SCP-001-KV 作:SCP-001-KV
9話 不死身の███
その世界は、その凶暴な存在によって崩壊した。
そろそろ、私の目的を明文化しておきましょうか。
もちろん、財団職員として
ですが、本命はそれではありません。
私は……いずれキヴォトスに訪れる、
先生とプレイヤーは同義であり、先生の目とプレイヤーの目もまた同義です。
つまり、先生が
それが
そうなれば、
私はそれを防ぐため、原作開始前に可能な限り
……ですが。
「かわいいねぇ~。
ムガミちゃんって言うんだ!」
私を抱き締め、その頭を撫で回す手。
あっ、言い忘れていましたが、あれから二年が経って、小学四年生になりました。ついに高学年です。
ちなみに、その間に二つほど新しく
と、そんな現実逃避はいいとして。
この現状を、何とかしなければいけません。
私は
「あっ、動かないでね?
動いたら、この子たち殺しちゃうから!」
……ただ、甘かったかもしれません。
出会いを多く語る必要はないでしょう。
私たちはその人物の噂を聞き、異常性の確認のため接触しました。
しかし、私の予想に反して、その人物は異常性を制御できておらず、どちらかと言えば異常性に支配されていました。
結果、ヒマリちゃんとリオちゃんは人質として爆弾のそばに転がされ、この有様です。
キヴォトスの人間は丈夫なので、爆弾程度で死ぬことはありません。
ですが……体の弱いヒマリちゃんは、何らかの後遺症が残ってしまう可能性もあります。
強行突破は、するべきではないですね。
そうでなくても、目の前の
「……ところで、私を膝の上に乗せているのは重くないですか?」
「そんなことないよー。
小っちゃくて抱き締め甲斐があるよ!」
さいですか……。
ちなみに、私は
ただ、普通逆なのでは……というツッコミが喉の奥から出てきそうになります。いまは抑えなければ。
「ところで、あなたのお名前を窺ってもよろしいですか」
「えっ?
どうせ、調べて知ってるでしょ」
その通り、私は彼女のことを知っています。
流石に、何の情報もなく
「それでも、せっかく人間になったのですから。
ここは人間らしく、自己紹介から始めませんか?」
「うーん……まぁ、いいけど!
人間って、そういうところ細かくて面倒くさいよねぇ。
えーっと……私は、あなたたちが言うところの【
文句を垂れながらも彼女は自己紹介をしてくれます。
【
これはとにかくヤバいです。
どれくらいヤバいかと言うと、『これより物理的に強い
これまでに17回の
そして、そんな彼が乗り移った少女は、あどけない顔立ちにくりくりとした桃色のおめめを輝かせる少女。
天真爛漫でおバカそうな雰囲気を持つ、とても仲間思いな彼女は。
「──いまの名前は、
短い命になるかもしれないけど、よろしくねっ」
後にゲーム開発部の一員として原作でも活躍する、その子でした。
いやぁ……なんというか、光と闇ってくらい性格の違う二つが融合しましたね。
「──それと、妹が大好き!!!」
……?
…………?
……聞き間違い、ではなさそうですね。
「……妹とは、双子の妹である才羽ミドリさんですか?」
「うん、そうだよ。
私のかわいくて最高で至高な妹!」
「そう、ですか……」
「あっ、あんまりわかってないね?」
まぁ……。
こちらとしては、クソトカゲだと思っていた人物が突然そんなことを言い出したわけですから。
実は、現実感の強い夢を見ているのでしょうか?
……つねった頬が痛いです。
夢ではありませんでした。
「ムガミちゃんにならわかると思うけど……。
私はこの世界を見て……いや、この世界の色を見て、一度狂いかけたんだ。
おかしな話だよね、昔はそれが正常だったのに。
いつの間にか、私の体は異常を正常として適合していたんだから」
この世界は【
しかし、元の世界において、【
気持ちは分かります。
私も同じく、この世界を見て狂いかけたのですから。
シキがいなければ、あのまま自我を失くしていてもおかしくありませんでした。
「けど、私は狂わなかった。
──それは、私の隣で天使が生まれたからだよ!」
双子ということは、同時に生まれたということです。
つまり、隣で生まれた天使とは才羽ミドリのことでしょう。
「ミドリは私を救ってくれた。
だから、私はこの世の真実に気付いたんだ」
そして、彼女は神妙な顔をして言います。
「妹は……至高だ、ってね」
どうしましょう、まるで意味がわかりません。
いえ、意味はわかるのですが……。
「もう、そんな『理解できない』みたいな顔しなくてもいいじゃん!
妹に心配はかけられないから、普段はちゃんとモモイとして振る舞ってるんだよ?
でも、あなたたちが来たってことは、ちゃんと擬態できてなかったんだねぇ」
「……私たちがここに来たのは、とある依頼があったからです」
私たちは現在、『お悩み相談室』と称したホームページを運営しています。
といっても、ほとんどのお悩みは
ですが、稀に……今回みたいな当たりを引き当てることがあります。
「『大きな傷を負ったのに、次の日には治っていた』という報告が複数件。
そして、その中にミドリさんから送られた文章もありました」
それを聞いた瞬間、彼女は納得したような、悲しそうな表情を見せました。
「その内容は……『おねえちゃんが、へんなことをされていないか、しんぱい。たすけてください』というものでした。
──あなたは、ミドリさんから愛されているんですね」
それを聞いて、彼女はぽろっとその目から涙を流しました。
そして、驚いた表情で自分の瞳から流れ出るそれを手で拭いました。
「……ははっ。
私にも、忌々しい人間らしさがあったみたいだね」
「お嫌ですか?」
「ううん……妹と同じだって思えると、嬉しいよ」
そう言って、彼女は笑いました。
そうですか。あなたは、その生き方を選ぶのですね。
きっと、ただ暴れるよりも険しい道だというのに。
そんな彼女は、紛れもなく私たちと同じ人間でした。
──不死身の妹好き。
「【SCP-009-KV】を確保、収容、保護しました」
「えっ……?」
「あなたが世界の終焉を選ばない限り、私たち財団はあなたの意志や行動を尊重します」
つまり、対処としては【
彼女は野放しにしていても問題ないと判断しました。
勿論、財団としては責任を持って、今後の行動も追っていくわけですが……。
彼女の選択は、人として尊重したいと思いました。
「そんな甘っちょろい考えでいいの?
私、たくさんの人を簡単に殺せるよ」
「えぇ。
それでも、あなたはまだ誰も殺していませんから」
それこそが、証明でしょう。
人を簡単に殺せるのに殺していない。
それが、彼女が人間として生きることを選んだ、何よりの証拠であり証明なのです。
「それに……これくらいの温度感が、透き通ったこの世界ではちょうどいいと思いませんか?」
「……ふふっ、違いないね」
この世界で、我々はまだ敗北していません。
なら、ちょっとくらい
そんなことを考えていると、彼女はずいっと私の方に寄ってきました。
「ねぇ、ムガミちゃん!
──私も、財団に入れてくれないかな?」
「えっ?」
予想外の言葉に唖然としてしまいます。
財団自体は、そろそろまた増員を検討したいと思っていましたが……。
彼女にとって、財団は自らを封じ込めにかかる敵だったはずです。なので、そんな言葉がその口から出てくるとは思ってもいませんでした。
「正直、実験とか研究とかには全く興味ないけど……。
──妹を傷付けるようなやつがいるなら、処さないといけないでしょ?
そのついでに、財団も乗っ取れたら万々歳だよね!!」
正直に言葉を紡ぐ彼女。
彼女の妹好きは本物のようです。
乗っ取りをさせる気はありませんが、彼女の力自体は財団にとって非常に有益です。
「……加入を受け入れましょう。
今後ともよろしくお願いします、モモイさん」
私は彼女を加入させることを選びました。
「呼び捨てでいいよっ!
それか、様付けでも……」
「よろしくお願いします、モモイ」
「はーい、よろしくねっ」
最後に冗談を言うモモイ。
……本当に、冗談でしたよね?
ちょっと不安になってきました。
この子を財団に入れて、大丈夫だったでしょうか。
……選択に後悔しないよう、後は未来の私へ託すことにしましょう。
未来の私が喚いているような気もしますが、きっと気のせいです。
そうして、新しく強力な味方(?)が加入しました。
不死身の妹好き
アイテム番号:
SCP-009-KV
オブジェクトクラス:
特別収容プロトコル:
【
緊急時を除き、【
また、【
説明:
【
【
【
具体的な模倣能力は、現在調査中です。