他作品のキャラ同士を○○しないと出られない部屋に閉じ込めるという暴挙 作:邪智暴虐のげえむますたあ
犬夜叉・犬走椛のファンの方には、キャラクターの扱いに不快感を覚える可能性があります。自衛推奨・退避判断は各自でお願いいたします。
「……どこだ、ここ?」
犬夜叉は目覚めると、見慣れない天井が視界に広がっていることに気づいた。簡素だが上質な木材で統一された天井は、普段寝起きしている楓の家のそれとは全く違う。跳ね起きようとした体が、妙な重みに阻まれた。視線を巡らせると、自分のすぐ隣に、見慣れない白銀の髪が横たわっている。
「ちっ、なんだこの女……いや、これは……」
犬耳がピクリと動き、嗅ぎ慣れない、鉄の香を含んだ獣の匂いを捉えた───それは、紛れもない妖怪の匂いだった。しかし、どこかで嗅いだような、しかし思い出せない不思議な匂いだった。
犬夜叉が警戒しながら身を起こすと、隣で寝ていた女も同時に目を開いた。真紅の瞳が、犬夜叉の金色の瞳と交錯する。
「……ッ! 誰だ!?」
女───犬走椛は、見るからに狼狽していた。白狼天狗特有の白い耳がぴんと立ち、同じく白い尻尾が警戒を示すように揺れる。着ているのは、いつもの警邏の装束だ。
「そりゃこっちの台詞だ! てめぇこそ何者だ、この妖怪女!」
「妖怪女!? 私は白狼天狗の犬走椛だ! 貴様こそ、こんなところで何をしている!」
互いに相手を警戒し、すぐさま臨戦態勢に入ろうとした、その時だった。
部屋の奥、それまで何の変哲もない壁だと思っていた場所に、突如として不思議な紋様が浮かび上がった。それは文字のようで、墨で書かれたような線が流れていく。
『───部屋より出ずるには、この部屋の理に従うべし。二つの魂、一つの快楽の頂きに至りて、扉は開かれん』
犬夜叉と椛は、表示された文字を同時に読み上げる。そして、その意味を理解した途端、顔が青ざめた。
「な、なんだと……ッ!?」
「そんな、まさか……!」
二人の間に沈黙が落ちる。犬夜叉は思わず顔を背け、椛は顔を覆った。
この見知らぬ部屋で、互いに見知らぬ者同士が、一体どのように「快楽の頂き」に至れば扉が開かれるというのか。
沈黙が部屋を重く包み込んだ。犬夜叉は顔を背けたまま、眉間の皺を深くしている。椛は片手で顔を覆い、深く項垂れていた。
「おい……冗談じゃねぇぞ、これ」
犬夜叉が絞り出すように言った。彼の心には、ただ一人、かごめの顔が浮かんでいる。
「冗談であってほしい……ですが……」
椛が震える声で呟いた。彼女の脳裏には、とある胡散臭い大妖怪の顔が浮かんでいた。
ふと、椛は犬夜叉の姿を見やり、何かに気が付いた様子を見せる。
「……貴方。その姿、私が知っているどの妖怪とも違う様子。まさかここは妖怪の山はおろか、幻想郷ですら……」
椛が手の隙間から犬夜叉を覗き見る。獣人は珍しい存在ではないが、その不可思議な妖気と、その身に纏う火鼠の衣は、彼女の知る限りではなかった。
「てめぇこそ、その白い耳と尻尾。お前も俺と同じ犬夜叉か?」
「失礼な! 私は白狼天狗だと言ったでしょう! 貴方こそ、その半端な妖力と人間の気配……まさか、半妖か!?」
互いの素性を問い質すうち、「快楽の頂き」などという現実離れした課題は、一時的に意識の外へと追いやられていた。
一触即発の空気が流れる中、犬夜叉がふと気づいた。部屋の隅に、簡素ながらもきちんと整えられた食事が置かれている。水差しも、皿も、きちんと用意されていた。
「これは……飯、か……?」
疲労と空腹が、犬夜叉の手を無意識に伸ばさせる。椛もその存在に気づいたようで、警戒しつつも、水差しに手を伸ばした。
「……毒、ではないようです」
一口水を飲み、椛は静かに言った。部屋は広々としており、見たところ生活に必要なものは一通り揃っているようだった。
ただ、扉が固く閉じられ、あの「二つの魂、一つの快楽の頂きに至りて、扉は開かれん」というお題だけが、重く圧し掛かっている。
犬夜叉は苛立ち半分、諦め半分で唸った。
「ったく、これじゃあ、そう簡単にはここから出られねぇって言ってるみてぇじゃねぇか……」
椛もまた、天狗としての冷静さを取り戻そうとしていた。状況を分析し、最適な解決策を探る。だが、この状況だけは、彼女の知るどの法則にも当てはまらなかった。
逃げ場はない。時間をかけて、この奇妙な状況と、隣にいる謎の半妖と向き合うしかない。
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犬夜叉は食料が置かれていることを確認すると、とりあえず腹を満たすべきだと判断した。非常時とはいえ、空腹は思考を鈍らせる。手近な干し肉を掴み、がぶりと食らいつく。
「おい、てめぇも食っとけ。いつまでここにいるか分からねぇんだからよ」
乱暴な口調ながらも、犬夜叉は椛に促した。彼は単純に、目の前の状況を打破するためには、体力を維持することが不可欠だと考えていた。
椛はゆっくりと顔を上げた。その真紅の瞳は犬夜叉の顔を直視せず、わずかに視線を逸らしている。犬夜叉の言葉に従うように、彼女もまた用意された食料───白い握り飯と、干した魚───に手を伸ばした。
(人間と妖怪の……半妖、か)
椛は握り飯を口に運びながら、内心で反芻した。妖怪の山では、異なる種族間の交わりは珍しいことではない。しかし、人間と妖怪となると話は別だ。天狗の規律において、人間は距離を置くべき対象であり、警戒すべき存在でもある。その間に生まれた半妖は、彼女の倫理観からすれば、まさに「混じりもの」、あるいは「掟を破った結果」としか映らなかった。
何よりも、その存在が発する匂い。人間と妖怪、二つの異なる性質が混じり合った、奇妙で、どこか不純な匂い。それは彼女の本能的な嫌悪感を刺激した。普段であれば、そのような存在が巡回区域に現れれば、即座に報告、場合によっては排除の対象となるだろう。
しかし、今は状況が違う。この閉ざされた部屋の中で、彼と二人きり。あまり不用意な真似は避けた方が無難だろう。
「……そう、ですね。今は空腹を満たすべきです」
椛は平坦な声で礼を述べた。声にはほとんど感情が乗っておらず、まるで機械が発した言葉のようだった。
犬夜叉はその不自然さに気づかず、ただ黙々と食事を続けている。
椛の顔には、真面目な白狼天狗としての冷静さと、天狗社会の規律を重んじる厳しさが張り付いていた。その内側に渦巻く、犬夜叉という「混じりもの」に対する生理的な嫌悪感や、この状況への不快感は、決して表には出さなかった。
(この状況は……早急に解決せねばならない)
椛は、固く心に決めた。この部屋から脱出することは、天狗として、そして自分自身の安寧を取り戻すために、何よりも優先して解決すべき課題なのだと。
隣で無心に食事を続ける犬夜叉を、彼女はあまり視界に入れようとしなかった。