SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
その世界は、
私は校門の前でシキの頭を撫でました。
シキは気持ちよさそうにお腹を見せています。
「おや……神秘ではない不可思議を見つけたかと思えば、それと戯れる少女もいるとは」
「っ!!?」
私が驚きながら振り向くと、そこには黒いスーツを着た人物がいました。
ただし、その顔は人間のそれではなく、黒いマネキンに白い亀裂が入っているようなものでした。
その特徴的な容姿を、私は知っていました。
黒服。それが原作における彼の名称でした。
彼については多くが謎に包まれています。ただし、一つハッキリしているのは、原作において彼はプレイヤーの敵として現れるということです。
「……ここは学校関係者以外立ち入り禁止のはずですが、どなたでしょうか」
「おや、連絡の行き違いでしょうか。
私は工事関係者で、今日は改装のため下見に来たのです」
へぇ……平然としていますが、これは嘘でしょうね。
カバーストーリー(表向きの経緯)として『大規模工事により立ち入り禁止』とすることは考えられます。しかし、実際に
ふと、周囲を見渡せば、すこしだけ離れたところに警備員らしき人が倒れているのが見えました。
やはり、彼は招かれざる客のようです。
私が倒れている警備員に気付いたことは察しているでしょうに、黒服はその余裕そうな態度を崩しません。
「そういうことにした方が、この場においてはお互い都合がいいのではありませんか?
あなたたちは、それを隠したいように見えますが」
黒服はシキへ視線を……いや、目はないので、正確には顔全体をそちらに向けながら言いました。
私は
同時に、相手もまた
……どうしようもないですね。
脅したら脅されるだけです。であれば、別の道を探すしかありません。
「それで……工事関係の方が、本日は何のご用でしょうか」
結局、私は彼が言ったように、そういうことにしておくことにしました。
都合よく動かされているような気はしますが。
「えぇ、実のところ、今日は下見以上のことをするつもりはなかったのですよ。
ただ、少しばかり探求心がくすぐられて、強行突破をしてしまいましたが」
つもりはなかった、と言うことは、今はするつもりがあるということですか。
私は警戒しながら、いつでも逃げられる態勢を整えておきます。
もしくは、逆に。
知られてしまったからこそ、彼をこの世の中から葬り去る覚悟を。
なぜなら、
「ですが、おかげであなたを……いえ、突破口となる存在を見つけることができました」
「突破口?」
「えぇ、私は他にもいくつか案件を抱えておりまして。
その中には、あなたの
どうやら、彼は他にも
となれば、私は財団職員としてそれらをどうにかしなければいけません。
「私はこれらを現状持て余しているのです。
それと戯れることのできるあなたなら、どうにかできるのではないでしょうか?」
ヒマリちゃんやリオちゃんのことなど、気になることは多いですが……。
何となく、黒服とここで関係を切ってしまったら、
「……いいでしょう。
ただし、タダでやるつもりはありません」
「ほう……では、あなたは何を望みますか?」
私は考えます。
交渉事をする際、最初に本命の条件を言ってはいけません。なぜなら、必ず交渉が入り、どちらかが譲渡を迫られるからです。
だから、絶対に譲れない条件ではなく、譲っても構わない条件を提示します。つまり、見せかけの本命です。
「まず、それらの対処は私の主導で行います。
そして、それらの問題を解決できた際はそれらの所有権を貰い受けます」
「それは対価として吊り合っているとは言い難いかと。
なにより、私に利が少ないですから」
「ですが、私が対処した後にそれらを悪用されたり、私の名前を勝手に使われたりしたら困りますから」
当然、反論が出ます。
それは織り込み済みですが、あえて渋ります。
「では、私はそれらを合法な手段かつ、あなたの名前が出ない形で使用することをお約束しましょう」
「それらをこちらはどう確認するのですか?
口では何とでも言えるでしょう」
そして、私はあえて譲歩したふりをしながら、本命の条件を提示します。
「では……まず、対処は私に一任してください。
これだけは譲れません。
ただし、所有権は共同所有としましょう」
「共同所有ですか」
「はい、期限は……十年ほどで構いません」
これに関して、十年というのは適当な数字です。これが五年でも問題はありませんでした。
三年以下となると、原作開始前に契約が終わってしまうので避けたいところでしたが。
ただ、黒服はその期限に関しては何も言わず、受け入れたようでした。
「では、それらの条件を譲歩する代わりに、一つ。
これらはトップシークレットの一つでもありますので、あなたに信頼がおけるまで、あなたが外部との連絡を取るのは禁止させていただきたいのです」
「信頼がおけるまで、とは?」
「そうですね、明確に定めておきましょう。
私が持つ四つの案件に対して、あなたが対処を完了させるか、対処不能を宣言するまでとしましょう」
それらのなかに、
その場合は所有権を貰えないわけですが、
「……わかりました。
契約──」
「──成立ですね」
私たちは握手をしました。
といっても、これは決して友好関係ではありません。
私が共同所有を提案した理由は一つ。片方が失踪や不慮の事故に巻き込まれて亡くなった場合、所有権はもう片方に移るからです。
最初から、共同利用なんてものは考えていません。それは、お互い様でしょう。
だから、私たちは悪手をしながらも、決して相手から目を離すことはしなかったのでした。
この時、私は悪魔と契約をしたのだと思っていました。
しかし、実際は違いました。
私が握ったのは、鬼の手だったのです。
9月25日
この日、私は黒服と出会いました。