世界を守って死んだ(事になっている)最強騎士は自分の影響力を知らない   作:城之内

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第10話 遺跡最深部にある秘宝がキモい

 

 

 火花を吹いて機能を停止したゴーレム達を眺めながら、アレンは長剣を鞘に納めた。

 

 周囲の壁は開いたままだが、ゴーレム達が現れる気配はない。

 流石に無限に沸いてくるわけではないようだ。

 

 遺跡の警備兵全てを片付けたアレンが小脇に抱えているアスモデウスを硬い床に降ろした。

 

 彼女はアレンを上目遣いで見上げ、にんまりと笑う。

 

「……文句を言いつつ、わらわの言う通りにしてくれる。アレンの優しいところ、結構好きじゃぞ?」

 

「……はいはい、武器に好かれてもね」

 

「むう、わらわはこの姿が本当の姿なの! 大昔に剣に封印されたのッ」

 

 肩をすくめたアレンはゴーレム達の残骸を容赦なく踏みながら、巨大な門の先に広がる古代遺跡の内部へと歩を進めた。

 

「そんな事よりさ、皇国が一帯を禁足域に指定している理由、俺わかっちゃった」

 

「なんじゃ急に」

 

「古代遺跡を警備しているさっきのゴーレム達が理由だと思う。この遺跡に来ても世界騎士以外は多分殺されるだけだよ」

 

 アレンだから何とかなっただけで、英雄ではない者が足を踏み入れた時、恐らくなすすべもなくゴーレム達に殺されてしまうだろう。

 つまり皇国は無謀な冒険者がこの地を訪れる事がないようにしているわけだ。

 

 しかし、アスモデウスはアレンに半眼を向けた。

 

「……お主は良い方に考えすぎる。わらわ的には古代の遺産や技術を皇国が独占したいだけだと思ったのじゃが」

 

「……人類連合の盟主がそんなあくどい事する?」

 

「する」

 

 断言した。アスモデウスは皇国が嫌いなのだろうか。

 

 ただ彼女の考えも一理ある。結局は皇王に聞いてみないと分からない。勿論、アレンはもう世界騎士を殉職した事になっているので、未来永劫そんな機会は訪れないが。

 

「アレンよ、古代帝国の皇帝と現代の覇権国家の王の名に共通点があった事はどう考えておる?」

 

「多分遠い末裔とかそんなんでしょ」

 

「……実は本人だとしたら?」

 

「いやいや、あり得ないよ。どんだけ長生きしてるの。妖精(エルフ)族もびっくりだわ」

 

「……まあ普通はそう考えるんじゃが」

 

 喋りながら遺跡の内部を見て回る。遺跡は無数の小部屋に分かれていた。遺跡というか、ほぼほぼ研究施設である。 

 

 どの部屋も埃が凄い。

 

 ボロボロになった本が何冊も置かれた本棚。床には様々な形の魔法陣が描かれ、卓の上には実験器具が散乱している。どの部屋も似たような雰囲気だ。

 

 複数の室内を見て回って、気になった事がある。

 

 それは透明なカプセルのような容器に入ったミイラ化した死体が十数体確認できたことだ。

 

 彼らの傍の机の上には魔力核(マナ・コア)を模した図が描かれていた。研究者ではないし、何より古代文字なのでアレンは見ても分からないが、びっしりと文字が刻まれている。

 

 予想になるが、もしかしたら人体から抜き取った魔力核を詳しく調べていた。もしくは人工的に造った魔力核を人間に移植していたか。

 

 とにかくここは魔力核(マナ・コア)の研究施設だったようだ。

 

「……これは英雄核(ブレイブ・コア)の設計図……! 実用化すれば誰でも英雄級の強さが手に入る……」 

 

 何やらアスモデウスは一人で虫食いまみれの紙切れを見てぶつぶつ呟いているが、アレンとしてはもう飽きてきた。

 

「古代遺跡っていうから期待してたんだけど。お宝っぽいのなくね?」

 

「……む? あるのじゃ、ほら」

 

 アスモデウスが指差した先。

 深奥にある比較的広い部屋。自動で開く扉を潜ってアレンは足を踏み入れた。

 

「何だこのキモいのは」

 

 灰色の壁から朱色の触手がいくつも伸びて、室内の中央に置かれた台座の上にある巨大な水晶と繋がっている。

 その巨大水晶の中には脳みそとしか思えない物が浮いていた。

 

「――古代遺具(アーティファクト)の一種、【支配の呪脳(ブレイン・オーダー)】」

  

 アレンの背後でアスモデウスが解説してくれる。

 

「わらわと同じで、これも意思を持っておる。あの触手と一度でも繋がると、魔力を宿すものであれば生物、非生物問わず支配の呪脳(ブレイン・オーダー)の操り人形と化してしまう」

 

「……え、非生物も?」

 

「うむ。魔力核が搭載されたゴーレム達全てを遠隔から操作していたのはこいつじゃ」

 

 アスモデウスは同じ古代遺具(アーティファクト)だけあって非常に博識だ。

 幼女形態の時は戦闘だと完全にお荷物だが、今は解説役として重宝する。

 

「……凄いな、見た目キモイけど」

 

「……とは言え、今となってはゴーレム達も全部壊れておるからな。何もできんただの無力な脳みそじゃ」

 

「あ、やっぱあれ脳なんだ……ちなみに人間があの触手に繋がるとどうなるの?」

 

「思考の一切を失ってしまうのじゃ。痛みも恐怖もない、あのゴーレム達のようになってしまう」

 

「……」

 

 つまりは洗脳の道具と言い換えても良いだろう。

 

 アレンとしては正直要らないが、古代遺跡を探索してお宝一つも持って帰らないのは寂しい。

 あんなのでも古代の秘宝。

 

 アレンが近づくと、来るなと言わんばかりに壁から触手を離して向かってくる。

 

 速さは大したことがないので、とりあえずアレンは危険な触手は根本から全て斬り飛ばしてから、

 

「ボヨちゃん。あれ収納頼む」

 

「ゲコ……」

 

「いや、遠慮するなって。ほら」

 

 取り出したカエルの精霊獣はどこか及び腰だったが、渋々顔を巨大化させて古代遺具(アーティファクト)をむしゃむしゃ飲み込んだ。

 

 こうしてアレン達は偶然にも発見した古代遺跡の探索を終えた。

 

 元来た道を辿り、古代遺跡から脱出してすぐ。アレンは良い事を思いついた。

 

「あ、そうだ。俺みたいに禁足域に何かの拍子で来て、この遺跡に辿り着いた人の為に書き置きしておこっと」

 

 アレンは親切心から入り口に当たる地下への階段前に木の立て札をわざわざ作って置いた。

 

 古代遺跡を発見してワクワクして入っても、この遺跡には宝がない。入るだけ無駄だ。

 

 なので、

 

 ”この遺跡に眠っていた危険な宝は頂いた。探索は無意味だ”とちゃんと書いておく。

 

 ”流浪の傭兵ノワール”と一応名前も書いた。

 

 次にこの地を訪れる者が何年、いや何十年後になるのか分からないが、ただただ親切心からの気遣いである。

 

 それから二人は約一ヵ月かけて果ての山脈を超え、本来の目的であるスローライフ生活のために人里を目指す。

 

 

 

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