現代日本と戦乙女のワルツ   作:カジエモン

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今回は小説パート、拙いかもしれませんがごめんあそばせ。


とある兵士と少女

季節は夏

日本は高温多湿に加え、地球温暖化の影響により年々夏の気温が上昇していた。しかし、この年だけは違った。転移の影響により、日本は例年よりも涼しい夏を迎えていた。

そんな中、帝国領ヴラディネストク*1にて円匙(シャベル)片手に前線基地構築のための掩体壕を掘る青年がいた。

 

?「ふぅ〜、前の世界よりも涼しいとはいえ、動くと汗でビショビショだぁ」

 

と言いながら肌に張り付いた迷彩作業服を剥がし、隙間から風が入るように手を扇ぐ。彼は日本国防陸軍所属の1等陸尉、鈴木涼介(すずき りょうすけ)。防衛大学校を卒業後すぐ、国家非常事態の影響により幹部候補生学校を経ずに部隊に配置された。帝国領侵攻作戦において指揮官不足のため、階級が特進しており、1個歩兵中隊を任されている。

 

?「お疲れさん。少し休もうぜ、涼介」

 

そう彼に語りかけるのは、同期の山口錬(やまぐち れん)。階級は同じく1等陸尉である。

 

涼介「そうだな。みんなにも休憩を取らせよう」

 

錬「そうこなくっちゃ。部隊全員に差し入れ持ってきたから、トラックから降ろすの手伝ってくれ」

 

作りかけの半地下式トーチカの傍に停車するトラックを指差しながら錬が言う。

 

涼介「わかった。で、その差し入れってのは?」

 

そう聞くと錬は快活な笑顔を見せながら言った。

 

錬「それは見てからのお楽しみだぜ♪」

 

涼介「ほーん………随分と粋な贈り物と見た。しょうもねぇもんだったらただじゃおかねぇぞ?」

 

錬「フッ、見たら大歓喜すると思うぞ?」

 

涼介「そりゃあ楽しみだ」

 

 

 

トラックの荷台を覗き込むと、クーラーボックスとダンボールが山積みになっていた。

 

錬「中身を確認してみな。夏にはピッタリのもんが入ってる」

 

涼介「おう」

 

涼介がクーラーボックスを開ける様子を満面の笑みで錬は見つめる。

 

涼介「おぉ!これは、ラムネか!それに、こっちはスポドリ。ダンボールの中は………………なるほど、塩分タブレットか。確かにこいつはいい贈り物だ」

 

それを聞いた錬は上機嫌に喋りだす。

 

錬「だろぉ?司令部からの『奮励努力を惜しまない国防軍人たちへのプレゼント』だそうだ」

 

涼介「よぉし………みんなぁ!ひとまず休憩にしよう。司令部から差し入れがあるぞ」

 

それを聞いた隊員たちが手を止め、涼介たちの方へ歩みを進め始める。

隊員たちは各々好きな飲み物を取り、飲み始める。渇いた喉を潤す清涼飲料水は彼らにとって何よりも美味かった。

 

涼介「ラムネと言えば、このビー玉押し込んで開ける動作よなぁ」

 

シュポンッ!と小気味いい音を立てながらラムネが開く。開いたラムネを彼はゴクゴクと一瞬にして飲み干した。

 

涼介「プハァ〜っ!やっぱ夏はこれだよこれ!」

 

錬「キンキンの炭酸水って暑いときに飲むと生き返るぅ!ってなるよな」

 

涼介「それな」

 

こうして、夏特有の休息を満喫した彼らは作業に戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?(………息が苦しい………足を今すぐにでも止めたい…でも…止まったら殺される………!)

 

森林の中に怒号と銃声が鳴り響く。

青い髪を持ち、特徴的なケープを羽織る少女とセミオートライフルやサブマシンガンをその少女に撃っている男たちが追いかけっこをしていた。

 

"ダルクス人狩り"である

 

帝国兵「あっちに行ったぞ!」

 

帝国兵「逃がすなぁ!」

 

?「ハァ…!ハァ…!………」

 

ダルクスの少女は必死に走るが、徐々に帝国兵たちとの差は縮まっていく。

 

?(………………あっ………もう………………駄目、だ………)

 

そう彼女が力尽きる直前に帝国兵の銃とは違う銃声が響いた。

後ろを振り向くと先ほどまで自分を追いかけ回していた帝国兵が血を流して倒れていた。

草むらから緑を基調とした迷彩戦闘服を来た軍人が出てくる。

 

国防軍兵士「タンゴダウン!」

 

国防陸軍の兵士が20式小銃を照準しながら周囲を警戒する。

 

国防軍兵士「クリア!」

 

国防軍兵士「クリア!」

 

国防軍隊長「オールクリア!残敵なし」

 

その言葉に少女はへたり込む。

 

国防軍隊長「大丈夫か?お嬢さん」

 

少女の目から大粒の涙が溢れ、わんわんと泣き始めた。別に国防軍の兵士が怖かった訳ではなく、安心したのだ。

 

国防軍隊長「あ、あれ?」

 

国防軍兵士「ちょっと〜、隊長が強面だから泣き出しちゃったじゃないですか〜」

 

国防軍兵士「それでなくても隊長は普段から怖い顔してんですからぁ。大丈夫かい、嬢ちゃん?」

 

その時2人の頭にガツンと衝撃が走る。

 

国防軍兵士「痛ったぁい!」

 

国防軍兵士「何すんですか隊長!」

 

国防軍隊長「お前ら、言わせておけば抜け抜けと!上官侮辱罪で軍法会議に掛けられないだけ感謝することだな」

 

こうして少女は日本国防軍に保護された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2週間後

 

ヴラディネストク 日本国防軍 北部方面軍 進駐部隊司令部

 

涼介「僕に養子ですか?」

 

?「あぁ、本土からの命令でな」

 

涼介の目の前にいる無精髭を生やし、胸に多くの防衛記念章と徽章を着ける男は林忠通(はやし ただみち)。陸将で、進駐部隊の司令官を務めている。

 

涼介「僕、子育ての経験ないんですが………」

 

林「うむ、それは承知の上だ。というより、もう聞き飽きた」

 

涼介「へ?」

 

林「お前みたいに養子縁組法で里親になった隊員どもが皆口を揃えて同じことを言っていたからな」

 

涼介「どうにかならないんですか?」

 

微かな望みを持って言ったが、林は首を横に振った。

 

林「無理だな。なにせ、市ヶ谷からのお達しだ。俺にはどうにもできん」

 

涼介は落胆した。子育て経験がないのは勿論、孤児など育てたことがあるわけがない。

里親、それも難民となるとかなりハードルが高く、特にダルクス人に関しては文化の相違を受け入れられる家庭か、同じ難民でも余裕が無ければ受け入れられない等かなり厳しい条件下に置かれている。

それ故に里親が見つかり辛く、孤児院は収容人数的に逼迫している。

そのため少しでも施設と職員の負担を軽減する為、ある程度余裕があり審議会の厳しい審査の下で問題なしと判断された公務員などに孤児を引き取らせる措置を取っている。そのための法律が「戦災孤児及び難民孤児の健全育成と養子縁組に関する法律」である。

 

林「そんなに肩を落とさんでもいいだろうに………………まぁ、流石にいきなり決まった事で可哀想だし、お前さんの荷物の輸送手配は俺がしとくよ。だから、腹括って早めに荷物まとめとけよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本国 埼玉県朝霞市

 

涼介「久しぶりだなぁ、地元に帰るのも………里親っていう条件さえなければ順風満帆な里帰りだったんだがなぁ………」

 

ぼやきながら、用意された官舎の扉の鍵を開ける。中には自分の荷物が入ったダンボールが積まれていた。

 

涼介「荷解きして、簡単に掃除でもしておこうかね」

 

銀英伝の某提督みたいに自分の被保護者に家事とかを任せっきりにはできないので、荷物整理と部屋の掃除をする。

 

涼介「げっ、もうこんな時間か」

 

ふと時計を見ると、針が夕方の4時を指していた。掃除に夢中ですっかり時間のことを忘れていたようだ。

 

涼介「まぁ、時間までには間に合ったようだし、急いで夕飯の用意をしよう」

 

被保護者となる孤児は6時に来る予定だ。それまでまだ時間はある。学生時代以来久しぶりの料理だったため、少しもたついたが、感覚を取り戻し手際よく調理していく。

出来上がったのはビーフシチューだった。

 

涼介「うん、これでよし。味もいい感じだ」

 

味見をして鍋の蓋を閉じた時にインターホンが鳴った。

 

涼介「はーい、少々お待ち下さい」

 

玄関を開けると少女が立っていた。ダルクス特有の青髪で、特徴的な刺繍が施されたケープを羽織っている。

 

涼介「君が今日来るって言っていた子かな?」

 

?「はい、今日からお世話になるリズです」

 

涼介「リズか、よろしくな!」

 

涼介の声に少しビクッとしたリズだったが、「よろしくお願いします」と返した。

 

涼介「ここで話すのもなんだし、とりあえず中に入ろう」

 

リズ「はい」

 

 

 

 

 

2人はテーブルに対面する形で座っていた。

 

涼介「さてと、それじゃあいただきます」

 

リズもそれに合わせてスプーンでビーフシチューを掬い口に運ぶ。一口食べたあと、ボロボロと泣き始めた。

 

涼介「うわぁ!どうした!?大丈夫?口に合わなかった?」

 

慌てて涼介が聞くとリズは首を横に振った。

 

リズ「違う、違うんです。まともなものを食べたのが久しぶりで、それにこのシチュー、お母さんが作ってくれたシチューに味が似ていて」

 

涼介「そうか、口に合ってなかったのかと一瞬慌てたけど、そういうことだったんだね。大丈夫、ここは安全だから一旦落ち着こう」

 

そう涼介に宥められ、十分程経ってようやくリズは落ち着いた。

 

リズ「私には両親と妹がいました」

 

涼介「うん」

 

「いました」という過去形なあたり、既に殺されたか、連れ去られたのだろうと彼は予測する。

 

リズ「………………………両親は戦争が始まってすぐに私と妹を逃がしたあと………帝国兵に射殺されたそうです………………」

 

涼介は黙って彼女の話を聞く。

 

リズ「それから私たち姉妹は東に行けば助かるという噂を聞いてがむしゃらに目指しました………………でも、途中でダルクス人狩りにあって、周りの大人たちは殺され、子どもたちは連れ去られました………………………」

 

涼介「………なるほど、それで妹も」

 

リズがこくりと頷く。

 

涼介「………………それで私だけ、逃げてきたんです………………なんで………………なんでダルクス人というだけで殺されたり、酷いことをされなきゃいけないんです?」

 

彼女の目には涙がうかんでおり、ついには大声をあげて泣き始める。崩れ落ちたリズを涼介が抱きとめる。

 

涼介「辛かったな、よく頑張ったな………今はそれでいいんだ。気が済むまで泣けばいい」

 

リズ「なんで………なんで、私ばっかり…!………なにも悪いことしていないのに………!」

 

それから彼女は抱きとめる涼介に自分の故郷でのこと、戦争前は何事もなく家族を愛し愛されていたこと、話を聞く限り戦争さえなければ両親が殺されることも妹が連れ去られることもなかったという。

泣き止んで話し始めた彼女の目には怒りが込み上げており、やれダルクス人以外の故郷の連中と帝国が憎いだの、助けてくれなかった連邦が憎いだの、最終的にはヴァルキュリア崇拝のユグド教が憎いと世界の全てを恨むような年相応の悪口で非難をこぼしていた。

 

リズ「………スゥ………スゥ」

 

涼介「ありゃ、溜まっていたもん吐き出したら疲れたかな」

 

そう言うと、彼はリズをベッドに寝かせて夕飯の片付けを始めた。

 

涼介「………………………元はといえば、宗教のせい………か」

 

彼はこの世界の主だった宗教、ユグド教について回想していた。

 

涼介「ユグド教はヴァルキュリア人を崇拝する宗教で、この世界じゃ国教にしている国が多数を占める………………前世のキリスト教みたいなもの………か」

 

今更の説明になるが、彼は戦場のヴァルキュリアシリーズを学生時代に全クリしている経験があり、用語も覚えている。

 

涼介「………………………司令部に提言して、ユグド教をぶっ潰す!なんてことができたらいいが、この国は宗教の自由を認めている手前無理だろうなぁ」

 

彼は目標もなくただ生活するような人間だったが、この日彼にとって人生で初めてしっかりとした目標ができたのだった。

*1
史実世界におけるウラジヴォストーク




涼介「なんか年の近い娘ができた件」

リズ「私は復讐の鬼に堕ちる」(国防軍入隊フラグ)

帝国「ガリア硬スギィ!」

連邦「ジークヴァルライン硬スギィ!」

ヴィンカス「研究所がぁ!少女がぁ!」(ヴァルキュリア研究所爆散)

エディカス「キグナス作戦がぁ!」(雪上巡洋艦建造できず)
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