SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
──『肉体のない人間を人間と呼べるのか』。
その問いに近いものが、ここキヴォトスにもあります。
──『神秘のない人間を人間と呼べるのか』。
この世界の人間で神秘を持っていない者はいません。
その神秘の保有量や質によって、人々は背中に羽を生やしたり、頭に角を生やしたりしています。
前世の価値観であれば、羽や角がある人型生物は人間と呼ばれません
しかし、この世界ではそれらがあるからこそ、人間と呼ばれ、人間らしいと言われるのです。
特にわかりやすい神秘として、ヘイローが挙げられます。
これは、頭の上にある天使の輪っかみたいなものです。
それが、キヴォトスにおける
さて、なぜ私が急にそんな話をしたかと言うと。
「見ての通り、君にも見えないだろう?」
ミカさんに案内され向かった部屋には、中央に一つの白いベッドが置かれていました。
その周囲には、ドラマで見るような心拍数を教えてくれる機械が置かれています。
そして、そのベッドにいる少女は私に向かってそう問いました。
問いというより、ただの確認作業といった様子でしたが。
人間であれば、あるはずのもの。
それがない人間は……。
「……あなたが、
「いかにも。
私が、それを撒き散らしている本体だろうね」
──そこには、ヘイローのない少女がいました。
『
その問いを、私は仮定ではなく現実として考えることになりました。
「といっても、自覚はないんだ。
ただ、現実的な時系列を紐解けば、それは私が原因であるという結論に行きつくというだけでね」
なんというか、難しい言い回しですね。
どうやら、本人としては意識的に噂を広げているわけではないようです。
つまり、制御不能な状態にあるということですね。
「時系列……ということは、何かがあったんですか?」
「君はとても話が早いね。
その前に、君はこの事象をどこまで理解している?」
どこまで。
たぶん、ほとんどを理解していると言えるでしょう。
しかし、それをどう伝えるべきかが難しいですね。
なるべく、一般人にSCPの三文字は伝えたくありません。
「3月5日にキヴォトスは滅びる、という預言は偽りです。
しかし、予言をわずかにでも信じた者は希死念慮を抱き、40日以内に必ず自殺を図ります」
「……困ったな、私よりも詳しそうだ。
ただ、君が私のことを知らなかったということは……。
私が最初に感染させた対象のことも、また知らないと思っていいのかな?」
「はい」
私は短く答えました。
なんとなく、彼女から話が長そうな雰囲気を感じ取ったので、短く済ませました。
「その前に、自己紹介がまだだったね。
私は
「よろしくお願いします、セイアさん。
私は今日トリニティに転校してきた、日輪ムガミです」
日輪と書いて『ひのわ』と読む、すこし珍しい苗字です。
おそらく、初見の人は十中八九『にちりん』と読み間違えるでしょう。
「今日?」
「はい。アビドス、ミレニアムと来まして……。
──今日までに十回、あなたのような事象と出会い、解決してきました」
私の言葉に、ミカさんとセイアさんは驚いたように目を見開きました。
そういえば、ミカさんにも話していませんでしたね。
そして、新たな門出となる十一回目はセイアさんになりそうです。
「……どうやら、私たちは大船に乗れたらしい」
その時。
セイアさんはその石のように固かった表情を少しだけ和らげ、安心したように微笑みました。
そして、セイアから聞いた難解かつ冗長な話を端的にまとめると。
セイアさんは元々、預言ができる体質だったようです。
それは基本的に、夢のなかに未来の映像が流れてくるという形でした。
ある日。突然、『3月5日にトリニティは滅びる』という文章が夢のなかに現れました。
そして、目覚めた時には神秘がなくなっていました。
セイアさんは信頼のおける二人の親友にだけ、詳細を話しました。
片方は、文章だったことも踏まえて、その預言を信じませんでした。それがミカさんです。
片方は……今まで、セイアさんが預言を外したことはなかったため、それを信じました。
「──
それが最初の罹患者であり、大切の親友の名前だよ」
その名前を聞いて、記憶の蓋が開かれたような。
目の前で光が弾けたような錯覚と共に、思い出しました。
桐藤ナギサ。聖園ミカ。そして、百合園セイア。
彼女たちは、原作キャラクターです。
しかし、そこにセイアさんの姿はなく……。
いま思えば、セイアさんが夢のなかから
「ナギサは発症から二週間で七回の自殺を行おうとした。
そのため、現在はほとんどの身動きを封じられて、監視付きの部屋に閉じ込められている」
つまり、始まりは二週間前ですか。
最悪、数ヶ月の可能性も視野に入れていたので、それよりは幾分かマシですね。
ただ、七回という数を見れば、安易に待ちの姿勢で考えるべきではないのがわかります。
攻めの姿勢でいきましょうか。
「……ミカさん、すこし二人きりで話せますか?
策が思いつきましたが、実行が可能かお聞きしたいので」
「えっ?
うん……セイアちゃん、ちょっと席を外すね!」
これを行うには、ミカさんの
そして、私はミカさんに銃を突きつけました。