FAIRY TAIL〜竜に育てられた少年と悪魔の少女 作:からあげ_63
第1話「帰還の咆哮」
「はあ、はあ……き、気持ち悪い……」
駅のホーム、朝焼けの空の下。ぐったりと腰を抜かし、呼吸を整えようと必死な少年がいた。髪は濡れたように額に張りつき、肩で息をしながら、目の前の石畳をぼんやりと見つめている。
駅員「お、お客様?マグノリアまでご到着しましたけど……大丈夫ですか?」
そんな彼に心配そうに声をかけたのは、駅員だった。しかし少年は答えるよりも先に、膝に手をついてさらに大きなため息をつく。
「……あー、気になさらないでください。いつものことですので(´-ω-`)。ほら!さっさと降りて!」
半ば呆れながら言葉を投げかけたのは、隣で本を読んでいた小さな猫。空色の毛並みと大きな瞳、そして流暢な人間の言葉。――ギルドの仲間なら誰もが知る“ノア”だ。
「わかっているよ……」
力なく立ち上がると、駅の階段をふらつきながら降りる少年――彼こそ、魔導士ギルド「フェアリーテイル」のS級魔導士、エドワード・ベイカーである。
エド「くそ、もう二度と列車なんて乗らない。というか乗り物全般には絶対に乗りたくない」
エドは苦しげに呟き、額の汗を拭った。
ノア「はあ……エド、それ言うの何回目?いい加減聞き飽きたんだけど?」
本から視線も外さず、ノアは心底うんざりした顔で返す。
エド「そもそもなんで乗り物に乗る必要があるんだ……ゆっくり歩いて帰ってくればよかったのに……」
ノア「何言ってんの( ;´Д`)。そんなことしたら帰るのに何年かかると思ってんの?まったく……」
エド「別にいいじゃないか……乗り物に乗るよりマシだ……」
ノア「それはあなただけよ!!第一、私たちもう2年も帰ってないんだから、みんなに心配させないために一刻も早く帰るべきでしょうが!」
エド「わかった、わかった。俺が悪かったよ……」
エドはノアをなだめるように、少し笑いながら肩をすくめてみせた。
そう、この二人――いや、“一人と一匹”は《50年クエスト》と呼ばれる超高難度の依頼に挑み、2年もの歳月を費やしてようやくマグノリアに戻ってきたのだった。
エドは深く息を吐き、ノアと並んで2年ぶりの街道を歩き始めた。
エド「それにしても、さすがに2年も経てば街もかなり変わっているな……」
歩き慣れたはずの石畳、だが通りを歩く人々の顔ぶれや、並ぶ店の看板はどこか新しい。子どもたちのはしゃぐ声や屋台の呼び込み、活気あふれる商店街の空気が、懐かしさとともに胸に沁みる。
ノア「そうね、初めて見るお店とかも多くなって、さらに賑やかになったわね。どうする?色々覗いてみる?」
エド「いや、先に“あそこ”に行く。報告もしたいしな」
エドはそう言うと、少しだけ悲しげな声色になった。
ノア「……そうね。行きましょうか」
ノアも、彼の意図に気づいたのか、優しくエドの横に並んだ。
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場所は変わり、マグノリアを見下ろすようにそびえる「カルディア大聖堂」。大きな教会の裏手には霊園が広がり、静謐な空気が流れていた。
白い石造りの墓標の前に、エドとノアは静かに立ち止まった。
エド「……ただいま、“リサーナ”。正直かなり危なかったが、“これ”のおかげで何とか無事に帰ってこれたよ……」
エドは墓標に手をあて、そっと目を閉じる。思い出すのは、昔ここで一緒に笑い合った日々、そして別れの日。自分の成長を、今ならきっと伝えられる気がして、エドは微かに微笑んだ。
エド「……今の俺なら“あいつ”の笑顔、守ってやれるかな……」
エドの声は風に消えそうなくらい弱々しく、それでもどこか温かさがあった。ノアは静かに寄り添い、エドを見上げた。
ノア「エド……」
しばらく無言の時が流れた後、エドは静かに立ち上がり、埃を払ってノアに微笑む。
エド「……そろそろ行く。今度はみんなで来るよ」
ノアもにこりと笑い返し、二人はまた街へと戻っていった。
エド「さて、用も済んだし、ぼちぼち戻るか」
ノア「ええ、早くみんなに会いたいわ」
エド「そうだな、とりあえず荷物を置いて……っ!!」
突如エドが立ち止まり、表情が鋭く変わる。
ノア「? エド、どうかした?」
エドはしばし黙り込む。そして、なにかを感じ取ったように目を見開いた。
エド「……ノア、急いでギルドに帰るぞ」
ノア「……何かあったの?」
エド「わからない、だが嫌な予感がする。今すぐ飛べるか?」
ノア「ええ!任せて!」
ノアの背中から、純白の翼が羽ばたくように現れた。ノアの持つ魔法『翼(エーラ)』だ。
エド「頼む、出来る限り急いでくれ!」
ノア「了解!任せて!」
ノアに背中を掴ませると、二人は風を切って空へと舞い上がる。エドの表情は、もう先ほどまでの穏やかさを完全に失い、鋭い“魔導士”の顔へと変わっていた。
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ノア「エ、エド!あれ見て!」
エド「っ!! こ、これは一体……」
マグノリアの空から眼下を見下ろすと、ギルド――フェアリーテイル本部が炎と煙に包まれていた。崩れかけたギルドの建物、そしてその周囲では仲間たちが傷だらけで必死に戦っている。
エド「……ノア、離してくれ」
ノア「うん、わかった……あんまりやりすぎないでね?」
ノアはエドの手をそっと放す。
次の瞬間――
エド「水竜の咆哮!!!!!」
大気を切り裂く轟音と共に、エドの掌から激しい水流が放たれる。その咆哮は、ギルドを襲っていた敵――“シェイド”の群れを一気に吹き飛ばした。
カナ「こ、この魔法は……まさか!」
ギルドを守るべく戦っていた古株――“カナ・アルベローナ”は、眼前で敵がなぎ倒される様子に息を飲み、確信した。
“アイツ”が、帰ってきたのだと。
煙が晴れると、そこには1人の少年と1匹の猫の姿。――エドとノアが、マグノリアへ帰ってきたのだった。
カナ「っ! エド!ノア!帰ってきたのか!」
ノア「カナ!ただいま!」
エドは状況を確認するため、カナに駆け寄る。
エド「……カナ、悪いが状況を教えてくれ」
カナは荒い息をつきながら答えた。
カナ「……“ファントム”の奴らだよ。アイツら、うちの新人の子を狙って攻めてきたんだ」
エド「ファントムか……」
ノア「昔からギルド間で仲悪かったからね……」
カナ「今、ナツやグレイ、エルフマンが乗り込んで敵と戦ってるはずだ」
エド「……ミラはどこだ?」
カナ「……それが敵に捕まっちまったんだ。ただ、さっきエルフマンが助けたのが見えたから大丈夫だと思う」
エド「……そうか、わかった。……あとは任せろ」
そう言うとエドはファントムが誇る最終兵器、“超魔導巨人ファントムMK II”に向かって駆け出した。
エド「みんな、無事でいてくれ……!」
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エドが駆け出す前、ギルド奥では“エルザ・スカーレット”がファントム・ロードのマスター“ジョゼ・ポーラ”と対峙していた。
ジョゼ「クク……よく暴れる竜だな……」
エルザ「ハア、ハア……ナツの戦闘力を計算できてなかったようだな。私と同等、いや、それ以上の力を持っているということを……」
ジョゼ「ククク……謙遜はよしたまえ、ティターニア。君の魔力は素晴らしい。現に聖十の魔導士である私相手にここまで持ち堪えている……でもねぇ、そんな魔導士がフェアリーテイルにいることが気に食わないのだよ!」
言葉とともに、ジョゼは魔法を放ち、エルザへ攻撃を繰り出す。エルザはそれを辛うじてかわし、反撃に出る。
エルザ「そんな、そんなくだらない理由で……!」
だが、斬撃はかわされ、逆に掴みあげられてしまう。
ジョゼ「たしかに前々から気に食わんギルドだったが、戦争の引き金はほんの些細なことだった。“ハートフィリア財閥の娘を連れ戻せ”という依頼だ」
エルザ「うっ……くっ……(ルーシィ……?)」
ジョゼ「この国有数の資産家の娘がフェアリーテイルにいるだと!?貴様ら、一体どこまで大きくなれば気が済むのだ!!」
そのとき、倒れていた“ミラジェーン・ストラウス”が顔を上げた。
ミラ「はぁはぁ……あの子は家出をしてきたの。資産なんか使えるわけ無いじゃない。私たちと同じ、自分で働いて自分でお金を稼いで自分で家賃を払ってる。私たちの大切な仲間よ……」
ジョゼ「ちっ、ぶんぶん……うるさいハエが……エルザの前に貴様から消してやる」
ジョゼは左手に禍々しい魔力を集める。
エルザ「よ、よせ!やめろ!……ミラ!逃げろ!」
エルザが必死に叫ぶも、ミラは動けなかった。
ジョゼ「消えろ……デッド・ウェイブ!!」
空気が歪み、悪意に満ちた魔法がミラへと放たれる。
エルザ「うっ!くっ!ミ、ミラ逃げろぉぉぉ!」
ミラは迫る魔法を見据え、静かに目を閉じた。
ミラ(ここまで、かしら。せめて、せめてもう一度だけでもいいからあなたに会いたかったな……
……エド)
その瞬間――
ミラを守るように、誰かが目の前に立ちはだかった。
轟音とともに、ジョゼの魔法は遮られる。
煙が晴れると、ミラは無傷。その前には、1人の少年が立っていた。
ジョゼ「ば、馬鹿な……あれをくらって無傷だと……」
呆然と呟くジョゼ。ミラは信じられないといった表情で少年を見つめた。
ミラ(ありえない、そんなはずはない、だって貴方は今仕事をしているはず、こんなところにいるわけが……でも、目の前にいるのは……)
少年はゆっくりと振り返り、ミラと目線を合わせて静かに言った。
エド「無事か、ミラ……」