【完結】オーバードーズ・ヒロイズム 〜時限能力獲得ドラッグ中毒TSヒーローちゃん〜   作:相竹空区

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5話 特別/フライト(下)

 

 街外れ、倉庫が建ち並ぶ一角にパトカーが殺到している。

 理由は単純、そこで犯罪が行われていたから。

 とはいえ既に犯罪者は制圧されて、護送車に詰め込まれている最中だ。

 警察官は社会の病巣を切り開き、そこで何が起きていたのかを確かめる仕事へと移っており、鎮圧に関わる人員は帰り支度を行う頃合い。

 そんなひと仕事を終えた重装備の特殊部隊の一団の中に、一際目立つ見た目の偉丈夫が居た。

 

「ご協力ありがとうございます、貴方のおかげでこちらの死亡者はゼロ。怪我についても重篤な者は居ませんでした」

「ドカン!と1発ぶちかまして注意を集めてくれたおかげっすよ!」

 

 現代的な防弾ジャケットにライフルで武装した人々に賞賛と感謝を向けられるのは、時代を大きく逆行した鎧姿。

 様式としては古代ギリシャ、スパルタの戦士を模したそんなものを銃弾飛び交う現場で着込む理由はひとつ、彼がヒーローだからだ。

 

「このブライトハート、何よりも先に危機へ立ち向かう事を信条としている。他人よりも多少頑丈な身体が、役に立ったのなら、何より」

 

 大きな体躯に見合った大きな手のひらを胸に当て、豪快な見た目の印象とは裏腹に謙遜してみせる彼こそブライトハート。

 その名の通り、分厚い胸板を覆う鎧越しに心臓から放たれる光こそが、彼を象徴する英雄性。

 核融合を行う心臓と、それからエネルギーを受け取る骨肉。

 シールドとなる脂肪と皮膚が彼を逞しく作り上げる。

 

「それでは、我々は戻ります。よろしければお送りしますが」

「であればこの後、食事でもどうか?」

「はは、我々なんかが貴方と食事なんて恐れ多い」

「む……そうか。であれば、人を待つ。この後……いや、今来るな」

 

 他人よりも感覚が鋭敏な彼が捉えたのは、遥か彼方から聞こえた風音。

 高速で近付くそれは程なくして彼らの側へ、風と共に砂埃を巻き上げて着地した。

 煙るヴェールを能力で切り裂いて、スカイブルーのマントはためかせたスカイセイルが歩み寄る。

 

「お疲れ様です。間に合いませんでしたか」

「いや、元から君の手を煩わせるつもりではない。そこの彼らが、良く働いてくれた」

「おっと、お会い出来て光栄です。迅速に事件を解決し、その身を危険に晒した貴方がたこそヒーローだ!ありがとう!」

 

 大仰に手を叩き、周囲を巻き込む賞賛で特殊部隊を見送って、スカイセイルはヘルメットの内で細く息を吐いた。

 それを見て、呆れ顔をするのは未だ若い彼をよく知るブライトハートだ。

 

「もう少し、嫉妬を隠せ……不機嫌か?」

「いえ、そのような事は──」

「着地の仕方が、雑だ。功を焦っているな」

 

 ブライトハートの指摘にバツが悪くなり、ヘルメットの閉鎖を解いたスカイセイルは、素直な感情を表した顔を晒す。

 

「もう少し早い時間を頂ければ、力になれました」

「この時間に終わると分かっていたから、この時間に来るよう言った」

「まともに任された仕事をこなせない自分では力不足ですか」

「焦るな。お前の優秀さを、一度たりとも疑った事はない」

「せいぜい2位が良いところのヒーローに?」

「そこがお前の、コンプレックスなのは理解している。だがスクールの成績などは、知った事ではない。向こうだっていつまでも、首席卒業だけでやっていける訳じゃない」

「ははっ、彼女は今も大活躍ですからね……」

 

 スカイセイルは2位の男だ。

 学生時代──ヒーローとしての知識や技術を学ぶ学校では入学から卒業まで2位。

 ルーキーヒーローの人気投票、同期の中での解決件数、救助した人命の数……数多の表彰を受け、全てが2位。

 彼は確かに、その輝かしい経歴を誇りに思っている。

 時折誇示するのだから、それは偽らざる本心なのだろう。

 だがしかし、同時にこうも思うのだ。

 1位には、常に同じ相手が居ると。

 

「例のテレポーターは、それ程までに強敵か」

「言い訳ではありませんが、はい。彼女は他の──ほんの数例しか確認されていないテレポーターに見られるような息切れ(・・・)無しで、連続のテレポートが出来ます。能力に振り回されるきらいこそありますが、正規の手順さえ踏めば優秀なヒーローになったでしょう」

「君がそう言うのなら、この辺りに彼女を捕まえられる者は存在しないのだろう。神出鬼没なターゲットを発見し、捕える事に関して、お前以上の適任は居ない」

「そう、でしょうか……正直言って、自信を無くしている最中でして」

「上空からの偵察、迅速な対応、そして何より……」

「何より?」

 

 勿体ぶった言葉を聞き返し、自らを見上げるスカイセイルへ向けて、兜の下の巌のような顔をニヤリと歪めたブライトハートは満足げに鼻を鳴らす。

 スカイセイルは単純で、そして会話の調子を汲み取り年長者に気に入られる性向をしていた。

 

「お前は人気だ。空を飛び回っていても、市民を不安にさせず、犯罪抑止にもなる」

「自分は広告ですか?」

「我々全員が、だ。ヒーローとは平和と秩序の象徴でなければな。この派手なスーツはまさにその為の物」

「であればこそ、無法者は取り締まらなければなりません!法に背を向けた悪人退治など、ただの暴力だ」

 

 何度も同じ話題に立ち返り、吐き捨てるようにそう言ったスカイセイルに呆れたブライトハートは思わず苦笑する。

 ベテランの域に入り、多くの後進にその背を見せて育て上げてきた彼からすると、スカイセイルのそれは思わず笑ってしまうようなものだった。

 

「1番を目指すお前のやり方は、常に正道であり、自らを追い込むものだ。決して他者を害して蹴落とそうとはせず、高潔でひたすら上を見ている」

「つまり、悪い手段を学べと?」

「違う。風が強いからといって、嵐の中で帆を広げても意味は無い。力を抜けと言っている」

「はあ……でしたらどうすれば良いのでしょうか」

「そうだな、現状例のテレポーターは人助けを目的に活動をしている。よって、お前の時間を多く割いてまで対処する事案ではないと判断し、定期的に圧を掛ける程度に留め置く」

 

 その答えに対し、スカイセイルは不服といった様子を隠していなかったが、まだ頭の中で教えが反芻している内に感情を飲み込んだ。

 

「理解、しました」

「それで良い。ところで……飯でもどうだ?息抜きには丁度良──」

「あっすみません。糖質制限をしているので、それでは」

 

 スカイセイルはマスクを閉じて飛び立って、残された風にブライトハートはため息を混ぜる。

 

「何故、誰も食事に行ってくれんのだ」

 

◆◆◆

 

 果たして、ブライトハートの考えが上手くいったのかどうなのか。

 それはとても分かりやすくレイモンドを取り巻く環境に変化を起こす事になっていた。

 

「はぁ……はぁ……撒いた……?」

 

 荒れた呼吸を整えて、物陰に隠れて汗を拭うレイモンドはしきりに周囲を見回して落ち着かない様子。

 

「撒いた、撒いたかな?撒いたよね?……あぁ、どうしてこんな事に」

 

 どうしても何も、レイモンドがこんな事になっているのは市民に暴力を振るったから、それで警察に追われるという至極当然の理由なのだが。

 例え暴力の対象が強盗であろうと、レイモンドは善意の市民というには積極的に事件に関わり過ぎた。

 ただでさえ数の少ないテレポーター、それが立て続けに犯罪現場に現れて犯罪者を殴り飛ばしては消えてしまう。

 当然それが正規の活動ではない事もすぐにバレ、警察からは見つかる度に追われてしまう。

 地上は警察、空はスカイセイル。

 上下を追跡者に挟まれたレイモンドがこうも毎度逃げ果せているのは、ひとえにテレポート能力によるもの。

 別に逃走のプロフェッショナルという訳ではないにも関わらず、テレポートというものはあらゆる障害を跳び越えてしまう。

 結果としてレイモンドは毎回大いに肝を冷やしつつも、良くない成功体験を積む事になっていた。

 

「サイレン……聞こえない。空は……居ない、良し」

 

 レイモンドは物陰から……ビルの屋上の空調機の陰から這い出し息を吐く。

 今日もレイモンドはパーカー、短パン。

 だがしかし、今日のパーカーはダクトテープを巻き付けた妙な風体だった。

 これは別に、警察に捕まえられそうになった跡ではない。

 レイモンドも特に気にせずに、屋上のへりに腰掛け街を見る。

 

「今回も逃げられたし、サッと行ってサッと解決を心掛ければ問題無さそうかな。逃げるルートの事も考えておかないと」

 

 見下ろすのはアベニュー、広く太い道路は視界が開けて、レイモンドならば、はるか彼方までひとっ跳び。

 道路を挟んで並ぶ大きなビルも、テレポートならば簡単に飛び越えられるが、人の脚では難しい。

 レイモンドの今居るビルは、このブロックでは1番高く見晴らしが良い。

 総じてこの場所は、レイモンドの活動の中継地点として丁度良かった。

 

「ここからなら、僕の家まで何回のテレポートで帰れるかな。……前の家にだって」

 

 今のレイモンドに空間的な制約は殆ど無い。

 行きたいと思えばテレポートを繰り返せば辿り着ける。

 レイモンド自身、能力の限界を試してはいないから何処まで行けるのか把握していない。

 だが、願えば行ける能力がある事と、行く勇気があるかは別だ。

 レイモンドには、ただ一歩を踏み出す勇気が無かった。

 

「今ある分が無くなったら、そこで終わり。僕はもう特別じゃなくなる……それまでに、どれだけ人を助けてヒーローになれるかな」

 

 ビルから見下ろす街には大勢の人が居た。

 豆粒のように見えるそれはひとつひとつが動き回り、それぞれの人生がある。

 だが、地上が遠い屋上からではひとりというより群体だ。

 有象無象といった様子のそれを、レイモンドは立ち入り禁止の屋上から見下ろす。

 今は特別故にこの屋上に入れるレイモンドだが、そうでなくなれば──能力獲得ドラッグが尽きれば地上を動き回る粒のひとつだ。

 この視点はレイモンドが特別であるからこそ見せるもの。

 

「もっと、もっと人助けがしたい。認められたい。許されたい……本物になりたい」

 

 レイモンドはひとり願望を口にして、ビルのへりで揺れる。

 ともすれば地面に真っ逆さまだが、テレポートがあれば問題ない。

 この黄昏方もまた、特別であるからこそ許されるものだった。

 

 しかしそんな時間も長くは続かず。

 ひとり肩を揺らすレイモンドの背に、見知らぬ少女の声が掛かった。

 

「こんにちは〜ウチ以外の人がここに居るの初めて見たよ〜」

「うぇっ!?ごめんなさい!」

「良いの良いのぉ、お名前は?」

 

 ビルのへりに座っているとよくよく声を掛けれるものだと、反射的に謝罪をしながら振り返れば、そこに居たのはレイモンドよりも同年代の少女。

 ピンクの髪にパステルカラーのユニフォーム。

 目元を大きく開いたマスクを身に付ける、輝く瞳を持つ少女だった。

 そして咄嗟に、反射的に、やましい事をしているという焦りから考え無しに言葉が口を突く。

 

「僕はレイ──」

 

 まで言って、慌てて口を噤む。

 平静を装おうとして顔を強張らせるが、レイモンドの顔色は赤くなったり青くなったり、はたまた白くなったり。

 悲観的な想像が手に取るように分かる表情だったが、それを見ても少女は気にせず、マイペースな間延びした話し方を続けていた。

 

「レイ?レイチェルとか?ウチはねぇ、クリスタル〜」

「クリスタル──あっ、ヒーローの本名聞き出そうとした訳じゃなくて!」

「そっちだってレイは本名でしょ?本名で名乗られちゃ本名名乗るしかないよねぇ」

 

 冗談めかしつつ、コロコロと笑う少女を前にレイ(・・)はたじたじだ。

 レイモンド、と最後まで言わなかった事で都合良く勘違いをされた事は行幸だろう。

 このような柔らかい対応は、レイモンドという男性名を名乗っては警戒されて得られなかった。

 とはいえレイからすると、そのようなフレンドリーに接されると困る事情もあるのだが。

 

「あ、あの……クリスタル、さん。出来ればヒーローとしての名前も……」

「ルミナスだよ〜」

 

 知らない名前だな、とレイモンド──レイがそう思うと、それを見透かしたようにルミナスは大きな目を細めて笑う。

 

「知らないなぁって思ったでしょ」

「えっ!?そんな事は──っ!読心……!?」

 

 考えを見抜かれた理由に思い至って、レイの警戒は数段上がる。

 ニコニコと人懐っこい笑顔を向けるのも、手のひらの上で自らを転がしているからではないか、と。

 しかし実態はそんなものではなく、悪戯な笑みを浮かべたルミナスはネタばらしをした。

 

「だってウチ新人だもんねぇ〜それに大活躍!って感じじゃないし」

「あ、そうなんだ……良かった」

「何が良かったのかなぁ?ウチの不人気がそんなに嬉しい?」

「ちがっ、ごめんなさい!」

「んふふ、レイは読心なんてしなくても分かりやすいねぇ。裏表無い子は仲良くなれそう」

「いや裏はあるんだけど……」

 

 拾ったドラッグを使って能力を得て、それを良い事に非合法のヒーロー活動と言えば聞こえが良い暴力行為を繰り返している男である。

 全てを飲み込み、レイは曖昧に笑うしかない。

 

「いやいや無いねぇ。なんせウチには見える」

「何が……?」

「ダクトテープでグルグル巻きの、人助けをしてる女の子?」

「これはテレポートした時に周りを巻き込まないようにするもので……」

「やっぱり!レイがあのテレポーターの女の子だよねぇ」

「やっぱり捕まえに!?」

「違うよぉ」

 

 焦るレイ、ゆらゆらと揺れながら笑うルミナス。

 いつの間にか距離を縮めた彼女はレイの横に座って、ビルのヘリから脚を投げ出す。

 

「ここはねぇ、ウチのお気に入りの場所なんだ〜」

「場所取ってごめん……」

「別にウチだけの場所じゃないから大丈夫。ここは景色が良いからねぇ。色々見えるの。ほら、あの子キャンディ落として泣いてる」

 

 と言って、ルミナスは地面に向かって指を差す。

 レイもその先を見るものの、そんな詳細な状況までは分からない。

 首を傾げてルミナスの顔を窺うと、まるで目の前のテレビでも見ているように状況の変化を眺めてコロコロと笑う。

 

「僕には見えないけど……君は見えるの?」

「ウチは目が良いの〜このキラキラお目目を見てご覧よ」

 

 目元の大きく開いたマスクは、ルミナスの大きな瞳が映えるデザイン。

 キラキラと、尋常ではなく宝石のように輝く瞳はヒーローたる英雄性を示すもの。

 ルミナスの能力とは、眼球に宿るものだった。

 

「凄く、綺麗だ……と思いマス」

「固くなってなにー?せっかくなら最後まで言ってよねぇ」

「なんかナンパみたいで嫌な感じじゃない?」

「レイは気を遣い屋さんだ。ウチはこの眼の事、昔は嫌いだったけど今は好き。だから褒められると嬉しいかなぁ」

「そうなんだ。じゃあ綺麗だと思う」

「じゃあって何さ〜?」

「え、えっと……それなら髪の毛も?ピンクで鮮やかだね!」

「これは染めてるからねぇ」

「え、あっごめん」

「可愛いでしょ?カラフルな方が楽しいなってさ〜」

 

 ルミナスを前にして、レイはいつの間にか肩の力が抜けているのを自覚した。

 まるで友達のように、目の前の特別(・・)な人物と会話をしている。

 そんな非日常はレイの脳を揺らす。

 まるで夢、ドラッグの見せる幻覚のような非現実。

 レイ──レイモンドは現実とは苦しみと痛みに満ちたものだと知っている。

 だからそう、こんな状況に猜疑心が湧いてくるのも当然と言えた。

 

「ルミナスはなんでそんな風に僕に話し掛けるの?捕まえに来たんじゃないなら、なんで」

「ウチが何しようと、ウチの自由でしょ?これは誰にも指図されたくないなぁ」

「なら僕が人助けしてようと──」

「自由だよねぇ。レイは人を助けてるんだもん、犯罪者みたいに追い掛けなくてもいいのにって思うよ」

 

 思わぬ返答にレイは目を丸くして、やはりルミナスは笑うのだ。

 言葉も、表情も、それこそが彼女の当たり前の姿のように。

 

「君の仲間には、そう思ってない人も多いみたいだけど」

「ウチはウチだもん。お婆ちゃんがねぇ、横断歩道を一瞬で渡らせてくれた女の子の事話してたんだ。だからきっと、その子は良い子だって思ったの」

「僕じゃないかもよ?」

「アハハ!テレポートする女の子なんて珍し過ぎて、人違いなんてそうそう無いよ!レイは特別だねぇ」

 

 特別、とレイを評したその言葉はまさしくレイが求めていたものだ。

 さながら麻薬のように脳へ浸透して喜悦が溢れる。

 だがそれも、続くルミナスの言葉で打ち壊された。

 

「そしてウチは眼が特別。人助けしてるなら一緒でしよ〜?」

「特別……僕とは違う。本物の特別、なんだ」

 

 口の中で呟いたその言葉は、誰にも届かず風が掻き消す。

 特別だと、そう言われたとしてもあくまでそれは、テレポーターの少女レイへ向けられたもの。

 正しい道から外れて力を得たレイモンド・クロスは、依然として犯罪者。

 発した少女は生まれながらの特別で、そこには大きな隔たりがある。

 

 とはいえレイモンドは、テレポーターの少女レイとして理解者を得た。

 クリスタルという本名すら知ってしまった新人ヒーロー、ルミナスはこの日以降も同じ屋上でレイと顔を合わせる事があった。

 そんな時は何をするでもなく、ただ2人は並んで話をして、効果時間を過ごす。

 しかしレイが追われる身である事には変わりなく、警察やヒーローに追われては逃げ、そんな愚痴を溢す事も。

 

 このように、近頃のレイモンドのヒーロー活動は頭を悩ませる大きな問題がある。

 だがそれは、言い換えれば充実でもあるだろう。

 悩める分だけ中身が伴う時間が過ごせている、と。

 だがしかし、人のリソースは有限で、ヒーロー活動などはコインの裏表や天秤の皿のように片方に偏ってしまうもの。

 バランスを取って両立させるなど、元よりドラッグによって能力を得ているアンバランスなレイモンドに出来る筈もない。

 レイモンドの生活は、変わらず暗いままだった。

 




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