TS貧民少女ですがサイバーパンク世界で成り上がります 作:あめざり
→よしサイバーパンク作品書くか
こんな流れで生まれた呪物
Be reborn again/生まれ変わったよう
硬い寝床に少しのドブ臭さ、真上を走る列車の轟音で私は目を覚ます。
「……はぁ、今日もクソうるせぇな」
眠い目をこすりながら欠伸をし、地面に敷いた雑巾のような私のベッドを片す。
ここはアメリカ東海岸のメトロポリス、天国と地獄が合わさった街『ネオ・ジェリコ』……の端にある貧民街『ローリッジ』。
そして私は『アリシア・ホワイト』、16歳。
元気にTSホームレスやってます。
* * *
私の前世の死因は実にくだらないものだった。
オンボロアパートで一人暮らし中、滑って頭を打ちそのまま孤独死。
何とか大学生まで生きたというのに、その末路がこれなら地獄で笑うしかないと思っていた。
……だが、どうやら神は気まぐれらしい。
気づけば路上で倒れている10代の少女の体に早変わり、その上世界は2040年のアメリカと来た。
そこから窃盗にゴミ漁り、たまにボロ雑巾になるまで嬲られながら生きて約5年間。
だいぶこの世界にも慣れてきた。
「さてさて、今日のニュースはっと……」
そこら辺に投げ捨てられている比較的綺麗なデータチップを拾い、後頭部のポートに差し込む。
元日本人の私からすると、機械部品を道端に投げ捨てるというのはなかなかに衝撃だが、まあ諦めて慣れるのも肝心だ。
「退役軍人のptsd、宇宙開発による環境汚染、連続失踪事件……相変わらずだなこの街は」
いつものように危なっかしい話題ばかりが視界をよぎる。
そんな中、一つの記事が目に留まった。
「新型インプラント?……ま、私には関係ないか」
インプラントとは簡単に言うと体に埋め込む機器の事だ。
身体との相性や他のインプラントとの互換性など、色々と知識が必要で、私としては自作PCの組み立てとかと同じものを感じる。
データチップをポートから抜き取り、ポイと地面に投げ捨て直した。
「よし、仕事行くか」
この街に住むホームレス達は基本的に、犯罪を犯して生きるか真面目に生きて死ぬかの2択しか存在しない。
ここで生きていると、日本の社会保障は神だったと再認識させられる。
私は今も生きているのだから、当然犯罪者の方である。
しかし私がやっているのは生活必需品の窃盗など。その程度、ここじゃ軽犯罪にすらならない。
なにせ警察の数が足らなすぎるのだ。
そのせいか、人が死んでようやく事件扱いだ。
いつも通り周囲を警戒しながら行きつけの店まで向かう。
その店はローリッジから少し離れた区画、『イーストンヴェイル』に建っている。
イーストンヴェイルはここより少し栄えた街。と言っても、「ローリッジと比べれば最低限街としての体裁を保っている」と言うだけで、中々に終わってる街である。
そんな街すら私にとっては高嶺の花なのだが。
* * *
しばらく歩いていると、段々人通りと小奇麗な人が多くなって来た。
そのまま大通りをまっすぐ行けば、よく窃盗させてもらっている個人経営の店に着く。
この世界における盗みとは、そこまで生易しいものでは無い。
確かに盗み程度では警察が動くことはない……が、自衛の意味でなら盗人を経営者側が攻撃することが許されている。
簡単に言うなら、盗みがバレたら何をされるか分からないという事。
下手したら逮捕の方がマシまである。
それ故、バレるのはご法度だ。
帽子を深くかぶり、サングラスをかける。
店のドアを開けると、チリンと鈴の音が鳴った。
一見不規則に店内を歩き回りながら周りを警戒し、人の目が無いところでジャケットの内ポケットに携帯食料をいくつか入れた。
サングラスを通して軽く視点を動かしながら出入り口のドアに向かう。
取っ手に手をかけ、ドアを引いて開け……ようとしたのだが。
「あれ、開かない……?」
外からカギがかかっているのか、いくら引いても押してもガタガタと音を鳴らすだけで開く気配は一切なかった。
すると突如、背後から気配を感じ、そのあとすぐに頭に強い衝撃を感じた。
何か鈍器で殴られたのだろう。
滲む痛みを味わう間もなく、私の意識は深く落ちた。
* * *
目が覚めると、薄暗い部屋の中で仰向けになっていた。
両手両足には鉄の枷がかけられていて、どれだけ力を入れてもビクともしない。
「どこだよ……ここ」
嗅ぎなれたドブの匂いが鼻に突き刺さる。
視界には切れたり点いたりを繰り返す蛍光灯が映っているだけ。
何とか枷を外せないかと体をうねらせていると、足の先の方からコツコツと足音が聞こえてきた。
私はできる限り上体を起こし足音の音源を見る。
そこには、顔にタトゥーの入った大男と、白衣を着た細身の男が立っていた。
「……お前ら誰だよ」
そんな私の問いに対し、大男は何も答えず、白衣の男は「医者さ、見て分からないか?」と答えた。
「今すぐ私を開放しろ、これは立派な犯罪だぞ」
「……ハハッ、君はこれが本当に『犯罪』になると思うのか?」
見下したような笑いと共に、白衣の男はそう告げる。
「窃盗犯で、身寄りもないガキを一人攫った程度でまさか警察が動くとでも?」
何も言い返せない。
だって私も、警察が動かない前提で窃盗を繰り返していたのだから。
『人が死んでようやく事件扱い』、私がよく知っていることだ。
「おい、始めるぞ」
「そうだな。しっかり押さえておけよ」
大男が私の体と頭を強く押さえつける。
その間に白衣の男は医療器具の乗ったワゴンを私の頭側まで持ってきた。
「クソ!手ぇ放せよこの……!」
振り払おうと全力で体を動かすが、手足の枷と大男の拘束で殆ど何もできなかった。
無力感と絶望感が同時に降りかかる。
「ふっざけんな!!お前らどっちも殺してやる!!」
「口が達者なのは良いことだが、少し黙っていてもらおうか」
後頭部に強い痛みが走る。電流でも流されたのだろうか。
直ぐに体中がしびれて動かなくなり、そのまま意識が薄れていった。
* * *
「何だ……!?なぜ一人でに起動する……!」
「いいから早く止めろ!!」
甲高い警報音の中、誰かの声が聞こえる。
先程まで朦朧としていた意識は妙に冴え、曲げることも困難だった手足は自由に動く。
「止める方法はこいつを殺す以外にない!銃を!」
大男が拳銃を私に向けた。
トリガーはまだ引かれておらず、弾は放たれていない。
だが、私の目にはもう一つの光景が映っていた。
半透明の残像のような何か。
その残像には、引き金を引き終わり銃弾を私に向かって放った大男の姿と、放たれた弾丸の軌道が映っていた。
私は銃口ではなく、残像に映る軌道を見ながら体を反らす。
その数瞬後、大男が放った弾丸は残像と全く同じ軌道をなぞって進み、手術台に着弾した。
「避け……!?」
私はその隙に銃を奪い、大男の頭に残像に映った銃弾の軌道を合わせ、引き金を引く。
再程と同じく、残像の軌道の通りに銃弾は放たれ、大男の頭を撃ち抜いた。
力の抜けた大男の体は、残像と同じく後ろに向かって崩れ落ちた。
「……何だよ、これ」
まるで一瞬先の未来を見ているかのような感覚。
この感覚の正体を知っているのは、白衣の男だろう。
私は白衣の男に銃を突きつけ、尋問する。
「おい、私の体に何をした」
「し、知らない!私はただ、渡されたインプラントをインストールしただけで……」
セリフを言い終わる前に引き金を引き、男の身体が地面に倒れた残像に追いつくよりも前に振り返った。
引き裂かれたような痛みを放つ頭を抱えながら、なるべく明るい方に、明るい方にと歩き続ける。
辿り着いた先はどこかの路地裏。
私はそこで、ゴミ袋にまみれながら眠りについた。
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ちょろいので