デッキ調整を始めてから数十分。
デッキ調整を終えたトーマは今自宅のガレージでアイシス用のD・ホイールの制作に勤しんでいる。
パーツは高木とコネのあるジャンク屋から譲ってもらったジャンクにもかかわらず状態の良い物だ。
フレームだけだがそれでももう少しで完成する、その時トーマの携帯に着信が入る。
その画面には「高木さん」と表示されている。
「はい?」
《おう、トーマ!お前のD・ホイールが直ったぜ!》
「本当ですか!?」
《ああ!すぐに取りに来てくれ!》
電話が切れた後、トーマはすぐに家を飛び出し高木の所に向かう。
トーマは今、カフェ・シュガルの前に来ている。
そこには高木と、黒銀塗りのD・ホイールが停まっている。
「よう!待ってたぜ!」
「高木さん!俺のストライカー、直ったんですね!」
「おう。こいつだ!」
高木は自慢げに黒銀のD・ホイールを指さす。
そのD・ホイールはペダルが前付きなのは変わっていないが前と比べてハンドルが下がり、さらにリアにはレースカーを彷彿させるウィングが付いており、そのサイドパネルには白いドラゴンのエンブレムが付いている。
「え?これがですか?」
「おう、なんか知らねぇけど、修理ついでにあれやこれや弄ってたらこんなになっちまったみでぇだ。しょうがねぇから新しい名前、付けてやってくれ」
「う~ん・・・」
トーマは首を傾げ、何かいい名前は無いかと思考を巡らせる。
「・・・ドラゴンバード・・・」
「?」
「こいつの名前ですよ。“ドラゴンバード”なんてどうかなって・・・」
「お、いいんじゃねぇの?」
どうやらトーマはリアウィングに付いているドラゴンのエンブレムからこの名前にしたようだ。
「じゃ、こいつはお前に返すとして、アイシスのマシンはどうだ?」
「もう少しですよ。フレームだけですけど・・・」
「それだけできりゃ十分だ。あとで宮根に取りに行ってもらうとすっかね」
「店長!ホットケーキまだですよ!」
「おっと、またわりぃ癖が。じゃあな!」
店員に呼ばれた高木は笑いながらカフェに戻っていく。
「お、そうそう。こいつがキーだ!」
言いそびれそうになった高木がトーマにドラゴンバードのキーを投げ渡す。
トーマは危うく落としそうになったが、なんとか受け取る。
ちなみに高木が話していた「宮根」とは高木とコネを持っているジャンク屋「
トーマはキーを受け取った後新しいストライカー、ドラゴンバードのエンジンをかけ、自宅ガレージに戻る。
トーマが帰った数分後、カフェ・シュガルの前に緑色の鳥の様なD・ホイールが停まる。
そして乗っていた少年、エミルはヘルメットを取りカフェの中に入る。
「おう、いらっしゃい」
「あの、ここにトーマって人、いますか?」
「ん?トーマの知り合いか?あいつからは何も聞いてねぇぞ?」
いきなりトーマの名前が出てきた事に、若干だが高木も驚いている。
「はい、あの人とは、古い友達なんです」
「なるほどな。で、あいつに何か用か?」
「はい。ちょっと会いたいな、て思ってたんですが・・・」
「あいつなら、さっき帰ったぜ」
そう聞いたエミルは「遅かった・・・」と呟き肩を落とす。
「まあそう落ち込むな。なんか食うか?」
高木は話を切り替え、エミルに簡単なメニューを用意する。
エミルはその光景を見た後「少しくらいならいいよね・・・」と思ったのか、カウンター席に着き、出された物を食べ始める。
自宅に帰ったトーマはすぐにD・ホイールの制作に戻る。
色はアイシスが好きな赤と黒を基調にしたものだ。
「ふぅ~・・・こんな感じかな・・・」
「おう、ご苦労さん。あとはこっちに任せな」
トーマの後ろから声が掛かる。
高木と同い年くらいの中年の男性で、薄汚れたツナギに頭にはスパナをあしらったエンブレムが付いているキャップ帽子を被っている。
彼が高木が話していた「宮根 義一」だ。今はトーマが作り上げたD・ホイールのフレームを受け取りに来ている。
完成したフレームをトラックの荷台に乗せる。
「ありがとうございます]
「気にすんなって。じゃあな。出来たら連絡するぜ」
笑いながらそう言うと、宮根はトラックのエンジンを掛け出発する。
その時トーマの携帯に着信が入る。画面にはアイシスと表示されていた。
「アイシス?」
《どう、トーマ!あたしのD・ホイール!》
「ああ、さっき宮根さんに渡したとこ。明後日辺りには完成すると思うよ」
《やった~!!楽しみにしてるよ!》
「そりゃどうも。あと、“デュエル・フェスタ”はどうすんの?」
《あ~、あれ?できれば出たいけど、今のあたしじゃ、正直不安で・・・》
トーマの話にあった「デュエル・フェスタ」とは年に1度、デュエルの楽しさを分かってもらうためにアルトセイム主催のデュエルの説明会を兼ねた祭りの事だ。
デュエルに関するクイズ、そして1部は団体芸やライブがあり、極めつけはデュエルトーナメント、それらが一堂に会し3日間に渡って行われる。
そのため、この時期は特に観光客がよく訪れる。
「アイシスらしくないな、不安がるなんて」
《でも・・・》
「俺は出るつもりだぜ?俺達の力がどこまで通じるか試す絶好のチャンスだ。そう思わないか?」
《・・・》
「まぁ無理に出ろとは言わないさ。まだ時間はある。ゆっくり考えといたら?」
《うん・・・》
アイシスがここまで不安がるのは珍しいが、気にする事は無いだろうとトーマは通話を切る。
「ただいま~」
「!?」
その時、玄関から男性の声が聞こえてくる。トーマはすぐに玄関にすっ飛んで行く。
そこにいたのは、まだ若さが残る顔立ちに紺色のスーツを纏った黒い髪男性だ。トーマはつい叫んでしまった。
「おっ、親父!?」
そう、今トーマの前にいる男性は、トーマの父親「
彼は世界各国を飛び回り遺跡の調査を行う考古学者だ。
「ああ、ただいま。仕事が落ち着いたから休みを取れたんだ」
そう、今まで彼はエジプトに調査に行っていたのだが、その仕事が一段落しこうして帰省する事ができたというのだ。
「はぁ~・・・急すぎてついて行けねぇよ・・・」
「はは・・・それはすまなかったな」
苦笑いしながら申し訳なさそうに頭をかく御剣教授。
「で、どれくらいいられんだ?」
「担当の博士からは1ヶ月って言われてるよ」
「1ヶ月・・・どんだけ無休でやってきたんだよ・・・」
平然と話す休暇の多さにトーマは頭を抱えざるを得ない。
「まぁいいや。とにかく上がれよ、立ち話もなんだろ?」
「そうだね」
こうしてトーマと御剣教授は久々の再会を果たす。その30分後に母親のリーネが帰ってきて、新婚同然の甘い雰囲気でトーマが倒れたのはまた別の話だ。
この時トーマはこう思っていた。「新婚雰囲気はもうたくさんだ・・・」と。
ネオドミノシティ某所、
「お疲れ様でした、不動チーフ」
「ああ、みんなよくやってくれた。今日は帰ってゆっくり休んでくれ」
遊星は今日の仕事を終え、職員に挨拶を済ませると研究室を後にする。
その時と同時に遊星の携帯に着信が入る。画面を確認した後通話に出る遊星。
「“龍可”か?」
「うん。久しぶり、遊星」
通話に出たのはまだ幼さが残る少女の声だった。
「
「で、どうしたんだ?」
「今度、アルトセイムって街でデュエル・フェスタって言うお祭りがあるみたいなんだけど・・・」
「アルトセイム・・・」
「それのデュエルトーナメントに龍亜がどうしても出るんだって言って聞かないのよ」
そして龍亜はかなりやんちゃなため、龍可はよくそれに振り回されている。
「そうか。行かせてやればいいじゃないか」
《うん。そうしてるんだけど、パパの知り合いの人が仕事が入ってそのお祭りに行けなくなったってパパが観戦チケットもらって来てるんだけど・・・》
「そうか、つまり、俺に余分なチケットをもらってくれないかってことか?」
《無理にとは言わないわ。遊星にも都合があるし・・・》
「構わないさ。その日は休みをもらってる」
《ごめんね、こんなことに付き合わせて・・・》
「いいさ。それより、休まなくて大丈夫か?」
《うん、大丈夫。明後日辺りでいい?》
「ああ。分かった。じゃあな」
《うん。またね、遊星》
通話を終え電話を切る遊星。その時ちょうどアキが遊星の下に来る。
「遊星、今度の休みなんだけど・・・」
「すまない、アルトセイムに行くことになった」
「アルトセイム?」
「ああ、さっき龍可から電話があってな。デュエル・フェスタのチケットが余っているらしい。それをもらってくれないかと話していた」
「そう。なら私も行くわ。龍亜達にも久しぶりに会いたいし」
「そうだな。何より・・・」
「遊星?」
遊星は別の事を考えていた。
数週間前、母親のお使いでこの街にやってきた少年、あの時は事情によってデュエルが中断されたが、いつかお互い全力でぶつかってみたいと思っている少年。
(あいつがどれほどの実力か、楽しみだ・・・)
遊星は最近できた新しい仲間・・・
トーマがどれほどの実力なのか、それが楽しみで仕方なかった。
ふぅ~・・・あれこれ都合があり遅くなってしまいました・・・
さて、年に1度の大デュエル祭「デュエル・フェスタ」!いや~自分が言うのもなんですが面白そうですね~。
そしてあの双子、名前だけですが出てきましたね。
あと、そろそろ「あのチーム」が出てくる頃かな・・・
では!