「音、おかえり、訓練どうだった?」
「めちゃ疲れた〜!結慰めて〜」
「はいはい…」
結はいつもより長い時間訓練して、帰って来た私を面倒そうに撫でてくれた。
「うおぉ…結さいこ〜」
「温泉に浸かったおっさんみたいな声出さないでよ…」
「仕方ないじゃん、結のなでなでが心地良すぎるんだから」
「うわ…」
「引かないでお願い」
私達は同じ屋根の下で暮らしている。
土地が少ないらしい。
村だし、仕方ないよね、とは思っているけど、本当にこんな楽しい生活をしていいのか、そっち方面の不安が私の中に残った。
そんな中、ふと浮かんだのは帝都が支配しに来るという村長のセリフ。
結なら、帝都が支配して来た時、どんな行動を取るのだろう。
「…ねぇ結」
「ん?」
「もし今、帝都が攻め込んで来たらどうする?」
「え、帝都が?どうしたの急に。まぁ、私なら医者の仕事を全うするかな」
「ほぉ、結らしい回答だね」
結は私を撫でる手を止めて私にも同じ質問を返した。
「そういう音はどうなの?」
「私?私はね…」
どうするのだろうか。
村長への宣言通り守り抜くために動くのか、はたまた怯えて何もできないのか。
「…私も、仕事を全うするかな?」
「なんで疑問系なのよ……」
「いやぁ、勝てなかったら困るからなぁ」
「いや、アンタ普通に強いわよ」
「んなわけ無いじゃん、私の能力『音を伝える程度の能力』だよ?」
私の能力は本当に音を伝えるだけのものだ。
爆音で鼓膜を破るくらいの戦法しかないクソ能力(?)だ。
「いやいや、私のとか『閉じる程度の能力』だよ?何に使うんだよって話」
結の能力は、傷口を閉じる時などに役立つ。
私のはそういうのない。
ただ音で人を楽しませるとかそんくらい?
「…まぁ、私たちが一緒にいたら怖いものなんてないでしょ」
「確かに、結という名の私の親友がいれば、私に負けはないかもねぇ」
揶揄うように言ってみると結は負けじとこちらに似たようなセリフを放った。
「本当にね、私に音という名の親友がいれば、帝都だろうがぶっ飛ばせちゃうよ」
そんな微笑ましい会話が私達の間で広がった。
「さぁて、もう遅いし、食事の準備でもしましょうかね」
「そうだねぇ、私の悪戯の回避をしながら料理をする結をようやく見れるよ」
「もう、悪戯は辞めなさいっていつも言ってるじゃないの…」
そんなことを言いながらも、私の悪戯に付き合ってくれる結は本当に優しくて、私にとってかけがえのない存在だと思う。
「今日晩御飯なにー?」
「うーん…お餅とか?」
「変わり映えがないっっ!?」
今日も私達月の兎たちが住む月は、平和に回る。
帝都の兎も、動き出す。