最強の魔法少女は対立煽りがしたい   作:カピバラバラ

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それぞれの願い、それぞれの悪意①

 

──魔法連合国軍最高司令官総司令部。

 

通称MHQ(Magic General Headquarters, Supreme Commander for the Allied Powers)にて。

 

当初、異次元生命体からの侵略に対し魔法少女による防衛線を築き上げ、如何なる国籍の差別無く人類生存の為集結した『ラストエデン』。それが当時のMHQを指す言葉であり、現在での総本部は『ラストエデン』をそのまま流用し、南極の『地下』に設営されている。

 

それは人類絶対生存圏を守護し続けた人類という種の砦。幾度の侵略、異次元生命体からの絶滅戦争を生き残った魔法少女と、魔法によって若返りを続ける当時の人間で形成された、人類という種を『見守る』事を目的とした組織。

 

「…なんだ、コレは」

 

No.1は抑えきれない身体の劣化を抑制する為に、精神と肉体の凍結を決定し40年程度。

凍結された肉体は今も尚、MHQに保存されており、人類の危機が訪れた瞬間にのみ彼女の解放が許されている。

 

No.1を凍結封印したのは、今デカデカと浮かぶモニターに映る2人の魔法少女の戦いと謎のスピーチを味わって困惑しているNo.2。

『ラストエデン』はNo.2が実質的な全権管理者として、No.1が残した人類の守護という意志の遂行の為に日夜、国家間衝突の緩衝と勃発的テロに対する抑止と修繕を行っているのだが、

 

「──ソラチ・ユウナと、もう片方は」

 

「登録データベースには情報がありません。近頃多発している変身体盗難によるものでしょうか」

 

「…………」

 

魔法少女には裏技がある。

経験値、技量、判断力、そういった魔法の強さだけではどうにもならない長年の積み重ねによる『地力』の違いを埋める手段が。

 

──それは、記憶の移植。

 

魔法少女化にも活用されている記憶の移植、電子化された戦闘データをVR方式で脳にラーニングさせ続けるメモリーラーニングと言われる方式で、その戦闘経験を自身のモノにする事が出来る。

それは、雑兵を一晩で熟練の兵士に仕立て上げる為に人類が開発した過程の省略であり、異次元生命体の排除後の人類の覇権を握ろうとした者達の醜い争いで、各国にばら撒かれてしまった負の遺産。

 

上から流れたその『やり方』は、犯罪組織や反社組織、金儲けをしたい企業とアングラな下請け会社による利益の取り合いの中で更に粗雑化、個別化してしまい、最早取り締まる事が不可能になった代物である。

 

「現在流通しているマジックメモリーで、ユウナ・バレンタインを上回れる物は無い」

 

「…ですが、説明がつきません」

 

「説明している奴が元気そうにしているだろう、何処かしらの研究所から盗難の報告は」

 

「──特に」

 

「お前も私も、勤務時間外まで使い潰されそうだな」

 

「…………はぁぁぁ…」

 

今日の業務を終え、自室に帰ろうとしていた瞬間の───コレである。

流石に、同部屋内の全員が重苦しい溜息を吐いていた。仕事が長引くのはいつだってそうだが、コレに関しては今すぐの解決手段が無い。

つまりは、暫くの間自由時間を全てこの案件に捧げろ、という事。

 

問題が解決しないのが問題なのではなく、解決しなさそうな問題に対して『対応している』事を装い続けるのが必要とされる悲しき状態である。

 

《次に夢を叶えるのは──貴方達だ。ということで、活動声明として明日、日本の首都に魔法生物を投下します!よろしくです〜!》

 

「…如何しますか?」

 

──正直、愉快犯というには規模がデカすぎる。

本当に愉快犯なのであれば、対応は全てニホン内で終結していた。

問題なのは、このラストエデンにすら魔法で干渉しているという事。

 

20年前、天才カワバタ・ユウキとオカノ・コウタ、カルメン・アーキマン開発メンバーによる魔素の対消滅理論の構築により、人類の魔法に対する干渉手段は爆増した。

既存の技術と組み合わされ、この施設にも魔法と通信両方の外部干渉を遮断する機能がある。

 

つまり、今起きている事は『有り得ない』のだ。

どれだけ巫山戯て聞こえる発言でも、その時点で私が動くに値する。

 

「私が行こう。この不正魔法少女はともかく、この声の主が現れるとするのなら、その場で討つ」

 

「ニホンで待機中のNo.4とNo.3には」

 

「No.3はここに来させろ、私が出る間を任せる。No.4は状況次第だ、対応力は群を抜いているからな…自己判断で動けと言っておけ」

 

「了解──…アメリアさん、No.1は…」

 

「動かせるものか、何処まで行ってもコレは被害の出てない『声明』。そんなものに彼女を起こそうものなら……我々が先に殺されてしまうよ」

 

──彼女は起きない、いや起こさない。

もう、彼女1人に頼る時代は終わった。多くの魔法少女が、互いに力を合わせて人類を守る時代になった。

英雄はここで眠り続ける、再び英雄が必要とされるその瞬間まで、眠らなければならない。

 

「私が、終わらせよう」

 

小学生から中学生、その境目を彷徨っているような見た目をした子供達が、軍服を着て敬礼し合っている異常な光景。魔法少女とて、近年は高校1年生がピークとされているにも関わらず。

それは人類の咎、いち早い救済を望んだ人類による、願いの代償。

 

今日も魔法少女は世界を護る、彼女の願いの為、『老人』達の保身の為、世界を回し続ける。

 

そこに個々人の意志は無く、願いは無く、あるのはただ人類の守護という目的を果たす為だけの機構が生きていた。

 

 

──人類絶対生存圏守護者──

 

──アメリア・ネメシス。

 

 

「──全ては、人類の未来の為に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、どうしよっかなぁ、コレぇ」

 

《私は!悪の組織『マジカルフューチャー』の親玉、ミーちゃんですっ!》

 

18歳程度の女性であろうか。

突如、手に持っていた携帯の画面が切り替わり、謎の魔法同士の戦いを見せられながら、本当に謎のスピーチを聞かされて目を丸くする。

口にくわえたキャンディを噛み砕いて、素早い動きで部屋のテレビをつけ、大画面と高音質でこの異変を楽しむ姿勢へと移る。

 

女性の居る部屋の様子は、実に奇っ怪なもので。

天井も、床も壁も、全てが真っ赤に染められていた。リビングは室内プールが設営出来るのではないかと言う程に広く、家具も、食器も、何もかもが真っ赤っか。

 

最早猟奇的と言っていい部屋の模様に、女は特製の『椅子』に座りながら、呼び寄せた赤色の燕尾服を着た執事に、赤色のクッキーを口に運ばせて画面に釘付けになる。

 

「悪の組織、ね」

 

《私達は、今の社会に対してひっじょーに!非常に不満があります!!魔法少女が魔法少女らしく生きてないのもそうですが!》

 

《──何故!皆さんは魔法少女という存在がありながら!自らの願いを叶えようとしないのか!》

 

「……ふーん?」

 

「ねぇ、コレどう思う?」

 

女が話しかけるのは、自身が『椅子』と『玩具』にしている相手。

文字通り尻の下に引かれ、四つん這いで腕をプルプルとさせている男に向けて問いかける。

 

「ど、ど……わた、私は、なんて腹立たしい奴らかと……」

 

「腹立たしい?なんで?」

 

「も、勿論!我々のネットワークに無断で干渉し!このような巫山戯た下らない犯行でアレハ様の時間を奪い!各支部に混乱をもたらしていると予想出来るからで──!」

 

「違うよね?」

 

「っ」

 

「私は腹立たしくないよ?私は、なんで?って聞いたの。なんで私が腹立たしくないのに、君が怒ってるの?君は私のモノでしょ?」

 

「──なんで、私と違う事を考えてるの?」

 

「ひっ…」

 

女の深紅の瞳が、男を食い殺すように見つめ続ける。部屋の温度が二、三度、下がったであろう気分に襲われ、男は冷や汗をかき始める。

だが『椅子』が最も重視されるのは座り心地だ、座り心地が良いから、『椅子』は『椅子』としてその役割を果たしている。

 

──座ってて気分が悪くなる椅子なんて、要らないだろう?

 

「なんで下らないなんて言ったの?」

 

「それは」

 

「私は、とっても、とってもとっても面白いなって思ったよ?少なくとも『下らない』君より、私はこの子達の勝負と誰かのお話の方が、面白かった」

 

「ねぇ、なんで?なんでかな?」

 

肝の温度は氷点下にまで達し、真冬に冷凍庫の中へ投げ込まれた様に感じ、男は身体の震えが止まらなくなる。

問い、問い、問い。それに答える持ち合わせは男には無く、ひたすらに無言の時間を過ごしてしまう。

 

喉がしゃくりあげ、涙腺が緩み、首を何度も傾げる女性に為す術が無い。尻から体内へ差し込まれた筒状の爆弾が、脳内でピコピコとその音を鳴らしていた。

数秒後の自分に、真っ赤な結末を想像をしながら唾を必死に飲み込んで、

 

「あ!分かった!」

 

「君、私の為にそう言ってくれたんだよね!」

 

「───」

 

「は、はい!はい!!そうです!!」

 

「あー良かった、なんだなんだ」

 

満面の笑みになった、自分よりも30歳も年下の少女に対し、心の底から安堵を抱いた。

 

「なら、バイバイ!──BANっ!!」

 

──抱いたまま、頭を撃ち抜かれ身体は爆散したのだが。

指鉄砲の形をとって、頭を目掛けて放たれたソレは、部屋の床に男の脳髄を撒き散らす。

男の責任の形として体内に入れられていた無様の証である爆弾も、その爆発が部屋を汚す事は無く、少女が手を出すとその平に爆発の火炎と衝撃が全て収束していき、球体となった。

 

男の残骸が部屋を汚らしく汚す事は無い、何せこの部屋は四方八方が赤に染められた空間であり、血も、男だったものも、床に溶けて見えなくなっていく。

 

「自分の意見を話したって事は、君は『椅子』じゃなくて、『失敗した残念な子』になるって事だし!組織のボスとしてケジメをつけるのは当たり前だよねー」

 

──男は、チャンスを与えられていた。

巨大麻薬組織『イーコール・カルテル』において、マトリによる検挙は1度たりとて許されるものでは無い。

 

どれだけの成功を収めていても、失敗=死の世界で、男は生き残るチャンスを与えられる程の功績を挙げていた。

贅の限りを尽くしても、その命が消え去るのは一瞬で、『魔法混合幻覚薬』……麻薬の売人は、秋の風にかき消されるロウソクの火のように、その生涯を終えた。

 

「あむっ、と。爆弾分は貯蔵しといてあげる私やっさしー…さてさてぇ?」

 

爆発を収めた球体を飲み込んだ少女は、再び画面に釘付けになる。

どこかの誰かは分からないけれど、凄く楽しそうに殺しあっていて、

 

「うん!この子、私のモノね!」

 

──ものすっごく、気に入ってしまった。

毒を使う、元気な女の子?かな?スピーチも面白いけど、この子の方が気になる〜!

 

「執事さーん!この子、この子捕まえるようにみんなに言って〜!」

 

「──了承致しました、アレハ様」

 

「私の、私のだよね!この子私のだから!」

 

──東南アジアの麻薬ネットワーク、その大半を掌握する『イーコール・カルテル』。

あらゆる犯罪、反社組織が不可侵のアンタッチャブルに指定するイーコール・カルテルの拠点、『聖域』。その頂点に座するのは唯の少女1人。

 

魔法混合幻覚薬、ヘブンズ・キャンディとも呼ばれるソレを作り出し、残虐性と戦闘能力、付き従えば利益だけは保証されるこの世で1番無法で自由な体勢によって、世界に禍根を残し続ける最悪の魔法少女。

 

人類の『歴史』、悪意の結集に、その身一つで名を書き連ねようとする怪物は───。

 

「いいよ、いいね、うんうん!ニホン!ニホンか!!」

 

人類同士の戦争の中で流失した、魔法少女の記憶媒体『マジックメモリー』による魔法少女化の被害者だ。

 

 

──イーコール・カルテル首領──

 

──アレハ・イーコール。

 

 

「全部!全部ッ!!」

 

 

「ぜーーぇんぶ!私のものッ!!!」

 





組織名まんまGHQじゃねぇか!というツッコミは受け付けていません(断固たる意志)

それと続々新キャラが出るこういう演出、書いてみたかったんですよね!!なのであと一話この流れ続きます
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