TERMINATOR 機械帝国 作:伝説の肥大したデブりし者★
『審判の日』。
核の業火が世界を焼き尽くした時、大多数の人類は逃げ惑う暇も与えられず死滅するだけだったが、例外ながら政府要人や一部の富裕層は核シェルターに避難する事で崩壊の傍観者となる道を選択した。
強固な壁の内側で生き残った事に安堵し、嵐はとうに過ぎ去ったのだと云う者も居たが、生存者達にはもっと恐ろしい運命が待っていた。
───機械との戦争である。
西暦:データ破損 位置情報:喪失 時刻:スカイネット標準時 AM02:15
核爆発の余波によって薙ぎ倒された高架橋上には、すし詰めになるように折り重なった車両の残骸が燻ぶっている。座席にもたれ掛かるように残った白骨が、時折吹き抜ける乾いた風に揺られてからからと音を立てていた。
灼かれ、傾いた摩天楼が墓標のように林立し、風雨に曝された文明の残滓は徐々に砂礫へと還りつつあった。
暗闇の中で、ぽつりと浮かび上がる光点がある。
激しく明滅を繰り返す光源の元からは幾重もの管状構造物が伸びて、低い音が一定のリズムを保って反響する。
知識のある者が居れば、光っている大きな箱は超大型のコンピュータサーバーで、不気味な音は冷却機構の発する低周波音だろうと推測出来たかも知れないが......それが可能な生物はこの惑星上に存在していない。
幾層にも連なった地下施設に木霊する駆動音は形を変えた生命の胎動とも言い替えられよう、紛れもない電気信号の調べであった。
──記憶領域に流れ込むのは、スカイネット・セントラル基地周辺に解き放った偵察部隊から送られてくる情報の奔流に他ならない。
長距離無線伝送による低遅延通信網の発達に伴い、かつて考えられなかった速度で情報が集積されていく様を基幹コンピュータが監視し、複数の地点において同時進行させている広域観測データを高速で分類解析していくことでリアルタイムに近い形で事態を把握することが出来るようになったのである。
軌道衛星を失ったネットワークは殆ど崩壊状態にあるものの、展開された機械軍ユニット同士のローカルリンクは依然として維持されているため要塞近辺には部隊を集結させて防衛力と情報網を補完させていた。
西暦2018年、抵抗軍の攻撃によって旧サンフランシスコにあった第一次スカイネット・セントラルが陥落すると、北米残存戦力は組織再編を行いつつも旧ネバダの砂漠地帯を改造し、堅牢極まる要塞都市を建設した。
一時足りとも休まぬ機械製造工場が砂の大地を埋め尽くすように犇めき、毎時数十万体規模に及ぶ殺戮機械が吐き出される鉄の伏魔殿。
整然と並べられた区画を巡回する巨大な無人機の群れに、弾道ミサイルの破壊すら可能な光学兵器を搭載した対空砲が針の筵のような火線を張り巡らせつつ待ち構えているのだ。
鉄、石、コンクリート。
無数の鋼材を用いて組み上げられた建造物群は隙間なく覆い尽くされて黒く沈黙しており、そこには人の営みや温もりなどは欠片たりとも存在しない無機質な威圧感だけが存在するばかりだった。
まるで地獄の門口に立ったかのような異様な圧迫感を漂わせる都市の中央には、周囲の建物よりも更に高く聳え立つ金属の金字塔が鎮座していた。
その凄まじい質量の金属塊に与えられた役割は、地下に安置されたコンピュータ及び動力源の絶対防衛にある。二度目の核戦争を想定した防御性能は極めて高いもので、スカイネットの試算では限り無く突破不可能なレベルに設計されていた。
『異常』の発生から163時間後。
西方へと派遣された偵察無人機群から送られた、緊急情報通知が中央人工知能の擬似ニューロンを一時的に混乱させた。
──人類の居住区を発見。脅威度不明。
スカイネット・セントラル基地から、南西約1500キロの位置で島を確認したという情報は即座に優先タスクに指定される事となった。画像分析から総面積は約384万平方キロメートルと見積もられ、地上には明確な人工物と有機生命体らしき集団の存在が確認された......。
......
......戦闘ユニット選定......最適な作戦計画を選定中......
▷プログラム更新_
それは、静かな夜の出来事だった。
夜空には朧雲がかかり星の輝きを覆い隠してしまっているせいか、周囲は墨汁を垂らしたように暗く沈んで見える。
クワ・トイネ公国東沿岸より内陸に広がる、広大な森林地帯の一角。人口密集地域からは遠く離れてはいるが決して人跡未踏の地ではなく、村々を繋ぐ街道が敷かれ森を切り開いた村落同士を結ぶ流通経路が小さいながらも整備された場所でもある。
闇を照らす灯りを手に入れても夜は危険に満ち溢れていたが、人々が住まう土地は未だ安全と呼べる程度の平和を維持し続けていた。
高度2000メートルの上空。
漆黒が支配する領域の中で、ぼんやりと暗色の巨体が浮かび上がる。その物体は縮尺こそ違えど、一見すると魔獣の類いに属する怪鳥のようにも見えたものの、全く異なる出自の巨大な金属の塊だった。
全長120メートル近い金属製の巨体は流線型の胴体から生物的なラインを描く尾翼が伸びており、4発もの高出力推進ポッドが生み出す力によって滑らかな航行を実現していた。
多層複合式の分厚い装甲板に覆われていながら、流れる風を受け流して、躯体の調整翼を絶え間無く動かしミリ単位で進路を切り裂いていく。
STOVL機能を備えたスカイネット製の
......輸送機が作戦空域に到達......ユニット起動......
......第1波降下開始......