──かくして悪の芽は撒かれた。
何れ芽生え、そして樹へと育っていき、また新たな果実を実らせ腐るまで、循環を繰り返し森へと変わる。
成長の速度は一定では無い、時に停滞し時に急速に前へ進む。しかし数多の障壁と数多の経験を通じ、立派な巨木へと育つことだろう。
「なら、善の芽は?」
それは元から社会に、いや、人間の心に撒かれている芽である。
要は、誰かが手を加えずとも自然に発芽し、そして周囲へ大きな影響を残しながら成長していく──人間の、真性とも言える箇所。
「性善説という奴です」
だがそれなら、別に悪の芽を『撒く』等と形容せずとも、自然と同じく発芽する。手を加える必要があったのかどうか──無論、ありますとも。
それは、『正義』と『正しさ』という他の芽に栄養を吸われ、抑圧され、地中奥深くに沈むしか無かった者たちへの救済。
人が人である以上受け入れるべき歪みを、隠して見なかった事にしようとしたから、私はそこへメスを入れた。
しかしこの『メス』が強烈な成長を生んでしまった場合、今度は悪の芽が育ち過ぎる。
「くくく…あはは、あーはっはっはっ!そうですとも!私はあくまでも『対立煽り』が目標!──別に、悪の組織作りだけがお仕事内容じゃありません!ミーちゃんは過労死しましたが、同時に進めていたプロジェクトがあるのです!!」
腰に手を当て、声高らかに。悪の魔法少女を育てるというのなら、対する主人公も育てないとはなるまいて。
私が参加する戦闘は実に下らない。私の手から離れた混沌の中で生まれる人の輝きというものを楽しみにしているのだ、イキリチーターは物語の外に追い出されるのが世の常なり。
「これから世界に拡大していくマジカルフューチャー。しかし然るべきライバル、否…──相対する主人公、というものが必要でしょう!」
「確かに、ええ確かに。各個人が決着をつけるべき因縁はありますが……それはソレこれはコレ、『マジカルフューチャー』という主体に対するアンチテーゼ、世界が闇に包まれた時に現れる救世主が必要です!よね!」
「………元気ぴょんね…」
「……あっちこっち回って疲れた上、深夜テンションなんです。冷笑するなら相応にビンタしますよ」
「──。勝手にやってろぴょん…」
最初の問いを覚えているかな。
魔法少女の、存在意義とは。
魔法少女が産まれた理由は。
そして、魔法少女の、その真実を知った時。
君たちは魔法少女に何を求めるのか。
「んっん…口調も戻そうか。あの子達の前でもなし、これから語るは願いすら持てなかった哀れな子供のお話」
「私が生まれた、願いのお話。さぁ、お立会い」
────。
昔話をしよう。私が原初の魔法少女と呼ばれる所以は何かな?…うん、絶滅戦争の時に初めて現れた『魔法少女』。この世界で一番最初の『魔法少女』だからだね。
そこで、だ。
厳密に言うと、残念ながら私は魔法少女じゃない。なら、一体何なのか。答えは──『魔法』だよ。この世で最初の魔法少女が、全てを捧げて形を成した『魔法』そのものが私という訳さ。
願いを叶える『魔法』が、自分の意志を持ってしまった。
それがどれだけ残酷で、破綻的な事か分かるかい。残酷でありながら、ここまで続けてきた意味を理解できるかい。
──。願いとは、未来だ。
人類の幸福の為に、人類の未来の為に、私は存在している。しかし私をこの世界に生んだ少女は、何一つ願いを叶えられずに死んでしまった。ならば私の存在意義は一体何だ。叶えるべき願いは既に存在せず、人であるが為に人の願いを叶えた『先』を理解出来る。
それは、無であると言ってしまおう。
まぁ、諸説あるけれど。
願いとは、人が未来を前借りする『力』である。
人が願う事で、未来を手繰り寄せる。ならば望む未来を叶えれば、その先に待っているの虚無だ。願いを叶える魔法である私は、まさにその究極系。
私は私を産んでくれた少女の、優しい願いの集合体。それを寄ってたかって利用する人類も嫌い。待ち受けているのが全てゼロへと至る未来でも、私が『人』の願いを叶える存在である限り、折り合いはつけられない。
大好きで堪らなかった人類が、私のせいで堕落を辿り、醜さを膨張させ続ける。私を利用すればするほど、人類は人類では無くなっていく。
無垢であり無私であり無我である事が前提の、『願い』は少女の呪いとも言える魔法で形を持った。持ってはならぬモノを与えられた。
ああ──ならば、問おう。
願いというものの定義は、『人』で定められる。
ならば
人類の可能性という名の未来が願いを作るというのなら、自ら可能性を手放していく人類を見て、無様にもエゴを得てしまった願いにとって、その自殺にはついていけない。──けれども、切り離すことも出来ない。
要するに、願いからすれば今の人類なんてものを、『人類』と認める訳にはいかなかった。魔法少女そのものが、人類の盛大な自殺へのバージンロードなのだから。
──人類はコレを複製してしまった。
何とも愚かで、何とも人間らしい愚行だろうか。
それを止められない私もまた、愚かな存在。
「魔法少女という可能性の前借りを多様すれば、人類に待ち受けているのはバットエンドでもハッピーエンドでも無い、虚無のデッドエンド!」
「──魔法少女になればこの世のあらゆる苦痛から解放される。しかも人類は、苦痛から逃れる為に進化を続けてきた」
「あまりにも魅惑的な餌だよね。人類が最も叶えたい願いは──願いを叶えられる存在になる事。願いそのものへと身を堕とす事。人類であることを、放棄する事」
「願いを定義して前に進もうとする意志を持つからこそ、人類は人類であり、ソレを捨てては人類は人類足り得ない」
魔法少女の存在意義は、願いを叶える事だ。
魔法少女が産まれた理由は、願いを叶える為だ。
ならば魔法少女の真実とは、人の願い自体であることだ。
人類が手を出してはならなかった、未来の未来、そのまた未来の『力』。可能性の前借り、収斂していく人類の道。待ち受けるのは人間性の棄却。
「故に」
「──人は、魔法少女になるべきでは無いのです」
「人類であることを捨てては、ダメなんです」
「人間性を軽視して、魔法少女が当たり前のように社会へと馴染んで、願いが『願って』しまうほどに憐れな道を歩いて欲しくない。自らを、人間である事を誇り、愛して欲しい」
人類を魔法少女という堕落の道へと誘う、それが『悪』の組織であるマジカルフューチャーが行うのならば、その反対は?
善とは何か、人間にとっての善性とは何を示すのか、定義され定義する関係を紡ぎ続ける人間への、私からプレゼント出来る『善』の芽とは?
──私は、どんな素敵な愛の告白を、貴方達にプレゼントしたら良いのでしょうか。
「それでも、魔法少女は魔法少女である」
「──魔法少女という力に、貴方達の未来が食い潰されたくないのなら、抗いなさい。原初の魔法少女、その願いからの挑戦状です、人類は未だ人類であると示してみせよ」
「終着と停滞が貴方達の墓場だ!足掻け!藻掻け!自らが選んだ残酷な道に、自ら足を踏み入れてしまった運命に!」
「抗え。抗い続けろ。それが再び、願いを産む」
■
「──はーいカット。お疲れ様ぴょん」
「ふぁ〜ぁ…後で編集お願いするね〜…」
オリテアは分身に任せた演説をカメラ越しに見ていて、台本の最後まで捲った後、欠伸をしながら分身を消す。
監督衣装を身にまとったミーが、カチャンとカチンコを鳴らし背伸びをする。納得の行くカッコ良いラスボス宣言が撮れるまで試行回数──約二百五十回。
セリフを噛んだり、目線がキョロキョロしたり映りが悪かったり、ふざけてしまったり。愉悦の為に生きているのだから仕方が無いが、落ち着きのないオリテアは改めて『向いてなさ』を感じる。
「プロットは決めちゃいましたけど……。どーしよミーちゃん、善なる芽って何?というか私がラスボス路線の場合、どうやって勝たせます?」
「えぇ…?そこら辺は主が考えて欲しいぴょん。なんで衣装とか組織の設定を考えるのは得意なのに、細かい所になるとガバガバだぴょんな」
──ああ、人類には確かに『魔法少女』を克服して欲しくはある。基本人間の上位互換の魔法少女は、いつかその総数が人類の過半数を超える時が来ると予知している。
ただでさえ、魔法少女と人間が結婚して生まれた子供が居て、しかもすんごい力を持って産まれちゃったんだから、次に人類が手を伸ばすのは、
「…………魔法少女と人間の配合かぁ…」
マジックメモリーの時から分かっていた事だけれど、人類というものは貴賤が無い。生命としては最も純粋に自他を穢せる生き物だ。
少しミスった事があり、それが特に人類の科学者達の目にとまってしまった。
私が大暴れした時に突っかかってきた野生の『魔法使い』。あの子が映像に残ってしまったのは実に不味い。
「ドラ○エモ○○ターズじゃないんですから、気軽に禁忌を犯さないで欲しいな〜…」
「どうするぴょん。手詰まりぴょ──あ、アカとアオが喧嘩し始めてる!?ちょちょ、お先失礼するぴょん!ドクター何やってるぴょん…!」
「──。行っちゃった」
空の上は良い、何をしていても基本バレないし誰からも見られない。気軽に遊びに来ては、悩みをどう解決するか模索している。
今正に悩んでいるのは──主人公の存在だ。
この物語の主人公は君たちだ!と社会に向けて発信して、募った人類の前に進みたい願いのパワーとかなんとかでぼっかーんと、負けるつもりだったんですけど、
「…………」
「未来、変わらないなぁ…」
カンニングの内容が一向に変わらない。
即ち、とてもつまらない。
「主人公、主人公ってなんだ主人公って、主人公以外は主人公に成れないってのかコンチクショウ…」
「あーあ。何処かに根底には人類への憎しみがありながら、それでも人類の可能性を愛さずにはいられない自己破綻しても前に進もうとする登場人物が居ればな〜」
「──私じゃねぇかッ!!……誰も突っ込んでくれないぃ……」
「どうしよ、どうするどうすれば、何をすれば……うぅぅん…」
「要するに人類の目を覚ましつつ、人類への深い愛情をもってケツを叩ける逸材を───逸材……を……」
「────」
「く、くくっ。んふふふふふふ……!」
「居るじゃないですか!とびっきりのがっ!!」
「──待ってろNo.1。お前に主人公らしい丁度良いキャラ設定をぶち込んでやる…!」
■
「あー。あー。あー」
「──発声はOK。下瞼びょーんぴょん」
「ん」
「こっちも大丈夫。右手挙げてー、左手挙げて〜…両方下ろす。うん、後は…」
「足も動くよ」
黒兎は手に持ったトンカチを軽く、少女の膝へコンコンと振るう。衝撃に対して正常な反応を見せる脚を確認した後は、聴診器を胸に当てて数秒。
満足げな顔を浮かべた後、診察に使用した器具を片付けて最後に、取り出したステッキをドロドロの右手へと握らせる。
体の機能は復元しても、銀城恋歌がダークからマジックメモリーを強奪した際の傷は、彼女の意志に関係なく元に戻らないが、
「魔法、使ってみるぴょん」
「────」
泥の様な黒い液体がステッキから流れ出る、それは魔法少女ダークが唯一使用できる魔法であり、自壊の可能性が常に付き纏うリスクある行為だ。
だがしかし、流れ出した黒泥は以前の様に垂れ流されるだけでなく、意志を持っているかのように動き始めた。
スライムの様に丸く固まったかと思えば、そこから細く、細く細く糸状になり毛糸の塊の様に。
宙を浮かび、医務室の中を飛び回ってから糸を全方位へと伸ばす。ペタリと黒糸の先が壁に張りついたのを見て、これまた満足そうに魔法少女ダークは笑顔でステッキを振る。
「どう…?」
「──完璧ぴょん。体感後何秒、ソレを維持できそうぴょん?」
「一日くらい」
「うんうん。活発な魔法使用は避けていれば、もう以前の状態と何ら変わりようは無いぴょんね。──治療終了ぴょん、一ヶ月、お疲れ様ぴょん」
「ありがとうございました。ミーたん」
────。
一ヶ月、その期間によって育まれた信頼が、あの人としての要素を全て削ぎ落としたかのようなダークに、『ミーたん』の名を呼ばせる程に。
『礼賛者』に切り刻まれた身体を魔法で無理矢理繋ぎ止め、生命活動すら魔法を使用していなければ止まってしまう上、体質そのものは改善の予期を見せない彼女にとって、まる一か月を付きっきりで治療してくれた『ミーたん』とドクターに対し、
「私、きっと恩返しする…ね?」
「うんうんうん!…恩なんて、あんまり考えなくていいぴょんから、グスッ…──学校に行っても、頑張って欲しいぴょん…!」
恩返し、などと口にする彼女を見れるとは。感嘆たる思いで医務室の床をびちゃびちゃに濡らす黒兎は、ハンガーに掛けてあった制服を手に取り、泣きながら手渡す。
魔法に関してはヨチヨチ歩きの状態から見守り続けた黒兎にとって、最早彼女は我が子の様なもの、誰一人組織内ではマトモに扱ってくれないのが拍車を掛け、より濃度の高い親バカに。
「大丈夫だよ。布団にしてた雑誌で読んだことがあるの」
「──魔法少女学校って、現れる怪人をみんなで一緒にやっつけながら、ご飯も一緒にたべて、毎日魔法の事を学ぶんでしょ?」
「──。そうぴょん!きっと楽しい学園生活が待ってるぴょん!!」
ダークの話す『学校』は無論、雑誌に乗せられた四コマ漫画の事であり、魔法少女専門学校も所詮は学び舎である事は変わりないのだが、親バカにつける薬なし。
「…………あの人大丈夫なんですかね?」
「知らね。俺らが何言っても聞きやしねぇだろ」
「っす、戻ろっか」
覗き見をしていたユウカとドクターは、自らの組織の親玉が日に日にアホになっていくのを──別に心配すらしていなかった。
世の中のマジカルフューチャーの評価が固まるまで約一ヶ月、休止中はひたすらに親バカの親バカたる姿を見続けてきたのだから仕方ないと言える。
時に、マジカルフューチャーのテロ行為は明確に国家への反逆へと見なされ、見事全員諸共指名手配。
世間の評価はというと、実に錯綜的である。
一ヶ月経ってもまだ騒がしい理由は実害が大きすぎたからで、オリテアが元通りにしたとはいえ実質的な死者数は一万人超え──被害総額は数十億にのぼっていたのだ。
『国が魔法少女化を押し進める為の陰謀』だの、『No.2含めた自作自演!?』だの、終いには集団幻覚で片付けようとしていた政府への反抗デモも起きた程に。
被害者、当事者達の記憶が無いのにも関わらず、映像、記録としては残っている。そんな奇妙な状況含め、
「──想定通りとはいえ、名前の広がり方すっごいね。ドクターの……あー……同人誌とか、さ…?」
「言うな」
「……ぶふっ」
「そろそろ本気でシバくぞユウカテメェこら」
現代社会のなんとおぞましき事か、犯罪者であれ魔法少女が世の仕組みに入り込んだ現状、『治安活動』や『戦闘行為』がエンタメ化している為に、名が大きくなり過ぎた犯罪者もまた、『ネームド』としてキャラクター化する。
何を隠そうアレハ・イーコールに注入されたマジックメモリーの元の人物、二十六人を私的に殺害した『魔法少女・トキシック』は絶賛漫画として連載中。
危機管理能力の衰退、当事者意識の希薄化、資本主義社会の縮図とでも言おうか、娯楽になり金になるなら全てを受け入れる社会が、人の死生観すら歪めている。
元からその予兆はあったとはいえ、魔法少女の普及によって加速度的に人は倫理観の欠如を生んでいた。小〜高の学び舎では急遽勉学方針を変え、発達したAIとの対談学習形態から、人と人、『教師』と呼ばれる数十年前の学習形態を採用する学校も現れていた。
故に──。
「…『マジカルフューチャーは隠れてないで早く声明を出せ!』ってさ、あっははは!次はどんな事を、どんな面白い事をしてくれるかワクワクしてんじゃん」
「そんなもんさ人間ってのは。被害が元通りになった──その事実がある限り、俺らはエンタメ商品の枠を出ねぇよ。オリテアの方針も同じだからな。そもそも命懸けの魔法生物駆除をアイドル活動かなんかと思ってる時点で、頭空っぽな奴らが増えすぎだ」
「──そういう人間を、招き入れるのが私達の仕事じゃないですか〜。楽なものは楽な方が良いですよ、ドクター」
「げっ……オリテア…」
人類のどうしようも無い箇所を語っていると、二人目の親バカが満を持して登場する。ユウカはその登場に目を輝かせ、ドタドタと庭先へ走っていくと手を振って、
「今日も手合わせしよっ!いいでしょ?」
「うぅん…忙しいんですけど…」
「──お願い、オリテアお姉ちゃん♡」
「仕方ありませんねぇ!!ジャンジャンバリバリかかって来なさい!」
何処で覚えたのか、媚び媚びの撫で声でオリテアを誘惑するユウカは、もう立派な悪の魔法少女なのであった。
「どいつもこいつもバカばっかだこの組織……だよなー、ブルー」
「…ドクター。お髭ジョリジョリする……」
「こしょばゆーい!」
──ちなみに、三人目の超親バカはとっくに手元へアオとアカを抱えていたのだが。アオばかりがドクターに構われるのを見て、羨ましがったのか見事アカもドクターに付きっきりに。
親バカ三人衆が闊歩するマジカルフューチャーの未来はどう考えても暗いが、残念ながら改善の余地は無く、これから先も変わらないのであろう。
薄々実感しているのはドクターぐらいのもので、そろそろ新しいツッコミ役が居ないと自分の頭がおかしくなると、現状の不満を口にしようとしたその時、
「────」
携帯へと、一通のメールが入ってくる。
自分の携帯番号を知っているのは──岡野だけだ。
瑠美を見捨てた男からのメール。例えそれが互いに不本意だったとしても逃れられない罪を抱えた相手からのメールを、確認せずにはいられなかった。
──『見つけたよ、瑠美ちゃんの仇』
「………。それを俺に教えるのが、どういう意味か分かってんのかコイツ」
分かってないだろうなと、ため息を吐く。
気楽に、奪われた分を復讐に費やすと決めた自分の復讐対象に含まれない、なんて考えている訳では無いだろう。
「…復讐、復讐かぁ……」
「……」
「どうすれば、地獄を見せられる?」
「私も手伝うよドクター」
「私もー!」
──残念だが、この生活がドクターの心の根底を癒す事はない。
魔法少女『ルミ』を知らず知らずの内、自らの開発した技術で殺した事が仕組まれた悪意によるものであり、魔法少女『ルナ』が亡くなった事が、自身への当てつけによるものであり、そして妻を魔法少女の事故に見せかけて記憶を壊したのも、実験の内容の流出を恐れたからであり。
いわば、ドクター。否、川畑優希という男は、最も魔法少女社会の歪みに大切な宝物を奪われ続けてきた男であるが故に、自らの研究意欲によって自滅した、させられた。
「…………」
──病院内で取り違えられた我が子達。
娘である瑠美と瑠奈との交換、瑠奈の親元が亡くなり、本来の娘である瑠美は生活費の為、魔法少女化を余儀なくされる。瑠奈も夢を追い、魔法少女へ。
「──。そろそろいいだろ、オリテア」
魔法少女安楽死計画立案者である川畑優希の初被検体は。
──当事、認識すらしていなかった本来の我が娘、魔法少女『ルミ』である。
「俺にこれ以上、おままごとをさせる気か?」
「──なーらー!じーぶーんーでー!戦力!集めて──ぶべべべべっ」
「ああ分かったよ勧誘な。やりゃぁいいんだろやれば」
「よく゛わかってんじゃないですか゛。頑張ってください応援してま──」
「『シムーン』『シムーン』『シムーン』──!!不可視の物量攻撃は最強なんだよおりゃおりゃおりゃ!!」
「なにぉう!?最強だと今言いましたか!?ぐふふ、なら見せてあげましょう私が昨日思い付いた最強のオリジナル魔法を!」
楽しそうに庭先をグチャグチャにする二人を見つめ、せっかく燃え上がらせた復讐の焔が抑え込まれていくのを感じ、一言。
「…………──本当に、バカばっか」