黒い澱みの中に、漂っていた。まぁ、あそこまで霊基を酷使すれば一時的に冥府に堕ちるのは道理か。しかし、
柳星が倒れた直後、BBによってS.O.N.Gへと連絡された。元々、現場は確認していた事から搬送はスムーズに行われた。しかし、空気は重い。よくよく考えたら柳星がオーバーロードによって倒れるのは二回目*3だ。あの時も絶唱によるバックファイアだった。
「あの、助かりますよね!?こんな所で死んだりしませんよね!?」
『・・・何も言えません。彼は自らの魂の形をサポート無しで組み替えて動きました。その結果がコレなのならば軽い方なのでしょう。しかし、だからと言って助かると確約も出来ません。ソレほどまでに本来
「・・・でしょうねぇ。こんな術式、人間に扱える訳ないもの。そもそも魂を知覚する必要があるし、少しズレただけで願った結果が出力出来ない上に簡単に死ぬことすらあり得る。なんだ、コレは?自殺願望者なのか、アイツは?」*5
『元々はカプセルを服用しての術式にしてたんです。しかし、この世界に来てからゲイボルグ・シバルバーを間に挟めば服用せずとも使い熟せていましたから・・・』
「慢心か」
『ですね。まぁ良い機会です。十分に休んで貰いましょう・・・project:IGNITEDは私も手伝えます。*6なのでそちらも進めていきましょう。響さんには一時的に彼のガングニールを渡します。*7ダインスレイブはまだ付いてませんが魔力障壁は備わってます。なのでアメノハバキリやアガートラーム、イガリマやシュルシャガナと比べたらまだ幾分かアルカノイズに対抗できます』*8
「はい・・・分かりました!」
すると、司令室の扉が開く。入って来たのは柳星が家に送り返した三人だった
「アイツは無事なの!?」
「倒れたって聞いたデス!」
「無理してたの・・・?」
その問いには了子が答えた。BBは既にイグナイトモジュールの演算に集中している。なにせ途中式を柳星は完全に秘匿していたのだ。彼の頭の中までBBは把握できていない。故に手探りだったのだ。だが、奇跡的にゴールは見えているのだ。ならば一、二週間もあれば完成するだろう。
「正直に言うわ。彼に外傷は一切ないの。魂を酷使し過ぎたのよね。似た症例だと絶唱が当て嵌まるのだけれど絶唱はバックファイアが肉体に現れるわ。ソレすらないからもはやお手上げ。輸血して失った分の血液の補填をして、それだけ。逆に言えば、ソレしか出来ないのよ。幾ら人間の姿をしてるって言っても彼は別の世界の住人。私も専門外だから下手に触れないのよ。・・・リィンカーネーションシステムだって遺伝子に作用するシステムだから魂へのアプローチなんてしてこなかったしね」*9
「・・・そう言えば、彼。とても追い詰められてた顔してたわ。まるで
「ぬぅ・・・それは否定出来ないな・・・確かにフロンティア事変の時は殆ど彼任せだったな・・・そうか。頼り過ぎていたのか・・・」
「なら私達でその穴を少しでも埋めるデスよ!確かにまだアルカノイズの分解保護は出来てなくても、こちらの攻撃は通るんデスから!」
「そうだね、切ちゃん。あの人の居ない穴を全て埋める事は出来なくても、少しくらいなら・・・」
しかし、そこに待ったを掛けた人が居た。弦十郎だ。
「ダメだ。LiNKERはどうする?今の君達がこれ以上LiNKERを使ったら毒素が抜けなくなる可能性すらあるんだぞ?流石にソレは看過できない」
「その点なら大丈夫よ、弦十郎さん?彼、個人用に調整した新型のLiNKERを完成させてたもの。だから彼の実験室かどこかにあるんじゃないかしら?LiNKER液が」
「そう言えば彼、渡しそびれてたなんて言ってたわね・・・」*10
「じゃあ!」
「でも私が最終確認するわ。彼を信用してない訳じゃないけど、私にとって彼の術式が専門外なように、彼もLiNKERは専門外のはずよ。何か致命的な間違いをしてる可能性があるもの。それなら私も確認してから許可を出したいわね」
「・・・そうだな。では一度持って来てくれないか?」
重い空気のまま、時間は流れる。しかし希望はある。ソレが完成するその時までの防衛戦が始まったのであった
「また来たのかい?」
「・・・神様か。アヌンナキ・・・だったかな?」
「そうだね。ただ私はエンキの様に人類への
「貴様のその輪廻のせいでフィーネが輪廻転生を繰り返しているんだが?その点についてはどう思うよ」
「フィーネ・・・彼女か。確かに彼女は輪廻転生を繰り返すだろうね。彼女がエンキに想いを伝え届ける前にシェム・ハが動き出してしまったのだから。*11そうして統一言語は消え去り、フィーネはエンキに想いを届けられなかった。しかし、希望はある」
「希望だぁ?」
「統一言語は確かに消え去ったが、人類からその存在が消滅した訳じゃない。一部の部族には文字を変えて、音だけを残したものがまだ存在している。それに、ガングニールの適合者・・・それと神獣鏡の適合者。この両名は呪詛から脱却した。しかしシェム・ハトラップが作動していないのなら祓魔による脱却は問題ないと言う事だ。ならば問題ないだろう?」
「・・・人類70億の絶唱か」
「そうだ。人と手を繋いで
「神の尺度で言うなら確かに安泰だろうがよぉ、人の尺度じゃあ今は安泰とは言えねぇだろうがよぉ?」
「キャロル・マールス・ディーンハイムだね?彼女もまた、統一言語が失われたことによる被害者の一人だ。彼女の父親は素晴らしい錬金術師だった。確かに人並外れたものでは無かったが、基礎と言う点ではほぼ完璧に押さえていたと言って問題はないだろう。だからこそ、キャロルの錬金術は完成したのだから」
「そのキャロルが地球の分解目論んでるんだが?」
「そうだね。でもそれは君達が食い止めるだろう?」
「はぁ・・・これだから神様は嫌いなんだ。不確定の未来を確定してるかの様に語って来やがる」
「ははは。そもそも尺度が違うからね」
「にしても、こんな簡単に逢えて良いのかねぇ・・・」
「確かにね。でも君自身冥府に染まっているだろう?ならばコレは必然だよ。元々決まっていたと言っても過言ではない。しかしここに浸ってはいけない。さぁ、帰るんだ。君の事を案じている人がまだ現世には居るだろう?」
「・・・だな。次会う事がない事を祈っているよ」