TS貧民少女ですがサイバーパンク世界で成り上がります 作:あめざり
ハンバーガーを食べ終わり、停めてあった車に乗り込む。
やはり仕事についての会話を公衆の面前ですることは無いらしい。
「それじゃあ仕事の説明をするよ」
そう言ってヘイジーは私とレックスにチップを手渡す。
どうやらこの中に計画の概要が書いてあるらしい。
首元のポートにチップを刺すと、視界に立体的な建物のホログラムが映し出される。
「場所はイーストンヴェイルの北側にある建物。表では車の整備工場を装っているけど、実際はギャング達の拠点として使われてる要塞」
ヘイジーは続ける。
「今回の目的は救出、ターゲットはガレリア・ゲイル17歳。どうやら相当のボンボンらしくてね、この仕事の依頼主は彼の両親」
「そんな奴がどうしてギャングに攫われたんだろ?」
「無闇な詮索はしない方がいいよ。厄介ごとに巻き込まれたくは無いだろ?」
彼女はどうやら仕事と私情をキッチリ分けれるタイプらしい。
私はどうも無理だ、そう言った裏事情が気になってしまう。
「それで作戦だが、アリシアがセキュリティを突破した後、アタシとレックスが建物内部に侵入してギャングどもを蹴散らし、ターゲットを持って帰ってくる。ただそれだけの簡単な仕事だ」
「セキュリティの解除はどれくらいやれば良い?」
「大体3分程度で終わらせてくれれば十分だね」
「りょーかい」
「作戦決行は夜、それまで手遊びでもしてな」
ヘイジーはそう言って腕を組み、目を閉じた。
「嬢ちゃん、俺らどうするよ」
「んー?指スマとか?」
「……んだよそれ」
***
レックスと7時間くらい暇つぶしをして、ようやく作戦決行の時間になった。
そろそろ両手両足指スマも飽きてきたところなのでちょうど良い。
ヘイジーがサングラスを外すかわりにハンドルを握り、アクセルを踏む。
そこからほんの数十分、ある意味で思い出深いイーストンヴェイルの景色が見えてきた。
「着いたよ」
ヘイジーの言葉で窓の外を見ると、ホログラムで見たのと同じ形をした建物がそこにはあった。
「俺らは先に行く。嬢ちゃん、頼むぜ?」
そう言ってレックスはヘイジーと一緒に武器を担いで建物の方へ走っていく。
2人が見えなくなった頃、ヘイジーから連絡が届いた。
「じゃあ早速だアリシア、始めな」
その合図と共に、私は周囲の回線に意識を飛ばす。
まるで目が脳の上に、空の上に付いているような感覚だ。
そのまま私は建物内のセキュリティの場所、ICEの強度を確認する。
配置されているのはタレットやレーザーセンサー式の地雷、警報器にガス発生装置、監視カメラやドローンとよりどりみどりだ。
ICEはそこまで固く無い、ただ数は多い……だがこの程度の物量じゃ当然、サーペントの同時演算の限界は越えられない。
ゲーミングpcでタブを10個開いたところでCPUがイカれるか?
それと同じ、まず土俵が違うのだから。
安物のICEを次々と突破していく。
タレットとドローン、カメラの制御権は私に。それ以外は完全破壊はせずに制御不能状態にしておいて、他の奴が入り込んだらバックドアでそいつのインプラントを焼き払うようにしておいた。
ただ、カメラで見てみた感じ、一階には鉄製の物理的バリケードなども貼ってある。
しかも相手側が身を隠せるような場所も多い。
これでは相当手こずるだろうな……いや、そうだ。
「一階の敵、全員焼きゃ良いじゃん」
即座にカメラを複数起動、敵の位置を全部マッピングし、敵の所持している電子機器を通じてインプラントに忍び込む。
ICEは相変わらず雑魚、そのくせ機械化率が高いな。これじゃあ焼き殺して下さいって言ってるようなもんだぞ。
ここまでにかかった時間は約20秒、最早敵の命は全て私の手中にある。
私は全員を一気にハックする、カメラを通じて見た敵の姿はまさに地獄。
銃を口内に突っ込み自殺する者、後頭部が発火し倒れる者、味方と殺し合いを始める者など……
少し経つと、1階には誰も残っていなかった。
すると突然、上の階のバックドアに反応があった。
おそらく逆探知で私の位置を探ろうとしているのだろう、だがその程度対策している。
『このハックはどっから来てんだよ!!』
『お前は黙ってろ!!今調べてる!!って……は?』
『んだこれ、月面基地……??』
なぜ逆探知が不可能なのか?
答えは簡単、月面基地を経由してここにアクセスしているから。
月面基地は合衆国とシノノメが管理、運用している。つまり使われているのは政府と企業タッグのカチカチセキュリティだ。
当然、そこらのギャングが政府のセキュリティを突破し、源流にまでたどり着くことは不可能である。
勿論、逆探知を試そうとした者達は全員脳を焼かれて死んだ。
「ヘイジー聞こえてる?もう入って良いよ」
『中々早かったじゃ無いか。……って、これは』
「一階に敵は誰もいない。2階もドローンで見張ってるから、角待ちとかは警戒しなくて大丈夫」
『ハッ、中々ってのは訂正するよ。アンタ最高だね』
「どうも」
2人はいとも簡単に建物を制圧した。
そりゃ当然、敵は元々いた数の5分の一程度、その上ハックにバックドアで混乱している。
殆ど一方的な蹂躙である。
『今からターゲットを連れて帰るよ。良い子で待ってな』
そうして一時的に通信が切れる。
建物の方を見ると、パンツ一丁の男を背負った二人が見えてきた。
レックスが後部座席に男を乗せ、ヘイジーが銃をトランクにしまう。
「こいつが例のボンボン?結構怪我酷くない?」
「やられてたのはほぼ拷問か。ンなことする理由は大抵」
「……欲しい情報がある場合」
「だな」
ヘイジーにも言われたが、こういう怪しい事例に対して詮索はよくない、よくないのだが。
私は横になっている男からデータを抜き出し、そこから痕跡をたどる。
データにも足跡のようなものはある。その正体はデータの転送記録。
それを道筋のようにたどると、一つのサーバーに辿り着く。
「……シノノメのデータサーバー?」
こいつがシノノメの人間?いや、調べた限りでは、こいつもその親もシノノメとは全く関係が無い。
じゃあギャングが……いや、それこそないだろ。
残りは……ギャングがシノノメに雇われてこいつを攫い、内部データをシノノメ側が抜き取った?
どちらにしろ、サーバー内を調べれば……
『あまり、感心できませんね』
突如脳内に声が響く。
それ同時にサーバーとの接続が切れ、頭には電気が走ったような痛みがあった。
「何だ、何を見た?」
レックスが少し心配そうに問いを投げる。
「多分……締め出された。それと変な声が」
「締め出されたって、シノノメのサーバーだろ。あそこ相手なら締め出されるなんてことないはずだが……」
分からない、スペック的には負けていないのにもかかわらずやられた。
あり得るのは2つ、サーペントにシノノメしか知らない弱点があるか、相手が相当の手練れか。
だがどちらにしろ、声の主はインプラントを外す方法について何か知っているような、大きな力を持つ人間である可能性が高い。
どうやら、さっそくツテが見つかったようだ。
評価に色ついてうれしいです。
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