口調、読みづらいと思うけどいくらか特徴が出たんじゃないだろうか
アイリス・リンドブルム・バハムートは天剣授受者である。
そのようなことはグレンダンに居るものは皆知っているし、本人にもその自覚はある。
賢竜都市バハムートという都市で特殊な立場の武芸者としてその腕を振るっていたが、その都市が強力な汚染獣の襲撃によってほとんど滅びた状況になってしまって途方にくれていたその時にグレンダンが通りかかったのは幸運でそのままアルシェイラに引き取られてから気がついたら天剣になっていた。
この都市はよそ者であろうと強者には寛容で、子供の自分でも居心地がよい。
天剣の皆も変人ばかりだが子供であろうと強者であるからか自分に対しては対等に接してくれてうれしい。
とくにリヴァースはいつも気に掛けてくれるし、ティグリスは共に鍛錬も行う仲だ。
故郷での立場もあって、梓弓の心得があったおかげであろう。共に技を教えあったりしている。
ティグリスにしろ、デルボネにしろ事あるごとに孫娘との見合いを勧めてくるのが玉に瑕だが。
リンテンスとは、アルシェイラに言われて何度か世話をしに行ったことがある。
二人とも無愛想な性格をしているためか、その時に意気投合した。
リンテンスが天剣最強と聞いてから、何度か挑んだもののいまだ白星はあがっていないが。
そのほかにもカナリスはよくアルシェイラにいじめられて泣きついてくるし、サヴァリスなんかは笑顔で殺し合いのお誘いを掛けてきたりといろいろだ。
トロイアットは初対面で女と勘違いして口説こうとしてきたので半殺しにしたが。
しかし、あのままでは都市と心中で、野たれ死んでいたと思うとアルシェイラには感謝の念でいっぱいだ。
だからアルシェイラには忠誠を誓っているし、グレンダンにも感謝している。
そんな彼は今正座をさせられていた。
ご丁寧にひざの上には石畳がおいてあって、アルシェイラがその上に膝掛けているおり、活剄も禁止されている。
子供の体格しか持たないアイリスには結構きつい。
これでうっかり重いなんて洩らせばアルシェイラの鉄拳が飛んでくるから恐ろしい。
実際にすでに一発頬を張られているものだが。
アリスがこうしている理由は最後に放った一撃が闘技場を半壊させたからである。
幸い、レイフォンしか直接的な被害を受けた人間は居なかったものの、そのことでアルシェイラよりお叱りを受けている最中だった。
そんな自分をニヤニヤしながら見ているサヴァリスとトロイアットに殺意が沸く。
しかし、今回は自分が悪いことがわかっているので自粛した。
「……それで、結局どうだったの?レイフォンの実力は」
ぐぐ……と重いのに耐えているアイリスの上にいるアルシェイラが聞いてくる。
「問題は……無いかと……。何故剣を使っているかは……知りませんが、剄は……十分。天剣持てば……もう少し……いい闘いできたと思う……。それに……最後の技……」
もともと拙いしゃべり方をしているアイリスだが、お仕置きという名の拷問を受けている最中であるので輪に掛けて拙くなっている。
アルシェイラはその様子には目をくれずに話を続ける。
「ああ、アレはサヴァリスのやつね。それがどうかしたの?」
「アレは一応ルッケンスの秘奥なんですよ。サイハーデンの技を習っていたレイフォンに使えるものではないと思いますが」
サヴァリスが話しに混ざってきた。話すにはつらい状況だったのでありがたい。
アルシェイラはそのままサヴァリスと話を続ける。
「んー?ルッケンスが教えたんじゃないの?」
「アレは僕しか使えませんよ。それに僕が教えた覚えも無い。……つまり、見て盗んだということになりますね」
その言葉にアルシェイラの目が細くなる。
頭の中でいろいろと情報を吟味しているのだろう。
「ヘェ……仮にもルッケンスの秘奥を見ただけでねぇ……」
『それだけではございませんよ』
だんだんと楽しそうな顔をしてきたアルシェイラにデルボネが補足する。
『以前戦場でですが、リヴァースさんの金剛剄やカウンティアさんの餓蛇などを使っているのを見たことがあります。大概の技は使えるのでしょうね。とても器用な方です』
「他の天剣の技を使う……か。十分ね」
アルシェイラの顔が満面の笑みに変わった。つまり、そういうことなのだろう。
「レイフォンにヴォルフシュティンを与えるわ。つまり、レイフォン・ヴォルフシュティン・アルセイフの誕生ね」
◇
「……知らない天井だ」
消毒液のにおいがする。
体中が筋肉痛と傷のせいで痛い。
清潔なベッドにレイフォンは横になっていたようだ。
前後の記憶が曖昧である。どうしてここに居るのか……。
とりあえず周囲を見回すと、ちょうどリーリンやデルクが部屋に入ってきたところだった。
「あ、起きたのレイフォン。大丈夫なの?」
「う、うん。リーリン、何があったの?ちょっと記憶が曖昧で……」
「えっと、リンドヴルム卿との試合で最後に受けた技で気絶しちゃったのよ。目立った怪我は無いけど、脳震盪だろうって」
……思い出してきた。
いや、思い出さないほうがよかったかもしれない。
人形のような精巧な顔が獲物を追い詰めるような笑顔をしながら剄技を放つ光景など恐怖でしかなく、体が強烈に震えだしてきた。
リーリンのどうしたのという声やデルクの不可思議のものを見る視線をよそに、考える。
天剣授受者との差を思い知らされた一戦だ。
相手が天剣でも上位だということもあるだろうが、武器の扱い、剄技……あらゆることにおいて凌駕されていた。
何とか一撃は入れたものの、今の自分に出来る渾身の一撃は相手を吹っ飛ばしただけで、たいしたダメージを与えることは無かった。
せめて錬金鋼がもう少しよければ、もしくは刀を扱うことができたなら……。
……やめよう。刀は自分で封じたことだ。いまさら使うわけにはいかない。
しかし、初めてだ。こんなにも圧倒されたのは。
事前までの天剣授受者決定戦の疲れなんて無いに等しかったし……。
「ってあ!天剣授受者決定戦についてはどうなったんだ!?」
リンドヴルム卿との試合があった為かすっかり忘れ去っていた。
あんなふうに惨敗したんじゃ取り消しになったんじゃ……。
「それについては……これから説明する……」
リンドヴルム卿がいつの間にか室内に居た。リーリンたちの反対側にパイプ椅子出して普通に座っていた。
リーリンやデルクも驚いている。凄まじいレベルの殺剄だ。
ふっ飛ばしたときに砂埃で汚れた服は綺麗になってる。
レイフォンも驚いた。先ほど笑顔で気絶させられた身としては非常に近寄りがたい。
正直悲鳴を上げなかっただけえらいと思う。
天剣授受者の顔を見て悲鳴を上げるなんて失礼極まりない。
しかし、そのビビリように気づいたのかアイリスは少し罰の悪い顔をした。
「その前に……まず謝罪。レイフォン……申し訳なかったです。つい暴走してしまいました」
「え、えぇ!?」
頭を下げられた。デルクとリーリンがあっけにとられる。もちろんレイフォン自身もだ。
しかし、ついで殺されそうになるのは本当にやめてほしかった。
しかし、この状況はまったくよろしくない。
「ちょ、や、やめてください!」
「そうです、こんなのにリンドヴルム卿が頭を下げる必要なんてないです!
すぐに頭を上げてもらう。リンドヴルム卿に頭を下げさせるとか恐れ多すぎる。
でもこんなのって……リーリン、ひどいよ。
「陛下にも……怒られて折檻されましたし……謝罪して来いと……言いつけられましたので…」
「は、はぁ……」
折檻て何だろう、と思いながらもレイフォンは相槌を打つ。
折檻というところで顔を青くしたのであまりいいことではないのかもしれない。
それでも天剣授受者に謝罪を受けるのは心臓に悪いので至急話を変える。
「そ、そういえば説明ってどういうことですか?」
「ああ……それは……」
リンドヴルム卿からあの試合についての説明を受ける。
しかしリンドヴルム卿がときに難しい言葉遣いをすると、レイフォンの武芸以外空っぽの頭では理解が進まない。
「つまり……天剣自ら、天剣になれるかどうか試したってことですか?」
そんなレイフォンを見かねたのか、リーリンが噛み砕いて説明する。
うん、それならわかりやすい。
「でも、散々な負けでしたよね?ってことは……」
天剣にはなれないのかもしれない。
その事がレイフォンを叩きのめす。
純粋に天剣というものに憧れたわけではないが、天剣になれたのならば、報奨金の値段が桁違いになる。
そうすれば、孤児院の皆を養っていけるのに……。
勝手に落ち込んでいくレイフォンを一瞥してアイリスは言う。
「いえ……充分……天剣の力……ある。そう……判断しました。陛下も……あなたにヴォルフシュティン……授ける決定されました」
「……へ?」
レイフォンが顔をアイリスに向ける。
相変わらず無表情な顔だ。それが何を思っているのかレイフォンには読み取れない。
デルクとリーリンも思わず顔をアイリスに向けていた。
「確かに……貴方は負けた。でも……それは当たり前。そもそも…一般の武芸者…負けるようなら……天剣の資格…ない。でも……貴方は…一撃入れることできた…。」
「あ、あれは千人衝があったからで……」
「それが一番の理由……サヴァリスの技……見ただけでできるの……普通じゃない。じゃあ…そういうことで…また、詳しいこと……カナリスが行くから」
「ちょ、ちょっと待ってください」
リンドヴルム卿が立ち去ろうとする。
思わず、呼び止める。
「……何?」
「僕は……天剣になるんですか?」
確認するように聞く。
リンドヴルム卿はあごに手をやって少し考えてから少しおどけたように言った。
「次……会う時は…同僚。天剣もって……リベンジしに来い…」
そういって病室を後にした。
また後から何度か修正入れるかも知れないです。