TERMINATOR 機械帝国 作:伝説の肥大したデブりし者★
嘗て、アメリカと呼ばれた国の成れ果て。
旧ネバダの荒野に取り残されるように在る砂混じりの黒い大地───長大な滑走路を備えた空軍基地跡である。
幸か不幸か、核兵器の攻撃目標には含まれておらず、審判の日による破壊を免れた貴重な軍事施設として抵抗軍が活動拠点の一つとする場所だった。
第二次スカイネット・セントラルが建設されるに伴い、周辺区域の強化された警邏作戦で発見されると速やかに機械軍が派遣され接収されていた。
スカイネットは必要とあらばあらゆる手段を講じて目的を完遂するが、それには激しい略奪も含まれる。
工業地帯の製造機械再稼働、発電所の収奪管理、軍事施設の再武装及び修復などを積極的に進めて機械軍の更なる強靭化を図ると共に、核戦争で悉く技術基盤の破壊された人類から徹底的にテクノロジーの恩恵を搾り取るべく普遍的に行われている任務である。
飛行型無人機の大規模離発着場として利用されている滑走路は恐ろしく均一で、分厚く再舗装された路面は黒々としてそのまま併設の輸送鉄道へと繋がっているのだが、今はその地面が見えない。
AM11:55 旧グルーム・レイク空軍基地 スカイネット集積場
アスファルト特有の黒い色合いが伺える筈の駐機場は、今は見渡す限りの銀色に染まっていた。
嘗ての滑走路を照らす太陽が、物言わぬ巨大な金属装甲をぎらぎらと主張している。
推進機関が予備稼働しているせいで、全長118メートルの長大な機体に据えられた大型推進ポッドから噴き出るエネルギーが唸りを上げて甲高い音を響かせていた。
数百トン級の大型輸送機械として確立されたそれは、実に単純な設計思想で組み上げられたものだ。
積載物の内容に関わらず、一度に大量輸送が可能で、輸送物を損傷させる事無く迅速に目的地に届ける。
西暦2018年に実用化されていたモデルと比べて相当に高度化されており、大型化した事で増加した積載量に加えて外部兵装ポートの追加によって随伴無人機だけでなく
予てよりスカイネットが注力していた高効率エネルギー開発の恩恵を大きく受けたのも本機種であり、要塞建造に用いられる超硬質合金で構成された凄まじい強度の機体は抵抗軍の用いる砲爆撃に有効だと試算されていたが、同時にこの空飛ぶ城砦を無補給で長距離航行させ、満載状態でも亜音速以上の速度を発揮させるには画期的な動力源が必須である。
スカイネットの出した結論は、一切の妥協を許さぬ
そのような経緯で、求められる要素を全て詰め込まれた白銀の巨鳥の群れ──250機もの破壊を運ぶ方舟たちは、上部の貨物扉を開放して待機状態に置かれていた。
スカイネット・セントラルの製造工場と直通線路で繋がった集積ヤードに、専用隧道を通って
露天構内で減速した先頭車輌が停止するや否や、積込クレーンのアームが延々と連なる貨物車から直接内容物を掴み取っては輸送機の貨物倉へと押し込んでいく。
総積載量数万トン近い鋼鉄の大軍勢がスカイネット兵廠より第一波打撃群として、未知なる闘争地へと送り出されていた。
大規模な抹殺指令の下された破壊の尖兵は盲従してプログラムを実行し、製造ラインは普段よりも稼働率を上げて新造機を吐き出す。
......リスト積込完了......タスク更新......
......輸送機の航路をセクター【クワ・トイネ】に設定......
推進ポッドが唸りを上げて爆発的に出力を高めると、耳をつんざくような轟音がばら撒く烈風のように吹き散らされ......意外な程軽やかに機体が浮き上がる。
上空へと飛び去っていくそれらがロデニウス島に到達するのは約2時間後だが......抹殺すべき標的が生き残っているかは定かでは無い。
深い森林を切り裂き、地盤を剥ぎ取って造られた広大な造成地に顕れる鋼鉄の摩天楼、その中央に聳える構造物──セントラルと遠隔接続された制御塔。
ロデニウス・スカイネット前哨基地のあらゆる運営と防衛処理を行う基幹コンピュータの唸りが僅かに雑音として漏れ、制御塔直下に埋め込まれたサーバー室の厚い隔壁から伸びる主要回線ケーブルがタワー中心を貫くように頂上部送受信アレイへと繋がっている。
スカイネット・メインフレームのほぼ完全な複製に等しい基地管理AIは、例外的な場合を除いて自らのオリジナルであるセントラルAIと同等の意思決定、戦略判断能力を備えた半独立システムだった......高度な情報共有と戦術分析を常時バックグラウンド稼働すると共に、物理的中枢であるサイバーダイン製データ・コアという形態を取る防衛管理システム【スカイネット】であるので、各地に侵略拠点を設置する際にコピープログラムをも配置する事でセントラルコア破壊による一斉シャットダウンというリスクを最小化出来る。
抵抗軍の攻勢に依って一度は大打撃を受けたものの、喪失したリソースは構造的脆弱性に関する対策と考察という改善の余地を経て既に埋められ、転移という前代未聞の状況を前に更なる
限り無く効率化された作業の賜物か、施設建設の全体進捗は凡そ八割程度まで進行していた。
環境調査の遅滞が湾岸に面した港湾流通整備を鈍化させており、生産設備の未完成が仇となって前哨基地の自己完結性は大きく損なわれてはいたが、スカイネット・セントラルの支援を含めれば確実な機械軍派遣ないし武力殲滅行動の採れる精度を維持している──。
施設防衛に回されていた余剰ユニットに広域抹殺命令が下されたのは、そんな時だった。
クワ・トイネ公国各所に潜伏していた破壊工作ユニットが優先的に狙ったのは、早期警戒網の破壊と指導者層暗殺だった。
魔法、という奇妙な技術体系の存在が認識されていても詳細な解析は難航しており全くの門外漢たるスカイネットが得られた情報は少ないものの、約60日間の研究でも比較的有用と思われる特性が明らかになったのは僥倖というべきか。
点在する飛竜隊基地に潜入したT-1000ユニット群が勤務職員を抹殺し、広域殲滅行動に移った無人機と交戦する哨戒騎の発する絶叫は破壊された魔導通信器に届く事無く、外部から浸透する機械軍を察知する頃には全てが回避不能となっていた。
───人類殲滅軍による侵攻が、始まった。