その事も踏まえて、東方ボーカルを大放出します。
目が覚めたら、ミレニアムサイエンススクールの、保健室のベッドの上だった。
気だるさがありながらも、近くで人の気配があったから、そっちを見ると、ユウカ先輩がいた。
「目が覚めたわね、レイカ」
「ユウカ先輩……」
「何があったかは覚えてる?」
「……えぇ、まぁ…」
起き上がろうとしたが、全身の疲労と精神的な消耗で、すぐにベッドに背を戻した。
昨夜の出来事―――キャンプ場での絶叫、呼び出した後戸、そしてモモイやコタマ先輩などの必死の呼びかけ——全てが現実だったことを、体の軋みが物語っていた。
ユウカ先輩は無言でミネラルウォーターのボトルを開け、コップに水を入れて手渡してくれた。
「チヒロ先輩や、先生たちは?」
「先生はシャーレに戻ったわ。一晩中付きっきりだったから、さすがに疲れ果てていたから。チヒロ先輩とネル先輩は、後処理と報告書の作成で、それぞれの部室に戻ってる」
「そうですか…」
ユウカ先輩はそう言って、寝床の横に置かれた椅子に座り直した。その表情は、普段の厳しさよりも、深く安堵しているように見えた。
「あなたのことは、ひとまず『体調不良による入院』として処理してあるわ。…先輩たちに感謝しなさい。大騒ぎになったキャンプ場の現場を、一晩でほぼ完全に『なかったこと』にしたんだから」
「……ごめんなさい」
そう言わずにはいられなかった。今回の騒動が、どれほどみんなを巻き込み、どれほど迷惑をかけたか。どれほど傷つけたか。
想像するだけでも胸が痛んだ。ヴェリタスがいなかったら、もっと事が大きくなってたかも、とのことだから尚更。
「謝罪は、私じゃなくて、先生に。それから、モモイたちゲーム開発部のみんなにしなさい」
「はい。……あの、ユウカ先輩。みんなを呼んでもらってもいいですか? きちんと、話がしたいです」
一瞬ためらったように見えた。でも……私の決意が伝わったためか、ゆっくりと頷いた。
「わかったわ。ヴェリタスとC&C、あと、ゲーム開発部のみんなを呼んでくるわね」
数十分後、ミレニアムの保健室には、あの夜にあの場にいた全員が集まった。
ネル先輩、チヒロ先輩、コタマ先輩、アスナさん………そしてモモイ、ミドリ、ユズ、アリス。皆、疲労の色は濃いみたいだけど、無事を心から喜んでいるような表情だ。
「レイカ! 本当によかった、無事で!」
「巫女さま……お怪我はありませんか」
モモイが屈託のない笑みで笑いかける。
コタマ先輩もまた、私の無事に微笑んだ。
先輩がさらっと私の事を「巫女さま」と呼んだ件も、先輩のこめかみのガーゼや新しくなった眼鏡も気になるけど……先にやるべき事をやらなくては。
私は上半身を起こして、深々と頭を下げた。
「みんな、本当に、ごめんなさい。そして、ありがとう。私のせいで、みんなに迷惑をかけて、危険な目に遭わせてしまった」
「良いんだよ、そんな事!」
「気にしないでください、レイカ!アリス達はゆっくり休んだので、HPもMPもまんたんです!」
「謝らないで、レイカちゃん…!」
「頭を上げろ、レイカ」
ゲーム開発部の四人に続いて、椅子に腰掛けて腕を組んでいたネル先輩が、口を開いた。
「お前が逃げ出した理由も、そこで何があったかも、全部聞いた。こいつらが許すっつってんだ、責める気はねぇ」
「ネル先輩…」
「ただ…勝手に一人で結論を出して、誰にも言わねぇで勝手に身を引く……そんなマネはもう二度とやるな。いいな?」
「……はい」
ネル先輩の言葉は、まるで鋭い銃弾のように、私の胸の奥に深く突き刺さった。
それは優しさではなく、厳しさ。だからこそ、二度と過ちを繰り返さないようにという、強い願いが込められているのがわかった。
モモイやミドリも、そっと頷いた。
「レイカちゃん、体はもう大丈夫?」ミドリが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「うん。大丈夫。起きたばっかりだからちょっと怠いだけ。もうすぐ普通の生活に戻れそう」
「それなんだけど……」
チヒロ先輩が、なにか言いづらそうなことを伝えようとしているかのように表情が曇る。
なにかと思っていると、チヒロ先輩は話し出した。
いわく、アミの様子がおかしくなった原因が、私にあるんじゃないかということ。
昨日の現場……ドミネイト指定の倉庫の周辺にたまたまいたミレニアムの生徒の間で、私の歌が『人を狂わせる』、あるいは『異常な力を持っている』という尾ひれがついた噂が、断片的に流れ始めていること。
特に誘拐されたアミの怯えたような反応が、噂を意図せず補強するかもしれないこと。
「今、ハレとマキで火消しを行ってはいるわ。けれど、炎上しているわけじゃないし、なんとなく言伝で広がっていく噂は、流石にうちじゃ対処しきれない」
「なんですって……」
ユズの顔から血の気が引く。
「そんな……そんな事になったらレイカちゃんは!」
ミドリが、私の手を握りしめた。
「レイカ……まさか、また悪い評判が広まっちゃったらどうしよう? 私たちの周りではそんなことないけど、もし学校全体で……昨日みたいな、レイカが辛い思いをしたみたいになったら……」
「れ…レイカは、そんな人じゃないもん!!私達は知ってるんだから!!」
モモイもミドリは動揺を隠せない。ミレニアムの生徒はまだ私を責めていない。
だけど、シューメールの頃に経験した地獄を……利用され、恐れられて消されかけるあの日々が戻ってきてしまうんじゃないかというミドリの不安は、私の心を直接抉った。
けれど。私は、静かにモモイの手に力を込めた。
「モモイ、ミドリ。大丈夫よ」
私は一度、目を閉じた。化け物。異常な力。私を拒絶し、孤立させた言葉。それが再び広まろうとしている。
だが、今の私には、守るべきものがある。ゲーム開発部の日常。コタマ先輩の献身的な愛。先生と皆の信頼。
私は、ゆっくりと立ち上がった。全身にまだ疲労は残っているけれど、私の決意を阻むほどではない。
「その噂を、完全に払拭する方法なら、あります」
全員が、息を飲んだ。ネル先輩やチヒロ先輩さえも、真剣な眼差しで私を見つめている。
「レイカ、どういうこと?」と、ユウカ先輩が問いかけた。
私は、保健室に集まった皆を見渡した。
簡単な事だ。噂を振り払う最短の方法とは、本物を見せつけることだ。
その本物が、危険なものじゃないと分かれば、噂なんて一気に鎮火する。
私は、今まで絶対に表に出すまいと心に決めていた、「黎毬神社の巫女」という仮面を、もう一度…被り直す覚悟を決めた。
「私が『黎毬神社』として、ミレニアムでライブをする」
「ライブ……!?」
モモイが驚きの声を上げた。誰もが私の言葉に驚愕したが、その場で最も深く頷いたのは、コタマ先輩だった。
「その歌が、人を救う力を持っている。その歌が、恐れるべき力ではないと、私はそんな事をしないと、みんなの前で証明する」
かつて私の音楽は、人を傷つけ、利用される原因だった。
しかし、あの夜、皆の呼びかけと愛は、私の歌を「救い」に変えてくれた。今度は、私がその歌を、皆のために使う番。
「……レイカ。今まで、あなたはそれを最も恐れてきたはずよ」
「はい。でも、もう逃げたくない」
チヒロ先輩の言う通り…恐ろしい部分もある。
だけど、私は、あの夜、私を救ってくれた皆の顔を思い浮かべた。
「私の歌が、人を救うということを知った。ならば、噂に怯えて隠れるのは、私のプライドが許さない」
「“―――君が、それを望むなら”」
「!」
静かな、確信に満ちた声が、開いた扉の向こうから響いた。
「“いくらでも力になるよ。”」
先生だ。
彼は、私が起きていることを察して、シャーレから戻ってきてくれたようだ。
その顔には疲労の色が残っているが、瞳は力強く澄んでいる。
「先生…!」
「“君の音楽は、もう君を孤立させるための壁じゃない。皆と繋がるための希望の扉だ。さあ、最高のステージを用意しよう”」
「ありがとう、ございます……!」
私のワガママを実現する為、ライブの準備が、始まった。
「…ところで。何で皆、私が『黎毬神社』だって知ってるの?」
「「「「「え?」」」」」
「……あ」
「……コタマ。白状した方が良いわよ」
◇◇◇◇◇
その日、ネット中が動揺に衝撃が走った。
震源地は、ヴェリタスのチャンネルがリツイートし、久しぶりに黎毬神社のモモッターアカウントが更新した、シンプルな、しかし圧倒的な文字の羅列が載った予告動画である。
―――『黎毬神社、ミレニアムでライブ開催決定』。
あまりにも急な知らせに、ファンは勿論、その音楽性を高く評価していた音楽評論家、果ては黎毬神社から離れていた元ファンですら、専用のスレッドやトークルームを立てて熱狂的な盛り上がりを見せ始めた。ネット上には「まさか2年ぶりに復活とは」「ミレニアムは一体何をした」「あのヤバい音源がまた聴けるのか」といった期待と憶測が渦巻いた。
予告からライブ開始までは、あっという間に時が過ぎた。
ヴェリタスの先輩方―――特にコタマ先輩が盛大に告知をし、ユウカ先輩が予定を組んで、C&Cやゲーム開発部の皆は進んでライブステージの装飾をはじめとした準備を手伝ってくれた。シャーレの先生はというと、ユウカ先輩を手伝ったり、或いは助っ人を呼んでくれたりして、本当に助かった。
―――そして、ライブ当日。
ミレニアムの体育館の裏に、私は立っていた。
服装は、博麗霊夢が身に纏うような、赤い巫女装束。そして……顔には、シンプルながら煌びやかな装飾のついた、仮面舞踏会風のマスクをつけて―――後は、時間を待つだけだった。
舞台袖にいた、ゲーム開発部の4人に声をかける。
「客席に戻ってれば良かったのに」
「そうはいかないよ!せっかくのレイカの本気を見れるんだもん、仲間ならではの距離で見たいじゃん!」
モモイの言葉に、他の三人も否定する様子がない。
あんたらがそう言うならそれでもいいけど、後悔しないでよ。
そう言おうか迷っているうちに、時間を知らせる音が、ブーーーッと鳴る。
私は、同じく舞台袖に立っていた、私の救世主の一人―――先生に、告げた。
「…では、先生、みんな。行ってきます」
「“行ってらっしゃい、レイカ。目一杯、楽しむんだよ”」
「「「頑張ってー!」」」
「アリス、応援します!」
5人の声援を受け、私は舞台に躍り出た。
ステージに立てば、数多の懐疑の目線が突き刺さった。
この懐疑は……おそらく、黎毬神社の…それも、復活のライブと聞いて来て、出てきたのが私のような小娘だったからだろう。
「こんにちは、黎毬神社の巫女です」
明るく照らされたステージとは対照的な暗闇からどよめきが起こる。
この空気は……キツイものがある人もいるかもしれない。視界の端で、ユズの心配の表情がちらと見えたからだ。
でも、心配はいらないよ、ユズ。モモイも、ミドリも、アリスも………私は、これ以上の地獄を耐え抜いてきたんだから。これくらい、わけはない。
「今日の為に、黎毬神社、最高のセットリストを用意しています。耳慣れない曲ばかりかもしれませんが―――」
私には、MCの才能は与えられなかった。
喋る度に客席が冷え、「本当にこの小娘が黎毬神社か?」という不信感が強くなるのがわかる。でも、大丈夫。
「―――どうか、最後まで聞いていってください」
―――どうせ彼らは、最初の曲の一小節目で、掌を返すのだから。
マイクを握りしめたまま、客席の冷たい空気を全身で受け止めた。そして、ゆっくりと腰に下げたギターを構える。そして…深く息を吸い込んで。
ジャンッ―――!
ギターの弦をかき鳴らす。鋭く、暴力的な一撃が、体育館を満たした。
激しいギターの音色は、これまで蝕んでいた者への「拒絶」ではもうない。これは「解放」の叫び。
私が使える狂気的な力を、最大火力で、奏でる。体育館に漂う、懐疑的な雰囲気をブッ壊すために。
最初の曲は、『Scream out!』。
演奏で放たれる光はステージの照明とシンクロし、ギターやドラムや、キーボードの音の奔流は、観客の心臓を直接叩くような激しいロックサウンドに合わせて、力強く脈打っていた。
ここから見ただけで分かる。観客は、一小節を聴いただけで、動揺を隠せなくなった。
「なんだ、これ……!」
「嘘だろ……これが、黎毬神社……」
そんな声が聞こえるかのようだ。
私が持っている「化け物の力」は、確かにこの音に宿っている。けれど、それは誰かを狂わせる破壊的な暴力ではなく、魂を揺さぶる圧倒的なエネルギー。私は、喉を絞り出すように歌い始めた。
「初めて踏み出す、その一歩が非日常―――」
自身に向けられたすべての疑念を、その圧倒的な音圧で吹き飛ばしていくかのように歌い上げる。目の前の、私の歌を聞いてる皆に後悔などさせないように。そして……『ケの昨日』からかき集めた大事なものを、この『ハレの日』に一気に放出するように。
彼女のギタープレイは、もはや「天才」という言葉では足りなかった。全身の神経を弦に集中させ、魂を削るような凄まじい技巧と熱量を叩きつける。
一曲目が終わる頃には、客席を支配していた懐疑の空気は完全に消滅していた。体育館全体が、熱狂的な叫び声と拍手の渦に包まれた。
ふふふ、楽しんでくれて何よりだけど……一曲目からそれだと、最後までもたないぞ。
そう言いたい私は、休む間もなく次の曲へと移行する。
ギターのリフが、観客の心臓の鼓動を加速させるように響く。曲は、『ハートビートは鳴りやまない』。
どこからか鳴り出すキーボードのリズムに合わせて、私はステージを左右に動き回り、観客を煽る。
「行くぜ!」
この曲は、繰り返される日常からの脱却を歌った曲。
以前では考えられなかった。今だってそうだ。私の不確定な噂を前に、隠れる事だってできた。でも……なんとなくそれが嫌だったから。
ガラじゃなくても、この降ってわいた
観客たちは、もう理性では止められない。その音に導かれ、衝動的に体を揺らし、手を振り上げ始める。
舞台袖では、モモイが歓喜の叫びを上げ、ミドリとユズがその凄まじい熱量に目を丸くしている。アリスと先生は、瞳を閉じて聞き入っている。私にとって、これこそ何よりも嬉しい光景だ。
だってそうだろう。私の好きな音楽を、私の大好きな東方ボーカルを……そんな、嬉しそうな顔で聞いてもらえているんだから。
レイカは、3曲目、『天狗の華』でさらなるギアを上げた。
この曲で求められる、テクニカルで超高速なロックチューン。私が「ただの小娘ではない」ことを、音楽的な技術力で証明する。観客の脳裏に、私の「神業」を焼き付けてやる。
憧れた
そして4曲目、『愛き夜道』。
激しさから一転、どこか切なく、孤独な感情を歌い上げるこの曲で、私はマスクの奥で静かに目を閉じた。
―――教えてくれた君への感謝は尽きないけど―――
これで歌い上げるのは……一見すると楽しく賑やかな「宴会」の裏に潜む、繊細で奥深い感情。
分かり合えた嬉しさ。それと同時に感じる―――この一瞬の愛しさ。
このライブもいつかは終わりが来るように、いつか、この生活も変わっていく。学生生活なんてそんなものだ。
過去の苦悩と、皆との絆。これを実感している身からすれば、私の決意を……「逃げたくない」って気持ちを伝えたい。
会場の空気は、熱狂から深い感動へと変化していく。
そして、私は、最後の核心へと向かう。
ギターの音が、一度、静寂を切り裂く。レイカはマイクスタンドを強く握りしめた。
「次の曲は……私、黎毬神社を、そして歌を、私たらしめるものを、見つけるための曲です」
歌う決意を固めると同時に、私の髪が変化していくのが分かる。黒い髪がさらさらと伸び、輝くような金髪へ。瞳は全てを射抜く黄金色へ。けれど、それはもう、誰かを傷つけるための「変異」じゃない。自分自身の本質を肯定し、希望へと手を伸ばすための―――
「――――――Resonance」
私たらしめるもの。
エレクトロニックな厚みのあるメロディと、黄金の姿になった私の力強い歌声が共鳴し、観客のヘイローを優しく、激しく震わせる。
「――――――」
外見や形式ではなく、内側にある「大事なもの」こそが本物を形作ると断言するこの歌は、私という存在を観客たちに焼き付けるのにピッタリだ。
歌が持つ力が、憎しみでも破壊でもなく、感動を生み出す希望であることを、私自身が、観客自身が、今この場で証明している。
今なら、私らしい旋律が、境界の果てまで届く気がした。
曲が終わった瞬間、スタンディングオベーションが起こった。
ここにきた観客たちが、噂と私の音……。どちらを信じたかは、私に向けられた視線や、拍手や、歓声が何よりも証明していた。
◇◇◇◇◇
音瀬コタマは、客席からレイカの姿を見上げていた。
いっそ神々しいとまで思った。新調したばかりの眼鏡が、ステージから放たれる黄金の光を反射して白く輝く。
最初は音楽の裏方をやっていたが、チヒロに「客席行ってきな。あんたが一番好きなんでしょ、黎毬神社の巫女さん」と交代させられて客席に来た。今はもうチヒロに感謝しかなかった。
自身が「推し」と定めた少女が、かつて自分を縛り付けていたトラウマの鎖を、自らの旋律で引き千切っていく。その光景は、一人のファンの境界を超えて、一人の「信徒」として救いを見出すのに十分な光景だった。
感動のあまり過呼吸気味になりながらも、コタマはレイカがギターを高く掲げるのを見た。
「――最後はこれよ! 全員、祭りだと思って楽しみなさい!!」
また、知らない旋律。
先程までの重厚なロックや叙情的なバラードとは一転、体育館は爆発的な「和」のディスコビートに呑み込まれた。三味線のようなフレーズが電子音と絡み合い、お祭り騒ぎのような能気なリズムが、観客の理性を完全に奪っていく。
レイカの煽りに合わせ、ミレニアムの生徒たちが、ライブに来た観客が一斉に手拍子を始めた。
流れるようなラップが、レイカの口から飛び出す。それは以前の彼女では考えられなかった、自由奔放で、底抜けに明るい歌声だ。
地上も地下も、人間も鬼も、ここでは関係ない。
ただ音に浸かり、心を温める。偏差値が下がろうが、ミレニアムの生徒たちは、理屈や計算を放り投げて笑顔で踊り始めていた。
レイカはステージを跳ねるように踊り、黄金の髪を振り乱しながらギターを掻き鳴らす。
歌詞に含まれるユーモアと、底抜けの明るさ。そして、千変万化するレイカの姿。それは「神社の巫女」である彼女が、自らのルーツを最高のジョークに変えて披露しているかのようだった。
「わあぁぁぁ! 巫女さま! 最高です!!」
コタマは、無我夢中で拳を突き上げていた。気づけば、隣でモモイとミドリも、そしてアリスまでもが「わっしょい!」と叫んで跳ねている。
最後の一音が、体育館の天井を突き抜けるように響き渡り、レイカが深く一礼してステージを去る。暗転した会場。しかし、熱狂は冷めるどころか、密度を増して渦巻いていた。
コタマは、震える喉を無理やり震わせた。
「アンコール……アンコール!」
それは、小さな、しかし熱烈な叫びだった。
その声に呼応するように、モモイが、ミドリが、そしてユズが声を重ねる。
「アンコール! アンコール!!」
波紋は一気に広がった。ついさっきまで疑念の目を向けていた観客たちが、今は感動の続きを求めて、一丸となって声を張り上げている。地鳴りのような「アンコール」の合唱が、ミレニアムの体育館を物理的に揺らした。
――そして、ステージに再び、一筋のスポットライトが落ちる。
「……全く。アンコールなんて、セットリストに入れてなかったのに」
苦笑まじりの、けれど隠しきれない歓喜を帯びた声。
レイカが再びステージの中央に立った。その手にはギターではなく、星屑を散りばめたような輝きを放つマイクが握られている。
「―――仕方がない。なら…後日、別の機会で披露する予定だったこの曲を歌いたいと思います!!!」
レイカの宣言の瞬間、体育館を壊さんばかりの爆発的な歓声が巻き起こった。誰もが「伝説の続き」を期待して瞳を輝かせている。
「聞いてください―――『プロト・プロローグ』」
レイカが指を鳴らした瞬間、これまでの激しいロックや賑やかな和風サウンドとは全く異なる、洗練されたシンセサイザーの透明感ある旋律が流れ出した。
続いて、トランペット、サックス、トロンボーンが奏でるファンクで小気味よいブラスセクションが、夜空に星が瞬くように降り注ぐ。
会場は一瞬にして、幻想的で、どこか懐かしく温かいアーバン・ジャズステージへと変貌した。
「忘れないで、この夜の輝きを―――」
「―――僕らが語った 星の夢を」
その歌声は、もう誰かを圧倒するためのものではなかった。
ただ、隣にいる仲間たちと、この素晴らしい時間を共有したいという、純粋な祈りのような旋律。黄金の瞳に映るのは、サイリウムの海。
それは彼女がかつて恐れた「化け物の光」などではもうなかった。自分を受け入れ、そばにいると誓ってくれた友人たちへ送る、友愛の光そのものだった。
回るミラーボールの光が、巫女装束と黄金の髪を宝石のように彩る。レイカはステップを踏みながら、優雅に、そして力強く歌い上げた。
「境界線を超えて出会った 不揃いな僕らのBGM」
「エンドロールの先も 旅は続いていく」
いつの間にか、ミレニアムの体育館の屋根が消え、本当の満天の星空の下で歌っているかのような錯覚に陥る。レイカの歌声に合わせて、モモイたちが、先生が、そして数千人の観客が一つになって体を揺らしていた。
やがて、ブラスの余韻が夜の空気に溶けるように消え、レイカがゆっくりとマイクを下ろした。
「……ありがとう。以上、黎毬神社の巫女でした」
仮面の奥で見せたのは、過去の自分を許し、今を受け入れた、最高に綺麗な笑顔だった。
白峰レイカ
完全復活。黎毬神社の巫女として、ライブを完遂した。なお、正体バレはまだ恥ずかしいしやらないほうがいいと思っている。でも、それよりも信じられる仲間に好きな音楽を聞いてもらえる事が幸せ。
「私は…やっぱり、東方ボーカルを布教したかったし、音楽を作りたかったんだ」
レイカ(洩矢のすがた)
『Scream out!』を歌う時に変身。なんかちょっと雨(幻覚)が降りやすくなるとか。
レイカ(森近のすがた)
『ハートビートが鳴りやまない』を歌う時に変身。「道具の名前と用途が判る程度の能力」が一時的に使えるようになるとかならないとか。
レイカ(飯綱丸のすがた)
『天狗ノ華』を歌う時に変身。観客はこの時のレイカに真っ白な翼を見たそうだ。
レイカ(伊吹のすがた)
『愛き夜道』を歌う時に変身。イブキではない。酒にメッチャ強くなるらしい。本人は知らない事だが、このバフがないとレイカ自身の酒の強さは皆無に等しく、酒入りチョコ2個で酔ってしまう。
レイカ(紫のすがた)
摩多羅神のすがたとよく似ている。見分け方は本人曰く「愛。というかゆかりんとおっきーを見分けられないとか終わってる」とのこと。
レイカ(星熊のすがた)
『ゆけむり魂温泉Ⅱ』を歌う時に変身。酒にメッチャ強くなるらしい。本人は知らない事だが、このバフがないとレイカ自身の酒の強さは(((ry
ゲーム開発部
レイカと仲直りができたほか、レイカのライブを間近で見ることができた。
「さすがは、アリス達のバードです!」
「流石っていうか、超有名人だったんだ)…、ライブ、かっこよかった!」
音瀬コタマ
無事限界化した。
「ワァァァァァァァーーー!!!!」
各務チヒロ
コタマのために音楽の裏方を代わった。
「本当にすごいわね、レイカ……」
先生
無事ファンになった。
「“ワァァァァァァァーーー!!!!”」
好きな東方ボーカルは?
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幻想に咲いた花
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Bad apple!!
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月に叢雲花に風
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HANIPAGANDA
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ファビュラス
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Help me, ERINNNNNN!!
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ウサテイ
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23145EASONS
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Spring of Dreams
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天狗ノ華
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Paranoia
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鬼畜最終妹フランドール・S
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幻想サテライト
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色は匂へど散りぬるを
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天弓天華オトハナビ
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ハートビートは鳴りやまない
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マツヨイナイトバグ
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フラグメンツ
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チルノのパーフェクトさんすう教室
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それ以外