TS貧民少女ですがサイバーパンク世界で成り上がります   作:あめざり

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Ride on hardships/表の世界

あの誘拐事件から一月、気づいたことが二つある。

まず一つは、私が今いるこの場所が、街の中心地『ミッドナイトセンター』であると言う事。

技術発展の最先端を独走し続ける、ネオンとホログラムが煌々と輝くいかにもサイバーパンクな場所だ。

私が元いたローリッジとは大違い。高嶺の花どころか天界である。

 

そして二つ目、私にインストールされたインプラントだが、どうやら相当ヤバい代物であると言う事。

以前まで付けていた型落ち中古インプラントと比べるとまるで別物だ。

例えば、私を中心にした半径50kmを停電させられたり、スマホのパスワード感覚で暗号化されたデータを元に戻せたり、あらゆるセキュリティを数秒で抜けられたりと、情報処理能力が桁違い。

 

これを使いさえすれば、他人の銀行口座に不正アクセスし、大金を引き出す事も可能っちゃ可能だ……まあ怖くてできていないが。

じゃあ何をして金稼ぎしているかと言うと、やはり地道にバイト、これに尽きる。

今までは身分証の一つすら持っていない住所不定無職だったため、ちゃんとした仕事なんて面接すら受けれなかった。

だが、身分証がデジタル発行なネオジェリコなら、私のチートインプラントを使って簡単に手に入れられる。

私は齢16歳にて、初めて表の世界を知ったのだった。

 

 

 

***

 

 

 

実の所、今日は給料日である。

なので以前から欲しかった服を買いに行くことにした。

誘拐される前まで着ていた拾い物のジャケットは、もはや原型を留めていない。

 

バ先から徒歩5分程歩くと、様々なアパレル店の集まるショッピングモールに着いた。

モール内を歩いている人の多くは、全身をブランド物で着飾っている。少し襟元が伸びたシャツを着ている私は凄く場違いな気がする。

 

フロアマップを確認し、"比較的"安価な店に足を運ぶ。

 

「いらっしゃいませ」

 

軽く会釈をしながら似合いそうなジャケットを探す。

今まではデニム生地の物を着ていたが、未来都市に居るのだからやはりサイバーパンクなファッションをしてみたい。

折角美少女に生まれ変わったのだ、ファッションはとことん拘り抜いてやるさ。

 

「お客様、何かお探しですか?」

「わっ!」

 

突然後ろから店員に話しかけられ、驚きのあまり変な声が出てしまった。

前世からの事だが、服屋はこういった店員とのコミュニケーションがあるから苦手だ。

 

「えっと……新しいジャケットを探してて」

「ではこちらはいかがですか?今流行りのものなんですよ~!ぜひぜひ試着とかもしていただいて~」

 

店員の圧に押されてジャケットを羽織り、鏡の前でいろんなポーズをとってみる。

丈は股関節の少し下まで伸びており、サイズは体格が分からなくなるようなオーバーサイズ。

少女体系なのも相まって、下半身の細さとのギャップが我ながらすごく萌える。

 

「とっても似合ってますよ!」

 

二度の人生で初めて、店員のお世辞に共感した。

正直欲しい、欲しくはあるのだが……

 

「ちなみにこの服っていくらですかね?」

「700ドルですね!」

 

思わず頭を抱える。

700ドルと言う金額は私の給料の半分、流石に気軽に決められる値段じゃない。

だがここ以外の店の殆どは平均1000ドル超えの高級店だ。

だからと言ってイーストンヴェイルの方まで戻るのも……

 

「これ……買います」

「ありがとうございます!」

 

私は覚悟を決め、ジャケットを手に取る。

心に来るので、口座から桁が一つ減ったのは気にしてはいけない。

 

 

 

***

 

 

 

ミッドナイトセンターの物価は高い。

どれくらい高いかと言うと、今の私の所得だと、家賃を払おうとした場合、一文無しどころか借金を背負う事になるほどだ。

そのため私は未だ住所不定である。

 

「金が足りねえ……」

 

カフェの中で前世ならステーキを食べれる値段のコーヒーを飲みながらそう呟く。

当然私の請求書に家賃や光熱費の文字はない訳だが、それでも一日3食食えるか怪しい。

 

(やっぱ犯罪に手染めないとキツイか?)

 

インプラントを使って稼ぐ方法はいくらでも思い付く、だがその大半は法律ギリギリアウトどころか大犯罪である。

そのギリギリアウトを攻めたのが身分証発行。

どうせ犯罪なら大量の魚では無く、魚を釣る道具を買おうと言う考えでやったが、釣れる魚がイワシしかいない、例えるならそんな状況だ。

 

バイトよりも稼げて、犯罪よりも安全な仕事……そんな物があるならすぐにでも飛びつきたいんだが。

 

「お嬢ちゃん、ちょっといいかな?」

 

そんな事を考えていると、突然目の前にパーマの男が座って来た。

 

「何?ナンパなら他を当たりなよ」

「ハハ、そんなにチャラく見えるかな」

「とっても」

 

目の前の男は手に持った缶ジュースを飲み干し、空き缶を握りつぶした。

一見細身だが、相当なインプラントをインストールしているのだろう。

 

「まあいいや。君に少し用があるんだ、もちろん不純な事じゃ無くてね」

 

男は足を組み直しながらこう問いかける。

 

「ついて来てくれるかな」

 

 




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