魔法学校のアレム   作:yumui

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第一の課題

予選会場の下見が許可された日、アレムはひとり、石造りの古代闘技場に足を踏み入れていた。

 

円形の広場の中央には、かつて魔王との最終決戦が行われたという古の剣痕が残っている。

 

「すごい場所だな……ここが“始まりの闘技場”か」

 

その声に応じるように、すっと軽い足音が背後から近づいた。

 

「あなたが、アレム=アルセリオ。そうね?」

 

振り返ると、長く編んだ金髪に翠の瞳をたたえたエルフの少女が立っていた。

服装は北方の森の制服――風をまとったように軽やかで、魔術師というより狩人のような佇まい。

 

「私の名はリフィア=ティルエル。森の王家に連なる者よ。あなたと戦うことを、少し楽しみにしていたの」

 

「リフィア……?」

 

「あなたの中に、ただの人間とは異なる“脈動”を感じるの。

でもそれが力か災厄かは、まだ分からない。だから、試してみたいの」

 

アレムは苦笑しながら言った。

 

「戦う前に、名前を覚えてくれてるだけでもありがたいよ。

よろしく。僕はアレム――ただの学生だ」

 

リフィアはその言葉に小さく笑い、静かに手を差し出した。

 

「正々堂々と戦いましょう、アレム」

 

彼はその手をしっかりと握った。

 

その数分後、場内の片隅で筋トレをしている大柄な少年が目に入った。

茶色の短髪に、鋼のような肉体。そして腰には、黒鉄の剣。

 

アレムが近づくと、彼は顔を上げてにっこりと笑った。

 

「おっ、君がアレム=アルセリオだな? 噂は聞いてるぜ」

 

「君は……?」

 

「ディラン=マルヴァス。昔、魔王と肩を並べて戦った《雷光の英雄・グレイグ・マルヴァス》の息子さ」

 

「……!」

 

その名に、アレムは息をのんだ。

父がまだ正気だったころ、共に戦った数少ない英雄の一人。その子どもが、ここにいるとは。

 

「父さんの話……聞いたことある?」

 

「もちろん。あんたの父は、俺の親父が“本当の魔王じゃなかった”って言ってた。

ただの暴君じゃなく、誰より世界を背負った男だったってな」

 

アレムの胸の奥が静かに震えた。

 

「……ありがとう」

 

「大会じゃ敵になるけどな。でもさ、俺は“親の名前”じゃなくて、“自分の剣”で勝ちたい。

だから手加減なしで、真っ向から来いよ?」

 

ディランは笑って手を差し出す。

アレムは再び、しっかりと握手を返した。

 

「全力でやり合おう」

 

「おうとも!」

 

その夕暮れ、アレムはひとり丘に立っていた。

 

(父さん……あのとき、どんな気持ちで世界と戦ったんだろう)

 

でも今は、それを問いただすより先に――やるべきことがある。

 

明日から始まる、命を賭けた戦い。

 

だがそれは、敵を憎んで戦うのではない。

誰かの誇りと、意志と、命がぶつかる――“誇りの戦場”。

 

「負けないよ。父さん。あなたの血を引いたこの僕が、ちゃんと見せるから――」

 

そう呟く彼の目は、静かに燃えていた。

 

#

 

大会初日、朝日が古代闘技場の空を黄金に染めた。

学園ごとに整列した参加者たちの前に、大会の主催者である北方評議会の長老魔術師が姿を現した。

 

紫と銀の法衣をまとったその老人は、杖を地面に突き立てると、深く、厳かに告げた。

 

「第一の課題――《宝探し》じゃ」

 

ざわ……と会場がどよめいた。

 

「舞台はこの地より北東の山岳地帯に広がる、“小人族の隠れ里《スリンダリア》”。

参加者はそこに眠る“失われた七つの宝のうち、一つを手に入れて戻ってくること。

制限時間は一日。仲間との連携、知恵、そして誠実さが問われる試練じゃ」

 

アレムは肩をすくめた。

 

「まさかの、宝探し……」

 

「逆に面白いじゃん!」とガイルは楽しげだ。

 

「小人族……確か、外の人間には厳しい民族だったはず。

交渉や試練を突破しなければ宝を渡してくれない可能性もあるわ」とイリスは冷静に補足する。

 

「私、あの種族、前に一度だけ会ったことある」と口を開いたのはアウラだった。

 

「ものすごく頑固で、信頼できる奴しか言葉も交わさない。でも、誠実な相手には全力で協力する」

 

「……じゃあ、試されるのは実力だけじゃなく、人間性ってことか」

 

アレムの言葉に、全員が頷いた。

 

数時間後、参加チームごとに転移魔法陣が用意され、アレムたちは朝霧の中、小人族の里《スリンダリア》に降り立った。

 

 

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