SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
私はベッドから起き上がり、用意された朝食を食べながらふと疑問に思いました。
なぜ、私は
いえ、そもそも……私には、このカイザー工務店にいなければいけない理由はもうないはずです。
私はこの工務店が有していた、そして、現在は私が
しかし、如月工務店の
「……予想が外れましたね」
私は小さく呟きました。
そして、あれの対策のためにつけていた日記を読み返しました。
これはあれ対策のため、毎日読み返すようにしていたものです。
9月25日
この日、私は黒服と出会いました。
9月28日
【
10月1日
【
くらっちゃんとひむっちゃんに出会いました。
10月4日
この日も黒服は同行せず、美術館で【
そこまでは当然私の知っている、私が出会ってきた人に関する記録でした。
名前に関しても、全員ともきちんと覚えています。
ただし、そこから先の内容が私には見覚えのないものでした。
正確に言えば、私はそれの大部分を忘れていました。
10月6日
【
私は驚きました。
私にはそれと出会った記憶がなかったのです。ただ、同時に納得し、私は日記をつけていたことに安堵しました。
【
中に入ると、一定時間ごとに『〇〇さん、✕✕さんがお待ちでした』と、幼い少女の声で迷子のアナウンスがされます。
この際、
実験によって全ての人に忘れられたDクラス職員は、鍵のかかった放送室の前で、中にいる少女と話しました。
そして、扉を開けることを選んだ少女にDクラス職員は「よう、お嬢ちゃん」と声をかけました。
それ以降、迷子のアナウンスは少女の声から男性の声に変わりました。
そして、幼い少女が一人保護されました。
「……私が何かを忘れているということは、中に入った人物がいたということ。
それも、私と近い距離にあった誰かですね」
でなければ、こんなに大部分を忘れ去ってはいないでしょう。
誰かに見られる可能性があったので、内容を細かく書けていないのが痛手ですね。
私は焦る気持ちを落ち着かせながら続きを読みます。
といっても、日記はそれで最後でした。
10月9日
私は悩んだ末、黒服に『あの放送室を真の意味で手に入れるためには、中にいるアナウンス役の少女と交代する必要がある』と伝えました。
きっと、彼はそれを行うでしょう。
私はこの選択を後に後悔するかもしれません。
追記:黒服というのは役職名ではなく固有名詞です。
そこでようやく、理解しました。
私はどうやら誤解していたようです。
私は日記を見て、全ての人物を覚えていると言いましたが、それは私が名前だと認識していたものに対してだけでした。
──
それが誰かの
そして、その事実を忘れていること自体が、
私は日記を裏返し、最後のページから読み進めました。
そこには私の知人に関する情報が書かれています。そこに黒服という人物の情報が載っていました。
名前:不明(愛称をつけるなら黒服)
詳細:性別年齢不明。ベアトリスと同じで要注意。工務店と関わりが深い。胡散臭い敬語で話す。顔写真は次のページ。最近出会った異常存在は彼との共同所有で、周囲と連絡を禁じる契約を行った。もし、創作キャラクター化するなら明らかに敵役。ゲマトリアに所属しているらしい。アビドス辺りと相性が悪そう。
こちらも誰かに見られる可能性を考えて、とても抽象的な表現で書いています。
どうやら、黒服というのはとにかく秘密の多い存在らしいです。話し方は胡散臭くて、敬語ですか。
「……全く覚えていないですね」
どうやら、
──黒服さん、皆さんがお待ちでした。
とにかく、現状を確認しなくては。
黒服は全員から忘れられたのか。それとも、一部の人はまだ覚えている状態にあるのか。
となれば、結論は一つです。
予想は的中しました。
【
目の前には所在なさげに視線を揺らす、青紫色の髪を持った少女がいました。
「初めまして、私は日輪ムガミと申します。
お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「え、えっと……ここは、どこなんですか……。
あなたは、誰なんですか……」
「すみません、怖がらせてしまいましたね。
私はあなたがいた土地を所有している者でして、敷地内にいたあなたについてお聞きしたいんです」
「所有者の……あっ、遊園地の方だったんですね。
えっと、もう火事は鎮火されたんですか?
私のパパやママは!!?」
「それを確認するために、あなたのことについて教えてほしいのです」
「あっ、ご、ごめんなさい……」
彼女は黒服と出会ったことを覚えていないようです。
そして、
彼女の人生は間違いなく、
それでも。
「ユウカ……
原作で彼女が見せていた笑顔は輝いていました。
それをもう一度見られる日を、私は待ち続けようと思います。
[データ削除済]さん、皆さんがお待ちでした
アイテム番号:
SCP-029-KV
オブジェクトクラス:
特別収容プロトコル:
【
説明:
【
なお、放送室には鍵がかかっており、開けることはできません。
三時間毎に「(入場者の名前)さん、(入場者の知人の名前)さんがお待ちでした」という形で迷子のアナウンスが流れます。
その際、入場者の知人は入場者に関する記憶を忘れ、知覚することができなくなります。
補遺1:事案29-A
早瀬ユウカという少女が保護され、その時からアナウンス役の声がSCP-029-KV-1(以下、[データ削除済]*1)のものへと変わりました。
これは[データ削除済]が全ての存在から忘れられた後、放送室内へ入ったためと思われます。