凄まじい情報量により頭を抱えている私・・・
そして、ニケのストーリーなのに挟まる挿絵に既視感を覚える私(AC民)
あれさ・・・どう見たってアンサラーじゃん・・・
なに?その内マザーウィルだすの?
とっつき構えて突貫するとしたら…ラピ?(ドリルだし)
そんなことはさておき、一か月間の間が経ってしまい焦りましたw
ホントはここでキャラ紹介でも挟もうと思いましたが、如何せん私が余りキャラ紹介パートを飛ばすせいで、物語丁にしようとしたら、気づけば15000字超えてました。
本末転倒とはまさにこのこと・・・
アンケートもありがとうございます!
週一投稿を再度目指してやっていきたいのですが、もう平均的な一話での文字数が1万字になってしまってるので、お時間かかるかもです!
レイヴンがゴッテス部隊に合流する当日。
早朝5時ー軍本部ー
硬質な蛍光灯の光に照らされたブリーフィングルーム。
壁には大型のモニターがあり、机には作戦区域の地図がホログラムで投影されている。
そこに集まっていたのは、類を見ないニケ5名、人間の兵士5名の混合部隊だった。
ニケたちは足をブラブラさせてる子もいれば、銃の手入れをしている子もいる。
人間の兵士たちは皆、緊張した面持ちで自身の装備を最終調整していた。
ニケと人間。
傍から見れば、まるで異世界の者同士が同じ空間に居るかのような光景だ。
しかし、それぞれの仲間内で話す内容は同じものだった。
「今回はなんだ……?
ニケと組むような作戦ならラプチャー絡みの任務か?」
「さぁな……ラプチャー絡みなら俺らは外されるはずだが……」
「ニケと人間の混合部隊なんて前代未聞だな……」
方やニケはー
「私たちニケじゃない、一般の兵士たちと組む作戦なんてあったか?」
「いや、私の記憶ではないね……」
「とりあえず分かる事は、めんどくさい任務って事くらいかな……」
余りにも異例な編成に、互いに疑念を抱きつつも、誰もその理由を知る者はいなかった。
──カツ、カツ、カツ。
鋭い靴音。
それだけで部屋の空気がガラリと変わる。
扉が開き、軍服の皺ひとつ無い上官が姿を現した瞬間、全員が一斉に敬礼をする。
光が反射するほど一斉に腕が上がり、さっきまでの会話も完全に止む。
上官は短く頷き、顎をわずかに上げて返礼する。
「楽に」
全員が同時に応え、上官はモニターの前に立つ。
「今回、お前たちに与える任務は──
《レイヴン大尉を第八観測基地から回収し、ゴッテス部隊の空中空母まで護衛する》ことだ」
部屋にざわめきが走る。
そのざわめきの中心はニケ達だった。
「レイヴン……ってあの!?」
「一週間前に新しくゴッテス部隊に配属されるって言われた……!」
「まさか、あのレイヴン大尉を護衛する任務だなんて……!」
「でも、正直言って護衛居るの? タイラント級を一人で倒しちゃうぐらいだよ?」
「軍の面子もあるんでしょ? あんな大々的に映像流しておいて、輸送中に襲われて死にました、なんて言えないでしょうし……」
しかし、ニケ達の反応と違い人間兵士側は微妙にピンと来てない。
「……名前だけは聞いたな。なんか強いとか?」
「プロパガンダに出てた“黒いの”か? あれがレイヴン?」
それぞれを聞いた上官は、軽く咳払いをし、再び口を開いた。
「静粛に」
一瞬で空気が黙る。
「知っての通り、現在我々は各所の制空権を失い、空域の安全を確保できていない。
そのため、レイヴン大尉を安全に第八観測基地から回収し、ゴッテス部隊まで護衛することは非常に重要な任務となる」
ホログラムには航路と、
“危険度:中〜高”の赤ラインがいくつも走ってる。
「出撃機は5機。
うち1機にレイヴン大尉が搭乗する。
残り4機は護衛と哨戒機だ」
さらに指先を滑らせると、機体のホログラムが展開される。
「最前衛には空軍のアパッチヘリを1機配置。
先行して空中偵察を行う。
哨戒機も別ルートで寄せ、ラプチャーの反応を逐次送ってくる手筈だ」
戦闘ヘリ1機、哨戒機1機、支援用ヘリ2機、そしてレイヴン大尉が乗る輸送用ヘリ1機。
この編成を聞いて眉を顰めるのは人間兵士側だった。
ニケ一人を護衛に充てるには、あまりにも手厚すぎる編成。
しかし、それとは逆に「重要人物を護衛」というには、あまりにも不十分に感じられた。
特に空軍。
制空権が取れていない以上、空軍の哨戒機を出すこと自体がリスクになる。
音に関しても懸念点があるが、おそらく高高度での飛行を想定しているのだろう。
空中型ラプチャーがどこまで高高度を飛べるかは不明だが、もし来られた場合の“対処”という点で言うと、ステルス機を後方に配置する方が理にかなっている。
迎撃を兼ねた護衛用のヘリではとてもじゃないが太刀打ちできないだろう。
つまり、今回の護衛は何かあった場合の“身代わり”としての意味合いが強い。
「護衛機はレイヴン大尉の乗る輸送ヘリを中心に、楔形に配置する。
くれぐれも忘れるな。──レイヴン大尉を第一に守ることを」
上官の言葉に、全員が深く頷く。
「作戦内容は以上だ。
出撃は0600時。
全員、準備を整え次第、直ちに出撃せよ」
そう告げると、ニケと人間兵士たちは一斉に立ち上がり、敬礼をして部屋を後にする。
しかし、ニケ達が部屋を出た直後、上官は人間兵士たちにだけ声をかけた。
「お前たちには特別に言っておくべきことがある」
人間兵士たちは再び敬礼をし、上官の元へと近づく。
最後の一人が扉の施錠を閉めると、上官は低い声で告げた。
「今回の任務以降、諸君らは第八観測基地にて高機動部隊及び基地の守備隊として勤務することになる」
人間兵士たちは驚きの表情を浮かべた。
その表情を無視し、上官は続ける。
「それに伴い、本作戦にて君たちが運用する兵装は、対ニケ用に特化した最新鋭の装備を支給する。以上だ」
それを聞いた兵士たちは、何かを察したのか、しかし何も言わず敬礼をして部屋を後にした。
それを見送った上官は、ホログラム上に映し出されたレイヴン大尉の資料をじっと見つめた。
「戦線を共にした者を警戒するとは……皮肉なものだな」
軍本部、発着場──。
夜明け前の冷えた空気が肌を刺し、警告灯の赤い点滅が霧のような薄い朝靄に滲んでいた。
ローターを回し始めたヘリの風が、砂埃と枯れ草を巻き上げる風が足元を叩く。
任務を受けた兵士たちが、その風の中を歩いてくる。
「急げ! 出撃の0600時だ、遅れるな!」
地上員の怒号が飛び交う中、兵士たちは狭いステップを踏んで輸送ヘリの内部へ乗り込んでいく。
座席に腰を下ろすなり、皆が無言でシートベルトを締め、武器を抱え込む。
夜気と金属臭の入り混じる狭い空間に、沈黙だけがこびり付いていた。
「大物を護衛なんてな……ゴッテス部隊だったか?」
「そうだ。あのレイヴン大尉をな」
「大層な任務だな……」
「大層な任務だろうがなんだろうが、俺たちは所詮弾除け要員だ」
皮肉気に笑う伍長。
しかしその言葉に、誰も強く反論できない。
ラプチャーの侵攻、ニケの台頭。
“国を守ってきた人間兵士”の価値は、皮肉にも時代に置き去りにされていた。
そしてそれは勿論士気にも影響を与える。
「俺が軍に入隊したのは、国を守るためだ。ニケを守るわけじゃねぇ……」
「悪態を付くな伍長。今更そんな事を言っても仕方がないだろう?」
「仕方ないか……」
やるせない思いを胸に、兵士たちはヘリの中で静かに出撃の時を待っていた。
そんな中、一人だけ上の空の兵士がいた。
「おい、ルーキー。大丈夫か?」
軍曹が声をかける。
「え、あ、はい……大丈夫です……」
声をかけられた新兵は、驚いたように返す。
「そうか? なんか様子がおかしいぞ」
「緊張してるんですよ軍曹。初めての任務で弾除けってんだからなぁ」
ルーキーではなく、鼻で笑いながら伍長が言った。
「黙ってろ伍長」
軽口を叩く伍長を軍曹が一喝する。
「サー、イェス、サー……」
そんな会話を交わしていると、ヘリのローター音が一段と大きくなり、地上員の最後の指示が飛ぶ。
「全員搭乗完了! 直ちに離陸準備に入れ!」
どうやら、もう一機のヘリにニケ達も乗り込みが完了したようだ。
重低音を響かせながら、ヘリはゆっくりと地上を離れ、薄明の空へと舞い上がる。
──ガタ、ガタ、ガタ。
ヘリが空中へ浮かび、移動を始める。
離陸が完了したのを確認した軍曹が、ルーキーに話しかける。
「さて、ルーキー。初任務だが、概要は分かるか?」
軍曹が優しく声をかける。
「え、あ、はい……確か、レイヴン大尉を第八観測基地からゴッテス部隊まで護衛する任務ですよね……?」
「そうだ。その通りだ」
「そ、そのレイヴン大尉ってどんな人なんですか?」
世間的にも一週間前にいきなり発表となった“新たなゴッテス部隊員”。
それ故に、ルーキーはその人物像を知らなかった。
「さぁな……俺もよく知らんが、タイラント級を一人で倒したって話だ」
「ついでに言うと、あの映像はプロパガンダ用に誇張されてるらしいぜ?」
要らぬ情報を付け加える伍長。
軍曹は鋭い目で牽制するが、伍長は肩をすくめるだけだった。
「そんなに凄い人なんですね……」
「まぁな……ただ、あまり近づかない方がいいかもしれん」
軍曹の声色が少しだけ低くなる。
その言葉に伍長が視線だけで反応する。
「え? どうしてですか?」
ルーキーの疑問は当然だった。
タイラント級という超大型ラプチャーを単独で撃破した偉業を持つレイヴン大尉。
もっと称賛されても良さそうなものだが、軍曹は何かを警戒しているようだった。
「戦場を共に生きる者を警戒するのは良くないが……あまり良い噂を聞かん」
「噂……ですか?」
「あぁ。だが、詳しい情報が無いがために変な憶測が飛び交っている可能性だってある。そうだな……」
そう言うと、軍曹が手首に着けているディスプレイを操作する。
「現時点で俺らが閲覧できるだけの情報を送る。──見ておけ」
軍曹が送信した資料を受け取った瞬間──
ルーキーの腕端末に、淡い青のホログラムが浮かび上がる。
「え……これが、レイヴン大尉……?」
半透明の映像には、頭部以外をすべて黒い装甲のような機械で覆われた人物が映し出されていた。
無表情気味で、しかし目だけは獣みたいに光っている。
“異常だ”
そんな直感がルーキーの胸に走った。
「──俺が言っている意味が、なんとなく分かったか?」
軍曹の低い声が降ってくる。
「はい……」
「俺も最初情報を見た時は驚いたぜ。効率的なんてもんじゃねぇよ……ありゃ」
伍長が背もたれに身を預け、呆れたように言う。
それに付随して軍曹が続ける。
「ニケは、脳以外機械だ。だが、見た目のそのほとんどが通常の人間と変わらない。
いや、人間と同じにしていないといけないと言った方がいいな」
「人間と同じにしなければならない……?」
軍曹はホログラムのレイヴンを一度見やりながら続ける。
「量産型のニケのほとんどは、人間と見分けがつかないように作られている。
強度や重量こそ違うが、外見は“人間そのもの”だ。
そうでなければ──精神が壊れる」
軍曹の声色だけが少し低くなる。
「ニケになる施術を受けて、目覚めた瞬間に“自分はもう人間ではない”と気づく。
その現実を受け入れられず、精神を病む者も少なくない。
それが“思考転換”だ」
ルーキーは思わず息を呑んだ。
「だからニケは、人間に近い姿を保たなければならない。
……だが、レイヴン大尉は違う」
改めて表示されたレイヴン大尉の映像を見つめる。
首から下をあからさまな機械で最適化され、それでもなお精神状態を保っている。
そこで、最初に走った直感が甦る。
「──異常だ」
軍曹が代弁した。
「最適化されすぎた身体。それを物ともせず保たれている精神力。
実際がどうであれ……警戒しない方がおかしいだろう」
冷たく、事実だけを突きつけるような声だった。
見た目の異常さもさることながら、レイヴン大尉の“実績”もまた常識から大きく逸脱していた。
記載文章には、タイラント級を単独で撃破したことのほかに、使用する特殊兵装やたったの数ヶ月で新たな新設部隊を作り育てたことなどが書かれていた。
「実績も凄いですね……」
「あぁ。あれか……たしか……えぇと……」
伍長が資料を覗き込みながら呟く。
「高機動部隊だろ?」
伍長と軍曹の話を聞いていたほかの隊員二名も話に加わる。
「そうそう、それだ。たった3ヶ月で一般ニケを特殊部隊に育て上げたって話だったな」
もう一人が小さく笑う。
「普通あり得ねぇよ。ニケであるという前提があっても、俺ら人間の部隊ですら半年じゃ形にならないのに……」
「しかも―」軍曹が続ける。
「どうやら、あの部隊には元々実戦経験を積んでいないニケもいたようだ。そして大尉の後釜はその内の一人らしい」
「「「「は?」」」」
軍曹の言葉に、全員が一斉に驚愕した表情を浮かべる。
実戦経験のない兵士を特殊部隊に育てるなど、常識的に考えて不可能だ。
そのうえ、それを短期間で成し遂げたというのだから、尚更だ。
「狂ってんな」
伍長のその言葉に、皆が小さく頷く。
沈黙が落ちた機内で、隊員の一人がぼそりと呟く。
「それで? その後釜になるニケってどんな奴だ?」
「それなんだが──情報がない」
軍曹は苦笑いをしながら答えた。
「まあ、そりゃそうか……一般ニケだったんだからな」
伍長が肩をすくめる。
一般ニケの詳細情報なんてものは、書いてあるはずもなかった。
数万単位で存在する一般ニケの一人に過ぎないのだから。
「フェリー?」
ところ変わり、ニケ側のヘリ内部──。
「そ、レイヴン大尉の後任指揮官。軍曹から少尉に昇進した子」
「凄まじいスピード出世ね……」
「噂じゃ、レイヴン大尉直々の指名らしいよ?」
戦地に赴くニケ達もまた、レイヴン大尉の後任について話していた。
ニケ同士というのもあってか、同じニケが活躍すると情報は早い。
「へぇ……それで、どんな子なの?」
興味深々に尋ねるニケに、別のニケが答える。
「うーん……まだ情報が更新されてないから噂とか人伝になっちゃうけど、元々は極々普通のニケだったらしいよ? 戦闘経験もなかったらしいし」
「はぁ!? そんな子が、後任の少尉!?」
話を聞いていた別のニケが驚愕する。
「だから“異常”なんだってば。私たちニケで少尉になれる子なんて、ほんの一握りしかいないのに……」
「どんな訓練をしたら、そんな子が少尉になれるのかしら……?」
軽く想像する。
実戦経験もない子が、いきなり少尉になるなんて、普通では考えられない。
「それにー戦闘中……それも防衛作戦でタイラント級が出現した時に、どうやらその子が大尉の代わりに臨時指揮を執っていたらしいんだ」
「ちなみにぶっつけ本番」
「「「「は!?」」」」
「ぶっつけ本番で臨時指揮官とか、それが事実なら異常も異常だよ……」
「正直、引くレベルだわ……」
数ヶ月で特殊部隊並みの戦力になり、かつぶっつけ本番で数人ではなく大人数のニケを指揮してたなんて、与太話にも程がある。
しかし、否定できない。
事実、そんな話を色んなところで耳にしているのだから。
「それで、その子はどんな子なの?」
性格とかと追記的な話を期待して尋ねる。
「うーん……そこらへんも情報が少ないんだよね……」
「冷徹とか、逆に優しいとか、ドSとかドMとか……」
「両極端の噂が飛び交ってるわね……」
こめかみに手を当てて呆れる。
「あ、でも!」
一人のニケが思い出したかのように声を上げ皆を注目させる。
「使用武器はショットガンらしいよ!」
「ショットガン? 私が聞いた噂と違うわね」
「あぁ、あれだろ? 遠距離武器が得意~ってやつ?」
気だるい声で話を聞いていた子が声をかける。
「それがどうも、大尉との訓練で近距離特化になったらしいよ?」
その言葉にまたしても絶句の時が流れる。
それもそのはず。
ニケはロールアウトされた際に適性に合った武器種も決まる。
それはつまり、そこから別の武器種に変えるというのは再度ボディを換装しておく必要があるのだ。
訓練一つでどうこうなるものではない。
「やっぱり“異常”ね……」
大尉もそうだがフェリーも相当な異常だ。
それ以降も大尉や高機動部隊の噂話で盛り上がるニケたち。
そうこうしているうちに、ヘリは目的地へと近づいていった。
──ガタ、ガタ、ガタ。
輸送ヘリが高度を下げ始めると、
曇った窓の向こうに──荒れ果てた白い砂地が広がった。
『──まもなく第八観測基地に着陸する。全員、着陸態勢に入れ』
パイロットの声がヘリ内部に響き、兵士たちは慌ただしく装備を整える。
ニケ側のヘリでも同じく警告灯が点滅し、ニケ達がシートベルトを締め直した。
「なんか、おかしくない?」
一人のニケが窓の外を指差す。
その行動に皆が窓の外を見る。
そして、その違和感に気づくのにはそう時間はかからなかった。
「ニケいなくない?」
窓の外から基地の様子を見ていたニケが呟く。
基本、基地には駐屯しているニケが警備に当たっており、そのほか訓練を行っているニケもいるはずだ。
しかし、眼前に見える基地内には、ニケの姿が一切見当たらなかった。
そう思っていると、パイロットの会話がインカム越しに漏れ聞こえた。
『──基地内にニケの姿が確認できない。状況の報告を求む』
やはり、パイロットも同じことを感じていたようで、基地内の状況を確認していた。
わずかな沈黙ののち──
基地管制塔からの返答がすぐに返ってきたのか、パイロットの声が再びヘリ内部に響く。
『基地内部の異常はなし。総員、着陸態勢に入れ』
その言葉を聞いたニケ達は、ますます違和感を覚えた。
「異常なし……ってあんた。
ニケが一人も外に出てないなんて“異常”じゃないの……」
ニケ達が顔を見合わせる。
ほとんどが基地施設内に居るとしても、警備に当たっているニケが一人も居ないなど、考えられないのだ。
「無防備すぎるけど……大丈夫なのかしら?」
「さぁな……。まあ、大尉が居るわけだし、問題ないと踏んでるんじゃねぇの?」
ヘリはゆっくりと着陸態勢に入り、やがて砂埃を巻き上げながら滑るように地面に降り立った。
着陸が完了し、安全確認が取れると、隊員たちが一斉にヘリの扉を開け、基地内へと降り立つ。
……が。
普通なら、迎えのニケが整列して待っているはずだ。
しかし、そこに居たのは──
たったの“3名”。
しかもその3名は、揃って様子がおかしかった。
一人は膝に手をつき、深く息を整えている。
一人は足取りがふらつき、立つだけで精一杯。
もう一人は腰を押さえながら、なんとか姿勢を保っていた。
「……なんだ? あいつら、満身創痍じゃねぇか」
伍長が思わず呟く。
軍曹が眉をひそめながら3名に近づく。
「こちら、軍本部より派遣された護衛部隊だ。
レイヴン大尉の回収任務を任されている。
状況を聞いても構わないか?」
軍曹はあくまで丁寧に、しかし暗に“何があった? ”と探りを入れる。
迎えのニケのうち、比較的しっかり立っている一人が、苦笑いを混ぜた表情で答えた。
「……ようこそ、第八観測基地へ。
状況、ね……まぁ──」
一度言葉を切り、深い溜息をつく。
「見た方が早いよ」
その言い方に隊員全員の背筋が寒くなる。
続いて隣のニケが、まだ腰を押さえたまま小さく笑った。
「大尉に“お迎え来たよ”って伝えなきゃだしね……
あの人、夢中になると時間忘れるから」
そう呟きながら、彼女は基地奥へ視線を向ける。
「大尉、手加減できないタイプだからさ……特に今日は……」
高機動部隊のニケに案内されながら、護衛部隊は基地の廊下を歩いていた。
足を引きずるニケ達の“動きの重さ”を見て、伍長がそっと軍曹に耳打ちする。
「……軍曹。まさか本当に戦闘があったんじゃ……?」
軍曹は眉間に皺を寄せながら、前を歩くニケに問いかける。
「念のため確認するが……
ここまでボロボロなのは、ラプチャー襲撃ではないのだな?」
すると案内役のニケが、めちゃくちゃ疲れ切った顔でこちらを振り返った。
「ラプチャー如きなら、どれだけよかったか……」
とんでもないことをサラッと言い放った。
ラプチャーの襲撃よりも過酷な何かとは、一体何なのか。
隊員たちがざわつく中、案内役のニケは続ける。
「今朝ね、大尉が──
“今日で私、ゴッテス部隊に本配属だし? みんな、最後に1対1で遊ぼっか♪ ”って満面の笑みで言い出して」
もう一人のニケが、腰を押さえながら続けた。
「『遊ぼっか♪』ってテンションじゃないよ……
あれ、完全に“狩り”だったよ……」
「ハンターに銃口を向けられた獲物の気持ちが、少しは分かったよ……」
案内役のニケが苦笑いを浮かべながら言う。
1on1の訓練は稀ではない。
人間の兵士でもたまに行うことがある。
だが、訓練として行うとしても、ここまで満身創痍になるほど過酷なものではない。
「あ、あの……訓練にしては、実害が多いとおもわれるのですが、一体どのような内容だったのですか?」
新兵が恐る恐る尋ねる。
案内役のニケは、深いため息をつきながら答えた。
「内容は単純だよ。
制限時間は3分。大尉と1対1で戦う。その時間内でどちらかが戦闘不能となったら終了」
「実弾ありのフル装備でね……」
「「「「は!?」」」」
耳を疑うような内容だった。
それもそのはず、護衛対象が実弾ありきの訓練を行う時点で意味不明だが、それ以上にそんな訓練は訓練ではない。
「……それ訓練としては危険すぎやしねぇか?」
伍長が思ったことを口にする。
「ん……? あぁ、大丈夫大丈夫。大尉に実弾を当てれるニケなんて、ここに居ないからさ」
案内役のニケが軽く笑う。
廊下を進むにつれ、他の高機動部隊と思われるニケ達とすれ違う。
皆、一様に疲れ切った表情を浮かべ、中には壁に手をつきながらやっと歩いている者すらいた。
その光景が何度も続き、護衛部隊はもう驚く感情すら薄れてきていた。
ふと、護衛側のニケが小声で呟く。
「……打撲多すぎじゃない? これ、本当に訓練……?」
観察眼のあるニケの言葉に、軍曹も眉をひそめる。
「レイヴン大尉は、多種多様な武装を使うと聞いたが……
この訓練では何を使っている?」
「普段はアサルトライフルやSMGと言った中~近距離の武器が多いけど、今回は……」
案内役のニケが答えようとした、その時──
ガンッ!!
シミュレーションルームの扉が勢いよく開いた。
「くそが! あんなのチートだろうがよ!! なんで、素手相手に負けるんだよ!!」
怒鳴り声と共に飛び出してきたニケは、顔を真っ赤にし、しかし全身が痛むのか身体を抱えながら歩いていた。
案内役のニケが淡々と肩をすくめる。
「……まあ、そういう事」
「銃に対して……素手??」
護衛部隊に、今日何度目かも分からない衝撃が走る。
「そ。何を思ったのか『誉を以って相手をしよう!』って言い出してさ……
止めたよ? さすがにそれは無理だって。でも、大尉は聞かなくてさ……」
「で、結果がこれ。素手でフルボッコ。
銃持ってても反応できないんだもん……勝てるわけないって」
腰を押さえながら歩くニケが苦笑いを浮かべる。
怒鳴り散らすニケと顔を合わせると、案内役の一人が言葉をかけた。
「お疲れ様~。お迎え来たけど、まだ続きそう?」
「あぁ? ……あぁ、次でラストだよ。フェリーとの一戦だけだ」
怒鳴りつつも、どこか誇らしげな声。
「ならちょうどいいね。ちゃんとメンテナンスルーム行きなよー?」
「あったりめぇだろう!! こんなんで日常生活送れるか!!」
怒鳴り散らしたまま去っていくニケ。
だが案内役のニケは慣れた様子で手を振り返す。
「「異常だな……」」
その背中を見送りながら、軍曹と護衛側ニケのリーダーが同時に呟いた。
そして問題のシミュレーションルームの扉を抜けると、そこには広い訓練場が広がっていた。
壁には着弾跡が無数に残り、床には散乱した薬莢と何かを砕いた金属片が散らばっている。
そしてその奥には──
資料で見た黒い影と相対する位置に、もう一つ影が立っていた。
そして──
戦闘開始のブザーが鳴り響く。
「行くよ、フェリー!」
レイヴンの軽やかな声と同時に、空気が裂けた。
瞬間、フェリーも同時にブーストを焚く。
ドンッッ!!
ショットガンらしい轟音が鳴り響き、12ゲージの散弾がレイヴンに向かって飛んでいく。
本来なら一粒は掠めてもおかしくない距離。
しかし──
レイヴンは“避けた”。
銃口・発射のタイミングを見切り、左側のブーストを焚いて回避したのだ。
散弾は距離が遠ければ遠いほど拡散し、威力も落ちる。
そのため、通常であれば、遮蔽を使いつつ下がる戦法が有効だ。
なぜなら、散弾を避けることは不可能だからだ。
しかし、レイヴンは真逆だった。
近ければ近いほど散弾の威力は上がる。が、散弾性能は落ちる。
つまり、避けれることを前提にするなら、近づく方が有利なのだ。
それを理解しているフェリーは、近距離での撃ち合いに持ち込むのではなくある一定の距離を保とうとしていた。
「……なんで当たらねぇんだ……?」
伍長が額に冷や汗を浮かべながら呟く。
フェリーは再びショットガンを構え、レイヴンに向かって引き金を引く。
が──
やはり、レイヴンには当たらず、再び回避される。
それも前方へのブーストを焚きつつ、今度は右側へと回避したのだ。
伍長の質問にニケが「当たらないように、動いてるからだよ……」と答える。
もはやそれは、答えになっていなかった。
するとレイヴンが笑いながら、フェリーに向かって話す。
「フェリー!
ショットガンはね、散弾だから“最初の一発目の照準”が一番読まれやすいんだよ!
だから、FCS(照準システム)を騙すために、フェイントを入れてー!」
「そんなの出来るわけないでしょ!?
大尉じゃないんですから!!」
自身が手ぶらであり、相手が武装をしているにも関わらず、レイヴンはまるで楽しそうにフェリーへアドバイスを送る。
フェリーもフェリーで、装備を持たず突貫するレイヴンに恐怖を抱きながらも、軽口をたたける余裕があるようだった。
フェリーが今度はショットガンを連射する。
ドンッ! ドンッ!!
先ほどのアドバイスをその場で実践するかのように、フェイントを交えながら散弾を放つ。
感嘆な表情を浮かべ笑顔になるレイヴン。
「そうそう! いい感じ!!」
そう言いつつも、レイヴンはその軌道と銃口の揺れを見ただけで、
“いつ引き金が引かれるか”を読み──
右へ跳んで、左へ滑り、斜め前へブーストしフェリーの頭上を通過し避ける。
その動きは、まるで──人間ではなく「戦闘機」。
ニケ達が息を呑むたび、レイヴンはフェリーに近づいていく。
そして、見計らったように──フェリーの持つショットガンが弾切れを起こした。
「ッッ!!」
「そ、あんまりフェイントばっかり入れてると、弾切れ起こすよ?」
レイヴンがにやりと笑う。
そして近接可能な距離まで縮まる。
レイヴンの肘が僅かに動いた瞬間──フェリーも感じる。
「──ッ!! (来る……!)」
右の拳。
フェリーはそれをスレスレで左斜めへブーストし、回避。
レイヴンは楽しそうに笑う。
「そうそう! ちゃんと見えてるじゃん!」
「見えてるだけで限界なんですけど!!」
続けざまに左の拳。
フェリーは逆側へ、右斜めに跳びながら避ける。
そして──レイヴンの蹴りがくる。
ブーストの火花と共に、レイヴンの足が円を描いた。
「うッ……!」
フェリーは瞬発的に前方(空中)へブーストを焚き、
蹴りの軌道からギリギリ離脱した。
観ていた護衛部隊全員が悲鳴をあげる。
「避けた!? 今の避けられるのかよ!!」
「え、あれ生身で当たったら死ぬだろ!!?」
案内役のニケは、ため息混じりに言う。
「……これでもフェリー、相当強くなったんだよ。
大尉の近接を“視認して”避けてる時点で、もう異常」
そうしてレイヴンとフェリーの攻防は続いていき、やがて3分の制限時間を迎えたブザーが鳴り響く。
フェリーが体勢を立て直しながら息を吐く。
「はぁ……はぁ……大尉、ほんと……加減……」
その姿とは相対的に、レイヴンは心底満足そうな笑みを浮かべていた。
その姿はまるで、おやつをお預けされつづけ、ようやく食す機会を得た飼い犬のようだった。
「うん! 悪くない! いい避けっぷりだったよ、フェリー!
それに、加減はちゃんとしたよ? 武器使ってない訳だしね!」
「そ、そういう問題じゃないでしょ!!」
フェリーが苛立ちを隠せない様子で言う。
疲労とぶつけ様のない怒りで震えるフェリーに、
レイヴンはフェリーの肩に手を置く。
「ねぇフェリー。
あと一ヶ月あったら“本気”でやれてた。
惜しいよ、すっごく惜しい……!」
「本気でやらなくていいんです!! 本気でやられたら死にます!!」
フェリーが怒鳴り返す。
その様子を見ていた護衛部隊のニケリーダーが、軍曹に小声で呟く。
「護衛……いるか? これ……」
「……聞かないでくれ」
軍曹もまた、小声で答えた。
訓練が終了し、レイヴンがようやくこちらに気づく。
「あ、もうお迎え来たんだね。それじゃ! 行こうか!」
案内役のニケが茫然と眺める護衛部隊に向かって呟く。
「まあ、うん。……頑張ってね」
「何を……?」
伍長が恐る恐る尋ねる。
「全部」
言葉にすべてが詰まっているかのように、その一言は重かった。
レイヴンが意気揚々とシミュレーションルームを後にしようとスキップするような足取りで扉に向かう。
しかし──
自動扉が開いた瞬間、廊下の外に“仁王立ち”の男がいた。
監督官もといカイル技師。
腕を組み、表情は真顔。
しかし目だけが死ぬほど怒っていた。
レイヴンの足がピタッと止まる。
静止したのを確認したカイルが、低い声で話しかける。
「……俺がなんて言ってたか、覚えてるか? レイヴン」
レイヴンはまるでバツの悪い猫みたいに目を逸らしつつ、
「え、えーっと……
“怪我なく訓練を行うなら1on1を許す、私は武器を使わない”……でしょ?
……ま、まもったよ?」
その声がめちゃくちゃ小さい。
カイルは無言で廊下を指差す。
そこには──
まさに“現行犯の証拠”のように転がる高機動部隊の犠牲者たち。
壁にもたれかかり、うめき声を漏らす者。
そのまま座り込んで動けない者。
「…………あれは……いや……その……事故……?」
カイル技師、静かにため息をつく。
「事故の規模が戦争なんだよ」
レイヴンはすーっと視線をそらし、話題を変えようとする。
「そ、それより私ね!
もうそろそろ出発みたいだし?
えっと……行くね!」
スタスタと逃げようとした瞬間、首根っこを掴むようにカイルが肩に手を置く。
「荷物もあるんだろ?
少し──話をしようか?」
レイヴン、肩がビクッと震える。
「きょ、拒否権は……」
「行使できるとでも?」
完全に親のトーンだった。
レイヴンはとぼとぼと、怒られに行く子供みたいにカイルに連れられていった。
背中はどこか丸く、護衛部隊も高機動部隊も、誰もがその光景を見て思った。
あ……レイヴン大尉にも……逆らえない存在がいるんだ……と。
一時間後、第八観測基地:10:00
発着場の空気は、先ほどよりも落ち着いていた。
ヘリのローターは停止し、荷物の積み込みもほぼ完了している。
レイヴンの代わりにフェリーが先頭に立ち、レイヴンの私物を護衛部隊が運んでいた。
「ーそれで最後ですか?」
フェリーが荷物を運ぶ護衛部隊に尋ねる。
「お、おう……少なかったな……。
というかあれ全部“武器”だった気が……」
伍長が苦笑いを浮かべながら答える。
「気にしない気にしない」
フェリーは軽く笑ったが、背中にはまださっきの激闘の名残で湿布が貼られていた。
そこに──
足取りの重い影がひとつ、ゆっくりと近づいてくる。
あのいつも堂々としていたレイヴンではない。
肩は完全に落ち、背中は丸まり、明らかに“怒られた子供”の歩き方だった。
「……戻った……」
声まで小さい。
「こっぴどく叱られたみたいですね……」
フェリーが小さく呟く。
背中を丸めたレイヴンの後ろから、カイル技師が無言でついてくる。
そして護衛部隊に向き直り、淡々と告げた。
「大尉の荷物の積み込み、ありがとうございました。あとは出発まで静かに座っていてください」
護衛部隊は無言で頷く。
その声には怒気は無い。
無いが……“怒りの残響”だけがビリビリと残っている。
レイヴンはその後ろで縮こまりながら、小声でフェリーにだけ囁く。
「……あの人、怒ると静かになるんだよ……
静かなのに……静かじゃないんだよ……」
しょぼくれた顔で話すレイヴンにフェリーが苦笑しながら背中をぽんぽん叩く。
「まぁまぁ……。
大尉だって反省するときは反省するんですね」
「反省は……してる……でも後悔は……してない……」
反骨精神だけは失っていなかったのか、レイヴンはそう答えた。
その言葉に苦笑いしかできないフェリー。
レイヴンが乗り込むヘリの扉が開く。
しょぼくれた顔を手でたたき、いつもの元気な表情を取り戻し振り返る。
そこには、フェリーと保護者(カイル技師)のほかに、高機動部隊の面々が立っていた。
「んじゃ! 行ってくるね!」
さっきとは裏腹に、元気いっぱいに言い放つレイヴン。
それに呆れた顔をするカイル技師とフェリー。
「行ってらっしゃい、大尉!」
フェリーの言葉と共に皆が敬礼をする。
レイヴンはそれを見て、敬礼ではなく手を振ってこたえた。
そして、レイヴンがヘリに乗り込む直前に振り替えりー
「正直! 軍のその敬礼スタイル、めんどくさい!!」
と大声で叫んだ。
ヘリの扉が閉まり、ローターが回り始める。
やがてヘリは砂埃を巻き上げながら、ゆっくりと地面を離れた。
最後の言葉にあっけにとられたまま、レイヴンを見送った高機動部隊の面々とカイル技師。
「……大尉、ほんとに大丈夫かな?」
フェリーが小声で呟く。
「何とかなるだろ。アイツだからな」
カイル技師が肩をすくめながら答えた。
その答えにもならない言葉が、妙に説得力を持って響いた。
はい。
キャラ紹介を物語の中に組み込もうとした結果がこれです。
なんもキャラ紹介になってない!!
まあ、なくてもいいかなとも思うんですけどね・・・
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