FAIRY TAIL〜竜に育てられた少年と悪魔の少女 作:からあげ_63
第2話「戦争の終結」
エドワード「無事か? ……ミラ」
戦いで瓦礫に倒れていた“ミラジェーン・ストラウス”が、エドの声にゆっくり顔を上げた。その目に映るのは、信じがたいほどの懐かしさと、奇跡に近い動揺。
ミラ「ほ、本当に……エド、なの?」
まるで幻を見ているかのように呟く。声は震え、涙が滲む。そのミラに、エドは心の中で思わず苦笑しながらも、安心させるように微笑みを返す。
エドワード「あぁ、俺だよ。待たせたな、ミラ」
たったその一言で、二人の間に漂う空気が変わる。心に張りつめていた不安が、少しだけほぐれていくのをミラも感じていた。
やがて、その空気に呼応するように、崩れていた瓦礫の影で倒れていた仲間も次々と目を覚ます。
グレイ「な、なんだ?急にまわりが静かになりやがった……」
エルフマン「お、おい! あいつって!」
寝起きで状況が飲み込めていないグレイとエルフマンが、立ち上がりながらエドの姿を見て目を見開く。
エドワード「よぉ、久しぶりだな、二人とも」
グレイ「やっぱエドだよな!……でも、なんでここに?」
エドワード「話は後だ、まずは……コイツをなんとかしないとな」
エドは視線をギルドの奥、闇の中で不敵な笑みを浮かべる“ジョゼ・ポーラ”に向ける。ジョゼはエルザを拘束したまま、冷たく余裕を崩さない。
ジョゼ「あなたがどこの誰であろうと知ったことではありませんが……割って入るからには、それ相応の覚悟があるのですね?」
エドワード「まぁな。……だがその前にエルザを離してはくれないか?」
ジョゼ「私が素直に、はい分かりました、と言うとでも?」
エドワード「それもそうだな。なら……無理やり離すしかないな……!」
地面を蹴り、一瞬でジョゼの懐へと肉薄するエド。その動きは、まさに水のごとく静かで素早い。
ジョゼ「なっ!!!(こ、こいつ、いつの間に……!)」
エドワード「水竜の鉄拳!!」
放たれた水竜の一撃はジョゼの腹部を捉え、魔力の衝撃波ごと彼を壁の向こうへと吹き飛ばす。同時にエルザの拘束も解け、床に崩れ落ちた。
エドワード「大丈夫か? エルザ」
エルザ「あ、あぁ。問題ない。……っぐ!」
エドワード「その様子を見るに、あまり大丈夫ではなさそうだな」
軽口をたたきつつも、エドの目は鋭く、仲間を守る覚悟に満ちていた。
エドワード「グレイ!エルフマン! ミラとエルザを連れてここから出ろ!」
エルフマン「な、何言ってんだ!」
グレイ「そうだぜ! あいつはじーさんと同じ聖十の魔導士だぞ!? いくらお前でも無理がある!」
エルザ「……いや、ここはエドに任せよう」
グレイ「エルザ!正気かよ!?」
エルザ「どちらにせよ、手負いの我々がいては戦いの邪魔になる。それが分からんお前ではないだろう?」
グレイ「それはそうだけどよ……!」
エドワード「グレイ、お前が俺を案じてくれているのは分かってる。けど、大丈夫だ。俺に任せろ」
グレイ「……わぁーったよ」
エルザ「エルフマン、ミラを頼む」
エルフマン「お、おう!」
倒れているミラにエルフマンが駆け寄り、彼女の肩を抱く。
エルフマン「姉ちゃん、立てるか?」
ミラ「え、えぇ……」
ミラはふらつきながらも、エルフマンに支えられて立ち上がる。彼女はまだどこか信じられない様子で、エドを不安そうに見つめる。そんな視線に気づき、エドはミラに優しく声をかけた。
エドワード「大丈夫だ、俺を信じろ」
その短い一言に、ミラの頬がわずかに緩む。
エルザ「よし、行くぞ」
エルザは皆を引き連れ、出口へと駆ける。その直後、吹き飛ばされたはずのジョゼが、血相を変えて戻ってきた。
エドワード「……随分と遅かったな」
ジョゼ「よくもやってくれたな、クソガキが……! ただで済むと思うなよ……!」
エドワード「やれるもんならやってみろ……!」
エドが走り出し、ふたたびジョゼに迫る。
エドワード「水竜の鉄拳!」
ジョゼ「その魔法はさっき見た、くらえ!」
ジョゼは今度はシェイドを盾にし、エドの攻撃をかわす。次の瞬間、指先から鋭いレーザーのような魔法を放った。
エドワード「……っち、水竜の翼撃!」
エドは身を翻し、迫るレーザーを水流の翼で防ぐ。
ジョゼ「ほう、今のを躱しますか。ならこれはどうです?」
ジョゼが両手を広げると、空間全体が一気に冷え、闇の波動が押し寄せてきた。
エドワード「なら、激流葬!」
二人の広範囲魔法が正面衝突し、周囲に水煙が立ちこめる。
ジョゼ「デッドウェイブ!」
エドワード「っ!! 水竜壁!」
闇の衝撃波を水流で受け止め、跳ね返す。
ジョゼ「フン、でかい口をたたいていましたが、防戦一方ではないですか? 所詮その程度の魔導士でしたか」
エドワード「……もう充分だな」
ジョゼ「……なに?」
エドワード「あんたの実力は大体わかった。ここからは俺も本気でいかせてもらおう」
エドは静かに右腕を掲げ、詠唱を始める。
エドワード『慈愛と幻想の精霊よ、汝に命ず。我が魔力を糧とし、我に力を与えよ』
ジョゼ(詠唱? 一体何の真似だ?)
エドワード『顕現せよ! “リバイア”!』
エドの右腕に巻かれた腕輪が強い光を放ち、その形を青白い槍へと変化させていく。
エドワード「……マールの神槍」
ジョゼ「……ククク、ハッハッハ! 何をするかと思えばただの魔法具の換装ではないか!」
エドワード「……」
ジョゼ「そんな魔法具ひとつで実力差は変わらん! くらえ! デッドキリング!」
再び闇の極大魔法がエドに迫る。だが、エドは構えを崩さず、ただ槍を前に突き出す。
ジョゼ「ハッ! そんな魔法具ごときで私の魔法が受け止められるか!」
黒い波動がエドを飲み込む――が、しかし。
ジョゼ「……ば、バカな……! 貴様、なぜまだそこに立っている!?」
攻撃をまともに受けたはずの場所に、傷一つなく立ち続けるエド。
エドワード「あいにくと、ただの魔法具じゃないんでね」
ジョゼ「な、なんだと?」
エドワード「聖十の魔導士であるあんたなら“この紋章”見たらわかるんじゃないか?」
ジョゼ「紋章だと?」
ジョゼは光り輝く槍にある八芒星の紋章を凝視し、そして絶句した。
ジョゼ「ま、まさか、その、魔法具は……」
エドワード「そう、お察しの通りこの魔法具は“金属器”だ」
ジョゼ「ば、バカな! 貴様のようなガキが金属器使いだと!?」
エドワード「そういうことだ。……さて、行くぞ」
ジョゼ「っっ!?(こいつ、さっきとは比べものにならないほどの魔力だ!)」
エドワード「リヴィエル・アルサーロス!」
エドは周囲の水分を一気に圧縮し、無数の水の礫としてジョゼへと放つ。
ジョゼ(こ、この程度ならば……!)
かろうじて避けるジョゼだったが、エドの攻撃は止まらない。
エドワード「リヴィエル・セイ!」
今度は、槍から二本の水竜が放たれる。ジョゼは逃げ場を失い、もろに直撃を受けて倒れる。
ジョゼ「はぁはぁ、(こいつ、広範囲魔法で逃げ道を塞ぎ、つかさず攻撃を……)」
エドワード「どうした? だいぶ息があがっているようだが……?」
ジョゼ「この、クソガキが……!!」
エドワード「お前がギルドの皆に与えた痛みは、こんなものではすまないぞ……!」
エドワード「リヴィエル・ハルバロス!」
止めを刺さんと、さらなる水竜の一撃。ジョゼは必死に防ごうとするが、力尽きた身体はもはや耐えきれず、地に倒れ込む。
ジョゼ「こ、この私が……!」
エドワード「……これで、終わりだ……!」
エドが槍を突きつける。だが、その手を制する者が現れる。
マカロフ「エド、もうよい……。こんなやつのために、これ以上おぬしの手を汚す必要はない……」
――“妖精の尻尾”マスター、マカロフ・ドレアーが背後に立っていた。
マカロフ「不出来な親のせいでいくつもの子供の血が流れた……もう十分じゃ……」
エドワード「……終わらさなければならん!」
エドはなおも悔しそうに槍を握りしめるが、マカロフの手が彼を静かに諭す。
マカロフ「……エド、よく戦った。あとはわしに任せなさい」
エドワード「......わかりました、マスター」
エドは槍を下ろし、一歩下がった。
ジョゼ「ま、マカロフ……!」
ジョゼはマカロフを前に、引きつった表情を浮かべる。
マカロフ「“妖精の尻尾”審判のしきたりにより、ジョゼよ、貴様に三つ数える猶予を与える。ひざまずけ……!」
ジョゼ「……は?」
マカロフ「……一つ!」
ジョゼ「何を言うかと思えば、ひざまずけだぁ!?」
マカロフ「……二つ!」
ジョゼ「冗談じゃない!私は貴様と互角に戦える!いや、非情になれる分、私の方が強い!」
マカロフ「……三つ!」
ジョゼ「ひざまずくのは貴様らだ!消えろ!そして歴史上から消滅しろフェアリィィティィル!」
マカロフ「……そこまで。“妖精の法律(フェアリーロウ)”発動!!」
ジョゼ「!!!???」
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ギルド裏、湖畔に激しい光が溢れる。
「な、なんだ!?この光は!?」
「み、みて!シェイドが!」「次々と消えていく!」
「わたしたちはなんともない」
エルザ「“妖精の法律”だ」
グレイ「“妖精の法律”?」
エルザ「聖なる光をもって、闇を討つ。術者が敵と認識した者だけを討つ。もはや伝説の一つに数えられるほどの超魔法だ」
マカロフの放った超魔法の光の中で、ジョゼは灰となり、全ての闇が一掃された。
マカロフ「二度と“妖精の尻尾”に近づくな。これだけ派手にやれば評議員も黙っておらんじゃろ。ひとまずはてめぇの身を審判することだ」
そう言ってマカロフは踵を返す。その背後に、まだしぶとく立つ“エレメント4”のアリアが姿を現す。
アリア(悲しぃなぁ、あの時と同じ隙だらけ!もらった!)
しかし、
エドワード「フッ!!」
アリア「ぐぼぉあぁ!」
一撃で殴り飛ばされるアリア。
エドワード「大丈夫ですか、マスター」
マカロフ「大丈夫じゃ。さて、ギルド同士のケジメはつけた。これ以上は掃滅、跡形もなく消すぞ。ジョゼを連れて帰れ……今すぐに!」
「「「「勝ったぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
「「「ファントムに勝ったぞーーー!!!」」」
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――戦いが終わり、ギルドの前にほぼ全員が集まっていた。
マカロフ「こりゃ、また派手にやられたのう」
ギルドの崩壊を眺めながら、マカロフは苦笑いを浮かべる。
ルーシィ「あの……マスター……」
マカロフ「んー?今回はお前もずいぶん大変な目にあったのう」
気まずそうにうつむくルーシィに、レビィたち仲間が駆け寄る。
レビィ「そんな顔しないでルーちゃん」
被害を受けたレビィ、ジェット、ドロイ、リーダスたちもそばに寄る。
レビィ「みんなで力を合わせた大勝利なんだよ」
ドロイ「ギルドは壊れちゃったけどな」
ジェット「そんなのまた建てればいいんだよ」
リーダス「うぃ」
ルーシィ「レビィちゃん……ジェット……ドロイ……リーダス」
レビィ「心配かけてごめんね、ルーちゃん」
ルーシィ「違う……それはあたしの……」
ルーシィは目に涙を浮かべて、うつむく。
レビィ「話は聞いたけど、誰もルーちゃんのせいだなんて思ってないんだよ」
リーダス「俺……役にたたなくて……ごめん」
ルーシィは涙目で首を横に振る。
マカロフ「ルーシィ……楽しいことも悲しいことも、全てとはいかないがある程度は共有できる。それがギルドじゃ」
マカロフは、そっとルーシィの頭を撫でる。
マカロフ「一人の幸せはみんなの幸せ。一人の怒りはみんなの怒り。そして一人の悲しみはみんなの悲しみ。自責の念にかられる必要は無い。君にはみんなの心が届いてるはずじゃ。顔を上げなさい」
その言葉に、ルーシィは溢れる涙を抑えきれず、大きな声で泣いた。仲間たちもそれを見て、ようやく心から安心した表情を浮かべる。
マカロフ(それにしても、ちと派手にやり過ぎたかのう……こりゃあ評議院も相当お怒りに……いや、下手したら禁固刑……!?)
マカロフ「おぉい、おいおいおいおい( ; ; )」
マカロフもまたいきなり大声で泣き始めたのだった
そんな賑やかなギルドの輪の中――
ミラジェーンはふと、周囲を見渡す。
ミラ「……あれ、エドは?」
さっきまでの戦いの余韻の中、ミラはエドワードの姿を探していた。
隣にいたエルフマンも、不思議そうに首をかしげる。
エルフマン「そういえば、さっきからエドとノアの姿が見えねえな……」
エルザ「……エドなら、もう帰ったのかもしれん」
少しだけ寂しそうに、それでいてどこか納得したようにエルザは言った。
グレイも同意するように肩をすくめる。
グレイ「昔からそういうやつだからな、アイツは。派手なのは苦手なんだろ」
ミラ「……そう、よね。でも……」
心のどこかで、ミラはエドにちゃんと「ありがとう」と伝えたかった。
けれど、無理に探すことはしない。
だって、エドはきっとまたギルドに帰ってくる――
その確信がミラの中にあった。
一方そのころ――
夜の静けさが戻ったマグノリアの街。
ギルドから少し離れた、薄明かりの灯るエドの家。
エドワード「ふぅ……やっぱり騒がしいのは苦手だな」
玄関の扉をそっと閉め、肩から重い荷物を下ろす。
ノアも「ふぅ」と一息ついて、ふわりとエドの足元に着地した。
ノア「でもさ、ちゃんと顔ぐらい出しても良かったんじゃない?」
エドワード「……皆が無事なら、それでいいんだ。どうせ明日になれば、また会えるだろ?」
窓の外では、まだ遠くギルドの明かりが揺れている。
それをぼんやり眺めながら、エドはふと微笑んだ。
ノア「……ほんと、変わらないなぁ。ま、無理やり引っ張って行っても、あんまり意味ないか」
エドワード「ただいま、ノア」
ノア「おかえり、エド」
ぎこちなくも温かな、その短い挨拶。
ふたりだけの静かな夜が、ゆっくりと流れはじめる。
エドワード「……少しだけ、眠ろう。明日はきっと、また騒がしくなる」
ノア「うん。おやすみ、エド」
こうして、ギルドの歓声から少しだけ離れた場所で――
エドワードとノアの静かな夜が、ふたりだけの“帰る場所”で始まった。
そして、ミラをはじめギルドの仲間たちも、エドがきっとまたギルドに顔を出してくれることを信じて、夜空を見上げるのだった。