アルトセイムのタワーマンション内・・・
「ありがとな・・・アンタ、ホントはいい奴なんだね」
「何で最初にそう思ってくれないかな・・・?」
今、トーマとアイシスはアルフと共に部屋の中にいる。
フェイトはソファで横になっている。その眼は虚ろなままだ。
「高木さんから聞いたよ。フェイト、母さんを助けようとしてたんだな」
「そうだよ、5ヶ月前にさらわれてね・・・」
それからアルフはトーマとアイシスに今まであった事を話した。
プレシアが突然失踪し、家にかかってきたのは犯人からの電話。そしてプレシアを助けるために犯した多数の罪。フェイトの心は日に日に擦れ、いつしか本当に笑う事が珍しい事となってしまったのだ。
「アタシじゃ、フェイトの力になってやれなかったよ・・・」
「そんなことないぜ。フェイトが笑えたのもあんたがいたからだって思うけどな・・・」
「リリィもトーマがいたから今のリリィがいるんだもんね?」
「ああ」
「ニャー!!」
トーマ達が話していた時、スカーレットとユウキが戻ってきた。
「スカーレット!ユウキ!」
「マスター!あいつらの拠点を見つけたよ!」
「!!分かった!すぐ行く!」
「あたしも・・・!」
「いや、アイシスはここにいて」
「何で!?」
「危険だし、大勢で行くとバレるからだ。俺だけで行ってくる!」
「トーマ!!」
トーマはアイシスの言葉に目もくれずに部屋を後にし、マンションの駐輪場に停めてあるストライカーに乗りスカーレット達の案内の元、犯人のアジトに向かう。
「トーマ・・・」
「アイツ・・・」
その時、フェイトがソファから起き上がる。
「フェイト!」
「アルフ・・・あの人は・・・?」
「トーマなら、ケリを付けに行ったよ。あんたの代わりに・・・」
「!?・・・どうして・・・!?」
アイシスの言葉にフェイトは困惑している。トーマが代わりに危険を冒す理由が無いからだ。
「トーマは危険だって分かってても、絶対に困ってる人を見捨てない。そういう人だから」
「・・・」
(そんな性格だから、いつの間にか好きになっちゃってたのかもね・・・)
アイシスからトーマの事を聞きうつむく。
その瞳はかすかに輝きが戻っている。
「何度も襲ったのに・・・私の為に・・・」
フェイトはこの5ヶ月間、母親の為にすべてを捨てて犯人の言い成りになっていた。
それで犯した罪は数えきれない。
気づけば、フェイトは静かに涙を流している。
(本当は、羨ましかっただけなのかもしれない。あんな強さを持って、優しい心を持って・・・)
いつの間にか、トーマはフェイトにとって憧れの存在になっていた。
孤高の強さを持っていながら、それでいて苦しむ者に手を差し伸べる優しさを持つその存在・・・。
「・・・!」
フェイトは何かを決心したかのようにソファから立ち上がる。
その瞳は、先ほどの様な虚ろな物ではなく、何かを決めた強い意志を秘めている。
「フェイト?」
「私も行く!彼のところに!」
「フェイト!?」
「行かせて、アルフ!彼と一緒にいれば、今まで見えなかった何かが見れる気がするの!」
「フェイト・・・」
「あたしも!今なら追い付けるかもしれないよ!」
「ああもうっ分かったよ!アタシも付き合ってやるよ!!」
「アルフ・・・!アイシスさん・・・!」
「アイシスでいいよ!待ってて!リリィに連絡するから!!」
「私も行くよ、フェイトちゃん!!」
「私も行きます!!」
「みんな・・・!ありがとう!!」
涙を流しながらフェイトは協力してくれる皆に感謝する。
その表情は、まさに可憐に咲いた花の様な笑顔だった。
「この先か・・・」
トーマは林道を走っている。
犯人は郊外どころか遠く離れている廃墟と化した古い病院を根城にしているとユウキから聞いている。
「待ってろよ・・・!」
トーマはさらにアクセルをまわしストライカーを加速させる。
「?・・・マスター、僕たちを追いかけてくるのがいるよ」
「?」
ユウキに注意を促され、モニターを点けて後ろを確認した瞬間、驚愕する。
「!?何でみんなが!?」
そう、フェイトのヴィルキスにフェイトとアイシスが、アルフのブラストファングにはアルフとリリィが乗っていて、トーマのストライカーに追い付いてくるのだ。
「トーマ!!」
「何で来た!?待ってろって言ったろ!?」
「素直に待ってるくらいなら、追いかけてくるバカになる方がましだよ!!」
「ひどいよ!わたし達を置いて行くなんて!!」
「ったく!!で、何であんたらも?」
「フェイトがどうしてもって言うから、仕方なくだよ!」
「貴方といれば、見えなかった何かが見えそうな気がするの!お願い、一緒に行かせて!!」
皆の返答を聞き、深いため息をついた後意地悪そうな笑みを浮かべ言う。
「覚悟しろよ?何かあっても責任とってやんないからな?」
『望むところ!!』
どうやら全員覚悟はできているようだ。
トーマはそのまま全員を従え、対決の場所に向かう。
森の奥の荒廃した古い病院、いまでは肝試し用の心霊スポットとして子供たちの間では人気だ。
そこが犯人のアジトになっている。
すでにブレイブとエクレールが待っていた。
「ここです、主」
「怖いところ・・・」
「あれ?ひょっとしてエクレってお化けとか駄目な方?」
「!・・・そんなことない・・・!」
アイシスがにやけながらエクレールをからかう。
「遊んでんなよ。奴らのアジトだぜ?」
「は~い」
「・・・ごめん」
完全に遊び口調のアイシスと反省しているエクレールでは真剣さがまさに雲泥の差だ。
「行くぞ!」
『おう!!』
ついに、誘拐犯とトーマ達の最後の戦いが始まる。
いよいよクライマァ~ックス!!
どんな戦いが繰り広げられるのか・・・
その一瞬を、刮目して見よっ!!