最強の魔法少女は対立煽りがしたい   作:カピバラバラ

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黒主に勝利を、全てを生贄に

 

《──オリテアァッ!!》

 

──私の脳内回線に、ドクターの叫び声が入り込んでくる。

絶賛私は顔面をボコボコに殴られながら、箒の先から飛んでくる謎のビームに黒焦げにされていた。

正直やりづらいったらありゃしない、せっかくの皆の晴れ舞台をこんな形で無茶苦茶にされてるのは本望では無いけれど、私がちゃんと戦おうとする方が余計に話題性を私がかっさらってしまう。

 

「Gyaon!?(なんですかぁ!?)」

 

「余所見してんじゃないわよ!メテオ☆パーンチ!!」

 

「Wuuuuuu!(どこがメテオですか!ただの威力あるだけのパンチが!)」

 

「んぐ…何か物凄く言ってる事が分かる気がする!腹立つわね!!メテオキーック!!」

 

《お前!またなんか隠してやってねぇだろうな!?》

 

「Gau!Gyaooo!!(またって何ですか!いやまぁやってはいますけど今こっち忙しいんですよ!!)」

 

一番楽な方をやってみるか、一番面倒だけど全員が得する方をやってみるか。本来想定していたのは、ちょこちょこっと強めの魔法少女が対応しに来て、ダークちゃんとユウカさんで戦って貰いながら…勝てなさそうな方は私が対応する、そういった感じだったんだけどね。

 

ここまでパニックが広がってしまうと、私達が何をしようと『悪の組織』の印象は薄れる。ビッグネームの集まりすぎだ、こんなんじゃ気分良く帰れないな〜…。

話題性っていうのはね、ちゃんと賞味期限があるんだよ。食べ物みたいに単調な味だとすぐ飽きられて捨てられるし、量が多すぎても少なすぎてもみんなの意識の中に残らない。

 

今の状況は──さしずめ、量が多すぎる上にエキゾチックで普遍性が無い、シェフの気まぐれ創作料理を無理矢理口に突っ込まされてるみたいな感じ。

ユウカさんみたいな現代っ子&魔法少女は、これじゃダメなんです。毎日のお昼アニメを見るようでは、唯の騒動と日常として消化されてしまう。

 

───計画を前倒すか否か、面倒な方はコレだ。

 

《同一魔素構築体……というか、分身持ちの魔法少女が日本支部を乗っ取ってるって話を聞いたんだが…お前じゃないだろうな?》

 

「─────」

 

あら、あらあらあらまぁ。何処で知られたのかな?それ。

しまったなぁ、ミーちゃんにも知られてない筈なのに…。調べたのはドクターじゃないか、ドクターは常私の目の届く場所にいたし。

仕方ない、何はともあれ先に全員を集合させましょうか!後十分程度戦えば、程よく明日のニュースの中心になって……。

 

「アストラルビーム!」

 

「………」

 

「メテオ…!──っ!?」

 

「貴方、ちょっと邪魔です」

 

カレンの頭上に巨大な『手』が現れ、驚きに目を見開く間に地面へと叩き落とされた。

地面に墜落して尚、『手』はカレンを押さえ付けて離れず、アスファルトと頭蓋をミシミシと鳴らしていた。

カレンの目の前には一人の少女。熱気と人混みに揉まれながらも一切の汗をかいていない姿は、天衣無縫を想起させる。

 

身体を抑えられているだけなら、魔法使いカレンに退かせ無い障害物は無い。手足が動かずとも魔法があればこの状態から脱出出来るはず。

 

「ソレ、動かせませんよ」

 

「……ぐっ…!」

 

「何がどうなって、自分が一体何をされているかが分かっていない。魔法は万能でも『魔法使い』に隙は産まれます」

 

「この騒動が終わるまで、そこで寝ていて下さい」

 

「アン…タ…!こなくそっ!!」

 

「『フォールダウン』」

 

「あがッ!?」

 

…まぁ経験の差です。例えば同じ武器、同じ銃を持っていたとして、プロのガチガチに武装した軍人と素人の子供じゃ比べるまでも無い差がある。

 

「ふむ」

 

さて、この状態からこの騒動…物語の主導を私達に戻す方法はというと。

 

「VTuberデビュー、してみますかぁ!」

 

──勿論!私なりのやり方で面白くしていきましょう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──貴様、もしや『古獣』か?」

 

「え?違うぴょん」

 

「…………」

 

「────?」

 

「「…………」」

 

──暗黒の繭に包まれて、No.2とミーちゃんはその繭の中で互いの顔を見つめキョトンとしていた。

 

「…嘘をつけ」

 

「いや本当にミーは唯の悪の組織の親玉ぴょん。ミーはただこうして生きてるだけで、古獣だのなんだのはそっちの都合ぴょん」

 

「……」

 

「……」

 

「「………」」

 

敵は──攻撃を仕掛けてこない。

暗黒の繭でこちらを拘束してから、何も動かない。仕舞いには空間からちゃぶ台と茶菓子を出す始末だ。

魔法を使いたくても、この謎の繭の中では魔法が乱され使用できず、尚且つ魔素そのものが固定化されているのか、変身体の能力も使えない。

 

「何故魔法が使えるのに私を殺さない?この状況だ、絶好の機会だろう」

 

「ミーが使える魔法はこれぐらいぴょん、戦闘用に魔法を作ってあれば別ぴょんけど、ミーはそもそも戦う気は無いぴょん。というかそっちこそ、その剣を使ってミーを殺しに来ないのは何でぴょん?」

 

「………さっきの魔法が効かなかった時点で、あれ以上を出すには魔法が使えないと話にならない」

 

「うんうん、なら……お茶でもするぴょん!」

 

「───訳が分からぬ」

 

悪を名乗るなら、『No.2が魔法を使えない』状況を逃すか普通?空間から食べ物を出したということは、魔法で空間に干渉できる、干渉できるのなら幾らでも活用しようがある。

戦闘用の魔法等わざわざ作らずとも、今作ればいいだけの話。

 

この繭の様な高度の魔法──現存する魔法少女では誰も作りようがない、やはりチグハグだ。私の意図しない所で事態が変わり続けるのは歯痒く、苛立つ。

 

「まぁ少しの事情なら話してあげる……状況の説明はしてあげるぴょん!」

 

「ほう」

 

「だからまずは、着席お願いするぴょん」

 

「………わかった、提案に乗ってやる」

 

「宜しいですぴょん!」

 

──通信も遮断、衛星魔兵器も使えない。閉じ込められる瞬間、繭に全力で切りかかってみたが傷1つ付かなかった。

ただ硬いだけなら、絶対的な切断能力を持つ私の剣で切れない筈がない。つまりこれは概念に寄ったもので、『魔法生物』が使う代物。

 

「先に、貴様自身の事から話せ」

 

「ミーはミーちゃん!悪の組織の親玉にして、今回は世間に『こういう事をしようとしているんだよー』と広める為の広報をしに来たマスコットぴょん」

 

「……魔法少女に対する不満、だったか。唯のデモにしては規模が大き過ぎる、世界中のネットワークにどうやって干渉した」

 

「魔法ぴょん」

 

「…………」

 

「そんな苦い顔してどうしたぴょん?」

 

「貴様が唯の時間稼ぎをしているという事が分かって、素直に着席した自分の愚かさを再認識している所だ」

 

「ま、まぁまぁそんなイライラせ───」

 

言葉を言い終わるより先に、No.2による肩目掛けての袈裟斬りが行われるも、彼女の身体を割く事はなく肩で受け止められる。

卓を蹴り上げ、卓に乗せられた茶を浴びせながら拳を握り込み鼻先目掛けて放ち、寸前で止め手首のスナップで軽く叩く。

動作は一瞬、いや、同時。合気による抜刀術と変身体の機能を活用した同時攻撃が炸裂した。

 

──威力の強弱で影響度が変わるのなら、これで殺せる。威力の最小化なら毒でいい。

 

「今!ここで!貴様の魔法は暴いておくぞ!」

 

「───健気ぴょん」

 

「……っ…」

 

手応え、無し。

拳から伝わる感触も、剣が放つ効力も何も見て取れない。

だがしかし、完全無敵…そんな言葉が脳裏をチラついて、すぐに引っ込んだ。

 

「む」

 

「──なるほどなっ…!」

 

目の前の少女の肌を伝うお茶、偶然視界に止まったソレの軌道をよく観察してみれば、この魔法少女のタネが暴かれる。

──軌跡が濡れていない。肌や衣服に吸収される『水分』が、そのまま流れて繭の地面に落ちる。

 

「時間の鎧だな?貴様の防御の正体は」

 

「8割正解2割ハズレぴょん」

 

可愛く笑顔を浮かべる少女が、No.2の瞳には怪物の余裕にしか映らなかった。指をピースにして首を横にリズム良く振る彼女は、散らばった茶器の破片を空間から取り出したちりとりで掃除して、雑巾で拭いていく。

 

「……大した魔素量と回路強度だ、それ程の魔法を使っておいて何の代償も無いとは…」

 

魔法の代償は、干渉するものへの強大さそのままそっくりに、自分へと返ってくる。

考えて、行使する。それだけならどの様な魔法少女であっても出来るが、行使した瞬間身体が弾け飛んで死ぬ、くらいの事故は度々起きる。

 

「ある人曰く、魔法に代償もクソもないらしいぴょんよ!ミーは別にそうじゃないけど……まぁ同じ感じぴょん…」

 

「時間操作魔法…理の外に踏み込んだソレを、どうやって作った」

 

「ふふふ、聞きたいぴょん?これはそう、お昼ご飯に呼び出しても中々来ないバカタレが、遅くなる癖にご飯が乾いてたら怒るという理不尽によって産み出された!ミーのオリジナル魔法その2!『サランラップ』ぴょんよ!」

 

「─────」

 

述べる内容の余りのダサさに普段気にしない体面というものを気にし始め、強ばっていた顔は見た目相応の柔らかさを取り戻した。

見た目だけなら、中学生同士の諍いと指を指せるのかもしれない、指した指が無くなるのを覚悟で言うのなら、だが。

 

「状態の保存、この魔法があればアツアツの味噌汁はいつまでもアツアツぴょん!」

 

「…下らない」

 

「下らない下らないくだらない!!先程から下らんぞ貴様ぁッ!……その魔法が、どれ程のものなのか貴様は…──!」

 

鋭い眼光で、No.2が睨みつけようと顔を上げた。

上げた──瞬間に、頬を手で挟まれ、顔と顔を突き合わせられて、

 

「知らん」

 

「───」

 

「魔法を戦う事にしか使えない君とは違って、ミーは魔法本来の使い方をしてるだけ」

 

「ミーは君たちの事を一度たりとて許していない、魔法の意義を塗り替え、奪っていって、あまつさえ本来の使い方を『下らない』って?」

 

「──囀るなよ、その舌切り落とされたいか」

 

「っぁ……」

 

僅かに、目尻に涙が溜まる。

60年振りの自然な、零れそうになる涙を無意識に浮かべ、彼女の発する圧から解放されようと両足をバタバタとはためかせる。

何の抵抗も出来ず、顔を掴まれ続ける。いつになれば離してくれるのか、いつになったら解放されるのか、それだけが脳内を支配した頃に、彼女の背後から携帯の電話が鳴る。

 

「────ドクターぴょん?なになに…《ダークの場所に渡されたカメラ置いたから起動頼む》…はいはいっと」

 

「ぅ」

 

「あ、ごめ、ごめんぴょん!怖がらせ過ぎたぴょん?……仕方ないぴょん、戻ったら主に今日の出来事をある程度、頭から抜いて貰うぴょん」

 

「───……」

 

「うーん……──無力化成功!!これでよし!ぴょん!みんなの為だから仕方ないぴょん!!!」

 

崩れ落ち、膝を折るNo.2を前に冷や汗をひたすらにかいて、気を逸らす為にお茶を啜っては茶菓子を貪る。

ふう、と一息。そしてやっぱり駄目では?と思い立ち、ずっとこちらを怯えた目で見てくる少女の頭を撫でたり、肩を揺さぶりながら口にお菓子を突っ込んだりしても変化はなく、

 

「……」

 

「──カ、カメラでも起動して2人の活躍見とこーっと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「──490回」

 

「…………」

 

「この刃を、滑り込ませた回数だ」

 

「…………」

 

黒い津波の上に、布一枚で立つ男はナイフに付いた黒い血を振り払う。カチカチと2つのナイフを噛み合わせ研ぐその姿は、獲物を前にした猛獣の様。

男が告げた回数は、それが真実なら同じく黒い津波の上に寝転がる少女が肉片に変わっていなければおかしい。だが痛みを感じない人形のように、バラバラの身体は一つの黒い塊に拾い上げられ、組み立てられていく。

 

「お前の命は、何処にある?」

 

「私は何度でも殺そう、何度でも導こう。その命が、自ら柔肌を剥き、その血に濡れた姿を晒すまで」

 

「……………」

 

息を詰め、男を見るダークへ男は言葉を投げかける。

ダークは寝そべるまま横目にちらと男を見上げ、その瞳が、横顔が、言葉より真摯にダークへとある事実を伝えていた。

 

「………優しい…ね…」

 

「───いいや。我に在るは全て神なり、迷える者、魔法少女よ…。お前に、慈悲を与えているのは他ならぬ神である」

 

「……そう」

 

───何を言っているかはよく分からない。

しかし、ダークにはこの男が、ただひたすらに善意を以てこの行動をしているのだと理解出来る。

どれ程歪んだものだとしても、理にかなっていなくても、ここに居るのは『歪んでいる』もの同士。

 

「なら、私も優しく…する」

 

「…そうか、ならば来い」

 

「うん」

 

「──『黒き魂(ダークソウル)』」

 

──黒い津波が胎動する。

畝り、歪み、騒ぎ、膨らんでは萎んでいく。騒音は一瞬、詠唱と同時に空気が重く沈み、男の足元の津波が泡立つ。

男の足元で膨らんだ津波の一部が破裂して───現れたのは、人間の手、であった。

 

「───これは」

 

「お兄さんは、私よりずっと強い。でも」

 

「死んでるものは、殺せない…よ」

 

現れる数百の人の波が男を飲み込み、津波へと取り込もうと襲いかかる。

死して尚動かされる屍の軍隊が、振り翳されるナイフに顔面を両断されようと、足を止めることなく進軍を続け、

 

「──お兄さんも、レンカを倒す為の餌になって欲しい」

 

己の主を満足させる為の、死んでも終わらない労働が始まった。

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