不快に感じたらバックで戻ってください
カナリスなんかに口調が似ててキャラが被りそうなのでちょっといじろうと思います
汚染物質で満たされた空気で満たされている荒廃した荒野。
人々が過酷な環境を生き抜くための楽土たる自律都市を背後にして、戦いが起きていた。
都市外用スーツを纏った小さな存在が荒廃した世界の主である汚染獣へと挑む。
傍から見ていると無謀にもほどがある構図だ。
汚染獣は蛇のように長い身体を鞭のようにしならせながら、小さな人間を睨みつけているのに対し、人間はその身体には似つかわしくない長い刃を自らの手足の如く両手で扱いながら巨大な汚染獣に対峙していた。
◇
『久々の老性体ですね。ご気分は如何ですか』
「特に…ありません…お婆様。サヴァリスなら…狂喜したのでしょうけど」
蝶の形をした念威端子が視界の端でゆらゆらと踊りながら問を投げかけている。
それに対して問いかけられた少年は答えを返しながらも汚染獣からは目を離さないでいる。
一瞬の油断を許さない状況であるものの、蝶の主にはお構いなしな様子で、汚染獣とにらみ合いを続けながらも会話は続いてゆく。
この程度ではどうにもならないとわかっているからだ。
『あらあら、強い相手と戦えてうれしいとは思わないのですか』
「所詮…老性一期。全力の出せない相手……強いとは…言えない…」
蝶から流れ出る弾んだ声からこの蝶の主の微笑んだ顔が思い浮かぶ様。
少年の表情は都市外装備のヘルメットで見えないが、その感情を感じさせない声音から無表情な顔を連想させられた。
相変わらずですねと蝶々が呟いたところで、汚染獣は痺れを切らしたのかその長い体躯をしならせながら、飛び掛ってきた。
左肩に峰を担ぐように構えていた太刀を一閃。活勁のみで勁を錬金綱に込めていないにも関わらず、飛びかかる汚染獣の堅牢な牙の一つをを切断する。
普通、老性体の身体を勁無しに切り裂くなど考えられないのだが、事もなげにやってのける。
恐ろしいまでの技の冴えであり、少年を強者たらしめている理由の一つだ。
『流石アイリスさんですね。こんな事はリンテンスさんでも無理ですよ』
「いえ……全然です……こんな事よりリンテンスの綱糸の方が…。リンテンスに……勝ったことない…」
会話をしながらも汚染獣に対する注意を怠っていなかった少年は一瞬で剄を練り上げ、宙を舞う汚染獣へひとつの技を放つ。
バハムート流太刀術。外力系衝剄の変化・椛。
太刀に膨大な剄を込め、刃に集中、圧縮させる。
圧縮させた剄が密度の高さによって紅く変色したところで再び飛び掛ってきた汚染獣の側面を避けながら切りつける。
汚染獣は形容し難い声で苦悶の声をあげながらそこら中に身体を叩きつけた。
圧縮された剄が発する熱で傷が焼き付く。
さらに切り口周辺に勁が浸透し、斬撃痕一帯が焼け爛れていく。
斬撃と共に放たれた熱によって硬い外殻だろうとお構い無しに溶けていくその光景は、勁技の威力の凄まじさを物語る。
「……浅い」
汚染獣の側面の斬撃痕を見ながら呟く。
どうやら思っていたより内部の肉が予想外に厚みがあったためか、内臓に届かなかったようだ。
既に再生が始まっている傷跡をみて、老性体の生命力の高さが窺える。
ちまちまと削っても時間がかかるだけ。
そう判断してすぐに追撃をする為に新しく剄を練りはじめる。
先程放った椛と同じ様に勁を圧縮し、太刀に込めていく。しかし今度はそのまま放たずに圧縮させた勁を太刀の表面に留めて、また勁を新しく圧縮させていく。
刹那の内に同じ事を数回繰り返す事で表面に留められた幾つかの勁の塊が混ざり合い、新たな勁技へと昇華されていく。
それと並行して練った勁を足の強化にまわし、今だ苦しみに暴れ続ける汚染獣の背へと跳躍。
汚染獣の背中に着地すると同時に技が完成。汚染獣の背へ紅く輝く刃を突き立て、放つ。
バハムート流太刀術。外力系衝勁の重勁変化・重ね椛・朧火。
突き立てた刃から過度に圧縮された事により紅く輝く剄が浸透していき、その圧縮された剄のもつ多大な熱量が汚染獣を内部から焦がし、焼き尽くす。
少年の膨大な勁は汚染獣の巨大な身体の隅から隅まで浸透していく。
それはまるで汚染獣という型に溶かした金属を流し込むかのようで、先ほどの椛とは比べものにならない熱が内臓という内臓を、筋肉筋肉という筋肉を、神経という神経を焼き焦がしていく。
暴れる汚染獣に潰されないよう、技を放ってすぐに錬金鋼を基礎状態に戻しながら汚染獣の上から飛びのき、地上に立つ。
体の内から焼かれる痛みにもがき苦しむ汚染獣。
流石の老性体も内部から焼かれては再生が追いつかないのか、動きが急速に悪くなってきた。
それでも死なないというだけで驚愕に値する。
流石は一期とはいえ老性体か。
しかし、もはや勝負は決しただろう。
動けない汚染獣は此方を睨む事しかできない。
少年は基礎状態に戻していた錬金鋼を構え、虫の息の汚染獣へとどめの一撃を放つべく勁を練り上げる。
汚染獣が怨嗟の声を上げるのを聞きながら少年は汚染獣へと跳躍した。
バハムート流太刀術。外力系衝剄の変化。御紙裁ち
復元途中の極薄の刃の状態を剄で固定し、分子の結合を裁つ刃をそのまま汚染獣の首へ打ち下ろす。
視認出来ない程薄い極薄の刃は、老性体の強固な外殻をものともせずに汚染獣の首へと沈んでいき、一息で首を落とす。
首を落とされ、断末魔の声すら上げれずに汚染獣は息絶えた。
『生体反応消失。よい戦場でしたね』
戦闘の音が止んだ戦場に弾む蝶の声が、戦いの終わりを告げた。
◇
「やあ、相変わらずいい腕だったね、アイリス」
「……見てたんですか…サヴァリス」
戦いを終えて普段着に戻った少年の元に、一人の青年が近づいていた。
気さくな口調に気のいい笑顔で、初見であったならばまともな人間に見えていただろう。
サヴァリス・クォルラフィイン・ルッケンス。
天剣授受者たる少年の同僚で、戦闘狂。
嫌いなわけではないが、汚染獣との戦いの後に隙さえあらば殺し合いを仕掛けてくるような変態の顔を見るのはうんざりするようだ。
特に、少年はお気に入りの相手であるらしいのでその感情もいっそうである。
天剣であるサヴァリスにこんな顔を出来るのは、少年も同じく天剣だからだろう。
アイリス・リンドヴルム・バハムート。若干9歳にして天剣の座に着いた天才。
本人曰く、天才ではないとのことだが誰もがそれを信じないだろう。
年齢相応の小柄な体格に、無表情だが整っており、女童にしか見えない愛嬌のある顔。
その真白い肌と対照的な長い鴉の濡れ羽色の地面に付きそうな程長い髪を後ろで結んでいる。
何より特徴的なのは紅く輝く瞳。猫や爬虫類のように縦にさけた瞳孔をしている。
そのどれもが特徴的なせいか、十歳にして何処か妖しい雰囲気を放ちつつあった。
「それで…何の用事?私は…戦った後……」
アイリスは相変わらず何処か胡散臭い笑みを浮かべるサヴァリスに皮肉を交えて用件を問う。
その顔がうんざりした顔をしているのにサヴァリスも気づいたのか、苦笑しながら用件を伝える。
「ああ、流石に今殺し合いをしようとは言わないから安心してよ。陛下から伝言があるから来たのさ」
「……へぇ」
珍しく殺しあおうと言わないサヴァリスにアイリスは驚いた。中々失礼である。
少し思う所があったが、話を続ける。
「…伝言?」
「天剣は皆集まるように。だそうだ」
「何事……?」
一人一人が絶大な力を持つ天剣。
それを皆集めるとはどれほどの理由を持つのか想像が付かない。
「さあね、僕もまだ何も聞いてないんだよ」
お手上げ、とでも言いたいかのように両手を広げるサヴァリス。
顔がいいだけにか様になっているが、中身はただの戦闘狂な変態だと思うと少々むかつく。
それに対し「ふん…使えない…」と無愛想に鼻を鳴らし、王宮へと足を向けた。
◇
「……新しい天剣?」
「そ、新しい天剣」
グレンダン王宮、王座の間に天剣一同が集まっている。
役一名は念威端子のみではあるものの、性格に難の有るものたちが多い天剣が揃うのは非常に珍しい。
それだけ、女王陛下にはみな忠誠を誓っているのだろう。
天剣たちの前にある椅子には現女王であるアルシェイラ・アルモニスが「ぐでっとした」という表現が似合うような感じで椅子に座っている。
これでも、グレンダン最強の存在だったりする。
その様子にカルヴァーン・ゲオルディウス・ミッドノットやカナリス・エアリフォス・リヴィンは先ほどから苦言を呈しているものの、効果は出ていないようだ。
女王がそんな感じであるからして、リンテンス・サーヴォレイド・ハーデンはこの状況でもタバコを吸っていたり、そのタバコの煙を嫌がった綺麗好きのバーメリン・スワッティス・ノルネなどは糞糞と連呼していたり、カウンティア・ヴァルモン・ハーネスはところかまわずリヴァースに抱きつき、そのリヴァース・イージナス・エルメンは子供が見てるからと顔を赤らめつつカウンティアを諌めていた。
相変わらず緊張感の欠片もない。とアイリスは思いながらも話を続けないと終わらないので話を続ける。
「天剣は……十二個」
「あー、それねー。実を言うと、アンタが持ってるリンドヴルムは特殊なものでね。最近出来たばっかの天剣なのよ。で、元々あったヴォルフシュティンもこの際渡しちゃおうかって話なの」
アイリスの疑問に対してあっさり重要な話をするアルシェイラにティグリス・ノイエラン・ロンスマイアが頭が痛そうな素振りをしている。
相変わらず、自由奔放な女王である。
同じ王家の者にしてもえらい違いだ。
「それで、渡す相手はどうするのですか」
サヴァリスがその胡散臭い笑みを深めながらアルシェイラに聞く。
天剣という強者が増えることに喜んでいるようだ。
相変わらず、殺し合いが好きなようで辟易させられる。変態め。
そんな変態を一瞥した後、アルシェイラは泣いてるカナリスを弄りつつ答える。
「ああ、今度大会あるでしょ?アレで勝ったやつにあげようかなーって」
「…そんないい加減でいいのですか?陛下の剣ですよ?」
相変わらずだらけたままのアルシェイラにあきらめたのか、カルヴァーンも話に加わってきた。
「強けりゃかまわねえんじゃねーの?もしくは可愛けりゃ歓迎だ」
と、トロイアット・ギャバネスト・フィランディンは楽観的だ。
このひとは女性さえ居ればいい変態だ。変態が多すぎる。
「巫山戯無いでください!陛下の剣がそんないい加減に決まっていい訳ないでしょう⁈」
そんなトロイアットの楽観的な意見に陛下に泣かされていたカナリスが食いつき、言い争いが始まってしまった。
その後も話はいくつか続いたが、ルイメイ・ガーラント・メックリングが空腹を訴えだしたりとぐだってきたところでアルシェイラが面倒くさくなったのか〆た。
「まぁ、目ぼしいやつがいなかったらまた探せばいいでしょー。じゃ、決定。かいさーん」
カナリスやカルヴァーンは天剣の品格が……とまだ不満気味だったが、アルシェイラの決定とあってはおとなしく引いて皆解散し始めた。
アイリスも帰ろうとしていたが「あ、アリスは少し話あるから残ってねー」という一言に引き止められた。
帰りたかったのに……とため息をつきながら、アルシェイラのもとへと歩み寄るのだった。
重勁は仮名。
バハムート流の技術です。
錬金綱の表面に完成させた勁技を留めて、幾つか重ねることで上位の勁技へと昇華させる技法
確実に普通の錬金綱じゃぶっ壊れるなこれ…
主人公設定
アイリス・リンドヴルム・バハムート
男、黒い長髪、赤目、凛とした印象の顔。中性的というか、やや女っぽい
レイフォンと同い年
ようは天上天下18巻あたりの棗亜夜を男にして、龍眼常に発動してて、無愛想にした感じを想像してほしい。
龍の廃貴族がとりついている。
太刀使い。イメージは零毀
太刀の取回し方は棗姉妹や円を参考。
滅びかけた都市で戦っていたところをグレンダンに保護される。
現在は天剣授受者である
詳しいことは過去話で