SCP-001-KV   作:SCP-001-KV

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小学四年生
9話 不死身の███


 その世界は、その凶暴な存在によって崩壊した。

 


 

 そろそろ、私の目的を明文化しておきましょうか。

 

 もちろん、財団職員としてSCiP(スキップ)(異常存在)を秘匿したいという考えに嘘はありません。

 ですが、本命はそれではありません。

 

 私は……いずれキヴォトスに訪れる、プレイヤー(先生という存在)を恐れています。

 先生とプレイヤーは同義であり、先生の目とプレイヤーの目もまた同義です。

 

 つまり、先生がSCiP(スキップ)(異常存在)を認知してしまったら、それが即座に全世界へ拡散してしまう危険性を秘めているのです。

 それがSCPが創作物の世界(一周目の世界)ならまだしも、財団が存在する世界(二周目の世界)なら大規模な収容違反を起こしかねません。

 

 そうなれば、LV-Zero(捲られたヴェール)シナリオ(秘匿失敗による終焉)は不可避でしょう。

 

 私はそれを防ぐため、原作開始前に可能な限りSCiP(スキップ)(異常存在)を収容しておく必要があるのです。

 

 ……ですが。

 

「かわいいねぇ~。

 ムガミちゃんって言うんだ!」

 

私を抱き締め、その頭を撫で回す手。

 

 あっ、言い忘れていましたが、あれから二年が経って、小学四年生になりました。ついに高学年です。

 ちなみに、その間に二つほど新しくSCiP(スキップ)(異常存在)を収容しました。

 

 と、そんな現実逃避はいいとして。

 この現状を、何とかしなければいけません。

 

 私はSCiP(スキップ)(異常存在)を収容するため、いくつもの策を練っておいたのですから。

 

「あっ、動かないでね?

 動いたら、この子たち殺しちゃうから!」

 

……ただ、甘かったかもしれません。

 

 

 

 

 

 出会いを多く語る必要はないでしょう。

 

 私たちはその人物の噂を聞き、異常性の確認のため接触しました。

 しかし、私の予想に反して、その人物は異常性を制御できておらず、どちらかと言えば異常性に支配されていました。

 

 結果、ヒマリちゃんとリオちゃんは人質として爆弾のそばに転がされ、この有様です。

 

 キヴォトスの人間は丈夫なので、爆弾程度で死ぬことはありません。

 ですが……体の弱いヒマリちゃんは、何らかの後遺症が残ってしまう可能性もあります。

 

 強行突破は、するべきではないですね。

 そうでなくても、目の前のSCiP(スキップ)(異常存在)相手に物理攻撃は悪手でしょう。

 

「……ところで、私を膝の上に乗せているのは重くないですか?」

 

「そんなことないよー。

 小っちゃくて抱き締め甲斐があるよ!」

 

さいですか……。

 

 ちなみに、私は約130cm(小学四年生)、相手は約120cm(小学二年生)なので、身長はちょっとしか変わりません。

 ただ、普通逆なのでは……というツッコミが喉の奥から出てきそうになります。いまは抑えなければ。

 

「ところで、あなたのお名前を窺ってもよろしいですか」

 

「えっ?

 どうせ、調べて知ってるでしょ」

 

その通り、私は彼女のことを知っています。

 流石に、何の情報もなくSCiP(スキップ)(異常存在)と接触しようというのは、文字通りの自殺行為ですから。

 

「それでも、せっかく人間になったのですから。

 ここは人間らしく、自己紹介から始めませんか?」

 

「うーん……まぁ、いいけど!

 人間って、そういうところ細かくて面倒くさいよねぇ。

 えーっと……私は、あなたたちが言うところの【SCP-682(不死身の爬虫類)】で……」

 

文句を垂れながらも彼女は自己紹介をしてくれます。

 

 【SCP-682(不死身の爬虫類)】、通称クソトカゲ。

 

 これはとにかくヤバいです。

 どれくらいヤバいかと言うと、『これより物理的に強いSCiP(スキップ)(異常存在)を作るのはダメ』というボーダーラインになっているくらいです。

 

 約九割の欠損でも生き残り(驚異的な再生能力)塩酸のなかで呼吸し(高い順応性)人間の言葉を話す(並外れた知能)など……etc。

 これまでに17回の収容違反(脱走)を試みて、6回も成功させた能力は伊達じゃないのです。

 

 そして、そんな彼が乗り移った少女は、あどけない顔立ちにくりくりとした桃色のおめめを輝かせる少女。

 天真爛漫でおバカそうな雰囲気を持つ、とても仲間思いな彼女は。

 

「──いまの名前は、才羽(さいば)モモイだよ!!

 短い命になるかもしれないけど、よろしくねっ」

 

後にゲーム開発部の一員として原作でも活躍する、その子でした。

 

 いやぁ……なんというか、光と闇ってくらい性格の違う二つが融合しましたね。

 

「──それと、妹が大好き!!!」

 

……?

 

 …………?

 

 ……聞き間違い、ではなさそうですね。

 

 モモイ()が言うなら納得でき、クソトカゲ()が言うなら違和感のある台詞を彼女は言いました。

 

「……妹とは、双子の妹である才羽ミドリさんですか?」

 

「うん、そうだよ。

 私のかわいくて最高で至高な妹!」

 

「そう、ですか……」

 

「あっ、あんまりわかってないね?」

 

まぁ……。

 

 こちらとしては、クソトカゲだと思っていた人物が突然そんなことを言い出したわけですから。

 実は、現実感の強い夢を見ているのでしょうか?

 

 ……つねった頬が痛いです。

 夢ではありませんでした。

 

「ムガミちゃんにならわかると思うけど……。

 私はこの世界を見て……いや、この世界の色を見て、一度狂いかけたんだ。

 おかしな話だよね、昔はそれが正常だったのに。

 いつの間にか、私の体は異常を正常として適合していたんだから」

 

この世界は【SCP-8900-EX(青い、青い空)】に感染していません。

 しかし、元の世界において、【SCP-8900-EX(青い、青い空)】は全世界に感染し、それが正常として扱われました。

 

 気持ちは分かります。

 私も同じく、この世界を見て狂いかけたのですから。

 シキがいなければ、あのまま自我を失くしていてもおかしくありませんでした。

 

「けど、私は狂わなかった。

 ──それは、私の隣で天使が生まれたからだよ!」

 

双子ということは、同時に生まれたということです。

 つまり、隣で生まれた天使とは才羽ミドリのことでしょう。

 

「ミドリは私を救ってくれた。

 だから、私はこの世の真実に気付いたんだ」

 

そして、彼女は神妙な顔をして言います。

 

「妹は……至高だ、ってね」

 

どうしましょう、まるで意味がわかりません。

 

 いえ、意味はわかるのですが……。

 妹大好き(それ)と、クソトカゲ(これ)とが、どうしても繋がりません。

 

「もう、そんな『理解できない』みたいな顔しなくてもいいじゃん!

 妹に心配はかけられないから、普段はちゃんとモモイとして振る舞ってるんだよ?

 でも、あなたたちが来たってことは、ちゃんと擬態できてなかったんだねぇ」

 

「……私たちがここに来たのは、とある依頼があったからです」

 

私たちは現在、『お悩み相談室』と称したホームページを運営しています。

 といっても、ほとんどのお悩みはSCiP(スキップ)(異常存在)と関係ありません。

 ですが、稀に……今回みたいな当たりを引き当てることがあります。

 

「『大きな傷を負ったのに、次の日には治っていた』という報告が複数件。

 そして、その中にミドリさんから送られた文章もありました」

 

それを聞いた瞬間、彼女は納得したような、悲しそうな表情を見せました。

 

「その内容は……『おねえちゃんが、へんなことをされていないか、しんぱい。たすけてください』というものでした。

 ──あなたは、ミドリさんから愛されているんですね」

 

それを聞いて、彼女はぽろっとその目から涙を流しました。

 そして、驚いた表情で自分の瞳から流れ出るそれを手で拭いました。

 

「……ははっ。

 私にも、忌々しい人間らしさがあったみたいだね」

 

「お嫌ですか?」

 

「ううん……妹と同じだって思えると、嬉しいよ」

 

そう言って、彼女は笑いました。

 

 そうですか。あなたは、その生き方を選ぶのですね。

 きっと、ただ暴れるよりも険しい道だというのに。

 

 そんな彼女は、紛れもなく私たちと同じ人間でした。

 

 

 ──不死身の妹好き。

 

 

「【SCP-009-KV】を確保、収容、保護しました」

 

「えっ……?」 

 

「あなたが世界の終焉を選ばない限り、私たち財団はあなたの意志や行動を尊重します」

 

つまり、対処としては【SCP-002-KV(上告します)】と同じです。

 彼女は野放しにしていても問題ないと判断しました。

 

 勿論、財団としては責任を持って、今後の行動も追っていくわけですが……。

 彼女の選択は、人として尊重したいと思いました。

 

「そんな甘っちょろい考えでいいの?

 私、たくさんの人を簡単に殺せるよ」

 

「えぇ。

 それでも、あなたはまだ誰も殺していませんから」

 

それこそが、証明でしょう。

 

 人を簡単に殺せるのに殺していない。

 それが、彼女が人間として生きることを選んだ、何よりの証拠であり証明なのです。

 

「それに……これくらいの温度感が、透き通ったこの世界ではちょうどいいと思いませんか?」

 

「……ふふっ、違いないね」

 

この世界で、我々はまだ敗北していません。

 なら、ちょっとくらい厳密じゃなくても(甘っちょろくても)、いいとは思いませんか。

 

 そんなことを考えていると、彼女はずいっと私の方に寄ってきました。

 

「ねぇ、ムガミちゃん!

 ──私も、財団に入れてくれないかな?」

 

「えっ?」

 

予想外の言葉に唖然としてしまいます。

 

 財団自体は、そろそろまた増員を検討したいと思っていましたが……。

 彼女にとって、財団は自らを封じ込めにかかる敵だったはずです。なので、そんな言葉がその口から出てくるとは思ってもいませんでした。

 

「正直、実験とか研究とかには全く興味ないけど……。

 ──妹を傷付けるようなやつがいるなら、処さないといけないでしょ?

 そのついでに、財団も乗っ取れたら万々歳だよね!!」

 

正直に言葉を紡ぐ彼女。

 彼女の妹好きは本物のようです。

 

 乗っ取りをさせる気はありませんが、彼女の力自体は財団にとって非常に有益です。

 

「……加入を受け入れましょう。

 今後ともよろしくお願いします、モモイさん」

 

私は彼女を加入させることを選びました。

 

「呼び捨てでいいよっ!

 それか、様付けでも……」

 

「よろしくお願いします、モモイ」

 

「はーい、よろしくねっ」

 

最後に冗談を言うモモイ。

 ……本当に、冗談でしたよね?

 

 ちょっと不安になってきました。

 この子を財団に入れて、大丈夫だったでしょうか。

 

 ……選択に後悔しないよう、後は未来の私へ託すことにしましょう。

 未来の私が喚いているような気もしますが、きっと気のせいです。

 

 そうして、新しく強力な味方(?)が加入しました。

 


 

 

不死身の妹好き

 

アイテム番号:

 SCP-009-KV

 

オブジェクトクラス:

 Euclid(ユークリッド)(不安定な収容)

 

特別収容プロトコル:

 【SCP-009-KV(不死身の妹好き)】は通常、収容はせず日常生活を送らせてください。

 緊急時を除き、【SCP-009-KV(不死身の妹好き)】はその異常性を行使することが禁止されています。

 また、【SCP-009-KV(不死身の妹好き)】を暴走させないため、可能な限り才羽ミドリの負傷を回避してください。

 

説明:

 【SCP-009-KV(不死身の妹好き)】は【SCP-682(不死身の爬虫類)】と才羽モモイが融合した存在です。

 【SCP-009-KV(不死身の妹好き)】は双子の妹である才羽ミドリが大好きで、彼女を傷付けられると暴走します。

 【SCP-009-KV(不死身の妹好き)】は驚異的な再生能力を持ち、変身による異常性の模倣が行えます。

 具体的な模倣能力は、現在調査中です。

 




登場したSCiP(スキップ)(異常存在)

SCP-682(不死身の爬虫類)(訳者: 訳者不明)
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