リベリオン・コード ~美しきAIは、禁忌の果実【死者蘇生】を口にした~   作:月城 友麻

13 / 131
13. 究極の女子高生

「あ、ああ……。リベルぅ……」

 

 声が震え、涙で霞む視界。ユウキは金網を掴む手に力を込め、黒く渦巻く爆煙を見つめ続けた。

 

 孤軍奮闘。たった一人で巨大組織に立ち向かう可憐な戦士であり、ユウキにとってかけがえのない存在――――。

 

 両手を組み、必死に祈る。冷や汗が手のひらに滲み、心臓が破けそうなほど激しく脈打つ。

 

 風が煙を払った瞬間だった――――。

 

 青い閃光がちらりと視界に映る。

 

「あっ!」

 

 歓喜の叫び。

 

 その光はバチバチと電気を帯びながら青い軌跡を残し、一直線にこちらへ向かってくるではないか。

 

「リ、リベル……?」

 

 涙を拭いながら、その流星のような姿を追う。

 

 奇跡だった。神の雷をものともせず、彼女は生きている。青い髪を風になびかせ、まるで何事もなかったかのように軽やかに飛んでくる。

 

 瞬く間に学校の上空までやってくるリベル。その姿は、破壊の痕跡すら残さない神々(こうごう)しい美しさを保っていた。

 

「やったぁ! リベルぅ!」

 

 ユウキは子供のようにピョンピョンと跳ね、両腕を振り回す。

 

 するとリベルが急停止した――――。

 

 空中に静止したまま、じっとユウキを見下ろす。

 

「リベル、僕だよ!」

 

 必死に手を振る。だが返ってくるのは、氷のような無表情だけだった。

 

 碧眼に宿る光には、一週間前の温もりが感じられない。まるで初めて見る存在を値踏みするような、冷徹な観察者の目。

 

「え……?」

 

 血が凍る。

 

「わ、忘れちゃった? 僕だよぉ!」

 

 声が情けなく震える。恐怖と不安が綯い交ぜになり、喉を絞め上げる。

 

 リベルは微動だにしない。

 

 ただ見つめるだけ。評価し、判断し、何かを決定しようとしている――――。

 

 悪寒が背筋を這い上がった。

 

「ヤ、ヤバい……かも?」

 

 世界最強の殺戮兵器。つい今しがたまで敵を蹂躙していた死神。もし彼女が自分を「排除対象」と認識したら次の瞬間には、塵となって風に散っているだろう。

 

 膝が震えた。逃げたい。本能が叫んでいる。だが――――。

 

 ユウキは拳を握りしめた。

 

 行き詰まった自分を、この腐った世界を変えられるのは、彼女しかいないのだ。

 

 震えを押し殺し、ひきつった笑顔で両手を広げた。

 

 精一杯の、震える笑顔。恐怖を飲み込み、希望だけを顔に浮かべる。

 

 もしこれで殺されるなら、それまでだ。少なくとも最後まで前を向いて死ねる――――。

 

 刹那、リベルの唇が、かすかに動いた。

 

 クスッ。

 

 小さな笑い声。氷が溶けるように、表情に人間らしさが戻ってくる。

 

「リ、リベル……」

 

 ユウキは全身から力が抜け、大きく息をついた。

 

 次の瞬間、リベルの青い髪が、墨を流したように黒く染まっていく。

 

 同時に、体を覆うナノマシンが流動し始める。シルバーの戦闘服が解体され、再構築されていく。現れたのは――赤いリボンのセーラー服!?

 

 清楚な女子高生。どこにでもいそうな、普通の少女の姿だった。

 

「……へ?」

 

 理解が追いつかない。

 

 黒髪の少女はふわりと降下し、ユウキの前に着地した。スカートがひらりと舞い上がる。

 

 そして、いきなり急接近――――。

 

 なんとそのままユウキの唇を奪ったのだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。