タヨリという名の月兎
月には兎がいる。
私も兎だ。
ただの小さい兎。
モブキャラって奴だ。
「あははっ、追いついてみなよ〜!」
「こら!まちなさい!!
私の名前は宵柱音。
ただの悪戯大好きな月の兎だ。
今日も友達にちょっかいかけて、追いかけまわされている。
「まだかなぁー?」
「はぁ、はぁ、ちょっと…ほんと、待ちなさいよ…」
「分かったよ〜」
今回の悪戯は、私の友達のウサ耳にこしょこしょ攻撃を仕掛けると言うもの。
これ結構みんなびっくりしてくれるから楽しい。
「…ふぅ、音、そろそろ訓練したら?」
「えぇ〜、分かったー…」
月の兎として生きる私だけど、ただのモブではなくて、月の兵としてのモブキャラ。
ちゃんと戦える兎なんだ。
護衛はほぼ人間に任される。
そんな護衛の中、私は唯一の兎という存在だ。
「んじゃまたね〜!
「はいはい、音もさっさと戻って来てよ〜」
「わかった〜!」
先程まで話していた友達の名前は雲霧結、実質生まれた頃から仲のいい大親友だ。
あの子といると暇になることはまずないし、面白い話題もすぐに出来る。
また後で話せるといいなと思いつつ、村の中を走っていった。
「村長ー!来ましたよー!」
「おぉ、音か」
村長は私を雇ってくれてる人。
妖怪とかそう言うのがたまに月に来るから村の護衛をさせてもらってる。
私みたいな小さい雑魚兎をしっかり見てくれるのは結と村長だけだ。
だから村長の家によく遊び(訓練をしに)にいく。
村長はそんな私をニコニコ笑顔で見てくれる。
「村長みて!私武術できるようになったんだよ!」
「凄いじゃないか、音がこんなに強いなら、この村は安泰だね」
「そこまで強くないよ?」
武術を練習、披露しながら村長と会話を続ける。
村長は私のことをたくさん褒めてくれる。
それが1番嬉しくて、モチベーションも上がる。
「なぁ音、私はそろそろ村長をやめようと思ってるんだ」
「えっ、急にどうして…?」
「しばらくしたら帝都が私達を支配しに来る、その時私はきっと、ここの長を降りることになる。だから早めに降りようと思うんだ」
帝都がここに来る。
なんだそのクソみたいなのは。
「…私がここを守る!だから降りないで!」
私は腐ってもここの護衛を任される唯一の兎だ。
何があってもここを守りたい。
「そうか…音は優しいな、負けると分かっていても私をまだ元気付けてくれるんだから」
「負けないよ!」
村長はもう弱気だった。
私は諦めない、ここを支配させるつもりはない。
絶対に。
私は村長の前で、いつもより長い時間訓練を続けた。
────────────────────────────────────────────
宵柱 音(よいばしら たより)
小さな月兎、村の親衛隊。
音を伝える程度の能力を持つ。
雲霧 唯(くもぎり ゆわい)
小さな月兎、村の医者。
閉じる程度の能力を持つ。