SCP-001-KV   作:SCP-001-KV

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12話 ████なる日々(中編)

 ──『肉体のない人間を人間と呼べるのか』。

 

 その問いに近いものが、ここキヴォトスにもあります。

 

 ──『神秘のない人間を人間と呼べるのか』。

 

 この世界の人間で神秘を持っていない者はいません。

 その神秘の保有量や質によって、人々は背中に羽を生やしたり、頭に角を生やしたりしています。

 

 前世の価値観であれば、羽や角がある人型生物は人間と呼ばれません

 しかし、この世界ではそれらがあるからこそ、人間と呼ばれ、人間らしいと言われるのです。

 

 特にわかりやすい神秘として、ヘイローが挙げられます。

 これは、頭の上にある天使の輪っかみたいなものです。

 

 それが、キヴォトスにおける()()の象徴なのです。

 

 

 

 

 

 さて、なぜ私が急にそんな話をしたかと言うと。

 

「見ての通り、君にも見えないだろう?」

 

ミカさんに案内され向かった部屋には、中央に一つの白いベッドが置かれていました。

 その周囲には、ドラマで見るような心拍数を教えてくれる機械が置かれています。

 

 そして、そのベッドにいる少女は私に向かってそう問いました。

 問いというより、ただの確認作業といった様子でしたが。

 

 人間であれば、あるはずのもの。

 それがない人間は……。

 

「……あなたが、ミーム汚染(この噂)の本体ですか」

 

「いかにも。

 私が、それを撒き散らしている本体だろうね」

 

──そこには、ヘイローのない少女がいました。

 

 神秘(ヘイロー)のない人間を()()と呼べるのか』。

 

 その問いを、私は仮定ではなく現実として考えることになりました。

 

「といっても、自覚はないんだ。

 ただ、現実的な時系列を紐解けば、それは私が原因であるという結論に行きつくというだけでね」

 

なんというか、難しい言い回しですね。

 

 どうやら、本人としては意識的に噂を広げているわけではないようです。

 つまり、制御不能な状態にあるということですね。

 

「時系列……ということは、何かがあったんですか?」

 

「君はとても話が早いね。

 その前に、君はこの事象をどこまで理解している?」

 

どこまで。

 たぶん、ほとんどを理解していると言えるでしょう。

 しかし、それをどう伝えるべきかが難しいですね。

 

 なるべく、一般人にSCPの三文字は伝えたくありません。

 光に生きる人々(彼女たち)は、闇の世界(我々)を知るべきではありません。

 

「3月5日にキヴォトスは滅びる、という預言は偽りです。

 しかし、予言をわずかにでも信じた者は希死念慮を抱き、40日以内に必ず自殺を図ります」

 

「……困ったな、私よりも詳しそうだ。

 ただ、君が私のことを知らなかったということは……。

 私が最初に感染させた対象のことも、また知らないと思っていいのかな?」

 

「はい」

 

私は短く答えました。

 なんとなく、彼女から話が長そうな雰囲気を感じ取ったので、短く済ませました。

 

「その前に、自己紹介がまだだったね。

 私は百合園(ゆりぞの)セイアだ」

 

「よろしくお願いします、セイアさん。

 私は今日トリニティに転校してきた、日輪ムガミです」

 

日輪と書いて『ひのわ』と読む、すこし珍しい苗字です。

 おそらく、初見の人は十中八九『にちりん』と読み間違えるでしょう。

 

「今日?」

 

「はい。アビドス、ミレニアムと来まして……。

 ──今日までに十回、あなたのような事象と出会い、解決してきました」

 

私の言葉に、ミカさんとセイアさんは驚いたように目を見開きました。

 そういえば、ミカさんにも話していませんでしたね。

 

 そして、新たな門出となる十一回目はセイアさんになりそうです。

 

「……どうやら、私たちは大船に乗れたらしい」

 

その時。

 

 セイアさんはその石のように固かった表情を少しだけ和らげ、安心したように微笑みました。

 

 

 

 

 

 そして、セイアから聞いた難解かつ冗長な話を端的にまとめると。

 

 セイアさんは元々、預言ができる体質だったようです。

 それは基本的に、夢のなかに未来の映像が流れてくるという形でした。

 

 ある日。突然、『3月5日にトリニティは滅びる』という文章が夢のなかに現れました。

 そして、目覚めた時には神秘がなくなっていました。

 

 セイアさんは信頼のおける二人の親友にだけ、詳細を話しました。

 

 片方は、文章だったことも踏まえて、その預言を信じませんでした。それがミカさんです。

 片方は……今まで、セイアさんが預言を外したことはなかったため、それを信じました。

 

「──桐藤(きりふじ)ナギサ。

 それが最初の罹患者であり、大切の親友の名前だよ」

 

その名前を聞いて、記憶の蓋が開かれたような。

 目の前で光が弾けたような錯覚と共に、思い出しました。

 

 桐藤ナギサ。聖園ミカ。そして、百合園セイア。

 彼女たちは、原作キャラクターです。

 

 エデン条約(トリニティ)編において、ナギサさんとミカさんは補習授業部という部活動に対する考えで対立していました。

 しかし、そこにセイアさんの姿はなく……。

 

 いま思えば、セイアさんが夢のなかからプレイヤー(先生)に語り掛けている描写がありました。

 

「ナギサは発症から二週間で七回の自殺を行おうとした。

 そのため、現在はほとんどの身動きを封じられて、監視付きの部屋に閉じ込められている」

 

つまり、始まりは二週間前ですか。

 最悪、数ヶ月の可能性も視野に入れていたので、それよりは幾分かマシですね。

 

 ただ、七回という数を見れば、安易に待ちの姿勢で考えるべきではないのがわかります。

 攻めの姿勢でいきましょうか。

 

「……ミカさん、すこし二人きりで話せますか?

 策が思いつきましたが、実行が可能かお聞きしたいので」

 

「えっ?

 うん……セイアちゃん、ちょっと席を外すね!」

 

これを行うには、ミカさんの協力(説得)が必要不可欠です。

 

 

 

 

 

 そして、私はミカさんに銃を突きつけました。

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