瑚礁の欠片を象ったトップが揺れていた。
「……綺麗ですね、それ」
そう言って、指先をわずかに動かす。
「僕の名前、サンゴっていうんです」
男は目を瞬かせたあと、ふっと柔らかく笑った。
「そうなのか。夏らしくて、涼し気で……いい名前だな」
汗を拭きつつ、穏やかな声で続けた。
「夏みたいな名前の君が行ってやれば、あいつも少しは涼しくなれるかもしれないな」
サンゴは小さく笑い、目を伏せた。
「……行ってきます」
「おう。気をつけてな」
男は坂の上を指差すように顎を動かし、潮風の中で手を軽く振った。
白いワンピースが風をはらみ、サンゴは熱気にじっと耐えるように一歩一歩、坂を登り始めた。
振り返ると、男が遠くから見送っていた。
潮の匂い、照りつける夏の太陽、蝉時雨――丘の上の墓地は、海沿いの坂道を登りきったところにあった。
荒れた雑草がところどころ背を伸ばし、土は乾いてひび割れ、風に砂埃が舞う。
墓石は古びたものが多く、苔がこびりついていたり、刻まれた文字が風雨に削られて薄れていたりする。
遠くに海が見えた。
白い波がゆっくりと岩場を洗い、潮風が吹き上がってくる。
その風は、磯の匂いと、強い日差しで熱を帯びた空気を運んでくるが、ここまでくるとほんの少し涼しさもあった。
蝉の声は勢いを弱めることなく耳を満たし、風に吹かれて草むらを渡る音が微かに混じる。
供えられた花束は、ほとんどが色褪せて縮れ、カラカラに乾いているものもあった。
風にあおられて花びらが崩れ落ち、墓前の小石の上に散っていた。
サンゴは先代の名が刻まれた墓石の前に膝をつき、共用の柄杓で水をかける。
表面を濡らすと苔が少し緑を増し、流れる水が刻字の間を滑っていく。
サンゴは手にした布で黙々とこすった。
眼鏡の奥の目がじっと石を見つめ、白いワンピースの裾が風にはためく。
その脇で、セツカがゆっくりと戻ってきた。
共用の井戸から汲んだ水の入ったバケツを片手に提げ、慎重に下ろすと、涼しげな声で言った。
「……もう何年にもなるかしらね」
彼女は手際よく古い線香を取り除き、新しい線香を取り出す。
サンゴは布を置き、墓の前に視線を落としたまま、少しだけ声を低くした。
「……なんだか、こういうの、悲しい」
「大事な人のところなのに、手入れされなくて。花だって、もう枯れちゃってて……」
セツカは手を止めた。
風が吹き、裾を揺らし、線香の灰が小さく舞う。
やがて静かに目を伏せ、わずかに口角を上げるような、でも冷ややかな笑みで否定する。
「……悲しい、とは限りませんわ」
彼女は線香に火をつけた。青白い火がちらつき、細い煙が風に流されてゆく。
「最近は夏も暑くて、汗が滝のように流れます。簡単に供えられた草木も、すぐに枯れてしまいますわ」
火を消して煙を立てた線香をそっと立てながら、サンゴに横目を向ける。
「来てくれたはいいけれど、それで倒れてしまうくらいなら……家の仏壇で忍んでいただいた方が、よほど故人は喜びますわ」
潮風が再び吹いた。
線香の煙は水平に近い角度で流れ、遠くの海面が陽光を反射して眩しかった。
墓地には他にもいくつか、手入れの行き届かない墓がぽつぽつと並んでいる。
枯れた花束、崩れかけた灯籠、苔むした石……それらが、長い年月と人の不在を物語っていた。
墓地の空気は潮風に晒され、蝉の声が遠くで割れるように響いていた。
先代の墓石に手を合わせたあと、サンゴは少しだけ周囲を見回した。
誰もいないのを確かめてから、低い声でぽつりと呟くように言った。
「……ねぇ、セツカ。Σのこと、どう思う?」
セツカは線香立ての灰を払い落とす手を止め、振り返ってサンゴを一瞥した。
しかしすぐに視線を墓石に戻し、涼やかな声で制するように言った。
「……あまり、先代が眠る前で耳障りなことは話したくありませんわ」
その声音はやや冷たかったが、墓石を敬うような張り詰めた響きがあった。
サンゴは眼鏡の奥の目を細め、小さく息をつくと、「……はいはい」と短く答えて立ち上がった。
海風が二人のワンピースをなぶるように吹き、線香の煙が消えるように流れる。
サンゴはハンカチで手を拭きながら坂を下り始め、セツカも後に続く。
墓地の端に停めてあった黒いリムジンが二人を待っていた。
運転手が無言でドアを開け、サンゴは軽く会釈をして先に乗り込む。
セツカもため息をつくようにその後に続く――が、中の様子を見て思わず目を見張った。
車内の後部座席には、既に東堂コハクが座っていた。
頬杖をついたまま、窓の外を無表情に眺めている。
「……これは、どういうことですの?」
セツカは鋭く、けれど抑えた声でサンゴを問い詰めるように見つめた。
サンゴは眼鏡を押し上げ、間の悪そうな笑みを浮かべる。
「えっと……本当はお墓の前で待ち合わせしようと思ったんだけど」
「先代の前で姉妹喧嘩されても困るから……ってことで」
視線を少し泳がせ、肩をすくめるように説明する。
「コハちゃんにはお供えだけ持ってきてもらって、僕一人でお墓で合流したんだ」
セツカは目を細めてサンゴを睨みつけたが、何も言わずに席に腰を下ろした。
運転手がドアを閉めると、車は静かに発進する。
潮風と蝉の声が遠ざかり、車内には冷房の乾いた音とタイヤの滑るような走行音だけが満ちた。
重たい沈黙が流れる。
コハクは窓の外を向いたまま微動だにせず、セツカもまた前を向いたまま微かに顎を引いていた。
そのまましばし、時間だけが過ぎる。
不意に、セツカが小さな声で呟くように言った。
「……人殺し」
コハクの肩がわずかに動くが、顔はそっぽを向いたままだった。
返事はない。
空気はさらに重く、冷房の風が妙に乾いて肌に当たる。
サンゴは二人を見比べながら、深くため息をつき、小声で「……はぁ……」と漏らしたが、それ以上は何も言えなかった。
海沿いの丘が遠ざかり、夏の光だけが窓越しに車内を照らしていた。
車は緩やかに海沿いの道を離れ、ゆっくりと街へ向かって進んでいた。
高台から見下ろす海は、陽光を跳ね返してまぶしく輝き、白い波がリズムよく岩場を打つ。
三人の沈黙の中、ただ車窓だけが移り変わっていく。
沿岸の松林が後方に流れ、やがて視界は低い住宅地へと変わる。
白い漆喰の壁、風で揺れる洗濯物、小さなガレージの自転車。
蝉の声が窓越しに微かに混じる。
サンゴはその静けさに耐えきれなくなったのか、突然、少し明るめの声を出した。
「……そういえば、このあたりって海鮮がすごく美味しいらしいだ」
誰も返事はしない。
サンゴは気まずそうに咳払いをして、言葉を継ぐ。
「市場で朝採れのアジフライが出るって有名で、ソースじゃなくて塩で食べるのが地元流だとか」
車窓の外には、漁港の方角を示す青い標識が流れていく。
港町らしい風情の古びた看板、干された網、海風に膨らむ旗。
それでも、返事はない。
車内はまるで誰もいないかのように静まりかえっていた。
だが、それから少しして――
コハクが、ふいに声を上げた。
「……他には? どんな名所があるの?」
それは、驚くほど自然な問いだった。
車内の空気が、ほんの少しだけ揺れたように感じられる。
サンゴは振り返って顔を輝かせる。
「えっと、海沿いの小道を進んだ先に“風鳴灯台”っていうのがあって、そこから夕日がすごく綺麗なんだよ!あと、夜は夜で星がすごくて、晴れた日なんかだと天の川も見えるらしくて」
コハクは珍しく目を少し見開いた。
「へぇ……天の川、いいね。星、好き」
「僕も。あと、途中に小さなソフトクリーム屋さんがあって、ミルクと塩味のダブルが人気なんだよ」
「塩味のソフト? 気になるな、それ」
サンゴとコハクは、まるで旧知の友人のように言葉を交わしていた。
車は街を抜け、今度は山裾をなぞるような田園地帯に差し掛かる。
水の張られた水田が陽を反射して鏡のようにきらめき、遠くで農夫が帽子を振っている。
風で稲の若葉がさざめき、空は広く澄んでいた。
サンゴはちらりと横目でセツカを見た。
その表情は変わらないが、少しだけ視線が窓から離れていた。
(……まあ、流石に。変わり果てた妹の姿を目の当たりにした後なら、ああもなるか)
サンゴは心の中で苦笑しながら、それでもコハクと興味津々に話を続ける。
コハクは飾らずに率直に話し、サンゴは嬉しそうにそれに応じていた。
その時だった。
セツカが静かに身を乗り出し、コハクの制服の襟元に手を伸ばした。
指先でそっと襟を整えると、目を合わせずに小さく言った。
「……ちゃんと着てる服くらい、正しなさい」
その声音は、少しだけ、姉のものだった。
コハクは動きを止め、目を丸くしてセツカの横顔を見つめた。
だが、セツカはすぐに手を引き、何事もなかったようにまた窓の外へ視線を戻した。
車は緑のトンネルのような並木道を進んでいた。窓の外では木漏れ日が斑に揺れ、葉の影が車内の床に複雑な模様を作っていた。冷房の音とタイヤの低い振動だけが、変わらぬ静けさを満たしている。
その中で、セツカは突然、息を飲むように小さな声を絞り出した。
「……何人、殺したの」
視線はコハクに向けられず、震える声だけが前を向いたまま、微かに響く。
コハクは一瞬だけまばたきをし、そして真顔のまま、変わらぬ調子で答えた。
「今年入ってからなら、106人」
淡々と、無感情に。窓の外を見たまま、目も動かさずに。
車内が一瞬、呼吸を止めたような空気に包まれた。
セツカはしばらく何も言わなかった。口元をわずかに動かすも、声が出ない。ようやく絞り出したのは、かすれた問いだった。
「……この間、地下で言ったこと。覚えてる?」
コハクは視線を少しだけ戻し、真っすぐではなく、少しだけ宙を見るような目で呟いた。
「覚えてる。……でも、聞き届けるかは別だけど」
再び、車内に沈黙が落ちた。蝉の声すら聞こえない、完全な静寂。
その空気を破ったのは、サンゴだった。努めて明るく、運転席の方に身を乗り出しながら言う。
「……気を取り直して。運転手さん、次の角で右、もうすぐです」
車はまもなく小さな通りへと入る。商店街の一角、老舗の木造建築が並ぶ一角に、その店はあった。風格のある暖簾が静かに揺れている。
「ここ、ここ!」サンゴは嬉しそうに指をさし、車が止まると同時に振り返った。
「ここの白焼き、美味しいんだ!炭火で皮パリパリ、山葵で食べるのが最高でさ!」
笑顔を浮かべ、後部座席の二人に声をかけながらドアに手をかける。
だが――
「……二人で行ってきて」
セツカはそっぽを向いたまま、微動だにしない。瞳はまっすぐ前を向き、その表情は読み取れなかった。
サンゴは笑顔を崩さず、少しだけ首を傾げた。
「えーっ?いいのー?せっかく美味しいとこ予約したのにー?」
語尾を軽く上げ、まるで子どもを誘うような明るい声音で。
けれど、セツカは黙ったまま、動かない。頑なな沈黙が、その表情に代わる拒絶だった。
サンゴは肩をすくめ、目を細める。
「……仕方ないなぁ。じゃ、コハちゃんだけでも行こうか」
店の前の石畳の道を、サンゴとコハクは並んで歩いていた。先に歩くサンゴの白いワンピースが、柔らかな陽射しの中でふわりと揺れる。コハクは無言のまま少し後ろをついてきていた。
石畳の隙間から伸びた苔が、蒸し暑さを孕んだ空気とともに夏を感じさせる。
蝉の声と団扇の風音が、店先から微かに流れてくる。
しばらく沈黙が続いた後、サンゴがふと立ち止まり、振り返ることなく言葉をかけた。
「……セツカなりに、気を使ってるのもあると思うよ」
コハクは歩みを緩め、少しだけ視線を下げる。
「結構、不器用だから」
サンゴは静かに笑いながら、再び歩き出した。冗談めかして言うその声には、少しだけ温かさが含まれていた。
コハクは小さく鼻を鳴らすように笑った。ふたりは言葉少なに、けれどどこか柔らかな空気をまといながら、店の前に立った。
暖簾の向こうからは、炭火で焼かれるうなぎの香ばしい香りが漂ってきていた。
食欲をそそる匂いに、店の外にも行列ができている。
扉を開けると、焼きたての香りが一気に二人を包む。
白木のカウンター、奥の座敷、半個室――どの席も客で賑わい、活気のある笑い声が飛び交っている。
サンゴは迷いなくカウンターに進み、店員に声をかける。
「予約してた“周央”です」
店員はすぐに手元のリストを確認し、笑顔で頷いた。
「はい、お待ちしておりました。奥のテーブル席へどうぞ」
二人は案内されながら店内を進んでいく。香ばしい煙が天井の換気口に吸い込まれ、熱気とともに立ち上っていた。
炭のはぜる音、うなぎの焼ける音、茶碗を置く音――すべてが夏の昼を感じさせる。
案内されたテーブルに腰を下ろしながら、サンゴはふっと肩の力を抜くように笑った。
「さ、今日は美味しいもの食べて、ちょっとだけ夏を楽しもうよ」
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西校舎の放課後、図書室の一角。演劇同好会の書庫前、チグサはダンボールに入った台本を整理していた。
「新しい会員、探してきてくれたの!?やったー!!」
歓声を上げながら、手にしていた『ハムレット』を軽く振り回す。
サンゴは少し苦笑しながら紹介を始めた。
「えーとね。東校舎・中等部3年の東堂コハクさん。東校舎の……なんていうか……主席?」
「えー、ちょっと!あんま適当なこと言うと、ヒスぴに怒られるよ?」
冗談半分に笑いながら、後ろに何か気配を感じて振り返ると――
「本当だよ」
無表情のまま立っていたヒスイが、静かに言った。
その声音は控えめながらも、確かな重みを持っていた。
「主席“みたいな”存在、っていうか……東で東堂コハクの名前出したら、ちょっとした騒ぎになるからね」
「……ッッッッ!!」
チグサは手にしていた台本を落としかけ、腰を抜かすように座り込んでしまった。
「な、ななな、何言ってんの!?そんなすごい人が、なんでうちなんかに……!?」
声が裏返り、目が泳ぐ。何も言い返せなくなったチグサに、サンゴは笑いながら肩をすくめた。
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白木の机に並んだ、湯気立つ鰻重。ふっくらと炊き上がった白米の上に、香ばしく焼かれた鰻が照りを放っている。
脇には白焼き、山葵と岩塩、そして透き通った肝吸いの椀。
サンゴは箸を持ちながら、柔らかな笑みを浮かべた。
「……これは、帰りは電車かもね」
コハクは肝吸いを手に取り、そっと椀の縁に唇を寄せる。
そのまま目を伏せ、窓の外の蝉時雨に耳を傾けるようにして呟いた。
「……そうみたいね」
淡々とした口調だったが、どこか受け入れるような柔らかさが滲んでいた。
サンゴはその横顔を見つめながら、ふと数日前の出来事を思い出す。
肝吸いの湯気が薄く立ち上る中、サンゴは箸を置き、ふと向かいのコハクに問いかけた。
「コハちゃん、こういうお店って、普段来ることある?」
コハクは少しだけ考えるような間を置いて、窓の外に目をやったまま静かに答えた。
「……一度だけ。誘われて来たことがある」
淡々としたその声に、わずかな記憶の色が混じる。
「でも、リンが壊滅的にコミュニケーション力なくて。あんまり楽しくはなかった」
その名前が出た瞬間、サンゴの箸の動きが止まった。
「リン」――その名前には、聞き覚えがあった。
亡くなった、ルームメイトの名前。
「優しすぎた」とヒスイに一言で説明された、その少女の名前。
子供が好きで、よく他校の初等部の子どもたちと遊んでいた。誰よりも、優しい目をしていた。そんな思い出の中の少女のことを、いまだにサンゴはあまり聞く気にはなれないでいた。
それは不謹慎という思いの表れか、はたまたコハクの心の何かをこじ開けてしまうかもという思いからか。
サンゴは一瞬、口を開きかけたが、すぐに何も言わずに目を伏せる。その気配を感じたのか、コハクは続けた。
「……あの墓地に、眠ってるから」
「本当は、少しだけでも綺麗にしてあげたかったけど……」
その声には珍しく、ほんのわずかな陰があった。
後悔でも、懺悔でもない。ただ、そこに“気持ち”だけが置かれていた。
サンゴはその言葉を、胸の奥で静かに受け止めた。
あえて何も言及しないことにした。コハクが語ったその想いは、それだけで尊重されるべきものだと思ったから。
うなぎの香りと蝉の声が、店の中に穏やかに広がっていた。