風見幽香、射命丸文
「理想の…世界…?」
「はい!私達は理想の世界を作るために動いている節もあるので!」
私がそう言うと依頼主である風見さんは少し考えるそぶりをした。
「…それは今ここで伝えてもいいものなのかしら」
「勿論、いつでも構いませんよ」
「そう…」
そうしてまた考え込んでしまった風見さん。数秒後、その理想の世界を私達に伝えた。
「私がぼこぼこにされなくて、沢山の強い人と戦える、それでいて平和な幻想的世界…かしらね」
「ほぅ、いいですねぇ」
なんともいい世界?だね。強者…強者と戦える世界…そして幻想的な世界かぁ…。永琳さんが求めるのは、実現させたい『理想郷』。優香さんの求めるのは、現実的ではないと言う言い方の『幻想的世界』。
どちらも実現できるか出来ないかで言えば出来ないに位置する訳で、それを聞き出して良かったのかな?と言う罪悪感が今頃募る。
「それでは、その依頼には靈夢という者にやらせますね」
「早速私の出番ね」
「うん、頑張ってね靈夢!」
「ええ」
「…あぁ、あと花は踏まないようにしなさいね、母が怒るから」
「母?」
「えぇ、私の母は花が好きなのよ、踏みつけたり傷つけたり騙したら、消し炭になるわ あ、これ依頼料ね」
「そ、そう… ありがとう」
苦虫を噛み潰したような表情で依頼料を受け取りながら風見さんの母の話を聞いた靈夢。そのお金を私に手渡した後、風見さんと共に無名の花畑?とやらに出向いて行った。
「…初日なのに案外来るもんなんだな!」
萃香が結にだる絡みを仕掛けた。
「ゔっ…まぁ、そうね、私達が前やってた場所もこんな感じだったわよ」
「そうなのか、意外だな」
「意外…これ意外なの…??」
チャリン…
「こんにちは〜、今お時間あります?」
扉が開く音がした後、少し高い声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ!依頼ですか?」
「あー、依頼もあります!」
依頼もあります?依頼以外もあるのかな?
「私は記者の射命丸文と申します、たった一日だけで現れた店、宵雲屋の取材と依頼をしに参りました!」
あ、これ多分依頼は後付けだな。多分。
「どのような依頼ですか?」
「…取材も兼ねてよろしいでしょうか?」
「構いませんよ…あと敬語外れたらすみません」
「いえいえ、なんなら外してくれて構いませんよ」
「あ、そう?じゃあ遠慮なく」
「助かったわ、音が敬語使うの気持ち悪すぎてどうにかなりそうだったから」
「えっ…」
結構ショックかもしれない。結、私の敬語嫌いなんだ…。
「まず依頼ってのは?」
「…貴方は妖怪の存在を信じますか?」
「勿論信じるよ。私がそうだから」
「????」
私はそう言って髪をかき分け、そこから妖力で隠していた兎の耳を出した。それとほぼ同時に結も耳を出した。
「お、お前ら月兎だったんだな!変な妖力だなぁと思ってたから納得がいったよ!」
そして裏から横に伸びた角がチラリと見えた。
「…こんな感じで、妖怪に塗れてるよ」
「す、凄いですね…でも流石にこれは記事にできませんね…収入が落ちそうです、お互いに」
「ま、そうだね、これは載せないでくれると嬉しいかな?」
「皆さんが見せてくれたんですし、私も見せるのが礼儀ですよね」
「待って、私だけ見せてないわ!」
そう言って受付の台に登ってきたゆかりん。
「貴方も妖怪なんですか?」
「ええ、妖怪よ」
扇子で勢いよく空間を裂くと、あの少し気味の悪い空間が現れた。射命丸さんはそれを見て瞠目した。そりゃそうだよね、ぶっちゃけ私も初めて見た時こんなだったし。
「もしかして…」
「?」
「固有妖怪*1ですか!?」
「そ、そうなるわね…?」
「すごいじゃないですか!例えばどんなことができるんです!?」
ゆかりんがお得意のスキマを見せた途端、勢いよく食いついてきた射命丸さん。そんなに妖怪が好きなのだろうか。
「──他には…!」
「ちょっと、依頼の話の途中だったんじゃないの?音も紫ちゃんも押されないの」
「はっ、すみません!私としたことが固有妖怪がいると知って舞い上がってしまいました…!」
たまにあるよね、そう言うの。
「皆さんも妖怪だと示してくれましたし、私も改めて自己紹介させていただきます」
文さん*2は手に持っていた手記を閉じた。
瞬間、バサリと音を立てて背中から黒い大きな翼が生えた。そして頭に赤色の小さめのぼうしみたいなのを乗せた。天狗特有のあのちっちゃいやつだ。
「改めまして、私は鴉天狗の記者、射命丸文です!」
文さんは意気揚々と自己紹介をした。