川を渡った烏と首なき天使   作:しものふ指揮官

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大変!!
お待たせ!
致しました!!!

誰だよ!!
投稿頻度を上げますとか言いやがったバカは!!
俺だよ!!

転職と車購入によりバタバタしておりましてこんな期間が空いてしまいました・・・

最新章・・・来ましたね・・・
ここで一言・・・タクオバいくつ????

AIイラストにてレイヴンとフェリーの画像を作ってみました!!
※脳内補完をされている方は閲覧注意です!!

・レイヴン
【挿絵表示】


・フェリー
【挿絵表示】





13話:最強には最恐を

 ーゴッデス部隊ー

 それは、対ラプチャーに対するニケの中でも特に優秀で且つ特殊なニケで構成された部隊。

 そのリーダーは、ニケの始祖であるリリーバイス。

 その他のメンバーは、リリーバイスを元に作られたフェアリーテイルモデルである。

 

 はずだった。

 

 当初の予定では、リリーバイスとそれを元に作られたフェアリーテイルモデルで構成される戦術性・政治性の高い即応部隊を作る予定だった。

 しかし、フェアリーテイルモデルの制作は困難を極め、現時点ではリリーバイスを除くフェアリーテイルモデルは一体も完成していない。

 そのため、現在のーゴッデス部隊ーはリリーバイス単騎での部隊として運用せざるを得ない状況であった。

 

 そんな部隊を指揮する指揮官もまた、優秀な指揮官である必要がある。

 軍と政治、両面を意識した部隊を運用するという重荷を背負うゴッデス部隊の指揮官は今……爆弾級の新入りの対応に頭を悩ませているのだった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

「……」

 

「…………」

 

「………………」

 

 ゴッデス部隊の拠点である、【勝利の翼】の名を冠する巨大な飛行船の中。

 指揮官は、無言のまま一人作戦室の端から端まで歩きながら考えていた。

 

 

「………………」

 

 どうしたものか...

 いや、「どうしよう」もクソもないんだが...

 

「はぁ……」

 今日で何回目かもわからないため息をつきながら、指揮官は再び作戦室の端から端まで歩き始めた。

 

 ゴッデス部隊に新たな新人として来た子...レイヴン。

 

 うん。

 ここまではいい。

 戦力が増えれば、リリスの負担も減るし、その分円滑に戦闘を行えるようになるだろう。

 リリスの強さであれば、その他メンバーなんていらないのでは? と思われるだろうが、リリスが戦闘できる時間は数分程度。

 それに使用武装も近接...拳に限るところも考えるとそうもいかない。

 だからこそ、戦力が増えることは歓迎すべきことだ。

 

 問題は...

 その新人が、途轍もなくヤバそうな子であるということだ。

 

「いや、ヤバそうな子っていうか、ヤバい子だな……」

 指揮官は、自分でそう呟き額を押える。

 

 軍の正式資料にはこうある。

 

【レイヴン】

 ・正体不明な物質を動力として使用し、空及び地上を高速移動可能なニケ。

 ・戦術評価は極めて高い。

 ・統制難度は非常に高い。

 

 まあ要するに、扱いが難しいじゃじゃ馬娘を頑張って制御してね~ってことだ。

 

 命令違反はしないとリリスの前では言っていたが、それはあくまでリリスの前での話。

 初めて会ったことを思い出す。

 

 ー戦えない人間が、何で指揮官なの? ー

 

 胃がキリキリと痛む。

 

 その日の夜に開いた歓迎会で当の本人から平謝りされたため、その場では「問題ない」と言ってしまったが...

 自分自身も気にしていたこともあって、余計に刺さる。

 

「私は、戦えない……」

 

 管制室から指令を出す司令部の指揮官とは違い、私の立場はどちらかと言うと前線の分隊長に近い。

 だから、戦えないことは致命的な欠点だ。

 

 リリスと出会い、何度かの戦闘にて指揮を執るうちに、ニケの指揮官としての自分の立場を理解したつもりだったが...

 特に現場至上主義のレイヴンのような子からすると、指揮官が戦えないことは理解できないのだろう。

 

 だからこそ悩む。

 今後のレイヴンとの関係性をどうするべきか...

 

「やはり、最初は挨拶からだな……」

 

 人間であれ、ニケであれ、最初の印象は大事だ。

 まあ、もう遅い気もするが、これ以外に方法もない。

 

 作戦室の中央で立ち止まる。

 姿勢を正す。

 咳払い。

 

「ゴッデス部隊へようこそ、レイヴン。私は──」

 

 いや、硬い。

 硬すぎる。

 軍の式典じゃないんだぞ私は。

 

 もう一度。

 

「レイヴン、ようこそ。緊張していないか?」

 

 違う。

 絶対緊張していない。

 むしろ緊張しているのは私だ。

 

 額を押さえる。

 

「いや違うな……もっと自然に……」

 

 深呼吸。

 両手を後ろで組む。

 

「レイヴン。ゴッデス部隊へようこそ。君の実力は聞いている。期待している」

 

 ……いや、圧だ。

 圧がすごい。

 

 “期待している”は重い。

 

 あの子は多分、期待より自由を好む。

 そもそも、「ようこそ」なんかは、一番初めにすでに言っていたので、今更言うのも変だ。

 歩きながら再考。

 

「気負わずに、君らしく戦ってくれればいい」

 

 お、悪くない。

 今のは悪くないのでは? 

 

 もう一回言ってみる。

 姿勢を整え、低く落ち着いた声で。

 

「気負わずに、君らしく戦ってくれれば──」

 

「へぇ、気負ってたの?」

 

「そりゃそうだろ……ただでさえ部隊の中でも仲間外れ感のある立場な……んだ……から……」

 

 なんだ? 

 私は誰に対して話しているんだ? 

 

 この場に居るのは私だけだ。

 リリスは本日行う作戦の内容説明を行うため、レイヴンを呼びに行っている。

 

 つまり、今私に話かけてくる人物はいない。

 あったとしても、レイヴンを連れて来た……

 

 反射的に振り向く。

 閉まっていた作戦室の扉が開いている。

 そして、その入り口に立っているのは、腕を組んで面白そうにこちらを見ているリリスと、その隣で首を傾げているレイヴンだった。

 

 ……聞かれていた。

 全部。

 

「い、いやこれは……!」

 

 思考が止まる。

 顔が熱い。

 

 リリスは口元を押さえて笑っている。

「ふふっ……練習してたの?」

 

「していない!」

 

 したがしていない! 

 即答してから、どう言い逃れしようかと考えるが、思考がショートしているのか、言葉が出てこない。

 

 レイヴンが「あぁ、私の事か」と呟き一歩、部屋に入る。

「別に気負ってないよ? ただ戦うだけだし」

 

 無表情の中にも、どこか楽しそうな雰囲気がある。

 練習ではない本番でその顔が見れれば良かったのだが、この雰囲気で言われるとそれは逆に【哀れみ】の感情なのではと思えてしまう。

 

「いや、その……だな……」

 

 言葉が出てこない。

 挨拶を考えていたはずなのに、本番が想定外の形で始まり終わってしまった。

 

 リリスが助け舟を出すように肩をすくめる。

「ほら、指揮官。形式より先に作戦説明でしょう?」

 

「あ、ああ、そうだな!」

 

 助かった。

 いや、助かっていない。

 威厳が削れた気がする。

 

 レイヴンは部屋の中央でくるりと一回転して、モニターを見る。

「で、今回の作戦は?」

 

 今までの流れを完全になかったことにして、レイヴンは作戦説明を求めてきた。

 ありがたい事でもあるが、今の流れを完全に無視しているのは、ちょっとショックだ。

 

「え、ああ、そうだな。今回の作戦は端的に言うと輸送ルートの防衛だ」

 

「輸送ルートの防衛?」

 レイヴンが再度首を傾げる。

 

 そうか、レイヴンのこれまでの戦闘ログに局地的な防衛戦のデータはない。

 前線での防衛任務はタイラント級を撃破した際のものが在るだろうが、今回は違う。

 

「そうだ。

 知っての通り、現状の制空権が確保できていない以上、物資運搬には陸路を使用している。

 列車での運搬と車両での運搬があるが、どちらもラプチャーの襲撃を受ける可能性があり、今回は前線に物資輸送の要を担う都市の防衛だ」

 

 兵站の重要性は、戦闘においては戦力の次に重要な要素だ。

 戦力があっても、物資がなければ戦い続けることはできない。

 だからこそ、物資輸送の要を担う都市の防衛は重要な任務だ。

 

「なるほど。輸送ルートの防衛か……」

 レイヴンはモニターに映し出された地図を見ながら、考えるように呟く。

 

「それで指揮官? 敵ラプチャーの想定される戦力は?」

 リリスがレイヴンが納得したのを確認してから、質問する。

 

 こういう時にリリスがフォローしてくれるのはありがたい。

 私とレイヴンだけだったら、おそらく場が完全に酷いことになっていただろう。

 想像するだけで胃が痛い。

 

「あ、ああ。現時点での敵ラプチャーの戦力は、ロード級が3体、その他通常の個体が30体程度と想定されている」

 手元のリモコンを操作して、モニターに敵ラプチャーの詳細を映し出す。

 

「タイラント級はいないの?」

 レイヴンが再度首を傾げる。

 

「いや、タイラント級は今のところ確認されていないな」

 私がそう言うと、レイヴンの表情が途端に残念そうなものに変わる。

 いや、普通逆じゃないか? 

 

 なに? 

 この子、タイラント級と戦いたいの? 

 

「ま、まあ、突発的な戦闘が発生する可能性もあるから、油断はせずにな」

 フォローになるか分からんが、とりあえずそう言っておく。

 すると、レイヴンは表情を元に戻し「うん」と頷く。

 

 無表情で何考えてるか分からんと書いた奴は誰だよ。

 この子、表情豊かじゃないか。

 

「それで、指揮官。戦闘フォーメーションはどうするの?」

 リリスが再度質問する。

 なんだか、リリスが私の代わりに作戦内容の進行役をしてくれているような気がして、ちょっと申し訳ない気持ちになる。

 すまない、リリス。

 

「そこなんだが……」

 口ごもる。

 

 正直、ここを伝えるのが一番怖い。

 なぜって、私が考える戦闘フォーメーションをレイヴンが認めるかどうかが分からないからだ。

 レイヴンは、戦闘に対して非常にストレートな考え方をする子...らしい。

 だから、私が考える戦闘フォーメーションがレイヴンの考える戦闘フォーメーションと乖離している可能性もある。

 そうなったら、またあの子は私のことを「戦えない人間が考える戦術」として今以上に関係性が悪化するかもしれない。

 

 それは良くない。

 非常に良くない。

 

 そもそもだ。

 こういうことになる可能性があるから、私は軍上層部に「フェアリーテイルモデルになる子は、

 ストイックではない子を選りすぐり、選抜してほしい」とお願いしていたのだ。

 なぜって? 

 こういうことを考えてしまうからに決まっているじゃないか! 

 朝なのに早速自室で寝たいと思ってしまうくらいには、私は繊細な人間なんだよ! 

 ノーマル・ヒューマン だよ! 

 

「し~き~か~ん?」

 思考の海に沈んでいる私に、しびれを切らせたリリスが私の名前を呼ぶ。

 レイヴンはと言うと、私の様子を見ているのか、じっと私を見つめている。

 

「え、ああ、そうだな。戦闘フォーメーションは……」

 ええい、ままよ! 

 

「戦闘フォーメーションは、リリスを後衛に配置しレイヴンには斥候を任せる。

 私はもちろんだが、戦えないためリリスと同じく後方で指示をする予定だ」

 

 言い切ってしまった...

 作戦室に、数秒の沈黙が落ちる。

 

 まずい。

 この間はまずい。

 

 いや、しかし考えてほしい。

 現存する戦闘ログを見る限り、レイヴンは高機動の射撃戦闘を得意としている。

 ならば、前線の索敵と遊撃を兼ねる斥候が最も適任なはずだ。

 それにいざとなった時のブレードも内臓されていると聞く...

 

 まさか、遠距離での戦闘が本来の戦闘スタイルとかないよな!? 

 その場合、今のフォーメーションは完全にアウトだ。

 

 クソ!                           

 

 恐る恐るレイヴンの反応を見てみる。正直怖い。

 

「つまり……」

 レイヴンは私の言葉を聞き、少し考えるようにうつむく。

 

 やはりだめだったか!? 

 まずったか!? 

 

「あ、いや、そういうわけじゃないんだ。あくまで、私の考えではー」

 

「つまり! 先行して敵を殲滅していいってこと!?」

 

「……え?」

 

 顔を上げたレイヴンは心底嬉しそうな表情で私を見ていた。

 いや、嬉しそうな表情っていうか、もう完全にニコニコしている。

 まるで、私がレイヴンの願いを叶えてあげたかのような表情だ。

 

「あ、ああ。そ、そういうことだな!」

 思わず、私も笑顔になってしまう。

 

 いや何が!? 

 心の中でツッコミを入れるが、当の本人が喜んでいるのだから、もう何も言わないし、言えない。

 

 その後の作戦説明も、最初の時と打って変わり、レイヴンは終始楽しそうに聞いていた。

 

 何この子! 怖い!! 

 

 レイヴンと違い、引き攣った笑顔となった私は隣でクスクス笑うリリスを見て、さらに胃がキリキリと痛むのだった。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 作戦領域に向かうヘリ内部。

 私は、今までにない高揚感と安心感を感じていた。

 

 それもそのはず! 

 指揮官が私が思った以上に私の事を瞬時に理解してくれて、私の願いを叶えてくれたからだ! 

 

 ふふふ……

 まさか、私に単独での敵殲滅を許可してくれるなんて、思ってもみなかった。

 護衛なし! 

 誤射する心配もなし! 

 リリスが私の後ろにいるから、万が一の時も安心! 

 最高じゃないか! 

 

 防衛ミッションではあるが、防衛ミッションではない。

 ミサイル発射防衛ミッションに私と同格の見方が後ろで待機しているという状況に近いこの作戦で勝てないわけがない! 

 

「レイヴン。再三にはなるが、作戦領域からはみ出さないようにな。こちらの支援が必要な時は、すぐに連絡してくれ」

「あーい」

 

 まったく、指揮官は心配性だなぁ。

 

 私は、手元に用意した二丁の銃を眺める。

 マットブラックの銃身と、赤いラインが入った大型のショットガン。

 もちろんのことだが、コーラルで駆動するタイプの銃だ。

 

 まあ、ここはもうあきらめたよ。

 やはり、私がリミットしないと即座に銃が変形してしまうのは変わらずらしい。

 

「すぅー……はぁー……」

 深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

 

 リリスと共に作戦領域に到着後、私は即座に前に出る手筈になっているが、正直今からでもいいから空中降下して奇襲したい。

 いや、むしろ、空中降下して奇襲することができるなら、今すぐにでもしたい。

 

 そんな思考が、頭の中を駆け巡る。

 すると

≪楽しそうですね。レイヴン。≫

 エアの声が頭の中に響く。

 

『あ、エア。お疲れ様~。基地の方はどう?』

 

≪特に問題はないようです。さすがは監督官と言ったところですね。

 出撃の詳細確認は勿論、使いつぶす勢力からの依頼もうまくかわしているようです。≫

 

 エアから、基地の状況と、監督官の対応についての報告が入る。

 ホントによくやってるよ、監督官。

 まあ、それはそれとして胃が痛い思いをしてるらしいけど、そこは私の責任外なので、私は気にしないことにする。

 皆とも仲良くしているようで安心だね。

 

『じゃあ今からは私のサポート?』

 

≪はい。

 ゴッデス部隊での初陣ですから、全力でサポートします。≫

 おぉ、エアがいてくれるなら、なおの事安心だね。

 突発的事象が発生する可能性を高めてくれそうだしね! 

 

≪なんだか、凄く失礼な事を言われた気がしますが、お任せください。≫

 エアが不服そうな口調でそう言うが、事実好奇心で色んな場所に行った気がするので概ね間違いではない。

 グリット086とか、グリット086とか、グリット086とか。

 

『ありがとう、エア。

 早速なんだけどさ……先に出撃したいからハッチ開けれる?』

 

≪……はい?≫

『え? あ、いや、私が先に出撃したいから、ハッチ開けてくれないかなって……』

 

≪それは作戦内容に含まれるのでしょうか?≫

『え? あー、うん、そうだよ!』

 私の独断だけど、斥候ってそういうもんだし作戦内ではあるよね! 

 

≪そうですか……わかりました。ハッチを開けますね。≫

 エアがそう言うと、ヘリのハッチを開く端末へ私を通してアクセスし、ハッキングを開始する。

 

 今更だけど、遠隔でのアクセスってすごいよね。

 手を触れていない場合でも、ヘリのシステムにアクセスできるから傍から見たら何もやっていないように見える。

 

 ピピッ……

 

 ハッキングが完了したのか、けたたましいブザー音と共にヘリのハッチが開き始める。

 お、開いた開いた。

 

「おい! 操縦士! まだ上空だぞ!?」

 指揮官が異常を察知して叫ぶが、操縦士は「はい! わかっていますが、かっ勝手に!」と叫び返す。

 

「外部からのハッキングか!? 周囲の状況は!?」

「い、いえ! 周囲には敵ラプチャーの姿は確認されていません!」

「なんだと!?」

 慌てる操縦士と指揮官。

 リリスも想定していない事態に驚いている様子だ。

 

「リリス、レイヴン!! 危ないから下がれ!」

 指揮官が私とリリスにそう叫ぶが、そんなに危険な状況ではないと思うんだけどなぁ。

 

 リリスは「はい! 指揮官!」と叫び、指揮官をいつでも守れるように指揮官の前に立ちながら下がる。

 私はと言うと、ハッチ前に立ち、開き切るのを待つ。

 

「レイヴン! 聞いているのか!? 危ないぞ!」

 指揮官が私に再度叫ぶ。

 

<大丈夫。聞こえてるよー。それにこれは私がやったしね>

 風圧により声が聞きずらくなったため、即座に無線に切り替え答える。

 

「おい、ちょっと待て! レイヴン! どう言うー」

<それじゃあ、斥候開始するよー!>

 そう言うと、私は指揮官の言葉を無視してヘリのハッチから飛び出した。

 

 初陣時以来の空中降下。

 顔と体に強烈な風を受けながら、私は地上に向かって落ちていく。

 そしてタイミングを見計らい、即座にアサルトブーストを点火させる。

 

 ブーストの推力で、私よりも先行していたヘリを追い越し、さらに加速していく。

 ゴッデス部隊での初陣...

 第一印象を払拭するためにも、パーフェクトゲームを目指すぞ! 

 

≪さあレイヴン。仕事を始めましょう。≫

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

 

 

 資料に記載されているものなんて、ほんの一部に過ぎない。

 その資料を書く人物の主観・提出先の意向・その他諸々の要素が絡み合って、資料は作られている。

 だから、自身の目で確かめるまでは、過度な期待も過度な不安も持たない方がいい。

 そう思っていたのに...

 

「これは、確かに予想外ね……」

 先ほどまで彼女がいた場所を見つめながら、ぽつりと呟く。

 

 レイヴン。

 私の記録を早々に塗り替えた子。

 そして、ゴッデス部隊に配属された、新しい仲間。

 強くて、自由で、そして何者にも縛られない子。

 

 正直なところ、軍からの資料を見た時の第一印象は、強さだけを身に着けた子という印象だった。

 しかし、実際に会ってみると、強さだけでなく、しっかりとした信念を持っているようにも感じた。

 でも...

 

「危なっかしいところは資料通りね……」

 

 良い言い方をすれば、臨機応変に対応できる柔軟な兵士。

 悪い言い方をすれば、マニュアル通りに動けない、予測不能な兵士。

 もっと言うと、戦争しか知らない少年兵。

 

 まあ、どの言い方も間違いではないと思う。

 

「くそ! 副操縦士! 今すぐレイヴンの位置を特定し周囲の索敵に専念だ!」

 指揮官が叫ぶ。

 こういう時の指揮官は頼もしい。

 自身では戦闘が出来ない分、指揮官としての役割を全うしようとする姿勢が伝わってくる。

 

 愚痴ついでに失礼な事をいう所が玉に瑕だけどね。

 

 ヘリ内に備え付けられたモニターに、レイヴンの位置と周囲の状況が映し出される。

 既に接敵しているのだろう、レイヴンの動きが激しい。

 

「レイヴン! 状況はどうだ!?」

 即座に無線に切り替え、指揮官がレイヴンに状況を尋ねる。

 

<今対処中ー。ゆっくり来てもらっていいよー。奇襲と敵の引きつけには成功してるしね!>

 戦闘中であるにも関わらず、まるで遊んでいるかのような口調で答えるレイヴンに、指揮官は思わず眉間を押える。

 

「ゆっくり来てもらっていいよーではない! 斥候の仕事は敵の位置と戦力を把握して、必要に応じて支援を要請することだ!」

<……え、そうなの?>

 

「そうだ! それが斥候の仕事だ! だが、そこら辺の説明をしなかったのは私のミスだ。そこは後できっちり説明する」

<……うん。わかった>

 

 指揮官の言葉にレイヴンからの応答はそっけないものだった。

 いや、そっけないというより、やらかしてしまった後に怒られた子供のような反応? 

 

 レイヴンとのやり取りを終えた指揮官は、通信を閉じ再度モニターに映し出されたレイヴンの位置を見つめる。

 そして、顔を下げたかと思うと、私の方に顔を向けた。

「言い過ぎ……だろうか……」

 

 その発言に思わず吹き出しそうになるが、なんとかこらえる。

 まったく、どこまで行っても優しくて、心配性な指揮官。

 

「いいえ。それに、あれぐらいで心をやられるような子じゃないと思うなぁ」

 私がそう言うと、指揮官は「そうだな」と頷く。

 

 まさか斥候が先行して敵を殲滅する事だと勘違いするとはだれも思わないでしょうね。

 それに、「戦闘スタイルを変えなくていい」と助言したのは私なため、私の責任もある。

 

 指揮官と共にレイヴンの戦闘を見守る。

 そして改めて思う。

 その殲滅スピードの異常さに。

 

「すごいな……」

 指揮官が呟く。

 

 軽く見積もっても、1体に対し1秒もかかっていない。

 それはつまり一発の銃撃で敵を殲滅しているということ。

 ニケの持つ銃がラプチャーに対して有効だとしても限度というものがある。

 ショットガンであってもそれは同じこと。

 

 そして戦闘慣れしすぎているのか、レイヴンの戦闘スタイルは正に冷酷。

 小さなものなら内部に存在するコアへ正確に一発。

 大型ならば、足を狙って撃ち抜き、動きを止めてからコアを撃ち抜く。そのスパンも非常に短い。

 更には、空中に居るラプチャーを真っ先に狙うなど、戦闘の優先順位も的確。

 輸送型のラプチャーが居ようものなら、真っ先に狙い撃ちしている。

 

 これでは、本当に現場に着いた時には敵がいなくなっている可能性もある。

 

「だが、やはりワンマンが過ぎるな……」

 指揮官がそう呟く。

 

 そこは概ね同意と言ったところね。

 高機動部隊での部隊運用実績があるとはいえ、通常のニケと共に戦闘を行う記録はない。

 そもそも、あのスピードに合わせることのできるニケがいるのかも分からない。

 

「はぁ……これは骨が折れそうだな……」

 

 指揮官はそう言葉を漏らすが、それとは裏腹に、覚悟を決めたような表情をしていた。

 私はその横顔を少しだけ見つめる。

 

 この人はきっと、逃げない。

 どんな相手でも、どんな状況でも、投げ出さずに向き合う。

 だからこそ──

 

「でも」

 

 私は小さく呟く。

 

 モニターの中で、赤い光が戦場を駆け抜ける。

 ラプチャーが一体、また一体と消えていく。

 

「あの子はきっと──」

 

 言葉を少し探す。

 兵士。

 怪物。

 兵器。

 

 どれも間違いではない。

 けれど。

 

「悪い子ではないと思うな」

 そう言うと、指揮官は少し驚いた顔でこちらを見る。

 

 私は肩をすくめる。

「ただ──止める人が必要なだけ」

 

 そして、私は小さく笑う。

「多分それは、あなたの役目よ。指揮官」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 

「あぁ……やっちゃったよ……」

 指揮官からの無線から約5分。

 ラプチャーから放たれるレーザーやプラズマミサイルを避けながら、私はそう呟く。

 

 斥候ってそういう事? 

 いち早く敵を見つけて先手必勝じゃないの? 

「敵を見つけ次第、敵情報を報告して帰還」だけじゃ突撃損じゃん! 

 いや、そんなことはどうでもいい。

 

 問題は……

 

「この状況どうしよ……」

 

 射撃を避けながら、私は周囲を見渡す。

 敵は私を中心にして、四方八方から攻撃を仕掛けてきている。

 そして私が通った方向からは、引きつけた敵が追いかけてきている。

 まあ、いわば、私が敵を引きつけている状態だ。

 まとまってもらった方が、処理しやすいと思ったので、あえてそうしているのだが、状況が変わってしまった……

 

「ひとまず、リリスたちが到着するまで適当に敵の数を減らそう……うん」

 

 一瞬のアサルトブーストを焚き推力方向を下にし、空中へと飛び上がる。

 飛び上がった直後、ショットガンを構え、周囲の敵を撃ち抜いていく。

 

 ひとまず、防衛陣地に敵の視線を逸らさせることは出来たので、あとは間引くだけだ。

 到着時間は……もうそろそろだろうか。

 

 そう思っていると、丁度指揮官から無線が入る。

<レイヴン! もうすぐ作戦区域に到着する。もう少し頑張ってくれ>

 

 お、ドンピシャ。

「りょーかい」

 

 無線が終了したのと同時に、遠くからヘリの音が聞こえてくる。

 この数なら、リリスとのツーマンセルも十分に機能するでしょ。

 

 ヘリの音に気付いたラプチャーの複数体が、防衛陣地へ向かい出したのを確認し、私も即座にアサルトブーストを焚いて、ヘリの方へと向かう。

 どんなにラプチャーが強大だろうと、時速500kmで移動する私に追随することはできない。

 

 結構遠くの方で戦闘していたからか、私がヘリを目視できるようになった頃には、リリスと指揮官が既に戦闘態勢を取っていた。

 正直、今指揮官たちに合流するのは怖い。怒られそうで……。

 

「あー、指揮官? 一応前衛ポジションにはいるから、合流せずに迎え撃つ感じでいい?」

 恐る恐る指揮官にそう尋ねる。

 

<はぁ……分かった。『予定通り』にな>

 うぐっ……

 念押しされてしまった。

 

<レイヴン? 私の分とかは気にしなくていいからね? 防衛陣地さえ守れれば任務完了だから>

 リリスからは、先ほどのことなどなかったかのように、優しい口調でそう言われる。

 それは、それで後が怖いし、申し訳がないし、なんとも言えない気持ちになる。

 

「……反省はしてるよ……」

 そう言うと、リリスは<わかってる>と軽く返事が来た。

 

 

 

 そこからの戦闘は、予想通り、リリスの出番がなくなるくらいには、私が敵を殲滅していく展開になった。

 まあ、そもそも私が先行して敵を殲滅しちゃったので、残りが少ないというのもあるけど……ね? 

 

 しかし、それはそれで味気ないというか、なんというか。

 私自身もリリスの戦闘を見てみたかった……

 

 と、いう事で……! 

 一体だけ敢えて私の攻撃を避けやすいようにして、リリスに倒してもらうことにした。

 これで、リリスも戦闘に参加できるし、私もリリスの戦闘を見れるし、一石二鳥だね! 

 

 思い立ったが吉日。

 リリスの方向に一番近いラプチャーへワザと避けやすい攻撃を行う。

 すると、予想通り、ラプチャーがその攻撃を避けるために、リリスの方へと移動していく。

 

 つかさず、私はリリスへ無線を繋ぐ。

<リリス! 一体そっちに行ったから倒しty>

 

 バギィ!! 

 

 私がわざとらしく無線で伝えようとした瞬間。

 背後で金属がひしゃげるような音がした。

 

「え……?」

 振り返る間もなく、その音の正体が私の真横を凄まじいスピードで通り過ぎていく。

 

 何があった……? 

 今の音はよく聞いた覚えがある。

 ACの戦闘中にMTへアサルトブーストからの蹴りを入れた時の音に似ている。

 

 通り過ぎた物体を見ると、そこにはラプチャーだったものが、原形をとどめていない姿で転がっていた。

「え……なにこれ……」

 

 すると今度は、私の肩を叩くような音がする。

 隣を見れば、先ほどまで後方で待機していたリリスが、満面の笑みで私を見ていた。

「まったく、私の分は気にするなって言ったのに」

 

「ヒェッ……」

 

 私は生まれて初めて……言葉にならない悲鳴をあげてしまった。

 

 

 

【おまけ:最強には最恐を】

 

「まったく……」

 

 私は...今、正座をしている。

 そしてその目の前には、指揮官が腕を組み私を見下ろしている。

 えぇ、お察しの通り「お説教」です。

 

「はい……なんの言い逃れもございません……」

 

 ゴッデス部隊での初陣というブーストと指揮官が「斥候の仕事」を私にくれたことで、私は完全に舞い上がってしまっていた。

 いや、まあ、結局その斥候が「索敵ついでに敵を倒していい」ものだと勝手に解釈して勝手に舞い上がっただけなんだけどね。

 

 作戦自体は成功。

 したんだけど……まあ、別側面では失敗だね、これ。

 

 一応、指揮官とリリスが到着する前に敵を殲滅……なんてことは無かったが、初動が悪すぎた。

 今更ながら考えれば、あの行為は駄目だったなぁと反省している。

 リリスとのコンビネーションを踏まえた作戦だったと知った時にはもう既に手遅れ。

 指揮官から斥候とは何たるかを無線で聞いた時には、ほとんどのラプチャーの注意を引いていたので、どうしようもなかった。

 

 そして、今に至る。

 

「まあまあ、指揮官。レイヴンも反省しているようだし、この結果も踏まえて次回の作戦に活かせばいいんじゃない?」

 リリスからのフォローも入る。

 

「いや、そもそも、私はそんなに怒っている訳じゃない」

 

 いや、怒ってたじゃん。

 まあ確かに、帰還後の指揮官からは助言であって、怒りの感情は感じられなかったけどさ。

 そしてそれ以上に……

 

 リリスのあの戦闘...が今でも忘れられない。

 私がわざとラプチャーをリリスの方へと誘導しリリスが秒即で倒したあの後...

 リリスから「そんなに見たいなら見てて」と言われた後のあの戦闘...

 拳で戦うとはよく言ったものだが、あの戦闘はまさに「拳で戦う」戦闘だった。

 というか、あれが許容できるなら私はセーフでしょ! 

 

 あ、そうか。

 従順かそうでないかの違いか。

 自分勝手でわるうございましたね。

 

≪レイヴン? しっかり聞いていますか? あの場での行為は半ば私に共犯者の片棒を担がせるのと同意です。≫

 

『はい。すみません……』

 忘れたわけではないが、指揮官の助言と合わせて、エアからも厳しい言葉が飛んでくる。

 戦闘中エアからの交信がないから何事かと思ってたら……まさかの激おこである。

 

≪そもそも、私は確かに聞きましたからね? 「その行為は作戦内容に含まれるのか」と。≫

『あ、あの……あれは……』

 

≪あれは、作戦内容には含まれません。レイヴンが勝手に解釈しただけです。≫

『はい……』

 

 リアルな聴覚と脳からのダブル説教により、私は完全に打ちのめされている。

 指揮官側のお説教は終わりそうなのだが、こちら様はどうにもそうはいかなそう……

 

「ーヴン、レイヴン!」

 指揮官が私の名前を呼ぶ。

 

「あ、はい!」

 エアの説教により、こちらの反応が遅れてしまった。

 

「大丈夫か? ……とにかくだ。今後は事前にどうするかを言ってほしい。変に壁を作らないようにとしっかりとしたコミュニケーションを取れなかった私にも責任があるからな……」

 

「了解です」

 

 ふぅ……

 やっと終わった……

 

《私の方はまだ終わっていませんよ?》

 

『あ、はい……すみません……』

 

 指揮官からの説教が終わった後もエアからの説教は続き、自室で正座を続ける私であった。




この物語のゴッデス指揮官は・・・カズヒラ・ミラーです。
こればっかりは許してくだされ・・・

どう頑張っても、「ボスゥ・・・遅かったじゃないか・・・」って言ってたような幻覚と幻聴が聞こえるんです...

アンダーソン「実は・・・もうやってるんだ・・・バーガー・ゴッテスっていう・・・」

ちしかん「ボートを用意しろ」

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