レイフォン・アルセイフは天才である。
10歳にしてサイハーデン刀争術を修め、汚染獣戦や武芸者同士の試合でもいい成績を残している。
それが周囲からの評価で、レイフォン自身、客観的に見て自分は才能があるほうなのだろうと自覚していた。
正直本人にとっては、その才能など金を稼ぐ手段でしかなかったが。
技量は同年代どころか周囲の大人を凌駕し、何より剄量はもはや天剣授受者のそれに近いものが在った。
剄の流れを見るだけで技を再現するその才能もレイフォンの強さを押し上げていた。
このままいけばサヴァリス・クォルラフィン・ルッケンスの最年少を更新して天剣になるのではとまで噂されてるほどに。
事実、さっきまで行われていた天剣授受者決定戦には得意である刀を封じてすら優勝したのだが。
しかし、そんなレイフォンを超える天才が存在した。
アイリス・リンドヴルム・バハムート。
一年前、グレンダンに拾われてきたレイフォンと同年齢の少年で、瞬く間に天剣を手にした天才。
正直自分から見ても女の子と見間違うほどの外見である。
白い肌に対照的な烏の濡羽色の長い髪を後ろで軽く縛っている。その顔は常に能面のごとく無表情だが、逆にそれが愛嬌を感じさせるほどに整った顔。
赤い瞳はまるで宝石のような輝きを放っている。
基本的に白い道着と赤い袴、白い足袋に雪駄という服装で、なぜか錬金鋼でない太刀を持ち歩いているその姿は市井を歩いていると非常に目立つ。
「まるでお人形のようで可愛いね」とリーリンに伝えたらなぜか殴られたが。
しかし、自分を上回る強者であることには変わりない。
その小さな体で2メルトル近い大きさの太刀を繰る技術は、初めて戦場で目にしたときは戦時にもかかわらず一瞬心奪われてしまいかけたほどだ。
汚染された大地の覇者である汚染獣を一太刀のもとに真っ二つにしたときは寒気すら覚えた。
刃物を扱う技術において他の追髄を許さず、太刀ひとつをとってもその繊細な技術は真似できそうもない。
たまに匕首や小太刀などを振るっているのを見るが、それすらも達人の領域であった。
それとは別に弓の心得もあるらしいく、たまにノイエラン卿と鍛錬を行っているそうだ。
天剣最強こそサーヴォレイド卿といわれているが、刃物を扱う技術においては右に出るものはいないのではないかと噂されている。
多少違いはあれど、刀を振るっていたレイフォンにとっては尊敬に値する人間だ。
そんな存在が、何故か目の前にいる。
「……さぁ、かかって…来なさい」
しかも臨戦態勢。
天剣と満員の闘技場の中心で向かい合っている自分の状況に思わず呟いた。
「どうしてこうなった……」
◇
「エキシビションマッチ……?」
「そーゆーことよ」
王宮の一つの部屋で、美女と少女のような少年が向かい合っている。
先ほどアルシェイラ・アルモニスに引き止められたアイリスは、告げられた言葉に疑問の声を上げていた。
「ようは、大会優勝者の実力が天剣にしても大丈夫か戦って見極めろってことよ」
そういいながら足を机の上に投げ出してアルシェイラは相変わらず気だるそうなポーズを崩さずにしている。
この女王はいつもこんな感じだ。
しかし、疑問が残る。
「どうして……私?」
ということだ。天剣は12人いるのにどうして自分なのか、それが疑問だった。
その疑問にアルシェイラは簡単に答える。
「一番適任だからよ。リンじゃ強すぎだし、ティグじいやカルヴァーンなんかじゃ威圧感強すぎで優勝者っつっても萎縮するでしょ?カナリスは私の代わりに仕事してるから忙しいしね」
「…他は?」
「論外よ。サヴァリスやルイメイたちに手加減できると思う?」
死人が出る、とアイリスは思った。
天剣授受者はどうにも頭のねじが外れているのだ。
「それに、他にも理由はあるわ」
「他に……?」
「実は、一番の有力候補はアリスと同い年なのよねー。ほら、コレ」
アルシェイラが資料を投げてよこしたのをキャッチする。
その資料をみて、納得する。
「……なる…ほど…」
「納得した?じゃあ、天剣授受者決定戦のすぐあとに戦ってもらう予定だからよろしくねー」
◇
目の前にいる少年が茫然としているのを、太刀を構えつつ観察している。
レイフォン・アルセイフ。若干十歳にしてサイハーデンの技を修め、たくさんの汚染獣を屠り、幾多の武芸者をなぎ倒して今目の前に立っている。
己と同じく天才と呼ばれているのだろう。私は少しズルをしているのだけれど。
とにかく、アルシェイラの予想通りに、自分の目の前にいるのは同い年の少年だった。
ただ、少し予想と違うのは刀ではなく剣を用いているところだろう。
天剣授受者決定戦においても習得しているはずのサイハーデンの技を使わずに武芸者を倒していた。
自ら力を制限するとは何を考えているのか。
少し不可解に思うが、それでも他の参加者を押し退けて此処に居るのは手放しで称賛出来る事であった。
さぁ、とにかく始めるとしよう。
「……レイフォン・アルセイフ」
「うぇ⁈は、はい⁈」
未だ惚けて居る少年に声を掛ける。
余程状況が理解出来て居ないのか、慌てているのをみていると少し面白い。
でも、萎縮したままで本気を出してくれなければ困る。コレはあなたを推し測るための闘いなのだから。
だから、挑発する。
「きっと…何故この状況に居るか…貴方は理解出来ていない。でも…貴方と私が闘うのは……決まっている事……。加減はしてあげる……かかってきなさい」
慌てていた顔がむっとした顔に変わる。
レイフォンは天才だと褒められてきたし、ほとんど負けたことが無い。
だからこうも同年代にはっきり加減するといわれては少しカチンときたのだろう。
少し怒った顔をして鋼鉄錬金綱の剣を構えた。
そう、それでいい。
「さあ……良い闘い……しましょう」
闘いの火蓋は切っておとされた。
iPhoneで書くの時間掛かるなあ