ビンランド合衆国 某所
ある夜、合衆国のとある研究施設を睨み何かのタイミングを伺う影があった。
?「こちらObserver、Intruder状況を報告せよ。送れ」
無線「こちらIntruder指揮官、侵入成功。引き続き監視を続行されたし。送れ」
Observer「了、十分に警戒されたし。Observer通信終わり」
無線「Intruder、通信終わり」
その影は国防陸軍所属の特殊作戦群であった。情報があったラグナイト関連の人体実験を行っているとされる研究施設の調査及び拉致被害者とされる女性たちの救出が今回の目的で彼らは潜入している。
そこはとある製薬会社の所有する研究施設とされている。しかし、警備をしているのが軍人で、しばしば軍の高級士官の出入りが目撃されている。ただの製薬会社というには無理がある。
潜水艦そうりゅう 艦内
通信士「Observerより入電、対象施設への侵入成功です」
艦長「ふむ、問題は情報が確かなものかどうかだが」
副長「ですね。もしも誤情報なら大変なことになります」
艦長「うむ」
特戦群の隊員が音を立てず、警備を無力化する。潜入という事もあり、声ではなくハンドサインで会話をしている。周囲を確認した後、扉を開けて室内に侵入する。
Intruder1「ここから二手に分かれる。ラビット小隊はIntruder2に、ドーベルマン小隊は俺に続け。今回はあくまでも救出と情報収集だ。無闇な戦闘は避けろ、以上」
隊員たち「了解」
二手に分かれた特戦群の隊員たちは、それぞれ研究区画、資料保管区画を目指す。
研究区画
そこには規則正しく置かれたベッドが並んでいた。
Intruder2(さて、無事ここまで来れた。どんな実験をして……っておいおい、ベッドで寝てるの全員子どもじゃねえか。人体実験てだけでも非人道的な行いなのに。子どもを使うとは許せんな)
電極や点滴、謎の装置に繋がれていたのは全員子どもであった。すぐさまIntruder2は写真を撮影し、部下とともに子どもたちを担ぎその場を離れて合流地点へ急いだ。
資料保管区画
時を同じくして、Intruder1たちは資料保管区画にて実験に関する資料を漁っていた。
Intruder1「これも違うか」
資料を漁り始めてから30分が経過しようとしていた。いくら部屋の前の警備を無力化しているとはいえ、巡回が回って来ないと限らない。隊員たちに焦りが見え始めたその時だった。
Intruder5「あった」
Intruder1「見せてくれ」
Intruder1が資料に一通り目を通す。
Intruder1「間違いない。でかしたぞ。これが手に入ればもう用はない。撤収s」
Intruder1が指示を出そうとした途端警報が鳴り響いた。
スピーカー「緊急事態発生!侵入者の痕跡を発見。警備兵は全員出動!総員、警戒態勢!これは演習ではない!繰り返す」
不覚にも無力化した警備兵が他の警備兵に見つかってしまったのだ。
Intruder1「意外と早かったな」
Intruder3「恐らくですが、外の無力化した警備兵が見つかったのでしょう」
そうしていると、突然怒号が響いた。
警備兵「居たぞ!」
見つかってしまった。警備兵は発砲した。すかさずIntruderたちは遮蔽に身を潜めた。
Intruder5「おいおい、警告も無しに即発砲かよ。ありゃ話をする気も無さそうだぜ」
Intruder1「どうやらそのようだな。武器の使用制限を解くと同時に無線封鎖を解除する。応戦せよ」
その言葉を聞いた隊員たちは89式小銃のセレクターをセーフティから連射に変更した。
隊員たち「了解!」
銃撃戦が始まり、室内のけたたましさが増した時、Intruder1は無線で通信していた。
Intruder1「こちらIntruder指揮官、情報を入手。しかし、警備に発見された。現在戦闘が進行中。救援を要請する。送れ」
無線「こちらIntruder2、そちらの要請を受領する。五分耐えれるか?送れ」
Intruder1「可能である。送れ」
無線「了、現場へ急行する。通信終わり」
Intruder1「通信終わり」
そして通信を切る。
Intruder1(まずいな、このまま長期化すれば弾薬が持たん。かといって大人しく死ぬわけにもいかん。とすれば………)
彼が取り出したのは閃光手榴弾だった。ピンを引き抜き、警備兵に向けて投げる。
Intruder1「フラッシュバン!全員目を閉じろ!!!」
数秒後、轟音と同時に激しい閃光が辺りを包む
警備兵「ぎゃあああ!」
警備兵「目が、目がぁぁぁ!!!」
警備兵が目を抑え、感じたことのない激痛と目の奥に光るスパークに藻掻き苦しむ。
Intruder1「今だ、走れ!」
すきを見計らって、Intruderたちは駆け出した。幸いにも追ってきたのは少数だった。
研究施設 正門前
向かいに位置する高台からObserverはH&K G28狙撃銃を構えていた。Observerのスコープに走ってくるIntruderたちとそれを追いかける警備兵の姿が見えた。
Observer「こちらObserver、これより掩護を開始する。送れ」
無線「了、撤退ルートの指示求む。送れ」
Observer「了、そのまま進行せよ。送れ」
無線「了、感謝する。通信終わり」
Observer「通信終わり」
通信を終えると同時にObserverは、狙撃を開始した。G28から警備兵に向けてまっすぐ銃弾が飛んでいく。脚に銃弾が命中し、警備兵は倒れ込む。Observerは次々に銃弾を命中させ、警備兵を無力化していく。
無事逃げおおせた特戦群の隊員たちはチェックポイントで合流、その後そうりゅうに乗り合衆国を後にした。
日本国 東京都新宿区 防衛省市ヶ谷地区
コツコツという革靴の音が廊下中に木霊する。その音の主は有坂一等海佐であった。分厚い書類を担ぎ足早にとある場所に向かっていた。
ある扉の前に立ち、ノックする。すると
榊原「どうぞ」
と返事が帰ってくる。彼が向かっていたのは榊原統合幕僚長の執務室であった。入室の許可が出た為、彼は部屋に入る。
有坂「失礼します」
榊原「特戦の連中は何かしら持ち帰る事ができたようだな」
有坂「はい。非常に興味深いと同時に非人道的としか良いようがない内容でした」
榊原「………」
有坂「こちらです」
有坂が書類を手渡す。
榊原「あぁ、ありがとう。もう大丈夫だ」
有坂「失礼します」
そう告げた彼は退室していった。
有坂が部屋を出た後、榊原は書類を一枚一枚丁寧に確認していった。
一通り目を通した彼は、数刻間を開けて言葉を発した。
榊原「まさか、ヴァルキュリア人の末裔が存在していたとはな」
この世界ではヴァルキュリア人という人種は、何百年も前に滅んだということになっていた。しかし、実際はそうではなかった。
現在ヴァルキュリア人の子孫たちは、世界各地に広まり分布している。本当の自分の人種を知らぬまま平穏に暮らしているのが大半である。しかし、研究施設の子どもたちはそうではなかった。
榊原「なんつう酷いことしやがる。それも全員子どもじゃないか!?」
一枚の写真を見ながらそう言うと彼は、書類を握り締めた。
榊原「益々許せん連中じゃのう………………こがいな事なら侵略戦争しとる帝国の方がよっぽどましじゃ!」
こうして、合衆国に対し憤りを覚えながら、彼は閣僚会議に提出する書類を制作するのだった。
首相官邸 会議室
藤森「___というのが今回の調査報告となります」
藤森防衛相が報告内容を読み上げると、会議室内が騒然とした声で溢れた。
国家公安委員長「やはり、非人道的な研究を行っていたか………」
総務相「では、そんな国と我々は同盟を組んだというのか!?」
厚労相「国民が知れば大惨事ですよ!?」
東野「皆さん、一旦落ち着いて下さい。確かにこの事は大問題です。直ちに阻止するための措置を講じた方が良いのでしょう。ですが、現在日本は帝国と戦争中です。そんな状況でこれ以上敵を増やす訳にはいきません」
東野の一言で会議室は、沈黙に包まれる。数秒の間が空いた後、彼は再び口を開いた。
東野「問題は日本が戦争しているということだけではありません。資源、食糧の不足が転移以降ずっと続いています」
農水相「総理の仰る通りです。主食については、米など備蓄がありなんとかなっています。しかし、他の穀物、野菜、食肉などは輸入に頼り切りでしたので、不足または在庫がもう無いという状況です」
東野「そう、それに加えて合衆国とは条約を結んでいます。そんな矢先で条約破棄なんてことになれば、始まったばかりの資源及び食糧の供給は無くなります。そうなれば国民の不安、怒りは我々政府に向かいます」
国家公安委員長「総理の仰ることが現実になった場合、国としての機能は失われ戦争どころではなくなります。それどころか、合衆国が侵攻してくるなんて事になりかねません」
東野「どうしたものか」
閣僚たちが頭を抱えたその時、ある男に妙案が浮かんだ。
藤森「提案があります。よろしいですか?」
東野「言ってみてください」
藤森が喋り始める。
藤森「まず、帝国に対する国防軍の進駐は予定通り行います。それとは別に情報隊員を合衆国に派遣し、動向を監視させるのはどうでしょうか?」
東野「それも考えたのですが、監視役の隊員がバレた時のリスクが高すぎます」
藤森「では、新しく設立された対外情報戦略局*1の隊員はどうでしょうか?彼らは一回身分証の履歴など全てが抹消されています。なので、
情報漏洩のリスクも少ないかと」
東野「確かにそれならいけるかもしれません。では、議題の採決を取ります。賛成の方はご起立ください」
その言葉を聞いた閣僚たちは全員起立した。つまり可決されたのだ。こうして日本は合衆国を対象国(仮想敵国)と認定し、帝国に対しては本格的な本土攻撃が決まった。それからも、国内の諸々の問題に対する会議が十時間以上続いた。
ビンランド合衆国 某所
「すごいな。まさか、こんな短期間で条約締結とは驚いた」
「そりゃあ、あの国とは条約結んどいた方が良いだろうな。未知とはいえ、凄い技術力を有してるらしいからな」
街のいたる所で話される『あの国』と言うのは日本のことである。何故このように話題になっているかと言うと、新聞記事に書かれている事が原因だった。
『ビンランド政府日本国と条約締結』とその日の記事一面を飾っていた。彼らが言うように、日本の技術は未知であり、大変興味深いものだ。というのもビンランドはこの世界でいえば技術大国という側面があり、未知の分野は開拓したい性分らしい。(そんなフロンティアスピリットがあるなら、引き籠らないでほしい)
「にしても、政府も思い切ったよな。技術力が高い同盟国が欲しいと言っても、未知の勢力と手を組もうと思うか?普通」
「でも、そのニホンて国は帝国と戦争中だよな?技術供与し合えば帝国を倒せるし、Win-Winなんじゃねえの?」
「確かにそうだが、何か嫌な予感がする」
彼の予感は的中していたが、それが判るのはもっと先である。
「んな事はさておき、最近ラグナイトと同等の能力がある資源が見つかったらしいぞ」
「へぇ、詳しく教えてくれよ」
「名前は確か、『石油』とか言ってたな。ただ、ラグナイトと違って煙が出るらしい。なんでも、その煙には有害物質が含まれてるらしいがな」
「ラグナイトの方が断然優秀じゃねえか」
「それがな、そうとも言い切れねぇんだなぁこれが」
「どういう事だ?」
「お前、自動車の最高速度って知ってっか?」
「確か、一番速いやつも70kmちょっとくらいじゃなかったか?」
「そんなもんだろ。だがな、ニホンの自動車は、100kmなんて当たり前に出るらしいぞ」
「そいつは本当か!?」
「らしいっつう話しか聞いてねぇから実際はわかんねぇな。だが、凄いのは戦車も舗装された道なら余裕で70km出るって話だ」
「マジかよ………敵にならなくて良かったな」
「ホント、それだよ」