「はあ・・・はあ・・・」
アンノウンは音響の衝撃により気を失い、デュエルディスクはスパークした後、小爆発を起こし機能を完全に停止した。付けていた仮面は外れ、アンノウンの傍らに落ちていた。
トーマはふらつきながらアンノウンに近付き、仮面を拾う。その顔はまるでモデルのように整っている。
「何だってこんな奴が、通り魔なんか・・・」
トーマは仮面を足元に置き、機能を停止したデュエルディスクからデッキを取り、確認する。
その中身はチューナーを除きほとんどが天使族モンスターとそれに対応した魔法・罠カードで構築されたデッキだった。
(天使族に固定してそれのサポートカードで構成された【聖域の天使】デッキってところかな・・・)
トーマはデッキのカードを1枚1枚確認し、【ガーディアン・エアトス】を見つけたところで手を止めた。
(一瞬、こいつから“彼女を助けて”って声が聞こえた気がしたんだけどな・・・気のせいか?)
デッキを戻し、デュエルディスクに戻した・・・
その時だった。
ブオォォォォォォォン!!
「主っ!!」
「っ!!」
トーマの背後から狼をモチーフにしたようなオレンジ色のD・ホイールが乱入し、トーマを跳ね飛ばそうとする。
何とか避けようとするが、先ほどのデュエルのダメージで体が思うように動かずそのまま跳ね飛ばされてしまう。
「がはっ!!!」
「主!!」
「ニャーッ!!」
跳ね飛ばされそのまま地面に叩きつけられ、うつ伏せの状態になり止まる。
その時に護るようにアンノウンの前に停まったD・ホイールに乗っている、アンノウンと同じく腰まで届くオレンジ色の髪の女性とにらみ合い、最後はその女性はアンノウンをD・ホイールに乗せ、逃走した。
「待て・・・!」
トーマは必死に手を伸ばし、D・ホイールを止めようと声をかけたが、ダメージからか声が出ず意識がだんだん遠のいていく。
(ダメだ・・・意識が・・・)
遠のいていく意識の中、トーマが気を失う前に見た最後の光景は・・・
『トーマァァッ!!!』
エクレールとエクレールに案内され駆けつけてきたリリィとアイシスの姿だった。
「う・・・」
目覚めた場所、そこは見慣れた自室だった。
ふと周りを見回してみる。
「・・・そうか。・・・俺、あの後・・・」
「!よかった!!起きたんだね、マスター!!」
「?」
突然声が聞こえ、その主を探す。そこには銀色のショートヘアの少年がいた。
身長はトーマと同じ位で服装は制服を思わせるようなYシャツに黒いネクタイ、ひざ下まである黒いズボン、まだ子供のような顔立ち、そして淡い黄色の瞳。
唯一普通ではないのは、背中に【シルバームーン・ドラゴン】を思い浮かばせるような翼と、両手両足が白い竜の手足だという事だ。
「お前は・・・?」
「あ、そっか。この姿では初めましてだね」
すると突然、少年が跪く。
「お、おい!?」
「初めまして、マスター・・・」
「・・・その言い方・・・お前、シルバームーンなのか?」
「そうだよ。僕は君の道具である存在」
さらっと大変なことを言ったような気もするが、どうやら何かをしてこの姿になっているようだ。
「・・・そういうの、やめないか?」
「え?」
「ちょいと堅いのは苦手なんだ。普通にしてくれていいよ」
「で、でも・・・」
「俺がいいって言ってるんだ。そこまでする必要もないだろ?」
「・・・うん!じゃあ普通に“マスター”って呼ぶよ」
「そうしてくれ。あと敬語もいらない」
トーマは少しやんちゃな性格であるため、堅いのは少々苦手なのだ。それゆえに敬語は不要と言ったのだ。
「そうだ。他のみんなは?」
「下にいるよ。でも・・・」
「でも?」
「あの人、すごく怒ってた・・・」
「・・・ブレイブのことか」
あの後駆けつけたリリィ達は、トーマを急いでトーマの自宅に運んだのだ。その際シルバームーンも手伝うと言ったのだが、ブレイブはなぜかひどく怒っていたと言うのだ。“貴様が居たから主は狙われたのだ”と。
「あいつ、俺の事になると頭に血が上るんだよな・・・」
「・・・ごめんなさい・・・」
「?どうして謝るんだよ?」
「僕がいたから、マスターが狙われたんでしょ?僕がいなかったら・・・」
「そう言うなよ。ギリギリとはいえ、帰り討ちにしたんだ。結果オーライだろ?」
「でも・・・!」
「あーはいはい。この話はもうストップ。というか、お前がいてくれたから最後に勝てたんだ。逆にお礼が言いたいよ」
「・・・」
シルバームーンはどう返答すればいいのか分からなかった。普通は自分が責められるはずなのに、この人はまるで責めようとしないのだ。それが余計に彼を混乱させていた。
(・・・なんで責めないの・・・僕がいたから・・・)
グ~・・・
その時、真剣な空気に明らかに場違いの音が響く。
「ははは・・・ほっとしたら腹減ってきた・・・。下に行こうぜ。みんなが待ってるんだろ?」
「・・・うん・・・」
心が晴れないまま、シルバームーンは主人であるトーマの後について行った。
トーマ宅の1階のリビング、なぜかアイシスがテレビを見て大爆笑している。
「待っているとはいえ・・・なんでアイシスが思いっきりくつろいでるんだ?」
「それが・・・」
リリィはトーマに事情を話した。
どうやらトーマの母親の仕業らしい。気絶していたトーマを運び込んだ後、リリィ達は看病という名目で家に泊まることを許可されているというのだ。
ちなみに当の本人は仕事が入ったという事で外出中だ。
「母さん・・・何考えてんだよ・・・」
「あはは・・・」
トーマは頭を抱えリリィは苦笑いする。だが・・・
「・・・」
ブレイブは沈黙を保ったままだ。だがその顔には怒気が隠れることなくはっきりとわかる。
「ブレイブ・・・そろそろ許してやったらどうだ?」
「なりません、主。あのような輩、いつ主を再び危険にさらすか・・・!」
「帰り討ちにしたんだ。結果オーライってことでいいだろ?そうピリピリしてると、あいつがかわいそうだ・・・」
「奴に情など不要です」
“聞く耳持たぬ”とはまさにこの事だ。ブレイブは主人であるトーマの言葉にもくれず、シルバームーンに対しての怒りを放っている。
「ねえ、あの子に名前は付けてあげないの?」
「名前?そうだな・・・」
頭をひねりだし、何かないかと考えるトーマとリリィ。
「・・・ユウキ」
「?」
「ユウキなんてどうだ?最後に俺を助けてくれた、あの“勇気”があったから勝てたんだ」
「ユウキ・・・うん!いいと思うよ!(なんかすごい単純な気もするけど・・・)」
内心どうかと思いながら、リリィはトーマの考えた名に共感し、名前を決めた。
「おっと。あんまり話してると晩飯が遅くなっちまう。アイシス!飯にしようぜ」
「あ、は~い!」
その後、トーマ達はテキパキと夕食の支度をし食事を取った。
その後、寝る前になってリリィとアイシスが“トーマと一緒に寝る!”と言いだし、寝床の調整を行う事となった。眠っている時、トーマは2人の愛らしい寝顔を何度も直視し、そのたびに心臓の鼓動を速めるのだった。
理性が崩壊せず2人を襲わなかっただけでも“よく耐えた”と言うべきだろう。
《あ~ら、失敗してしまいましたの》
アルトセイム・某所・マンション内
そこではモニターに映っている女性とトーマが逃がした女性が話している。
「仕方ないだろ!全部あのガキンチョが悪いんだ!!」
《言い訳はみっともないですわよ~?》
「くっ・・・!」
のんきな口調でモニターの女性は話しているが、その言葉はまるで相手に反論を許さないかのような物だ。
「とにかく、もっかい勝負吹っかけてぶちのめしてやりゃいいんだろ!」
《もちろん♪手段は問いませんわ。データが手に入れば、“ドクター”もお喜びになるでしょうし》
「っ・・・分かったよ。ちゃんとしてれば・・・“プレシア”を放してくれるんだよな?」
《ええ。約束ですからね。では、ご活躍を期待してますわ♪》
そう言い残しモニターは途切れた。女性は苦い顔をした後、ソファで横になっているアンノウンに声をかける。
「“フェイト”・・・これからどうすんのさ・・・あんたが負けるなんて・・・」
「大丈夫だよ“アルフ”。負けたのはショックだけど・・・」
アンノウンこと“フェイト”と呼ばれた少女は“アルフ”と呼んだ女性の声に応える。
しかし・・・
「もうこんな事やめて逃げようよ!?セキュリティまで動き出してんだよ!?逃げ切れるわけないよ!!ここもいつバレるか・・・」
「・・・でも、そうしないと、“母さん”を助けてあげられないから」
「フェイト・・・」
どうやら危険を承知でこのふざけた事をやるつもりのようだ。その眼には真っ直ぐな意思が宿っている。
「(私がここであきらめたら・・・母さんを助けられない・・・!)大丈夫だよ。私、強いから。私が選んだ道だから」
彼女は再び戦う事を心に誓った・・・
・・・最愛の母親のために。
あれ?これ“遊戯王”だよね?
何でだろう・・・コメディになったりシリアスになったり・・・あぁ忙しい!!
さて、今回でアンノウンこと“フェイト”他数人の新しい名前が挙がってきましたね。
彼女が言っていた母さんを助けるとは!?
ここまで読んで感づいた方も居ると思いますが、この小説のキャラたちは某魔法少女漫画をモデルにしてます。
では次回!