SCP-001-KV   作:SCP-001-KV

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22話 こんなのは望んでいない、██だ(後編)

████年██月██日

████カンパニー 経営企画部 建設計画課

建設計画部長 ████様

有限会社 カイザー工務店

 

 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

 

 弊社の長年に渡る研究の成果と最新のデジタル技術を盛り込んだ、『正確』かつ『迅速』な設営を行わせて頂きました。

 なお、近隣住民の方より「長く働ける場所が欲しい」との御希望をお受けしましたので、建設作業の『柱』として手配させて頂きました。

 

 コンビニ新設により、学園都市キヴォトスが今後より一層のご発展をとげられますよう、心より祈念申し上げます。

 

謹白

 


 

 一件目。

 曰く、そこはバグったコンビニと呼ばれているようです。

 といっても、常にバグっているわけではなく、店員がコンビニの外に出た時だけ起きるようです。

 

「この物件は研究の副産物として生まれたのです。

 ただ、SCP(あれ)の力がどうしても安定しなかったので、柱を置いたんです。

 あぁ、そこにいる少女がその柱です」

 

と、黒服は一人の少女を指差しました。

 

「あれ、新しいお客様ですか……?

 アルバイトのソラです」

 

白と青の制服を身にまとった少女は、おずおずと言った様子で名乗りました。

 見覚えがあるような、ないような……。

 

 原作にいたキャラでしょうか?

 それにしては、ハッキリとした記憶はありませんね……。

 

「このように、彼女は外から来た人物をお客様としか認識できません。

 そして、自分がここで数百連勤もしていることに何の違和感も抱いていないようです」

 

「えっ、あの、私、何百日も働いてないですよっ……!?

 いや、何連勤目かは覚えてないですけど……」

 

わたわたと慌てているソラさん。

 嘘をついている様子には見えません。

 

 ですが、黒服の言葉を信じるのであれば、彼女はここに何百日も囚われていながら、その違和感に気付いていないのでしょう。

 バグっているという言葉を聞いて、もしかしてとは思っていましたが……。

 

「なるほど、如月ですか」

 

「えっ、と……私の苗字は如月じゃないですよ……?」

 

「あぁ、すみません。

 こっちの話です」

 

『有限会社 如月工務店』。

 それは、要注意団体の一つです。

 

 安価かつ迅速に仕事をしてくれる工務店です。

 ただし、従業員は人ではなく鬼なので、依頼内容は多くの場合で曲解されます。そのため、依頼者が望んだ結果が得られることは稀です。

 

 文字通りの意味で、人でなしに作られた人の心がない作品物が、如月工務店のSCiP(スキップ)(異常存在)の特徴です。

 また、彼らは資材に人間を使用することがあります。今回もそのパターンだったというわけです。

 

 その時、ふと思いました。

 

「もしかして、黒服(あなた)ってベアトリーチェとお知り合いですか?」

 

「おや、彼女を知っているんですか?

 四年ほど前に、同じゲマトリアという集団に属していましたよ。

 ただ、彼女は失踪してから行方がわかっていませんが」

 

「そうでしたか。

 無事に再会できるといいですね」

 

舌先三寸で話し、私は考え込むような動作をしながらソラさんを見ました。

 

 ベアトリーチェはニッソのSCiP(スキップ)(異常存在)ばかりを所持していました。

 そして、黒服は本来であれば如月工務店が生み出すはずのSCiP(スキップ)(異常存在)を、自らで生み出しています。

 

 もしかしたら、そのゲマトリアという集団と要注意団体は何かしらの共通点があるのかもしれませんね。

 ゲマトリア、ですか。初めて聞く名前ですが、今度調べてみましょうか。

 

 といっても、原作において敵役だった黒服が所属している組織という時点で、ある程度察しがつきますけど……。

 少なくとも、善が似合う組織ではなさそうです。

 

「あ、あの~……お客様~……?」

 

「それで、この施設の問題点とは具体的に何ですか?」

 

「彼女はこの前、『連勤が嫌だ』とコンビニを抜け出しましてね。

 彼女が自ら勤務を望むようにしてほしいのです」

 

「あっ、私のことは無視なんですね……そうですか……」

 

あぁ、すみません。無視するつもりはなかったんですが。

 ただ、無意識に彼女を人として扱っていないのが出てしまったのでしょう。

 

 SCiP(スキップ)(異常存在)を人として扱ってしまったら、いざという時に判断が鈍りますから。

 

「十五分だけ、彼女と二人きりにしてもらえますか?」

 

「おや、私はお邪魔者ですか」

 

「女子会に参加できるのは女の子だけですよ」

 

黒服は私の返答に『ククッ』と笑い、コンビニから出ていきました。

 

 さて……。

 

 このコンビニは【SCP-480-JP(未完成の山間公園)】でしょう。

 それはバグった公園であり、なかには一人の少女がいます。

 

 少女は食事や睡眠などを一切取らず、常に敷地内を徘徊しています。

 財団は少女を敷地外に出してみました。結果、少女の周囲にあるものが転移と融合(バグ)を繰り返し、それにより十数名の死者が出ました。

 

 また、その公園の設営計画責任者の手記には、『如月工務店が無料で建設を手伝ってくれたこと』や『未完成の細部は他の建設会社に任せること』、『夜中に忍び込んだ建設会社社長の娘が失踪したこと』などが書かれていました。

 といっても、未完成の山間公園というメタタイトルからもわかるように、他の建設会社がその公園を作り上げることはできませんでしたが。

 

 また、手記の最後にはこう書かれています。

 『こんなのは望んでいない』、『鬼だ』。

 

 このSCiP(スキップ)(異常存在)の少女は決して自ら外に出ようとはしません。

 ですが、この世界での少女、もといソラさんは連勤に嫌気が差したのかコンビニから出ようと試みたようです。

 

 というか、実際に出たのでしょう。

 街中でなぜか、ここの周囲だけ廃墟と化していました。

 

 幸いと言っていいのか悪いのか、キヴォトスは治安が悪いので、街中で突然不良が銃を持って暴れることはしょっちゅうです。

 そのため、突如できた廃墟に関しては、それほど不審がられてはいないでしょう。客が寄り付くかは別として。

 

 ともかく、私がすることは一つです。

 

「こんにちは、ソラさん。

 お仕事の邪魔はしないので、少しだけ私とお話ししてくれませんか?」

 

周りへ被害をもたらさないように、ソラさんをこの場所へ心理的に縛ること。

 それが彼女にとってどれだけ冷酷になろうと、残酷に映ろうと、それが財団職員のやるべき職務ですから。

 

「え、えっと……はい、ちょっとだけなら……」

 

「ありがとうございます。

 ソラさんはこの仕事を続けて長いんですか?」

 

「えっと、たぶん……一年くらい……?

 あの、住み込みで、連勤も多いですけど……休む時はちゃんと休んでますよ!」

 

本人の認識だとそういうことになっているらしい。

 しかし、実際は四六時中働いていており、そのことを認識できていない可能性が高いでしょう。

 

 時間もないので、早速本題に入りましょうか。

 

「ソラさんは、『連勤が嫌だ』と抜け出したことがあるそうですが」

 

「あっ、それは、その……正確には、違うんです。

 いえ、連勤が嫌なのは本当にその通りなんですけど……。

 その頃は……嫌なお客様が連日来ていて、突発的に逃げたくなってしまったというか……」

 

なるほど、連勤自体は嫌がっていないと見ていいのかもしれませんね。

 というか、本人の認識としては、連勤自体もそれほどしているわけではないようですし。

 

「他に対処できる従業員はいなかったのですか?」

 

「き、聞いてくださいよっ……!

 このお店、私のワンオペなんです……!

 お、おかしくないですか……!?」

 

おかしいはおかしいんですが……。

 そもそも、ソラさんみたいな、明らかに小学生くらいの年齢の子が働いていること自体がおかしいと言っちゃおかしいんですよね。

 その嫌な客も、もしかしたらソラさんの容姿を見て、邪な考えを抱いたのかもしれませんし。

 

「ソラさんは大変な思いをしてきたんですね。

 他にも、何か抱えていることがあるのではないですか?」

 

ですが、彼女が職場から逃げようとしたのは、本当にそれだけなのでしょうか。

 いえ、もちろん、それも理由の大部分なのでしょう。

 

 しかし、それを対処しただけで、ソラさんが未来永劫ここから逃げ出さないとは、とても思えませんでした。

 

「……あの、変なことっていうか、そんなことって思うかもしれないんですけど」

 

「大丈夫です。

 ソラさんの言葉を聞かせてください」

 

どうやら、信頼は稼げていたらしい。

 ソラさんは緊張した様子ながらも、伝えようとしてくれています。

 

「わ、私……友達が欲しいんですっ!

 いえっ、あの、友達ってほどの大層なものじゃなくても、気軽に話せる相手っていうか、そういう……!

 ……だけど、うちは貧乏でみんなみたいにゲームなんて買えなくて、バイトで遊ぶ時間もなくて……だから……」

 

彼女は正直な心の内を放してくれました。

 

 不安そうな、しかし、どこか期待するような表情が彼女の心を表しています。

 

「ソラさん、よければ私とお友達になってくれませんか?」

 

「えっ……!!

 ……い、いいん、ですか……?」

 

私は微笑みを作りました。

 

「こちらこそ、私でもいいのなら。

 また、お話してくれますか?」

 

「もっ、もちろんですっ!!

 と、友達……人生初の……」

 

実のところ、友達になるのはこちらも願ったり叶ったりでした。

 黒服と共同所有の契約は交わしましたが、反故にされる可能性の方が高いと考えていました。

 

 理由はいくらでも作り出せます。

 ソラさんが暴れているからしばらく会わせられないとか、店内を改装中とか。

 しかし、友達という名文で、私は彼女と会う権利を得ました。

 

 そして、これにより、私は彼女を安定して収容させるためという理由で定期的な監査を行えるようになりました。

 

「これからも遊びに来ますね、ソラちゃん」

 

「は、はい……っ!

 あっ、名前、聞いてなかったです……」

 

そういえば、こっちが一方的に知っていただけでしたね。

 

「私はムガミ、日輪ムガミです。

 ムガミちゃんって呼んでください」

 

「む……ムガミちゃん……。

 えへへっ……私に、初めてのお友達……」

 

……何だか、心が痛くなって来ましたね。

 

 私がSPTF財団に戻ったら、もっとたくさんの友達候補を連れてきましょうか。

 

 

 ──こんなのは望んでいない、連勤だ。

 

 

 いつか、彼女がSCiP(スキップ)(異常存在)としてではなく、人として幸福に暮らせる日を祈って。

 


 

9月28日

 【SCP-480-JP(未完成の山間公園)】でソラちゃんと友達になりました。

 


 

 

こんなのは望んでいない、連勤だ

 

アイテム番号:

 SCP-026-KV

 

オブジェクトクラス:

 Euclid(ユークリッド)(不安定な収容)

 

特別収容プロトコル:

 【SCP-026-KV(こんなのは望んでいない、連勤だ)】は通常、カバーストーリー(表向きの経緯)として『テロ群発地域』を使用し、一般人の立ち入りを制限してください。

 また、職員は定期的に配送業者などに扮するか、友人としてSCP-026-KV-1と雑談を交わし、脱走を考えさせないようにしてください。

 脱走した場合、職員は直ちに避難し、機動部隊“プサイ-7(リフォーム屋)”へ連絡してください。

 

説明:

 【SCP-026-KV(こんなのは望んでいない、連勤だ)】は【SCP-480-JP(未完成の山間公園)】とエンジェル24が融合した存在です。

 エンジェル24はD.U.外郭の高層ビルにある商業施設であり、一般的なコンビニと同等の設備や商品を有しています。

 ただし、商品を運ぶ配送業者やSCP-026-KV-1以外の従業員等は確認されていません。

 その異常性はSCP-026-KV-1が脱走した際に発現し、周囲百数十メートルが転移と融合を繰り返すと予測されています。

 

補遺1:SCP-026-KV-1

 SCP-026-KV-1(以下、ソラ)は、アルバイトを自称する現在████連勤中の少女です。

 彼女から提供される個人情報は、数年前に行方不明となった██ソラとほぼ一致していることが確認されています。

 ソラは常にコンビニに在中し、連勤であることに不満は持っていますが、それ自体に違和感は持っていません。

 また、一切の摂食・排泄・睡眠を取っていないにも関わらず、一般的な人間の身体を持ち、正常な範囲での成長も確認されています。




登場したSCiP(スキップ)(異常存在)

【SCP-480-JP(未完成の山間公園)】(作者: rkondo_001)
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