東方×青響フルスペクトラム!   作:伝説の超三毛猫

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前回の話の展開を大幅に変えております。
まだ確認していない人はそちらからお読みください。
この度は誠に申し訳ございませんでした。


【警告!!】
今回は虫の描写があります。
また、アカネがひどい目に遭います。
虫が嫌いな人とアカネ推しの先生方はキンクリしてください。


マツヨイナイトバグ

 某日、セミナーの差押品保管庫から『鏡』を取り戻すための作戦が始まった。

 作戦を立案・実行するにあたって、結局私達は先生を頼らざるを得なかった。先生には申し訳ない事をしてしまった。

 

「“君達のために、必要なことなら。私は喜んで協力するよ”」

 

 とは先生の言だが、元大人だった私から言わせれば「ホントに良いの?」って感じだ。私も覚悟決めたとはいえ、これ、どう考えてもテロだよ?

 でも、先生が快く力を貸してくれると言っているのだから、変なことを言って、協力を断る理由もなかった。

 

 

 この後、エンジニア部も力を貸してくれる事になり、本格的に作戦が実行されることとなった。

 作戦の流れはこうだ。まず、アリスがシェルターを破壊し、わざと捕まる。

 

 ……私は最初これを聞いて、「正気?」と問い詰めたのだが、その後の緻密な計画を知ると、反対する理由がなくなってしまったのだ。

 破壊されたシェルター等を修繕する為、ユウカ達は新たな備品をエンジニア部製以外から仕入れるだろうから、そこにトロイの木馬を仕込む。

 そして……監視カメラをハッキングし、私達が侵入する偽の映像を流して、侵入するタイミングをずらす。これで、相手に侵入する時間を誤認させ、差押品保管庫へ行く本命の時間を稼げるということだ。

 

 更に、C&Cのメイド達の情報もヴェリタスは持っていた。

 要警戒なのは、爆弾を使用した“掃除”が得意な室笠アカネ先輩。狙撃手の角楯カリン先輩。そして、私も会ったことがあるアスナさん。リーダーが別任務で不在である以上、この三人の対策も必要だ。

 アカネ先輩は囮で先に潜入するマキとコトリが迎え撃ち、カリン先輩はウタハ先輩とヒビキが相手をする。アスナさんは、不確定要素であるのでモモイとミドリ、そして先生が担当とのことだ。

 

 悪くない作戦だ。むしろ完璧に近い。

 でも。

 

 

「ハレ先輩、先生」

 

「ん?」

「“なに?”」

 

「それで『鏡』が手に入っても、帰りはどうするの? 現実にはダンジョンから一瞬で帰る魔法はないわよ」

 

「“流石、レイカだね。もう分かるんだ”」

 

「だからさ、抑えるだけじゃなくて、倒す方がいいと思う」

 

 帰りのことも考えると、一時的に戦闘不能にまで追い込んだ方が良い。

 そう言うと、ハレ先輩も先生も、難しい顔をした。

 

「それは無理だよ、レイカ。この面子だと難しい。せいぜい行動不能にするのが精一杯」

 

「“アカネもカリンもアスナも、皆強いからね……”」

 

 分かっている。

 正攻法では、私達が100回やっても勝てないことは。

 でも……それ以外というのなら、アテはある。

 例えば―――弱点を突く、とか。

 

 

 

 

 ———時は流れて今現在、私は何をしているのか、というと。

 

「な…モモイちゃんとミドリちゃんは!!?」

 

「ヤッホー、アカネ先輩!寮に帰る途中で、道に迷っちゃった!」

 

「マキに道案内を頼んだ私がバカだったわ」

 

 マキと、コトリと、それからアカネ先輩とで。

 窓際の通路の一角にできた、シェルターと窓で囲まれた隔離空間に閉じ込められていた。

 明らかなマキの嘘に乗っかりつつ、アカネ先輩の様子を伺う。

 

 メガネをかけた優雅なメイドといった出で立ちの彼女は、モモイとミドリを捉えたとばかり思っていたらしく、辿り着いた先にいた私達を見て動揺が隠せていない。

 

「あなたたちは一体…!?」

 

「あなたたちはと聞かれたら! 答えてあげるが世の情け!

 どんな質問にも答えを提供! エンジニア部の説明の化身、豊見コトリ!」

 

「芸術と科学のコンビネーション! ヴェリタスのデジタルアーティスト、マキ! そして―――!!!」

 

 大仰にカッコつけて自己紹介したコトリとマキが、私に期待の眼差しを向けてくる。

 なにこの空気。恥ずかしすぎるんだけど!? こんなの、付き合いたくないんですけど!!?

 でも、コトリとマキがわくわくしながらこっちを見てくる。絶対名乗らなければ終わらないパターンだ。その視線が痛すぎる。

 

「え、えっと…………と、通りすがりの一般ミレニアム生、白峰、レイカ……

 

「あれーー!!? レイカさん、打ち合わせと違いますけど!!?」

 

「えぇぇぇーーーーーっ!! なにその自己紹介! つまんなすぎ!!」

 

「うるさい!!! あんたらのノリと一緒にしないで! というかあんな自己紹介できるか!!!」

 

 なにが「全てを魅了する魔性の歌手、ミレニアムの素敵な巫女」よ! 打ち合わせでハッ倒されたのが懲りてないのかしら、コトリ!!?

 私だってこれでも頑張ったんだから、文句言うな!!

 

「あの…レイカちゃん。無理しなくていいんですよ?」

 

「アカネ先輩まで優しくしないで!!」

 

 一応敵である筈のアカネ先輩にまで優しくされた。恥ずかしすぎて死にたい……!

 

「それにしても、監視カメラで確認したハズのモモイちゃんとミドリちゃんは一体……」

 

 アカネ先輩が通信機を取り出した。

 きっと、セミナーの誰か――ユウカ先輩あたりかな――に連絡を取ろうとしている。

 しかし、そうはさせない。アカネ先輩がこちらから目を離したスキを奪い、背負っていたロケットランチャーを構え狙い撃つ。

 

「!!」

 

 アカネ先輩が辛うじて回避した結果、側の窓に着弾。

 耳を劈くような爆発音と、真っ黒な爆煙、暴風が私達を襲う。

 

「あっぶないなぁレイカ! 撃つなら撃つって言ってよ!」

 

「気を抜かないで。相手はC&Cよ」

 

 私は、アカネ先輩に出会ってから今まで、一度も油断していない。

 まぁきっとマキやコトリも二人なりに真剣なんだろうが……私は、アスナさんの実力を一度見たことがある。

 だから、それを想定して動く。この人に、1秒たりとも自由は与えない。

 

「アカネ先輩。妙な動きはしないでください。動くと撃ちます」

 

「うふふふ、良いんですか? そんなことを言って」

 

「ここにはマキとコトリもいます。1対3ですよ」

 

 虚勢だ。アカネ先輩なら、この状況下でも、私達など軽くあしらえるだろう。

 ちらりと窓を見た。窓は、先程のロケットランチャーの直撃を受けたにも関わらず、大きな蜘蛛の巣状にヒビが入っているだけで済んでいる。………まったく、嫌に頑丈なガラスだ。

 

「そもそも、戦う必要などないのです。私は指紋認証で、このシャッターを抜けられますので」

 

 そう言いながら、警告を無視してシャッターの指紋認証台に近づいていく。

 そして、白い手袋を外して、指を乗せた。―――それが、罠だと知らずに。

 

【データ不一致、未確認の指紋です】

 

「えっ!?」

 

【第二シャッターが起動します】

 

「そんなっ!?」

 

 先程のシャッターよりも重厚な合金製のシャッターが下りてくる。これで、私達は閉じ込められた。

 アカネ先輩は助けを求めるが、ユウカ先輩も状況を把握しきれない。仲間との連絡も繋がらない。こうなってしまったら、アカネ先輩はやることがなくなる………爆弾でシャッターをこじ開けての強行突破以外には。

 

「ミレニアムの備品を傷つけたくなかったのですが…仕方ないですね———」

 

「コトリ!マキ!」

 

「はい!!」

 

「まっかせてぇぇぇ!!!」

 

「やはり、妨害してきますか…!!」

 

 ここからはもう、一発勝負!

 腹を決めろ、白峰レイカ!!

 コトリのミニガンが、絶えず火を噴く。マキの機関銃も、アカネ先輩を狙う。

 しかし、アカネ先輩はそれを華麗に避けていく。弾幕越しの彼女に届くように、マキもコトリも必死に銃口を動かしていく。

 

 でも……C&Cで積んだのだろう、戦闘経験は本物だった。

 弾幕を掻い潜り、マキが投げた目晦ましのペイントボール弾をどこからともなく取り出した銀のトレイで防ぎ、懐から取り出した拳銃をマキに向ける。

 

「うわっ! 痛っ!」

 

 銃弾が的確に肩、頭、指に当たっていく。そして、よろけたマキに何か付けたかと思うと、すぐさま飛びのいて距離を取る。

 何かが付けられているのが見えた瞬間、それが大爆発。マキは大きくよろめいた。

 しかし……

 

「うひゃー……あっぶな。シールドがなかったらやられてたー」

 

「成る程…電磁シールドですか…」

 

「説明しましょう!これは私特製の——」

 

 説明せんでいい、とコトリを小突く。それで、彼女は渋々と説明をキャンセルした。

 まぁ要するに、コトリの発明品であるバリアが、その攻撃を阻んだのだ。

 これが無かったら、今のでマキが落とされてたところだ。

 

「成程、流石はエンジニア部です」

 

 しかし、これをもってしても、アカネ先輩の余裕は崩れない。

 

「でしたら……更なる火力をつぎ込むまで」

 

「なっ…アレは!」

「知っているのコトリ?」

「攻撃型手榴弾! あんなのまで使うのですか!?」

 

 攻撃型……名前からして、ろくでもなさそうね!

 アカネ先輩が取り出したその無数の攻撃型手榴弾が、無造作に投げられる。私達はそれを撃ち落としていく……しかし。

 

「うわぁぁぁっ!!?」

「あ…熱いっ!?」

「攻撃型手榴弾は、破片型の手榴弾と比べて、範囲は狭いですが……威力は桁違いです……!!」

 

 攻撃型というだけあって…ただ撃ち落とすだけでも、こっちにまで衝撃波と熱風が襲いかかってくる。

 未だに慣れない、嫌な感覚に耐えながら、私は()()

 

「隙ありです」

 

 私達が怯み、銃撃が止んだ瞬間、アカネ先輩は更に多くの手榴弾を一息で投擲した。さっきの攻撃型手榴弾よりは小さいけど……数が多すぎる!!

 

「まずい!避けてレイカ!」

 

 わかってるわよ! あんなの食らったら、歌どころじゃないわ!

 私たちはそれぞれ、壁際へと飛び退く。私とマキはなんとか避けることができたが、コトリは手榴弾の破片を少し受けてしまい、よろめいた。

 

「うっ…!」

 

 その一瞬の隙を、アカネ先輩は見逃さなかった。

 

「ごめんなさい、コトリちゃん!」

 

 アカネ先輩は、手に持っていたトレイをコトリに投げつける。それはコトリのミニガンに当たり、ミニガンは衝撃で壁に叩きつけられた。

 

「しまっ……」

 

 コトリがミニガンを失ったことで、アカネ先輩はさらに攻撃を仕掛けてくる。コトリのシールドも、アカネ先輩の連続射撃に耐えきれず、ついに破壊されてしまった。

 

「ふんっ!」

 

 アカネ先輩は、コトリの腹に腹パンを繰り出した。モロに受けたコトリはそのまま気絶して、床に倒れた。

 

「コトリ!」

 

「次はあなたですね、マキちゃん」

 

 アカネ先輩の目は、コトリからマキへと移る。マキは、コトリの仇を討つとばかりに、残っていた銃弾を全て撃ち尽くすが、アカネ先輩はそれを全てかわし、マキの銃の弾切れを待っていた。 

 そうして、マキの弾切れをカバーするように撃った私の弾丸をやすやすと躱したアカネ先輩は、マキの銃口にどこからともなく抜き取ったボールペンを差し込み、銃口を潰す。

 

「げ―――」

 

「これで終わりです」

 

 そして、マキを軽々と持ち上げ、背負い投げ―――ひび割れた窓に叩きつけた。

 小さく悲鳴をあげたマキは、その衝撃で機関銃をその手から放してしまい、ぐったりと倒れ込んでしまった。気を失ったのだ。

 

「これで、残りはあなただけですね、レイカさん」

 

 アカネ先輩の視線が、私に注がれる。私は、マキとコトリが倒されたのを見て、焦った。

 ここまでで時間にして2分半。早い……早すぎる!!これが……C&C!!

 

「ち…っ!」

 

 私は、拳銃(H&K VP9)を構える。しかし、その銃口がアカネ先輩に向く前に、アカネ先輩は既に私の目の前にいた。

 

「“嗚呼 この世は―――」

 

「させませんよ」

「う゛あっ……!?」

 

 華奢な腕から放たれた銃の底の殴打を手首に受け、銃を取り落としてしまった。

 続いて、急接近した先輩に、両手首を掴まれ、シャッターに叩きつけられた。

 オマケに、あごに突きつけられる拳銃……これで、行動も、歌さえも封じられた。万事休すか……

 

「あなたの歌の能力は、アスナ先輩から聞きました。どのような影響が出るか分からない以上、大人しくしてくれると嬉しいです」

 

「……っ」

 

「私相手にここまで食い下がるとは、流石と言うしかありません。ですが、私はC&Cのコールナンバー03……簡単に勝利を譲る気はないのですよ」

 

 アカネ先輩の言葉には素直にうなずくしかない。

 やはり…私の思った通りだ。この人でここまで強いんだ。

 100回やっても勝てない、が重たい現実になって襲い掛かってきているようだ。

 アカネ先輩はその端正な顔付きで優雅に、しかし勝ち誇るように笑いかけて、こう言った。

 

「参った、と言うだけで構いません。ですから、どうか―――」

 

 その時、私が思い出したのは……作戦を実施する前に行った、先生や、マキやコトリとの、やりとりであった。

 


『先生って、顔広いですよね。もしかしてC&Cの人とも知り合いなのですか? 私、アスナさん以外とは面識がなくって…』

『“うん、まぁ、知ってるけど”』

『じゃあ聞きますけど、あそこのメイドさんで、虫得意な子とかいますか?』

『“え?”』


『ひえぇぇぇぇっ!!? そ、そそそそんなにたくさん…!!』

『レイカ大丈夫――うわぁぁぁ!こっち来ないで!!?』

『何でよ。ハチやムカデやカミキリムシじゃあるまいし、刺したり噛んだりしないから。ほら触ってごらん』

『『無理ィィィ……!』』

『はぁー、情けないわね。これだから虫に触れたことすらない現代っ子は』

『“レイカも現代っ子じゃない???”』


 

 アカネ先輩は、もう勝ったと思っていることだろう。

 けれど……そういう時こそ、足元を見るべきだ。

 悪いけど、私は、先生みたいな“いい大人”じゃない。

 だから―――大人げなく酷い手で、勝たせて貰います。

 

「えぇ…流石、C&Cですね。私達じゃ、手も足も出ない」

 

「だったら―――」

 

「参りました、と言う前に。一つだけ、聞かせてください」

 

「…何を?」

 

「アカネ先輩………()()()()()()?」

 

「……何を言っているんですか?」

 

「いえ、だって……()()()()()()ので」

 

 集られている? 何に?

 唐突に投げかけてきた、謎の質問の意図を、アカネは読み切れなかった。

 

「よく分かりませんが、ひとまず意識を絶ちますので……」

 

 大人しくしてください、という言葉が、出てこなかった。

 何故なら、レイカに見慣れない物がついていたからだ。

 彼女の頭から生えているのは……何かの触覚。まるで、虫のようではないか。

 それに……レイカの髪は、深緑色だっただろうか? 戦闘前は、黒のようだった気が―――

 

 続けて、アカネの視界の端を、何かが横切った。

 そこでアカネは、違和感に気付く。周囲に、やけに黒い点が多い。

 いや、よく見たらそれは点ではない。蛾だ。様々な種類の蛾が、室内の外灯に誘われてやってきているのだ。

 

「(……何故? ここは、閉め切られているはずなのに)」

 

 そこまで考えて――――――アカネは、自身の白いメイド服の袖に、無数の小さな足が這い上がってくるのを見た。袖を通して、何かがカサカサと肌を撫でる、鳥肌が立つような感触がする。

 その感触は、すでに腕全体を覆いつくしている。そして、視線を胸元へと移した時、彼女は背筋が凍るような光景を目にする。

 

 自身が身に付けているメイド服の、上から胸、そして両肩にかけて……やつらが()()のを。

 掌ほどある巨大なトノサマバッタが、胸元のリボンに止まっている。その横には、蛍光灯の光を鈍く反射するカナブンが数匹。さらに、名前も知らないグロテスクな虫が数十匹、その周りに張り付いている。背中には妖しい文様を翅に刻んだ、巨大な蛾もいた。

 そいつらの、無機質な複眼と―――はっきり目が合ってしまったのだ。

 

 

―――いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいやぁあぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!

 

 アカネの悲鳴が、真夜中のミレニアムタワーに轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――間に合った。

 ハッキリ言って、何度「もうだめだ」と思った事か。

 だが、結局のところ、私達は作戦を成し遂げることが出来たのだ。

 

 まず、窓のある通路へアカネ先輩を誘い込み、私がロケットランチャーで牽制するフリして窓を破壊。

 マキとコトリが戦っている隙に私が名曲「マツヨイナイトバグ」を歌い―――アカネ先輩を虫に集らせてから倒す。そんな作戦だ。当然、ユズやミドリ辺りに「人の心がない」って反対されたが、「これ以外でメイドに勝てる手あるかしら」「人の心?なにそれ?妖怪のエサ?」みたいなノリで誤魔化しきった。

 

 ただ、実際にやると不測の事態が起こる起こる。窓はなかなか割れないし、お陰でコトリにアカネ先輩を狙うフリして強化ガラスに穴を空けさせるしかなくなったし、アカネ先輩が強すぎてマキもコトリもやられるし、私も歌を歌いきる前に捕まるしで散々だ。

 

 でも…あきらめなかった結果がアレだ。

 恐怖に取り乱して、私などさっさと突き飛ばしたアカネ先輩は、狂ったように自分の体に群がる虫を払い始める。その手には、いつの間にか握っていた複数の小型爆弾が握られていた。

 

「いやぁぁあああああああ! 離れて! 離れなさい!!!」

 

 完璧な淑女然としていた彼女の口から、これまで聞いたこともないような甲高い絶叫が迸る。その瞳は恐怖に見開かれ、焦点が合っていない。もはや、私や気絶したマキたちのことなど、彼女の意識にはなかった。

 

「来ないで!来ないでください!!あっちへ行って!!」

 

 懇願するように叫びながら、彼女は自分の服に張り付いた虫ごと、爆弾を起爆させようとする。

 

「まずい…!」

 

 自爆する気だ。この至近距離で、あの攻撃型手榴弾の威力を考えれば、ただでは済まない。

 私は咄嗟に、床に倒れているマキとコトリの体を掴み、自分の身を盾にするようにして、合金製のシャッターの隅へと転がり込んだ。

 

 直後、閃光と轟音が、閉鎖空間の全てを飲み込んだ。

 

 ごう、と鼓膜を圧迫する爆風。熱波が肌を焼き、衝撃が全身を叩きつける。

 数瞬遅れて、何かが砕け散る甲高い音が響き渡った。頑丈だったはずの強化ガラスが、ついに限界を超えて粉々に吹き飛んだのだ。

 

「……っ、はぁ……はぁ……」

 

 煙と埃が立ち込める中、なんとか体を起こす。背中がジンジンと痛むが、大きな怪我はないようだ。

 振り返ると、マキもコトリも気を失ったままだが、幸い爆発の直撃は免れている。

 そして、爆心地―――アカネ先輩がいた場所には、黒く焦げた床と、煤けたメイド服、そして、気を失って倒れている彼女の姿があった。

 

「………………」

 

 やりすぎた。

 その言葉が、頭の中で冷たく響く。

 普通の女子として、虫が苦手だろうとは思っていたけど、まさか、ここまで効くとは。パニックで自爆するなんて、最後まで予想外だ。

 

「……反省は、後でいいか」

 

 今は、ここから脱出するのが先決だ。

 私は気絶しているマキとコトリを一人ずつ背負い、シャッターの認証パネルまで歩いていく。そして、私の手を、パネルに置いた。

 

【指紋を認証。―――白峰レイカ、確認しました。第二シャッターを解除します】

 

 ヴェリタスのハッキングのおかげで、私も指紋登録されたことになっている。このシェルター内を動けるのは、私に加えてモモイ・ミドリ・先生の4人だ。

 重厚な音を立てて、絶望の象徴だったはずのシャッターが、あっさりと開いていく。

 私は、もう一度だけ、床に倒れるアカネ先輩の姿を一瞥した。

 

「……ま、これも作戦のうち、よね」

 

 誰に言うでもない言い訳を呟いて、C&Cのメイドと戦った勇敢な二人を背負った私は、開かれた通路の先の闇へと、ゆっくりと足を踏み出した。

 




白峰レイカ
幻想郷に迷い込んだ際、リグルに助けてもらえるかも、という理由で耐性をつけ、前世の小学生の頃から虫は得意め。白峰レイカになってからも、「マツヨイナイトバグ」が虫を集めるだろうと踏んであらゆる虫に耐性を持っている。ただしG、てめーはダメだ。
「別にそこまで騒ぎはしないわよ虫くらいで。まぁそれはそれとしてGと蚊は殺すし防虫対策もするけど」

レイカ(ナイトバグのすがた)
「マツヨイナイトバグ」をはじめて歌った時、虫が集まったのを見て、ちょっと嬉しかった。その中に、ミヤマクワガタを見た時には更に興奮した。興奮しすぎて恍惚とした目でミヤマクワガタに「幻想郷に行ったら、リグルによろしくね」と囁いてしまった。自分でやらかしておいて自分で引いている。

室笠アカネ
この作戦後、しばらく虫を悪夢に見るようになった。
「虫はイヤァァァ!!!………はぁ、はぁ……夢……?」

小塗マキ&豊見コトリ
虫耐性はおそらく並。少なくともレイカのように虫に集られて顔色ひとつ変えないなんてできない。
「レイカってすごいね……」
「そうですね……あれは真似できません」

トノサマバッタ
実は作者は一度、寝る前の歯磨きで鏡見るまで肩に止まってたトノサマバッタに気付かなかったことがある。驚き過ぎて数秒固まった

マツヨイナイトバグ
ダンマクカグラで「おまえのような1ボスがいるか」を体現した難関譜面を引っ提げ実装された名曲。

好きな東方ボーカルは?

  • 幻想に咲いた花
  • Bad apple!!
  • 月に叢雲花に風
  • HANIPAGANDA
  • ファビュラス
  • Help me, ERINNNNNN!!
  • ウサテイ
  • 23145EASONS
  • Spring of Dreams
  • 天狗ノ華
  • Paranoia
  • 鬼畜最終妹フランドール・S
  • 幻想サテライト
  • 色は匂へど散りぬるを
  • 天弓天華オトハナビ
  • ハートビートは鳴りやまない
  • マツヨイナイトバグ
  • フラグメンツ
  • チルノのパーフェクトさんすう教室
  • それ以外
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