SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
話し合いが始まりました。
正直、話し合いなんてせず肉弾戦に持ち込もうかとも考えました。こちらにはモモイがいるわけですし。
ですが、相手は何かしらの方法で
となれば、モモイを模倣されて反撃されてもおかしくないわけです。
そうなれば勝ち目はないため、ひとまず話し合いに応じました。
「ちなみに、私は消した言葉を覚えているので戻せない心配などはしないでください」
「と言いながら、自分は知っているとマウントを取りたいだけではないですか」
そう言いながら、私は自分の言葉に対してわずかに違和感を覚えます。
普段より理性的な言葉ではない、どちらかと言えば喧嘩腰の言葉が出ているように感じます。
消された言葉が関係するのでしょうか。わかりません。
「うーん、面倒だから殺していい?」
「あなたたちに本気で戦われたら私は骨も残らなさそうなのでやめてください」
「たまに来るお店がなくなる心配より、自分の命の方が大切じゃない?」
……SPTF財団をたまに来るお店扱いですか。
まぁ、そういう感覚なのは知っていましたけど。
どちらかと言えば、彼女自身はまだ財団と敵対視している意識の方が強そうですし。
「えっ、な、なんで戦うことになっている、です!?」
「そ、そうですよぉ……!!?
ニセガミさんの模倣能力は──むぐっ!」
ニセガミは槌永さんの口を塞ぎました。
槌永さんとロクちゃんは、ニセガミを不思議そうに見ています。
もしかして、二人はニセガミの模倣能力について知っているのでしょうか。
特に槌永さんは関係がありそうですね。
「こほん……私の目的を明かしていませんでしたね。
私はただ、この檻の外へ行きたいだけなのです」
「それをあなたが望んだ、と?」
ふっと私は冷笑しました。
そんなこと。
いや、そんな
私は槌永さんとロクちゃんを見ました。
今から言うことは二人にとって酷な話になります。ですが、
「望んでいるのはあなたではなく……。
──あなたの周りにいる者が、あなたにはそうであってほしいと望んだ結果でしょう」
「……それって、ど、どういうことですか?」
「な、何を言っているのだ、です……っ」
今日はやけに言葉が滑るように出てきます。
逆に今までが謎でしたね。いちいち、
この違和感は間違いなく【
ですが、私には言葉を出さない理由がありません。
「【
故に
私はそれをハッキリと告げました。
となれば。いえ、この可能性は初めから考えており、同時に確信していました。
もし、ニセガミが自由を望んでいるのなら……周囲にニセガミは自由になるべきだと思っている者がいる、と。
「あなたが檻の外へ出ることを望むのなら、それはあなたの意志ではなく……。
あなたを出力した存在が、あなたがそう考えるだろうと想像しただけです。
今回の場合は……──槌永さん、あなたでしょう」
「えっ……」
「ま、待つのだ、ですっ!
ヒヨリは何も悪いことなんぞしておらん、です!!」
「悪いことではないのです。
ただ、彼女は想像しただけ。
そして、たまたま……この
槌永さんの顔色が悪くなっていきます。
気付いてしまったのでしょう。今回の騒動の発端が、自分である可能性に。
おそらく、彼女はニセガミに懐いていたのでしょう。
それが、自分がニセガミの思考を操作し、危険に晒しているとなれば……。
私は改めてニセガミを正面から見つめました。
「そんなことを私に告げさせて、あなたは何をさせたかったのですか?」
「……それを告げさせるつもりはなかったんですが」
ニセガミはすこしだけ戸惑ったような表情をしています。
……あれ、この様子だと本当にこれを二人に聞かせるつもりはなかったのかもしれません。
ですが、私には
「私は、ただ【
【
突然、話の方向が百八十度変わりましたね。
ニセガミはどうやら能力の模倣を行える……となれば、模倣をするために情報を集めているのでしょうか。
模倣するにはある程度、情報がないといけないという可能性もがありますし。
一応、ニセガミには他の報告書を見る権限は渡していますが、セキュリティクリアランスレベルは低いですから。
【
理事会でもモモイは見れませんし。
「【
「どれ?」
「【
……それも知らずに、【
【
というか、危険だからこそまとめて【
「【
「しゅ、終焉?」
それは世界に救済を齎すもの。
それは世界を救うために、世界を犠牲にするもの。
「それで、どれを聞きたいのですか?」
私は淡々と言います。
「複数世界を終焉させる【
この世界の住民が読めば発狂する可能性のある、私以外の誰にも見せられない報告書か。
「希望のために終焉させる【
その日を迎えるために何千、何万という世界線を犠牲にすることを肯定した報告書か。
「英雄が現れるまで終焉させる【
現れるかもわからないたった一人に全てを託して、その英雄を歴史の裏で殺す報告書か。
どれも私たち財団が迎える可能性のある最後です。
「下手に聞けば、死後の世界を知ってしまった者と同じ末路を辿ることになるかもしれませんが……」
私は改めて正面からニセガミを見つめました。
ニセガミは一歩、後退りました。
「その程度の覚悟はあるのでしょう?」
そう、問いました。
それに対して、ニセガミは見るからに狼狽した様子を見せます。
そして、口をパクパクとさせた後、ようやく意味のある言葉を発しました。
「……死後の、世界?
あの……財団は、あなたたちは……いったい、何を知っているんですか?」
ニセガミの声は震えていました。
この程度で動揺するのですか。所詮、想像されただけの神様ですね。
私たち理事会は替えの効く存在です。
だけど、この立場は決して甘いものではないのです。
文字通り、世界のために動いているのですから。
それが、SCP財団の理念を踏襲した、SPTF財団の在り方ですから。
「何でもは知りませんよ。
知っていることだけです」
ゾッとした表情をしたニセガミ。
自分と同じ顔にそういう表情をされると少しだけ複雑な気分ですね。
モモイは横で興味津々そうな表情をしています。
ロクちゃんと槌永さんは聞いてはいけないものを聞いたように、二人手を繋いで怯えています。
「き、聞きたくないです! 怖いですよ!?
そういう情報は私に言わず“隠して”くださいよ!!?」
「……かく、して?
それはどういう意味の言葉ですか?」
「あっ……そういえば、忘れさせていたんでした……。
この
ニセガミはそう言うと手元の青い薔薇を消しました。
同時に、私は隠すという言葉を思い出します。
……ぁ、あ、あ、危なかったですね!!!??
包み隠さず伝えていたら
いや、すぐにそんなことが起こるものは……。
……【
流石に焦りました。過去一焦っていたかもしれません。
「すごい情報聞けちゃったねー!
ナイスだよ、ニセガミ!」
「こんなつもりでは……」
「ワタシハナニモキイテナイデス……」
「ナニモキイテナイゾ、デス……」
……いい加減、本題に入りたいですね。
とりあえず、さっきまで自分が機密情報を話していたという事実は彼方へ忘却して。