東方×青響フルスペクトラム!   作:伝説の超三毛猫

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さぁ、そろそろ物語が動き出します。


HANIPAGANDA

 その日の私は、いつものように教室の自席に座り、予習の端末を操作していた。

 ………うん、大丈夫。昨夜の悪夢の残滓は、完璧にこの仮面の下に押し込められている。

 一度あの悪夢を見た翌日以降も、変な夢は出てきていない。

 

「(今日一日も、何事もなく終わらせる。昨日と同じ、そして…ずっと続く、平穏な一日で)」

 

 それが、私の唯一の目標。心を落ち着ける旗印。

 朝のホームルームが始まる。そこで、誰となく呟いた一言が……私の耳に届いた。

 

「…あれ、今日、アミいないじゃん。欠席かな」

 

 手が、一瞬。キーボードの上で止まった。

 アミ――昨日、中庭で新作ゲームについて話していたクラスメート。私にとっては、「音楽のことなど関係なく、ただ日常を共有する」、大切な友達の一人だ。

 

 そんなアミが……欠席?

 

 おかしい。だって昨日、アミは体調が悪い様子など微塵もなかった。新作ゲームの話をする彼女の目は、いつも通り輝きに満ちていた。顔色が悪いとか、咳が出るとかさえなかったのに。

 

 昼休み。周囲に悟られないよう、アミのモモッターをチェックしてみる。

 数時間前まで、ゲームの進捗について投稿がある。しかし、そこからピタリと更新が途絶えていた。アミは、いつもモモッターを更新してるのに。

 

「(病欠じゃない。なら、何かあった?)」

 

 以前の自分なら気にしなかっただろう。だが、あの悪夢をみてからというもの、気にせずにはいられなかった。

 授業が終わった後の休憩時間を利用し、スマホからアミのスマートフォンへ電話をかけた。

 

『プルルルル……』

 

 コール音は鳴る。だが、アミは出ない。五度目のコールで、留守番電話サービスに切り替わった。

 

「(圏外じゃない。電源も入っている。でも、出ない。……どうして……)」

 

 そう考え始めた脳裏に、昨夜見た悪夢の残骸、元会長の冷たい笑みがよぎる。

 まさか、過去の事件がアミに影響したのだろうか?

 いや、そんなはずはない。会長は私が倒した。他の人達の姿形も見えない。詳しいその後は聞いてないが……私の事を探れるとは到底思えない。

 元会長の件は、本当にただの偶然だ。あの会長が不良に落ちぶれて、たまたま私達が鎮圧を依頼された不良グループの中にいたなど、どうして予測できようか。

 アミは……きっと、いきなりたちの悪い風邪にかかっただけだ。

 

 その日の夕方、放課後のチャイムが鳴った直後、私のスマホが振動した。

 モモトークの通知。アミからだ。

 急いでロックを解除し、メッセージを開いた。

 そこには………こんなメッセージが。

 

『レイカちゃん。

 ごめん、急に。ちょっとトラブルに巻き込まれちゃった。

 誰にも言わずに、この位置情報のところに来てくれるかな?

 黎毬神社の活動と壊されちゃったあなたのギターのことで、話したいことがあるんだ』

 

 

 自分の目が見開かれ、冷や汗が首筋を伝うのを感じた。

 

「――っ、嘘……」

 

 位置情報が添付されている。それはミレニアムの学外、キヴォトス郊外にある、廃墟となった倉庫街の一画を示していた。

 しかし、そんなことはどうでもいい。送られてきた場所も…怪しいっちゃ怪しいが。

 問題は―――そこじゃない。

 

『黎毬神社の活動と壊されちゃったあなたのギターのことで、話したいことがあるんだ』

 

 アミは、私がギターを持っていることすら知らないはずだ。ましてや、私が「黎毬神社」名義でこっそり活動していたことなど、分かるハズがない。当然、魂の分身といってもいいそれを、かつて会長の差し金で不良に破壊されたことも。

 おかしい。アミに、こんな情報を知れるハズがない。

 

「(ぜ…絶対偽物だ……!)」

 

 アミの携帯から送られてきた、このメッセージ。

 送っているのは当然、アミじゃない。この犯人は、私の過去と秘密を、完全に知ったうえで、このメッセージを送っている。

 「誰にも言わずにここに来る」という指示………これは、「誰かを巻き込むな」という命令だ。

 

 ………どうする?

 震える手でスマートフォンを握りしめた。

 誰に話せばいい? 先生に相談すべきか?マキに助けを求めるべきか?アスナさんか?セミナーか?……ゲーム開発部か?

 

「駄目だ……」

 

 もし、誰かに相談したら、このメッセ画面を見せなきゃいけない。

 ここには、明確に『私=黎毬神社の巫女』という情報が載っている。

 こんなの知られちゃったら、どうなるんだろう……?

 私の歌が、過去が、『黎毬神社』の実力だけでなく、この力も明らかにされてしまう。

 皆に、恐れられるかな。それとも…「かわいそうだ」なんて、思われるのかな。

 ……そんな未来図、嫌すぎる…!

 

 ―――だけど。

 

 

 今、アミはどうなっているんだろう?

 スマホを落として困っているだけ?……否、まずあり得ない。

 こんな風にわざわざ彼女のスマホのモモトークを使ってまで呼び出しなんて、絶対に普通じゃない。

 人質にされているかもしれない。暴力を振るわれているかもしれない。

 ―――命の危機に、晒されているかもしれない。

 

 たかが、私の音楽活動のせいで!!!

 

「(そんなこと、させてたまるか! もう二度と、誰にも傷つけさせない……!)」

 

 この瞬間、自分が心より大切にしている「平穏」を、捨てる覚悟を決めた。

 リュックを背負い、すぐに駐輪場へと向かった。

 

「あれ、レイカ? 今から帰り?」

 

「………えぇと、アミに会いに、行くわ」

 

「アミに? …お見舞いってこと?」

 

「えぇ。大体そんな感じ」

 

 たまたますれ違ったモモイをあしらって、私は駐輪場の自転車に飛び乗ると、一心不乱にペダルをこぎ始めた。

 向かう先は、廃墟の倉庫街。メッセージに示された、アミが待つと言っていた場所だ。

 

「(今度こそ、悪いヤツだけを、ブッ倒してやる)」

 

 罠の予感と、喉奥に熱を帯びた憎悪のメロディが湧き上がるのを感じながら、私は静かに、単独で救出へと向かうのだった。

 

◇◇◇◇◇

 

 錆びたフェンスを乗り越え、廃墟の倉庫街の一角に到着した。空は夕闇に包まれ、ヘイローの光がなければ視界は利かない程だ。

 やがて辿り着いた、メッセージに示された倉庫は、鉄骨が剥き出しになった巨大な建物だった。

 誰にも気づかれないように、静かにシャッターの隙間から中を覗き込むと、内部にはドミネイト・セキュリティズのエンブレムが刻まれた、ロボットの隊員が数十人、立っていた。みんながみんな、重装備だ。

 

 そして、その中心。金属製のパイプ椅子に、アミが座らされていた。口を塞がれ、手首は結束バンドで固定されているが、目立った外傷はない。恐怖で瞳は揺れているが、意識ははっきりしているように見える。

 

 友人の無事に安堵する暇もなく、怒りが込み上げてきた。

 

「(やはり罠だ……そして、この程度で済むはずがない)」

 

 このままこっそり隠れていても、取り返すどころか、アミに近づくことすらできないだろう。

 意を決した私は、静かにシャッターを押し上げて倉庫内に侵入した。

 その物音に気付いたPMC隊員によって、あっという間に銃口に囲まれた。

 

「おい、お前は誰だ。ここを『ドミネイト・セキュリティズ』の敷地と知って来たのか」

 

「友達にここに呼ばれたの。何か知ってませんか?」

 

 そう言いつつ、ポケットに入っているハンドガンに手を這わす。

 この弾数と威力じゃあ、目の前のPMCの相手にならないことは分かっている。

 

「おい、手荒な真似はするな」

 

 唐突に、機械の人だかりの奥から、誰かの声が聞こえた。

 機械の兵士の間から、周りよりも装備の整った、豪華そうな機械が現れた。

 見るに、コイツが『ドミネイト・セキュリティズ』のお偉いさんか。

 

 そのロボットは、胸部に「Executive Unit」と刻まれたプレートを輝かせていた。

 

「初めまして、白峰レイカ。私はドミネイト・セキュリティズ最大の企画・『プロジェクト・セイレーン』………そのプロジェクトリーダーだ」

 

 プロジェクトリーダーと名乗ったソイツは、感情のない音声で続けた。

 

「お前の友人は、お前を呼ぶための餌だ。そして、お前は我々の『資源』となる。

 お前の歌声が持つ精神介入能力は、キヴォトス全土の紛争を終結させ、我々を新しい時代の覇者とする鍵となる」

 

「し…資源……!」

 

 私の心が、一瞬で怒りに満たされるのがわかる。かつての会長と同じ、才能の搾取を目論む言葉。

 

「アミを返しなさい!そうでなければ……!」

 

「抵抗は無意味だ。我々は、お前の過去の事件――シューメール女子中学校の精神錯乱事件を完全に解析している。お前は『歌う』ことによってしか、我々を排除できない」

 

 リーダーが手を挙げた。すると、重装備のPMC兵たちが私を取り囲み、麻酔銃や拘束用ネットガンを構える。

 ……いつでも捕まえられる、ってこと…ね。

 

「我々の目的は、お前の能力の『再現性』の確保だ。

 実験台の友人を傷つけるつもりはない。だが、邪魔をするなら話は別だ」

 

「は………?」

 

 こいつ、今なんて言った?

 私の力を…再現する?

 

「あんた…何を、言ってるの?」

 

「その力、個人で持っておくには勿体ない。解析し、分析して、我々の兵器に取り込もう、と言っているのだ。

 そうすれば、音響兵器に革新が起こる。争いに溢れたキヴォトスを変えることができる。

 カイザーコーポレーションに代わって、私達が覇権を握ることも、夢ではないのだ」

 

 リーダーの言葉には、ひどい嫌悪感と…そして、既視感があった。

 まるで、私を救世主そのもののようだと言ってのけるその言いぶり。

 抑揚のない、内心ではそんなこと微塵も思っていないかのような言葉にたまらず叫んだ。

 

「冗談じゃない!!!」

 

 私の歌は、私のもの。

 すべては、ただ大好きな東方ボーカルを歌うために。

 それで誰かを幸せにすることがあっても、誰かを傷つける……ましてや、兵器に転用するなんて、絶対にあっちゃあいけない!!

 

 怒りに震え、暴れようとするが、周りの兵士たちに押さえつけられて、思ったように力が出せない。

 そうしている間にも、リーダーは冷徹に続けた。

 

「抵抗をやめろ! 大人しく我々の研究対象になれば、友人は傷つけない!」

 

 その言葉に、私の身体は硬直する。

 ―――嘘だ。嘘に決まっている。

 もし、私がここで捕まって、研究材料にされちゃったら……多分、アミは殺される!

 私が行方不明になるのを知っている人間として…「証人は居ない方がいい」とか言って…殺しに来るに決まっている!!

 なのに……信じていないのに、体が、動かなかった。

 

「安心しろ、白峰レイカ。我々は、お前の歌が無差別的な幻覚を引き起こすことは承知している」

 

 リーダーは、PMC兵たちに向かって指示を出した。

 

「全ユニット、強化音響遮断耳栓を装着しろ。白峰レイカの歌声は、直接聞かなければ、我々の精神には問題ない。過去の事件の記録がそれを証明している」

 

 PMC兵たちは、耳全体を覆う分厚いイヤーマフのような耳栓を装着した。

 

「(え……?)」

 

 私は焦燥の中、コイツの指示通りに耳栓をするPMC兵たちに強い違和感を覚えた。

 

 『直接聞かなければ問題ない』?

 ()()()()()()()()。確かに私の能力は、直接耳に聞かないと意味がない。

 だけど、あのシューメールの事件の時、私の歌声は壁を突き破り、無関係な生徒たちの精神を無差別に蝕んだはずだ。

 それに―――歌自体に力があるだけじゃなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()に意味がある。

 

 マツヨイナイトバグを歌えば、虫が集まり。

 天弓天華オトハナビを歌えば、市場が復活する。

 

 つまり。

 

「(コイツら、私の能力を完全に理解していない……! 彼らは、能力の本質ではなく、断片的な噂だけを信じている!)」

 

 ドミネイトは、私の歌を「単なる強力な音響兵器」だと誤解している。

 それもそっか。だって目の前の“敵”は―――私が愛した東方ボーカルを、『兵器』としてしか見れないんだもの。

 

「歌え、レイカ。歌わなければ、友人を傷つける」

 

 リーダーの言葉に、決意した。このチャンスを逃せば、アミは確実に殺され、私の能力は悪の手に落ちる。

 …やってやる。この力は、私が誰よりも()()している。誰もを巻き込む、無差別殺人兵器であることを。そして……必ず、私の願いに応えてくれると。

 

「………分かったわ」

 

 ―――レイカの瞳が、憎悪で燃え上がった。どうせ歌うなら、この悪意ある者たちを完全に排除できる歌を。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 白峰レイカの雰囲気が変わった。

 ドミネイト・セキュリティズのプロジェクトリーダーは、それを察知した。

 ようやっと観念したか。最初はそう思った。

 

 レイカが息を吸い込み、顔を上げ、方向をあげるように『歌い』だすまでは。

 

―――ハニワーーーッ! 進め!! ゴー!!!

 

 リーダーの内部電子回路に、エラー警報が轟いた。

 

 レイカのヘイローが、紫に近い、禍々しい光を放ち始めた。その光はを浴びながらレイカを押さえつけていた兵士たちの装甲が、彼女の能力の発動に耐えきれず、ミシリ、と軋んだ。

 レイカは、喉奥から溢れる、最も攻撃的で狂気的なメロディを放った。リーダーのセンサーは、その歌声に込められた純粋な「意志」を読み取り、驚愕した。

 

 ズンッ!

 

 凄まじいヘヴィメタルの音波が倉庫全体を襲った。しかし、PMC兵たちは強化耳栓で「音」を遮断している。動揺はあったが、機能停止には至らない。

 

 だが、その時。レイカのヘイローが、蒼く輝いた。

 次の瞬間、信じられない情報を耳にすることになる。

 

「ぎゃああああ!!?」

「なんだこいつ、どこから現れ…ぎゃあっ!」

「なんだこの人形は!!」

 

「おい、どうした? 何が起こっている!!?」

 

 耳を介さない遠隔通信が拾った悲鳴にリーダーが返す。

 

「ほ、報告します!謎の土人形が―――」

 

 そこで通信が途絶えた。

 一体何が、と考える暇もなく、リーダーの視界が、更にあり得ない者を捉えた。

 

 それは、土塊でできた、埴輪(はにわ)の姿をしていた。その埴輪は、両手に持つ直剣を、隊員の背中目掛けて振り下ろしている最中だった。

 片や鋼鉄の装甲。片や明らかに粘土製の剣。歯が立つわけがないのに、埴輪の持つ刃は、PMC兵の装甲をやすやすと切り裂き、内部の機械を露出させていた。

 

「馬鹿な!音響兵器に、土人形の使役だと――データにない!何だこれは!? どうやってこんな現象を起こしている!!?」

 

 リーダーの内部ロジックが、緊急警告を乱発した。彼らは、レイカの歌を「音の力」と誤解していたが、目の前で起こっているのは、搭載されていたあらゆる物理法則にも載っていないものだった。

 そのようにうろたえている間にも、埴輪の日本刀が隊員たちの装甲をまるで紙のように貫通し、内部の電子機器を破壊していく。酷いものは、粗大ゴミのようにバラバラに分解されていた。

 

「直ちに攻撃を中止し、耳栓を外し、再解析しろ!」

 

 リーダーが叫ぶが、すでに遅い。レイカの歌声は、怒りを燃料に加速していた。

 埴輪の一つが、拘束されたアミの椅子に急接近し、結束バンドと口を塞ぐ布を、正確な刃捌きで切り裂いた。

 アミは解放され、驚愕と恐怖に顔を歪ませながら、椅子から転げ落ちる。

 別の埴輪が、リーダーに向かって一直線に突っ込んできた。

 

「ぐっ!」

 

 リーダーは、反射的に重機関銃を掃射する。埴輪は、弾丸を受けてバラバラに砕け散る。

 無力化したかと思ったのも束の間、破片が全て浮遊し、繋がって、元の埴輪の形になると、そのままリーダーに向かってきた。

 それは、何度も何度も粉々にしても、その度蘇って襲い掛かって来る。

 まるで、死を恐れぬ歴戦の兵卒の群れのようだった。

 

 レイカの歌というプロパガンダに洗脳されたかのように、埴輪の兵士たちは、PMCの兵士たちをひとりひとり、丁寧に、だが狂気的に蹂躙していく。

 その惨状を目の当たりにしたリーダーは耐えきれず。

 

「クソォォッ!! おい白峰レイカ! 今すぐ歌うのをやめろ!!こいつ等を止めろォォォ!!!」

 

 やぶれかぶれに弾丸をばら撒きながら、レイカに怒鳴りつけた。

 それを聞いた様子のレイカは、冷たい表情を崩さないまま、なにか返事した。

 強化耳栓で聞こえなかったが、言わんとしていることは分かった。―――分かってしまった。

 

 

 ―――ずいぶん勝手ね。あんたが歌えって言ったんでしょ

 

 

 鋼鉄の肌に、冷や汗代わりの油が流れた気がした。

 やがて、埴輪の一体が、リーダーの頭部に飛び乗り、その分厚い強化耳栓に、正確無比に日本刀を突き刺した。

 

 ガリリッ!

 

 耳栓の電子回路が破壊され、リーダーの内部音声遮断システムが解除された。

 その瞬間、レイカの歌声が、フィルターを通さず、リーダーの中枢回路に直撃した。

 

 「―――ッッ!!」

 

 憎悪、絶望、そして「兵器化」への拒絶。レイカの魂の全てを乗せた破壊の波動が、電子頭脳を容赦なく襲う。

 リーダーの視界は、激しいノイズとエラーコードで埋め尽くされた。

 

「ウ、ウワアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 電子音声が、人間の恐怖を模したような狂気の絶叫へと変質した。リーダーは、その場でバランスを崩し、機能停止を待たずに倒れ伏した。

 そのリーダーに、埴輪たちが次から次へとまたがり、直剣を突き立てた。狙いは……レイカの歌が録音されている、記録媒体だ。

 この時にはもう、「やめろ」と叫ぶ気力すら、残っていなかった。

 

 レイカの歌声が止む頃には、倉庫内には、完全に沈黙したドミネイト・セキュリティズの機械兵たちと、役目を終えたように崩れ去った埴輪だった粘土の山々だけが残っていた。

 

◇◇◇◇◇

 

 すべてが解放される感覚を味わいながら、重い息を吐いた。

 これで終わった。もう、アミが危険に晒されることも、私の力が悪用されることもない。

 

「アミっ!」

 

 そうだ、アミだ。

 あいつらに捕まってた彼女は、大丈夫か?

 落ち着け…すぐに見てあげないと。

 

「だ、大丈夫……アミ。もう、大丈夫だから」

 

 私は、まだ震える手でアミの拘束痕を摩り、彼女の顔を覗き込んだ。

 

「ごめんなさい。怖かったでしょう……!」

 

 そう言ってアミを見る。

 だが―――なにかがおかしい。

 まるで、見てはならないものを見てしまったかのようで。

 どうしてそんな顔をしてるの?…と、聞こうとした直後、彼女は私の顔を見たまま、悲鳴を堪えるように口元を押さえ、二歩、三歩と後ずさりした。

 

「れ……レイ、カ……ちゃ……い、いや…」

 

 アミの声は震えていた。だから、もう一度、安心させようと声をかけようとして。

 

「な…」

 

「な?」

 

なんでこんなことできるの!? あなたは……あなたは、化け物よ!!

 

 悲鳴のような彼女の恐怖の声が、全てを砕いた。




白峰レイカ
友達を守るため、自ら禁じていた力を振るうと決めた。ただし―――それが、必ずしもいい結果を招くとは限らなかった。
「――――――え?」

レイカ(杖刀偶のすがた)
金髪・ツインおだんごの姿のレイカ。この姿から召喚される埴輪たちは、若干……ほんとに若干、レイカと顔立ちが似ているとかいないとか。

アミ
レイカの友人。音楽をしているレイカのことを知らず、今回の件にしてもなんか謎の団体に攫われたと思ったら気心知れた友人がきて、見ず知らずの恐ろしい能力で蹂躙してったことになる。これでビビらないヤツだけ彼女を責めていい。
「(レイカ…?何をしているの?なんでそんなことができるの?)」

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  • 色は匂へど散りぬるを
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  • ハートビートは鳴りやまない
  • マツヨイナイトバグ
  • フラグメンツ
  • チルノのパーフェクトさんすう教室
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