小さな夢は幻想へ   作:硴里りま

16 / 28
八意と八雲と

あの頭の良さそうな兎と、もう1人別の子が入ることを知らされた次の日のことだった。宵雲屋の郵便受けに何か紙が入っているのを見つけた。

リビングの椅子に座って開いてみると、八意さんからだった。

 

────────────────────────────────────────────

 

音ちゃんへ

 

────────────────────────────────────────────

 

サッ

 

一旦音ちゃんへ、と言う文字を見た後に一度手紙を読むのをやめた。待って?なんでこんなフランクになってんの?…まぁいいか。最後まで読んでみよう…。

 

────────────────────────────────────────────

 

音ちゃんへ

最近はどう過ごしてるのかは分からないけれど、依頼の方は順調?私の方はあと100年もすれば薬が出来上がるところよ。其方も何か進展があれば、報告お願いね

八意

 

────────────────────────────────────────────

 

なんと言うか、普通に仲良くしてねーみたいな書き方になっていた。まぁ嬉しいよ?仲良くしようとしてるんだなーって。これ、多分文通になるやつだよね?

 

「音どうかしたの?」

「いや、郵便受けに数年前の依頼人から手紙が来ただけだよ」

「八意さん?」

「よく分かったね」

「だってそういうのって八意さんしかいなくない?」

 

確かに。いないかも。

 

「えどうしよう返事したほうがいい?」

「知らないわよ、そんなの自分の思うようにやればいいじゃない」

 

まぁ、来たなら返すべき……かなぁ。よし後で書くか!

 

「…うん、まぁいっか、寝よ寝よ」

「寝るの早く無い?」

「仕方ないよ」

 

結局マジでなんも考えずに寝てしまった。

 

────────────────────────────────────────────

 

 

「…ん」

 

朝になった。まだ眠いけど、そろそろ見回りをしないと、いつどこで帝都が仕掛けてくるか分からない。妖怪が来た時にすぐ応援に行けない。ここはそういう場所だから。まずは門からかな。

 

「おはよう、タヨ、今日もきたんだな」

「おはよう門番さん、朝からご苦労様です」

 

なんというか、やっぱり門番さんは門番さんって呼んだほうがしっくりくるんだよね。

 

門の次は村長の家。村長はまだ寝てた。

 

「お餅でも置いて帰ろうかな」

 

村長の家に私特製のずんだ餅を置いてから移動した。ある程度見回りを終えた後、宵雲屋に戻って朝食を作った。今日はお味噌汁を作ってみた。そうして朝のルーティーンは終わったので、寝坊しかけてる結を起こしに行く。

 

「結!起きて!」

「んぎょぁ!!」

 

全力で結の上に飛び乗ると変な声を出して飛び起きた。

 

「あはは!結すっごい声〜!」

「アンタが乗っかるからじゃない!」

「へへっ」

 

いつもと変わらない結の少し怒ったような表情を見てから、私は結から飛び退いた。

 

「げふっ、飛び乗るのも飛び退くのもやめなさい」

「わっはっはー」

「はぁ…」

「朝ご飯ならもうできてるよ〜」

 

ぴょんぴょんしながら台所まで行って結を手招きした。結はちゃんとこっちに来て、ご飯を運んでくれた。

 

「…珍しいわね、お味噌汁なんて」

「久しぶりに作ってみたくてね〜」

 

私がお味噌汁作ると大体何か起こるから、極力作らないようにしている。本当に変な依頼ばかりくるからね。なんて考えてたら、ドアが開けられた音がした。

 

「…え?誰か入って来た?」

「こんな朝っぱらから??」

 

本当に依頼が来たのかも知れない。私達は急いでご飯を食べ終え、玄関まで移動した。そこにいたのは小さな女の子だった。

 

「グスッ、うぅ…」

 

しかも泣いてた。

 

「ど、どうかしたの…?」

「みんなっ、私の夢否定する、の!」

「夢…?」

「うわぁぁぁ」

「あぁぁぁやばいやばい、さっきより泣いたったよ(?)」

「噛むな噛むな」

 

大泣きする少女からは、小さな妖力が感じられた。まさか妖怪…?

 

「…あれ、いや、妖力…?」

 

何故?ここには妖怪が居ない(?)はずだ。

なのに妖力?

 

「ん、お姉ちゃんどうしたの…?」

「君、種族は?」

 

一応怖がらないようにしゃがんでから質問をした。

 

「妖怪だよ、みんなからは隙間妖怪って呼ばれてる」

「スキマヨウカイ??」

 

彼女の種族はスキマヨウカイというらしい。

 

「能力と名前言える?」

「能力は境界を操る程度の能力で、名前は八雲紫だよ」

 

へぇー…強そう…。

 

後に紫ちゃんが落ち着いたので先程言っていた『夢』の話を聞くことにした。

そして、聞いたところによると紫ちゃんは全てを受け入れる世界を作りたいとのこと。妖怪も人間も、種族関係なく仲良くできる世界を。そんな理想郷を。

 

「つまるところ、みんなに否定されて、ダメ元で月に来てみたらここに辿り着いて、私たちを見つけた、と」

「うん…」

「にしても、よく月まで来れたわね、それも能力のおかげ?」

「うん」

 

能力で月まで来れるのはだいぶエグい。

 

「それで、紫ちゃんはどうしたいの?」

「全てを受け入れる世界を作るの、手伝って欲しい!」

「よく言えました〜」

 

結が紫ちゃんをぎゅっと抱っこして、持ち上げた。

紫ちゃんは笑顔でそれを受け入れた。

でも、全てを受け入れる世界、それに共感したのは本当に私達だけなのだろうか。

 

「あ、でも依頼料は…」

「私たちと仲良くする、それだけでいいよ!」

「えっ、でも…」

「…いいのよ、いつもこんなだから、コイツのせいで」

「あうっ」

 

全てを受け入れる世界…か、それが完成したら八意さんも受け入れてもらえるのかも?

 

────────────────────────────────────────────

 

八雲紫

当時おおよそ10歳

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。