レイカ「東方で一番好きなカップリングがレイマリだからに決まってるでしょ。ちなみに左右逆転は不可ね。あと、神社ってのは神主さんリスペクト」
レイカ、まぁまぁ厄介なタイプの東方厨である。
『いつも神宮飴店をご利用いただきありがとうございます。
この度は、一身上の都合により閉店とさせていただくことになりました』
「うそ………」
私、白峰レイカは今、愕然としていた。
ミレニアムサイエンススクールの学区にあるにしては珍しい、現代チックにデザインされつつもどこか古風な商店街の、その一つ。
お気に入りのお店に、閉店のお知らせが記された紙が貼られている事実に、動揺を隠せなかった。
ミレニアムに入学してからは、このお店に来て、ここの店主が作る芸術的な水飴を楽しんで食べるのが、放課後の日課だったのに。
「おや、レイカちゃんこんにちわ。今日もいつものかい?」
「いや、それより、おじさん………こ、この張り紙って」
「あぁ、それか。まぁ…仕方のない話なんだよね」
顔を出した飴屋のおじさんが、商店街の入り口方面を指さした。
その向こうに、新鮮なミレニアムの近未来的な街並みの中でも、特に真新しく巨大な建物が見える。
「最近出来たばっかりの、ミレニアム・モールだよ。広いし、便利だし、目新しいのも多い。夜遅くまでやってるんだとか。そりゃ、こっちに来る人も減るさ」
おじさんは笑っていたけど、その笑みに滲む寂しさを、私は見逃さなかった。
「仕方のない……事なんですか?」
ようやく出せた言葉は、驚くほど弱々しかった。けれどおじさんはうん、と頷いて。
「どんなに長く愛されてても、世の中が便利を求めたら、古いものは置いていかれる。そういうもんだよ」
ウチだけじゃなくて他の店も閉めざるを得なくなるかもな、と続くその言葉が、胸に刺さった。
最新技術の粋を集めたような巨大モールが、古き良き商店街の息の根を止めようとしている。前世の日本でもそんな話は聞いたことがあったけれど、こうして目の前でお気に入りの店の閉店という形で見せつけられたら、それはあまりにも無情な現実だった。
飴屋からの帰り道、私はうつむいたままだった。
スマートな配達ロボが颯爽と走り抜け、無人店舗のガラスが機械的に光る。人間の気配が希薄な街に、私はぽつんと取り残された気分だった。
おじさんの飴屋だけでなく、あの商店街全体がなくなってしまうかもしれない――その事実に、私の心は沈んだ。
失われていく、懐かしくて温かい場所。大切な思い出の詰まった場所が、最新の便利さの前に屈してしまうのか。
「『幻想郷はすべてを受け入れる。それはとても残酷な話』か……
―――紫や他の子たちもこんな風に思ったこと、あるのかな」
それは、私の持つ「東方Projectの記憶」において、妖怪たちが現実世界の技術進化によって忘れ去られるような、そんな寂しさを想い起こさせた。
これも、時代の流れとして、受け入れるしかないのかな。
でも。でも……私は知ってる。おじさんの笑顔を。あの人が作る、素敵な水飴の芸術の数々を。商店街の人々の、温かさを。
だから………それが無くなるのを黙って受け入れろ、なんて。
そんなの。
「……そんなの、やだな」
小さくこぼれた声が、風に消える。
だけど、どうしたらいいのかなんて分からなかった。
次の日も、その次の日も、私は飴屋の前で立ち尽くした。
何もできないまま、閉店準備が進んでいくのを眺めるだけ。
胸の奥がずっと、ザラザラしたままだった。
――このままで、いいの?
そう問いかけても、答えなんて出ない。
けれど、ふと視線を上げた先に、商店街の看板が見えた。
少し古びた木製風のアーチ。きっと昔はその下で、いろんな人の笑い声が絶えなかったことだろう。
私は、そっとポケットの中の音楽プレイヤーに触れた。
これで、全てが変わるわけじゃないけど。
「……一曲だけ、やってみようかな」
―――夜。誰もいない商店街。
舗装された石畳の上に、冷たい風が舞っていた。
陽が沈んだばかりなのに、街灯がところどころ消えていて、薄暗い。ショーウィンドウには誰の影も映らない。
けれど私は、躊躇なく中央の広場に歩み出て、まっすぐ立った。
…これからやるのは、私のエゴだ。この商店街を良く知る人々にとっては、お店を閉めようとしている人にとっては、余計なお世話なのかもしれない。
でも私は決めたから。この力は、私の為だけに使う。そして……私は、この商店街に、なくなって欲しくない!
重い無音の中で、ギターケースの留め具がカチリと音を立てた。取り出したソレに、コードを差し込んでアンプを繋ぐ。
コードをひとつかき鳴らして静寂を破ると、音が空気を揺らした。
そして、深く、深く息を吸い込んで――
「開け市場、開け市場―――」
――その瞬間、世界が変わった。
空間が弾けるように揺れ、夜の帳に金と桃の光が咲く。
私の姿が変わっていく。黒い私服が花火のような艶やかな衣装へと移ろい、赤いリボンがゆっくり風に舞った。
頭上のヘイローは七色の輝きを放ち、市場の神を思わせる神楽の光を灯す。
その歌声は、空へ放たれる。
まるで祝詞のように、夜空に祈りを捧げるように。
ひとつひとつの言葉が、煌く火花となって、商店街の空を彩っていく。
――咲け、天の花。
――永夜の月に、虹がかかるように。
ギターの旋律と共に流れ出す旋律に導かれるように、ひとり、またひとりと人々が集まってくる。
窓の隙間から顔を出す住民。
通りすがりの生徒達。
自販機の影からそっと出てくる子供。
仕事帰りのロボット住人。
誰もが目を奪われ、立ち止まる。
そして、ふと気づけば……一つ、また一つと店が灯りをともしていた。
駄菓子屋が軒先を開き、雑貨屋が並べた手作りアクセサリーを少女たちが手に取る。
どこからか三味線の音も聞こえてきて、商店街はたった一夜の夢のような賑わいに包まれていく。
私は、歌う。
ただひたすらに。
願いが届くように。音が、人の心に火を灯すように。
――天に届くような音楽を。
――私の、大好きなこの場所のために。
歌い終わったときには、空に小さな花火のような光が残っていた。
それはまるで、誰かの記憶に残るために最後まで輝いていたかのように――
歌い終えてトランスが抜けたその頃、商店街には確かな「賑わい」と「繋がり」が生まれていた。
やがて、商店街のあちこちで即席の露店が開かれ、持ち寄られた手作りの品々が並び始める。
普段は顔なじみでないはずの住民同士が、笑顔で言葉を交わし、小さな品を交換している。
即席のフリーマーケットによって蘇った活気はまさに、かつての商店街の光景だった。
かつての賑わいが、ほんの少しだけ、いや、確かにこの夜、蘇ったのだ。
歌い終えた私は、能力によって出現していた服装の色やヘイローの色が抜けていくのを感じながら、そっと深く息を吐き出す。体の奥底から力が抜けていくような、しかし温かい感覚が残っていた。
「……やっぱ、すごいな。私の力」
誰に聞かせるでもなく呟いたその声に、背後から温かい拍手が送られた。
振り返ると、閉店作業を終え、裏口から出てきた飴屋のおじさんが、目を丸くして立ち尽くしていた。
「レイカちゃん!これは一体…!まるで、昔の商店街が蘇ったようだ…!」
おじさんは、目に涙を浮かべながら、私の手を握り、何度も礼を言った。
その握る力には、かつての活気を取り戻したような、力強い希望が感じられた。
迷惑じゃなかったのかな。
「いえ、あの、私じゃありませんよ」
なんとか誤魔化そうとした言葉の途中で、なんだか照れくさくなっちゃって視線をそらした。能力のことを打ち明けるわけにもいかないし。
「皆、この商店街のことが、本当は好きなんだと思います。だから、みんな集まったんですよ、きっと」
「…そうかい。じゃあ、そういうことにしておこうかな!」
おじさんはそう言って、くしゃりと顔を綻ばせた。
「でもね、これ……たぶん長くは続かないんです」
私には、一種の確信があった。一時の魔法で賑わいは取り戻せても、それはあくまできっかけに過ぎない。この熱気が、この商店街を本当に救うかどうかは、別の話。そういう、完全には終わってないって確信が。
「だから、ここから先は、皆さん次第だと思います」
そう言って、ポケットから皺になった百円玉を取り出す。
「おじさん。お店、まだ開いてる?」
「おお、もちろんさ!あんな素敵な演奏のお礼だ。なんでも作ってやるぜ!」
「……じゃあ、水飴。いつものやつ、ください」
いつもおじさんと行う注文のやりとりが、なんだかちょっと気恥ずかしくて。照れ隠しに笑いながら硬貨を差し出した。手のひらに載せられた水飴の包みは、いつもよりずっと温かく感じられた。
「たっだいま〜!」
「おい、遅いぞアスナ。どこほっつき歩いてたんだよ」
「商店街!部長もみんなも来れば良かったのに!」
「は?」
ミレニアムサイエンススクールのある教室。
背の高い生徒が散歩から帰ってきた大型犬のように元気に帰って来る。
ぶっきらぼうに寄り道の先を聞いたのが背が低く、目つきの悪い部長と呼ばれた生徒だった。
アスナと呼ばれた生徒は、部長と呼んだ背の低い生徒を始めとした、残りの生徒達に袋から水飴を取り出して渡していく。一つ一つが、様々な動物を模している。細かいところまで作り込まれており、かなり凝っていた。
「……どこで買ったんだ?」
「えーと……ナントカ飴店?ってところ!すっごく賑わってたよ!!」
「そのナントカの部分を知りてぇんだが…?」
「アスナ先輩、もしかして神宮飴店のことですか?」
「あーっ!!そう、それだよアカネちゃん!」
眼鏡をかけた生徒……アカネの言葉に嬉しそうに抱きつくアスナ。「あ、アスナ先輩、暑いです…」という言葉など意にも介さない。
だが、そこで不思議そうな声をあげた生徒がいた。
「神宮飴店って、もうすぐ閉店になる所じゃなかった?」
「そうなの?」
「うん、なんでも近くにショッピングモールが出来たからって」
「なんでそれをアスナじゃなくてカリンが知ってるんだ…」
黒に近い褐色の肌をした生徒……カリンが言うには、その店は閉店間近で、とても賑わいとは縁が無さそうだと。
「え〜、でもホントに凄く賑わってたんだよ?明日皆で行ってみない?」
「それ、今晩限定のイベントだった、という線はないのですか?」
「う〜〜ん、それはないと思うよ。あの感じは、あと数日は続きそうだった!」
「根拠は?」
「なんとなく!」
「出たよ……」
アスナの楽天ぶりに、頭を抱えた部長。
だが彼女たちは……知っていた。彼女の勘は……アスナのなんとなくは…
「明日は任務とか無かったと思うしさ!皆で一緒に行かない?」
「ハァ…仕方ねぇな」
「えぇ、でしたら準備を整えないといけませんね」
「うん。久しぶりに、いい休日になりそう」
そう言って明日の予定を決めた生徒達。
彼女たちは……皆、共通して———
彼女達の名前は……
書いている時に気付いたんですけど、東方ボーカルってJASRACのコードにないんですよね。なので、歌詞は出来るだけ引用しないように、というか規約に反しないように書き進めないといけなくて、ビビリながら書いてる。
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