TS貧民少女ですがサイバーパンク世界で成り上がります   作:あめざり

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Our eyes met/夢中

「えっ」

 

私は思わず驚嘆をこぼす。

名前は聞いた事がある、と言うよりもその名を知らないものはいないと言うべきか。

日本名『東雲 茜』、父の才を120%受け継いだと言われる天才令嬢。

勿論嘘である可能性も考慮する……が、名刺にはシノノメの特許技術である特殊加工が施されている。

つまりだ、こいつは本物の……

 

「さて、貴方がお困りの事を当てて差し上げましょうか。CXN-99Aが及ぼす悪影響についてでしょう?」

「やっぱり、それを知ってて呼び出した訳だ」

「当然。先日当社のサーバーにアクセスしていたので調べさせて頂きましたが、まさかアレに適合する者が居るとは」

 

最悪の予想通り、あの深追いのせいでバレたらしい。

ヘイジーの忠告は聞いておくべきだったな。

 

「つまり何、仕事の依頼って体で私を殺しにきたって事でいい?」

「いえ、本日は本当に依頼目的で来たのですよ?それに貴方としても、CXN-99Aの開発元である当社との関わりは欲しいはず。しかしどうやら受けていただけない様なので、最終手段をと思いまして」

 

確かに、殺しが目的なら私はもう死んでいる。

ならこいつの言ってる話は本当?いや、企業の人間が何の裏もなく一サイバーシェイドに依頼なんてするか?

戦闘を通してサーペントのデータ回収、および兵士化が目的とか……

 

「今の状況を理解していますか?これはもう"お願い“では無く、依頼を受けなければこのまま見殺しにすると言う"脅迫"に変わっているのですよ」

 

全くもってその通りである。

元々の目的として、サーペントを外すためにシノノメと関わりを持つと言うのはあった。

しかしこれは、流石に出会い方と関わりの内容が怪しすぎる。

だがシノノメとしてもサーペントに適合出来ている私は珍しい存在らしい、だがそれで優位に立てるほど甘くは無い。

天下のシノノメサイバネティクスだ、殺さず従順にする方法なんていくらでも持っているだろう。

 

優位にとは言わない。だがせめて、対等な関係を築いておきたい。

そして、私にはその方法がある。

 

「……そっちこそ、今の状況を理解してる?ハシゴを外されても私はすぐには死なない。けど、私はあんたを今すぐに殺せる。あんたらが作ったんだ、それができるインプラントって事は分かるでしょ?」

 

私は自分の頭を指でトントンと叩きながら戒めるように語りかけた。

これが私流の、そしてこの街流のやり方。脅しには脅しを、お互いがお互いに力で保険を掛け合う作戦。

 

この場合、お互いが『相手を殺せる』と言う抑止力を持っている状態だ。

そしてどちらかが均衡を破り、力を実際に振るった場合、どちらもが死ぬことになる。

だからこそ相手は強く動けない、私に目線を合わせて話さざるを得なくなる。……勿論、私も。

 

「それにこれは仕事の依頼なんだから、どっちかが手綱を握るだなんてあってはならない。あくまで対等にだよ」

「『対等に』ですか」

 

彼女は少しの間黙り込み、考えたようなそぶりを見せる。

 

「ええそうですね、『対等に』。なら死ぬ時も同じでなければ」

 

彼女の指が、トントンと二回、彫刻のなされた机に叩きつけられる。

それとほぼ同時に、ドアからシノノメの戦闘部隊が突入してきた。

奴らは私の方に銃口を向け、指示を待っているように見える。

 

「これで、対等です」

 

一筋縄じゃ行かない相手なことはわかっていた。

だから対等な交渉を目的としていたのだが、その見積もりすら甘かったらしい。

 

「銃弾より早く私の事を殺せますか?」

「……やろうと思えば」

「ご冗談を」

 

もちろん冗談、大嘘もいいところだ。

さてどうする。なにせこれ以上の作戦は用意していないのだ……

 

(いや、あるにはあるな。)

 

勝てるかもしれないが寿命が縮む作戦が、だが。

 

「アリシアホワイト、今首を縦に振るのなら銃を下ろして差し上げます。ですがもし、横に振ると言うのであれば、貴方は痛い目を見ることになる」

「……やってみなよ」

 

刹那、彼女が指を一度トンと叩く。

それと同時に、私の視界に未来を写した残像が現れる。

それはオーバークロック発動の合図。

彼女の合図で戦闘部隊が発した弾丸、その軌道が全て線になって私を囲んだ。

360度全方位から襲いくる弾丸を見極め、身体を捻りながら軌道に当たらないよう必死で避ける。

 

だが少しの弾丸が身体を掠める。

何せ以前とは弾丸の量が違う。

初めて使った時は拳銃1つが相手だった。

だが今回は高性能のアサルトライフルが10丁、その上囲まれている。

 

とにかく今すべきは、周囲の兵士を1人でも減らすこと。

減らせば減らすほど弾幕の密度は低くなっていく。

勿論素手で、と言うわけには行かない。

1人の武器を奪い、軌道が頭に沿うように狙いを定め引き金を引く。

狙った相手が倒れたら、残像の位置に放られたライフルを手に取る。

そしてまた撃つ、これの繰り返し。

 

10人が9人、9人が8人、8人が7人と減っていく。

不確定要素もクソもない。

相手よりも先に相手の向かう位置が分かるのだ、死角からの攻撃以外で負けはないだろう。

手榴弾は投げられる前に撃ち抜く、回避は避けられる前に撃ち抜く。

気づけば私を囲っていた兵は、1人よりも少なくなっていた。

 

「ほら、これで対等だ」

 

私は銃声ひとつ聞こえなくなった部屋で、銃口をシノノメの眉間に突きつける。

 

「想像以上ですよ。それを使ってまだ倒れないとは」

 

あの日以来の頭痛が頭を襲う。

だがここで弱みを見せたら負けだ。

相手は企業の人間、手札がこれだけとは考えにくいし、こいつ本人がどれだけ戦えるのかもわからない。

 

「……余裕さ……私の事を甘く見過ぎたね」

「そうですね。本来は研究対象として考えていたのですが、評価を改める必要がありそうです」

 

そう言って彼女は服についた埃を払い、席を立った。

 

「後日連絡します。次は仲間の方々も一緒に」

「考えて……おく」

「では」

 

そうして彼女は、血まみれの部屋を去るのだった。




最近仮初の自由を始めました
たのしいです
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