SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
また、定期的に注釈は減らしていくゾ。
例:
一難去ってまた一難とはこのことなんでしょう。
「……もう一度言ってもらえますか?」
「はい。
──SPTF学院は、ニセガミ信奉者の反乱によって占拠されました」
「……」
私は遠い目をしました。
正直、いずれ起こる可能性はあると思っていました。
だけど、もう少し事前に対策が打てると思っていたのも事実です。甘い考えでしたね。
四年の月日は私に時間の大切さをこれでもかと伝えてくれます。
「そして……ムガミちゃん当てにメールが届いています」
「メール?」
「はい。
『ニセガミ様が“博士”との対話を望んでいます』、と。
これは以前から届いていたものですが」
「私は【
ニセガミ信奉者……神、ですか。
これは一筋縄ではいかないでしょうね。
さて……また、頑張りましょうか。
確保、収容、保護を。
ひとまず私は現地へ赴きました。
といっても、念のため隠れながらですが。
会いたいとは言われましたが、どういう扱いをされるのかわかったものじゃないので。
今回も護衛としてモモイに同行してもらっています。
「ニセガミ様に自由を!!
ニセガミ様に自由を!!」
「うわー、なにあれ……。
ただの
「彼女たちなりに何かしら考えはあるのでしょう」
ニセガミ信奉者たちは行進をしながら学院内を徘徊しています。
幸いなことと言えば、反乱の中心は学院内であり、自治区全体ではないことです。
といっても、この自治区は学院が行政の中心になっているので、それでも充分な問題なのですが。
と、そんなことを考えていると、学院の校門前で騒ぎ声を上げている人物に気が付きました。
「あれは……」
見覚えるのある姿でした。
水色の髪に青瞳。なにより、その幼女としか思えない低身長。
「なぜだ、です!!
我はニセガミに会わねばならんのだ、です!」
「生憎、ニセガミ様は忙しいのです。
アポを取ってからいらっしゃってください」
「前まではアポなんぞいらなかった、です!!」
「それに、現在学院内は混乱しており、小さな子供が歩くのは危ないかと……」
「我は子どもじゃない、ですっ!!」
ロクちゃんじゃないですか。
なんでこんなところに……。
いや、そういえば、ロクちゃんはたまにニセガミへ会いに来ていると報告書に書いていましたね。
ヒマリちゃんによれば、ロクちゃんはニセガミに憧れているらしいです。
どこに憧れる要素があるのかはわかりませんが……。
「行きましょうか」
「えっ、行くんだ?
やっぱり人間って幼女に弱いのかな」
人間の生態について分析し始めたモモイは無視して、私はロクちゃんたちのところへ近づきました。
「その子は私の知人です。
私と一緒に入れば問題ないでしょう」
「あなたは……?
ッ!!! ……お待ちして、おりました。
同行者様は二名でよろしいですか?」
「はい」
私は端的にそう告げます。
それ以上の情報を相手に与える必要などないですから。
「案内役を呼びますので、少々お待ちください」
そう言って女性はどこかへと連絡を取り始めました。
私はそれを視界の端に収めながら、改めてロクちゃんの方へ振り向きました。
「奇遇ですね、ロクちゃん。
ニセガミへ会いに来たんですか?」
「そうなのだ、です。
だが、門前払いされそうになっていた、です。
今回は助けられたぞ、です!」
「気にしないでください。
困った時はお互い様ですから」
ロクちゃんは困ったように周囲を見渡しました。
私が来たためか、周りには少しだけ人だかりができています。
それもそうでしょう。
四年前、私の姿を見たことがある人、もしくはニセガミの姿を見たことがある人。
それらは私の姿とニセガミの姿が同じであることに気付いているはずです。
彼女たちが神と崇める存在と同じ姿をしていること。
それがこの場でどのような意味を持つのかはわかりません。
ただ、良いようにも悪いようにも捉えられることはたしかです。
「いま、ここでは何が起こっているのだ、です?
ここがこんな物騒な雰囲気になっているのは初めてだ、です」
「物騒……たしかに、そうですね。
どうやら、ニセガミ信奉者が『ニセガミに自由を』と言って反乱しているようで」
「『ニセガミに自由を』、です?
それがニセガミの望んだことなのか、です?」
「さぁ。
それを私たちは確かめに来たところなのです」
「なら、我も共に行こう、です!
一人より二人、二人より三人の方が怖くない、です!」
「ふふっ……そうですね」
私はロクちゃんのその様子を見て、少しだけ肩の力が抜けました。
思わず笑みを漏らすと、隣から「やっぱり、人間は幼女に弱い……?」という呟きが聞こえました。
反論ができそうになかったので無視しました。
そうして、しばらく待っていると。
「大変お待たせいたしました。
ニセガミ様のところへご案内します」
先程の人とは違う女性が来てそう言いました。
さて……鬼が出るか蛇が出るか。
願わくば、ニセガミが私の知っているニセガミと近しい存在であることを願いながら、私はその女性についていきました。
案内されたそこは私がニセガミに与えた部屋でした。
ただし、内装は以前より豪華絢爛になっていました。
その中心に座る女性は私とほとんど同じ見た目をしています。
「久しぶりですね、ニセガミ。
私を覚えていますか?」
「いえ、覚えてはいません。
ただ、あなたと会ったことがあるのはこのメモを見て知っていました」
ニセガミとは不定期に、最も近くにいた人物がイメージする神様に姿を変える
ただし、変化した時、前回の記憶は覚えていません。
正確には……例えば、Aという出来事があったとしましょう。
変化をする際、Aの出来事を知っている者が最も近くにいた場合、ニセガミはそれを覚えています。
ただし、Aの出来事を知らない者が近くにいた場合はその出来事を覚えていません。
そのため、ニセガミは出来事をメモにしているのです。
「後ろの方々は……ロクちゃんは先月振りですね」
「ニセガミ、久しいな、です!!
入り口で止められたからこやつらと入ってきた、です」
「今はバタバタしていますからね。
止められたのは先約があったのもあるかもしれません」
「先約?」
私はその言葉を繰り返しました。
ニセガミは後ろを向くと、一人の少女が恐る恐ると言った様子でこちらを見ていました。
見たことのない少女です。
制服はSPTF学院のものなので気にしていませんでしたが、よくよく見ればそれは中等部の制服です。
となれば、この場にいるのはすこし不自然です。
少なくとも、SPTF財団の本格的な仕事をするのは高等部以上の生徒であるはずです。
いえ、この四年間でもしかしたら何か変わっているかもしれませんが。
「し、視線がぁ……見られてます、もう私はこれでおしまいなんですね!!?
どうせ最後に冷蔵庫に残したプリンを食べておけばよかったですぅ……!!」
思わず呆気に取られました。
それは私だけではなかったようで、横を見ればモモイもぽかんとした表情をしています。
ただし、例外的にロクちゃんは慣れた様子でした。
「なんだ、ヒヨリではないか、です。
汝が先約ならば構わぬ、です!」
「ろ、ロクちゃぁん……!」
どうやら二人は知り合い同士のようです。
もしかして、この子もニセガミの元へよく通っている人物なんでしょうか。
ニセガミって一応、ちょっと厄介な
「あなたは?」
「え、えっと……
趣味は雑誌の収集です、って私のことなんて興味ないですよね……え、へへ……っ」
なんでしょう、このえらく自虐的な人は。
ひとまず、この人から話を聞くことにしましょうか。
「槌永さんはどうしてこちらに?」
「あの、一応、研究? みたいな感じで……。
えっと、私がいる時、ニセガミさんは珍しい反応をするみたいなんですっ!!
……そ、それだけです」
なるほど、一応理由があって来ているのですね。
ただ憧れているだけのロクちゃんとは対応が違うことにも納得しました。
ただ、珍しい反応というのは引っかかりますね。
「珍しい反応?」
「実践しましょうか」
そう言って彼女は手を前に出すと、何かを握る動作をしました。
次の瞬間、そこに一本の青い薔薇が現れました。
青い薔薇? どういう……まさか……!?
「他の
私が驚きながらニセガミを見つめると、それは笑みを深めて言いました。
まるで、私の言葉に肯定するかのように。
「──さぁ、話し合いましょうか」
いったい、【
そもそも、なぜ彼女は他の
わからないことだけがわかります。
そうして、私たちにとって明らかに不利な話し合いが始まりました。