TS貧民少女ですがサイバーパンク世界で成り上がります   作:あめざり

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新章と言うことで、話の流れが変わっていきます。


In the twilight/黄昏に沈む
Rise up/登りつめろ


英国を想わせる大部屋、目の前には金色の装飾が成されたケーキスタンドと汚れ一つない純白のティーカップ。

そして机を挟んだ先に、黒のスーツに身を包んだ小綺麗な女性が1人。

部屋には私と彼女だけ。優雅だが緊張感のある雰囲気が周りを漂っている。

 

(どうして、どうしてこんな事に……)

 

震えた手で震える膝を抑えながら、私はそんな事を考えていた。

そう確か、こうなった原因は10時間ほど前……

 

 

 

***

 

 

 

「仕事?また?」

『ああ。しかも今回はアンタ1人だけをご指名らしい』

 

電話越しにヘイジーのため息が聞こえる。

どうやら中々参っているようだ。

 

「何で私……あもしかして、この前の大活躍のせい?」

 

数日前、私は初仕事で神業とも言えるハッキングを披露しギャングを一掃、見事正義の鉄槌を下し財布も相当重くなったわけだが、それで名が広まり個人依頼が来るほど出世したと言うのもあり得ない話ではない。

 

『ん?独断で突っ走ってシノノメのサーバーに痕跡残した事を『大活躍』と、アンタはそう言いたいわけだ』

「ごめんって……」

 

ただ一つ問題だったのが、大企業のサーバーまで深入りし、そのまま侵入がバレて摘み出されたと言う事。

あの後数日間、現実もネットも常時警戒し続けていたがシノノメからの動きは無く、特に突撃もハッキングもされなかったので恐らく大事にはなっていない……はずである。

 

『とにかく、「アリシアホワイトと2人きりで話したいから指定の店に1人で来い」だとさ』

 

そう言ってヘイジーは店の住所を私に送る。

ミッドナイトセンターのスイーツ店、個室付き……って入場料500ドル!?

 

「超高級店じゃん!個室付きってのも怪しいし、絶対危ない話でしょ」

『まあまともな仕事じゃないのは確かだね』

「まずその相手は誰なのさ。それこそシノノメの連中が殺しに来たのかも……」

『『アンダーソン・ミライ』19歳、ふざけた名前してるね。まあ十中八九偽名だろうが』

 

この町で偽の身分を作れると言う事は、それ即ち相手が相当腕の立つハッカーか、国や企業で高い権力持っている人間という事だ。

私はサーペントを起動し、アンダーソンについて検索をかけてみる……が、情報はほぼ無し。まるで生きていないかの様である。

唯一分かったのは誕生日が12月12日と言うことくらい。

こりゃ確定で偽名だな。

 

『どうするんだい?確実に怪しい仕事だが……その代わり報酬は高いね。店に行くだけで1000ドルだってさ』

「乗った!」

 

 

 

***

 

 

 

そして、冒頭に戻る。

目の前の彼女、アンダーソンミライとやらは、黒のスーツとは対照的な白い髪と、前が見えているのか怪しい細目、何より常にニコニコと笑顔を貼り付けているのが特徴的な女性である。

その高貴な雰囲気は、今まで私が生きてきたアングラな世界とは真反対の、政府や企業といった上流の暮らしを想起させる。

 

「気を張る必要はありませんよ。ただの仕事の依頼ですから」

「実績も無い子供1人を指名して?」

「ええ。それと、実績が無いと言うのは間違いでしょう?」

 

ナプキンで口の端についたクリームを拭き取りながら、アンダーソンは私に問い返す。

恐らく先日の初仕事について言っているのだろう。

 

「ですがまあ……実績などは正直どうでも良いのです」

 

アンダーソンはまっすぐこっちを見ながらこう告げる。

 

「貴方にしかできない仕事があります」

 

と。

ヘイジー達からも聞いた言葉だ。

それはつまり、目的は私の脳にこびりついたサーペントだと言うこと。

 

「それなら却下だね、危険すぎる」

「何故?当然報酬は……」

「そう言う問題じゃ無い。あんたもどうせインプラント狙いなんだろ」

「……ええ」

「だからこそダメだ。このインプラントを使わざるを得ない仕事、これそのものがハイリスクすぎる」

 

正直言って、サーペントは最強だ。

それこそヘイジーやレックスが持ったら、物理でも電子でも最強の兵士が生まれる。

だが私はインプラントの力に頼っているだけのほぼ一般人。まだまだ経験は浅いし、近づかれたら無抵抗のまま殺されて終わりだ。

それに、この仕事を受けなくても生きてはいける。

あの2人と一緒に仕事をこなしながらそこそこの生活を送っていれば、私としては何も問題がないのだ。

 

だからこの仕事は、言うなれば『ハイリスク ローリターン』。

報酬がいくら高かろうと、受ける必要性が存在しない訳だ。

 

「……分かりました。ですがその前に、一つ伝えたいことがあります」

「何?頼みこまれても仕事は受けないよ」

「まず私の名前ですが、偽名です。恐らく気づいていたとは思いますが」

 

名前の話?正直今更偽名と明かされたところでなのだが、まあせめてもの誠意と言うやつだろうか?

 

「身分を偽った事、大変申し訳ないと思っています。ですので、改めて自己紹介をさせて頂きたいのです」

「良いけど……」

「では」

 

コホンと咳払いをした後、アンダーソン……彼女は今の時代珍しい紙の名刺を取り出し、それを渡すと共に名を名乗った。

 

「私は『アカネ シノノメ』、シノノメサイバネティクス社長の娘です」




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