SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
何とも言えない空気になった私たち。
それをリセットするため、私は一つ咳をしました。
「ごほん……いい加減、本題に入りましょうか。
あなたは自由になって何がしたいのですか?」
「……そうですね。
もしかしたら、それは……ヒヨリさんに聞いた方がいいのかもしれません」
「えっ、えっ、わ、私ですかぁ!!?」
そう言ってニセガミは槌永さんを見ました。
視線を向けられた槌永さんは動揺しています。
「って、言われても、私なんて……っ!」
「このメモに書かれていました。
私はヒヨリさんが近くにいた時だけ……つまり、ヒヨリさんが想像した時だけ、特殊な能力が使えるのです。
それがこの、他の
本当に恐ろしい能力です。
それが……槌永さんと一緒にいる時だけ起こる、と。
原因は明らかです。槌永さんが、神様とはそういう力を使える存在だと思っているためでしょう。
同時に、神様がそういう力を持っていると思うのなら……いいえ、そう願うのなら。
「槌永さんは、模倣してほしい
「……え、エスパーですかぁ……?」
「違います、ただの財団職員です」
「絶対嘘ですぅ……!
ニセガミさんと同じ見た目をしている時点で絶対普通じゃないですぅ……!!」
まぁ、財団職員といってもそのトップの一人である“博士”ではあるのですが。
否定しないということは、そういうことなのでしょう。
私が静かに槌永さんを見つめていると、槌永さんは観念したように話し出しました。
「……わ、私、小さい頃に水棲生物に出会ったんです。
見た目は……」
「こんな見た目でしょう」
そう言ってニセガミは変化しました。
くらげと人間が合体したような存在です。そうとしか言えない見た目をしています。
「……そう、です。
私はこの子に会いたくて……いつも、通っていました」
槌永さんはこの
ということは、その生物は……。
「……もう、あの子は……死んでしまった、から……」
槌永さんが静かに、目から涙を流しながらそう言いました。
槌永さんはその
だから、槌永さんは願ったのです。
神様に、もう一度その子と会いたいと。
そして、ニセガミにその特殊な能力が備わって研究に参加させられるようになったわけです。
私は口を開きます。
「今回の騒動、ニセガミはこの檻の外へ出たいと思って起こしたと言っていましたね。
つまり、それは槌永さんがニセガミを自由にさせたいと思っていた、と。
間違いありませんね」
「……はい、間違いないでしょう」
「ご、ごめんなさいっ……!!
こんな大事になるなんて、私は……やっぱり、ダメな人間なんです~っ!!
ごめんなさい~!!!」
槌永さんはそう言って何度も頭を下げます。
それに対して私はなるべく朗らかに見える表情を作って言います。
「いえ、今回の事件はいずれ起こっていたことです。
大事になったのはあなたの責任ではなく、対策を怠ってきた我々の責任です」
「年下らしき子に励まされましたぁ……」
「これでも一応年上です」
肉体年齢で見れば年下ですが。
一応、戸籍的には中学三年生です。精神年齢は……大人とだけ言っておきましょう。
といっても、精神年齢は身体に引っ張られるのですが。
「財団を侮り過ぎましたね……この後、私は業務停止となるでしょう。
そうですよね、“博士”」
「え……」
「業務停止、です?」
……そうなるでしょう。
これだけの大事となって、これまで通りの運営を続けるわけにはいきません。
「これまで通りの扱いをすることはできません。
あなたを自由にさせることは、とてもできないでしょう」
「ハッキリ言ってくれてありがとうございます。
だけど、私はそれでもいいと思っているのです」
「なッ……なんでですか!!?」
槌永さんが驚いたように声を上げました。
「私が模倣能力を使えるのはヒヨリさんがいる時だけ。
私が業務を続けるのなら、ヒヨリさんもここに呼び出され続けるでしょう」
「……っ、そ、それくらい」
「それくらいが積み重なって、いまのあなたの負担になっていることはわかっていますよ。
それに……模倣をした時、模倣先の心がわずかに通じるような感覚があるのです。
あの子はこう言っているようでした」
ニセガミは槌永さんを見て、優しく微笑みました。
そして、槌永さんが仲良くしていたという水棲生物の言葉を代弁しました。
「──あなたの為なら何だって」
「っ……」
槌永さんはそれに何も言えないようでした。
そして、ニセガミは改めて私を見ました。
「私のもとに……私という檻に、これ以上ヒヨリさんを閉じ込めたくはありません。
どうか、私に正しい処罰を」
「……」
……そう、ですか。
なるほど、すこしだけ事態を理解しました。
正確には、その水棲生物についてを、でしょうか。
であれば、私は。
「くそったれですよ、そんな誰一人としてハッピーにならないエンディングなんて」
「えっ?」
「へ?」
ニセガミと槌永さんは揃って困惑した声をあげました。
だけど、私は嫌いなんです。
バッドエンドって言う言葉が。
私が好きなのは、ハッピーエンドですから。
「ニセガミ、あなたに業務停止を言い渡します」
「は、はい、承りまし──」
「ただし」
私はニセガミの言葉を遮ります。
その諦めきったような顔を私の顔でしないでほしいです。
私はどんな時も絶対に諦めるつもりはありません。
私が理想とする姿は死ぬまで、いいえ、死んでも財団職員として働く存在です。
まさに、【
「私は期待しています。
あなたが、いずれ……
「ッ……そ、れは……!!」
「方法はあなたに任せます。
ただし、槌永さんやニセガミ信奉者たちが考えた方法は認めません。
ニセガミ、あなたが自分の意志で考えてください」
ニセガミはどうしても想像者によってその在り方を変える危険性を秘めています。
ですが、もしも想像者に関係なく、意志を持って行動をできたのなら……その時、
「……ありがとう、ございます。
このご恩は、必ず」
「そんな大層なものでもないですよ。
私はただ、この暴動を収められれば充分ですから」
私はそう言って笑いました。
こうして、SPTF学院騒動は幕を閉じるのでした。
あなたの為なら何だって
アイテム番号:
SCP-031-KV
オブジェクトクラス:
特別収容プロトコル:
【
説明:
【
【
【
詳細は不明ですが、水棲生物であること、見た目はくらげと人間が合体したようなものであることが判明しています。