まあ、3.5周年であれを見ますと・・・ねぇ?
明日!
AC6のDLC来るかも!!??
頼むぞ!オグP!
でも実際、続編か過去編かで内容変わりそう・・・
アイランド・フォーとか木星戦争のお話も気になりますなぁ・・・
「ふふ〜ん。今日は当たりだね……!」
口笛みたいに漏らして、私は半壊ビルの縁から飛び降りる。
瓦礫を踏んだ瞬間、足元の鉄骨が悲鳴を上げた。
その音より速く、私は右のショットガンを撃つ。
至近距離。
ショットガンから放たれる凝縮されたコーラルの光がラプチャーの頭部装甲を内側から弾けさせ、赤黒い火花と破片が扇状に飛び散った。
着地の反動で左足を滑らせ、体を沈める。
そのまま左腕のショットガンを逆側へ。
二体目の胸郭がねじ切れ、後ろの個体ごと吹き飛ぶ。
ああ、いい!
凄く良い!
今日の敵は密度が高い!
視界右上の索敵表示が忙しい。
点、点、点。
街区ひとつ分が、ほぼ赤で埋まっていた。
私は笑いそうになるのを抑えず、無線を開く。
「指揮官~、一次スキャン完了。初期配置で150。
西側高架下に潜伏群30前後。
大型は未確認、でも中型指揮個体、おそらくロード級が2ついるよ」
返ってくる声は、いつも通り落ち着いていた。
<テンションがおかしくないか?
まあいい。了解。データ受領。
リリス、ドロシー、聞いたな。中央群を割る。レイヴンは遊撃継続>
<はい、指揮官>
<了解しました>
短い返答が重なる。
リリスとドロシーの声だ。
もう、私がリリスを無理に抱える必要はない。
ドロシーが来てから、前線の呼吸が変わった。
リリスが削る。ドロシーが穴を埋める。
私?
私は好きに暴れて、迎撃して、殲滅して、安全な道を作って、敵の中身を報告する。
なんと素晴らしき役割だろうか!!
頭上を掠めた砲撃をブーストでずらし、半壊ビルの壁面を駆け上がる。
背部ユニットが開き、片翼4本ずつ、計8本のガンビットが展開。
赤い尾を引いて周囲へ散る。
「散開。援護任せるよ~」
意志も疎通も出来ないただのガンビットに声をかけるほど、私のテンションは高い。
《はぁ……レイヴン。調子に乗りすぎです》
げげっ。
いつも通り、エアから釘を刺される。
でもしょうがないでしょ?
いつもやってた事を久々にやるんだから、テンション上がるのは当たり前じゃない?
《それでも、です》
『はーい』
適当な返事をして、私はガンビットを前方へ飛ばす。
ガンビットが無音で加速し、三方向から同時に射撃を始めた。
冷却のタイミングを鑑み、右肩、左肩に装備しておいたサブマシンガンと入れ替える。
私は前に出る個体だけをサブマシンガンで潰す。
後ろで頭を出す狙撃型は、ガンビットが勝手に穴を開ける。
撃って、跳んで、撃って、捻って、撃つ。
視界の端で敵数が減っていく。
141
130
122
やっぱり、通常個体は遅い。
いや、私が速いだけか。
MTとそんなに大差がないし、装甲も薄い。
4脚MTっぽいのはいるけど、初速激早なバズーカもなければ、ミサイルと一緒にショットガンも撃たないので、あんまし怖くない。
路地を抜けた先で、四脚の中型が吠えた。
左右に護衛を六体。
隊列を組んで進んでくる。
あれが指揮個体の一つだろう。
「み~つけた!」
私は高架の支柱を蹴って、ほぼ真上へ飛ぶ。
下から砲口が上がるが、持ち替えたサブマシンガンを面でばら撒き、照準を潰す。
そのまま落下軌道で中型の背へ。
右、左、右。
再度入れ替えたショットガン三連。
装甲がひしゃげ、内部フレームが露出する。
振り向きざまの触肢を、左手首の返しで避ける。
密着距離で両腕同時射撃。
コア直上が吹き飛び、中型が崩れる。
護衛が一斉に群がってくる。
左右、頭上、背後。
包囲角、ほぼ360度。
「いいね」
私は笑って、地面を踏んだ。
「じゃ、まとめて消えて」
《パターンEを確認。アサルトアーマー、発動します》
エアの声と同時に、背部ユニットが唸り、圧縮されたコーラルが一気に解放される。
赤い円環が私を中心に広がり、直後に衝撃波が街区を薙いだ。
至近の個体は輪郭ごと崩壊。
少し離れた群れも装甲が剥がれ、関節を焼かれて倒れる。
ビル壁面のガラスが同時に弾け、粉塵が赤く染まって舞い上がった。
無線に短く流す。
「一発目、終わり。
指揮個体ひとつ処理。敵数、残り89前後」
さあ、次だ。次!
こんなに大量の敵を一気に相手にするのは久しぶりだ。
それに、罪悪感もない! ……まあ、当たり前だけどね。
◇◇◇◇◇◇
遠方で赤い円環が咲いた瞬間、地表を這う衝撃が指揮官の足元まで届いた。
遅れて、重い風圧。
瓦礫の粉が舞い、通信ノイズが一拍だけ増える。
指揮官は息を吐き、戦術盤を見た。
レイヴンのいる東側区画だけ、敵反応がごっそり消えている。
「初めて見た時にも思ったが、派手だな……」
ぼやきつつ、すぐに指示を切り替える。
「リリス、中央東ラインを押し上げろ。
ドロシーは右群の残存を刈って、リリスの帰路を空ける。時間は使わせない」
「了解です。指揮官」
リリスの声は短い。
次の瞬間、彼女の姿が前線を横切った。
拳が触れたラプチャーの上半身が、遅れて崩れる。
一歩、二歩、三歩。
動くたびに敵が道ごと抉られていく。
だが、長くは持たない。
それを知っているから、彼女は最短距離でしか動かない。
その外側を、ドロシーが滑るように進む。
白と薄紫の裾を翻しながら、射線管理だけは一切ぶれない。
「左上、狙撃型二体。処理します」
柔らかい声と同時に、上空の個体が連続で落ちた。
さらに前へ。
リリスが潰した後に空いた穴へ、群がる敵を丁寧に間引く。
気品のある立ち姿のまま、やっていることはえげつない。
指揮官はわずかに口元を引きつらせた。
「本当に、助かるな……」
リリスの負担が見える形で減っている。
以前まで、あの穴埋めは全部レイヴンが行っていたが……
確かにレイヴンが居ることで、負担は減った。
だが以前は、リリスの分までレイヴンが処理してしまっていた。
正直、負担どうのこうの以前の話だ。
それでいて、レイヴン本人は全く負担と思っていないと言うのも別途問題だ。
だが今は違う。
三人で回せる。
だからこそ、軍本部も大規模区域への投入を押し切れた。
もっとも、その結果がこれだ。
約200程の敵戦力を、ニケ3体で処理する。
無茶の皮を被った、実験に近い任務。
どう見てもレイヴンの上限を測る意図が透けて見えていた。
正直、気分は良くない。
だが現場でやることは変わらない。
全員生還で、終わらせるだけだ。
「レイヴン、東側の増援反応はどうだ?」
無線に返る声は、やはり平然としていた。
<今、炙り出してるよー。
高架裏に25、地下搬入口に15。
あ、指揮個体もうひとつ見つけた>
「了解。深追いは」
<しないよ~……行きたいけど>
「絶対に行くな。リリスもドロシーもいるから、そっちに集中しろ」
小さくため息をついた。
戦場に立っているというのに、なんなんだ、あのテンションは……
嬉々として戦場に立つニケは居ると聞くが、レイヴンほどのテンションは、あまりないのではないか?
その直後だった。
遠方で、再び赤い円環が膨張する。
指揮官は目を見開く。
「……二発目?」
指揮官の喉が引き攣る。
聞いていた話では、一回しか使えないのではないのか?
連発など想定していない。
だが現実に、もう一回咲いた。
「あれをあんな短いスパンで出せるのか……?」
疑問はそのまま、無線の向こうに投げられる。
「レイヴン、今のは何だ」
<何って、アサルトアーマーだよ?
再使用できるようになったから、もう一回使った>
「再使用って……どういうことだ?」
<??? ……えっと、使えるようになったから使っただけだけど……?>
指揮官は無言になった。
頭痛の芽が、静かに育つ音がする。
その隣でリリスが、わずかに目を細める。
「……本部が聞いたら倒れそうね」
「倒れるどころか、報告書が爆発するだろうな……」
ドロシーは小さく笑って、前を向き直った。
「でしたら、先に片付けてしまいましょう。
驚くのは、帰ってからで十分です」
全くその通りだった。
◇◇◇◇◇◇
第二波の衝撃が収まる頃には、東側の敵反応はほぼ消えていた。
私は瓦礫の上で残数を確認する。
13。
うち、動けるのは9。
「指揮官、東クリア寸前。中央へ寄るよー」
<了解。合流ポイントは旧駅前広場。
リリス、ドロシー、押し込みをやめて引け。レイヴンと重ねる>
返答を聞くより早く、私はブーストを吹かした。
崩れた看板の間を抜け、広場へ滑り込む。
ちょうど正面からリリス。
右手からドロシー。
三方向がぴたりと噛み合う。
残敵が突っ込んで来た。
私は先頭をショットガンで消し、側面をガンビットで削る。
抜けた二体をリリスが拳で砕き、後方で身を伏せた狙撃型を、ドロシーが静かに抜く。
最後の一体が膝を折り、広場に静寂が落ちた。
焼けた金属の匂いだけが残る。
私は武器を下げ、合流ポイントの中央へ立つ。
そして周囲をスキャンしながら集まる残りの仲間と指揮官の姿を待った。
当たり前だけど……
やっぱり私はこっちのやり方が好きだな~
「こちらレイヴン。任務区域、全反応停止。
迎撃・殲滅・安全確保、完了」
声の届く範囲まで集まったことを確認し状況を報告する。
少し間を置いて、指揮官の声が返る。
「確認した。全員、生存状況を報告」
「問題なし」
「問題ありません」
「ぴんぴんしてるよ」
三つの返答が揃う。
指揮官が深く息を吐く。
「……よし。撤収だ」
私は崩れた噴水の縁に飛び乗り、空を見た。
煙の向こう、まだ赤い残光が漂っている。
今日は、かなり良かったな~
しかも、まだ余裕がある。
アサルトアーマーもあと一回使えるし、まだまだいける!
「指揮官、次も同じぐらいでいいよ。
むしろ、もうちょっと多くてもいける」
数秒の沈黙。
それから返ってきた声は、ひどく疲れていた。
「……その台詞は、本部の前では言うな。
私の胃が死ぬ」
はて?
何かまずいことでも言ったかな?
「??? 。はーい?」
「……」
指揮官が無言で眉間に手を当てる。
その姿を見たリリスが、笑い、ドロシーも口元を緩めた。
戦闘は終わった。
けれど、報告という名の別戦場が待っている。
そんなことをつゆ知らず、私は肩をすくめて、帰投ルートへ足を向けた。
◇◇◇◇◇◇
レイヴンが使用する自室。
壁のほとんどはガンラックになっており、使用する銃が所せましと並べられている。
先ほどの作戦から帰ってきて、デブリーフィングを行った後、私は自室へ戻ってきた。
最近は、作戦の振り返りも自室で行うことが多い。
いや、正確には強制的に自室で行うしかないのだが……
理由?
そりゃ、あれよ。
リリスが目を光らせてるからね。
ゴッデス部隊に入ってすぐの時に「自室をしっかり使う様に」とか言われてたけど、正直聞く気はなかった。
だって、自室なんて、寝るための場所でしょ?
実質的な居住がシミュレーションルームであれば、武器はすぐ取り替えれるし、作戦の振り返りから試し撃ちまでシームレス。
悪い事なんて一つもないじゃない?
だから、リリスの助言を無視してシミュレーションルームを私物化してたんだけど……
満面の笑みで「レイヴン~?」とか言われて、さすがに無視できなくなった。
あの顔はマジだった……笑顔ってあんなに怖いんだなって、あの時初めて知った。
椅子にもベットにも腰掛けず床へ胡座をかいたまま、先程の作戦ログを眺める。
そして、感じる違和感を数回見返すうちに、その違和感が気のせいではない事を確信する。
空中投影された戦術記録には、戦闘区域の立体地図と敵反応の推移が重なっている。
今回の作戦は今までで一番楽しかった。それは認める。
でも──
「うーん。やっぱり、変なんだよねぇ……」
私はログを指で弾き、時間軸を少し戻した。
東側高架下。
地下搬入口。
崩落した商業区画。
敵の配置。
索敵範囲。
潜伏位置。
全部に納得がいかない。
《何が、ですか?》
エアの声が頭の奥へ静かに響く。
『ラプチャー』
私は視線を細める。
『今回も、変な動きしてた』
全体的なラプチャーの動きがここ最近、ちょっとおかしい。
敵群の移動履歴が、細い赤線になって浮かぶ。
『ここ』
私は一点を指した。
『本来なら、もっと押し込めた。
でも途中で変な方向に動きだしてる』
《……包囲しようとしながらも、逆方向に行ってますね》
『そう』
私は頷く。
あれはどう考えても包囲する動きだった。
でもいきなり別方向に動き出してる。
しかも、“元々あった作戦にそぐわない動き”をしている。
これが一回だけなら偶然で済む。
でも、ちょくちょく見かける。この不可解な動き。
不可解で言うと、前々回の任務でも似たような反応があった。
ミシリス研究所奪還任務
ラプチャーが、“戦略上の重要地点”ではなく、“特定の何かがありそうな場所”を探っていた。
なのに。
『火力が上がってる感じはないんだよなぁ……』
私は後ろへ倒れ込み、天井を見た。
『行動パターンはほぼ同じ。
突撃して、包囲して、押し潰す。
いつものラプチャー』
《ですが、実際に“探索行動”は存在しています》
『だよねぇ……』
私は眉を寄せた。
気持ち悪い。
単純な敵なら楽だ。
強いだけならもっと楽。
でも、“意味の分からない行動”だけは嫌いだ。
「上位存在……」
ぽつりと漏らす。
《可能性としては……あり得ますね》
『だとしたら、何探してるんだろ』
私はログを閉じ、ぼんやり考える。
もし。
もし私がラプチャー側の上位存在なら。
今の状況を見て、真っ先にする事とは?
私なら邪魔な存在の把握と対処策の検討及び構築。
「……リリス」
私は指を一本立てる。
「あと、私」
即答だった。
リリスは純粋な突破力。
私は変則性。
この二つが現状のラプチャー側の脅威。
だから、殺し方を探してる……とか?
《事実、リリス及びドロシーのゴッデス部隊とレイヴン。この二つが消えれば、ラプチャー側の脅威は大幅に減少しますからね》
エアが、あっさり肯定した。
私は少しだけ目を細める。
『やっぱり?』
《ラプチャーの学習速度は異常です。
過去の戦闘記録を見ても、“対応速度”が早すぎる個体群が確認されています》
「……あー」
私はようやく少し合点がいった。
今までは、“ただの物量”だと思ってた。
でも違う。
あれは、“試行回数”だ。
死んでもいい。
壊れてもいい。
だから無限に試せる。
なら──
『私たちも悠長にしてられないね』
とは言ってみたものの……これが個人的な争いならまだしも、戦争となると、そう簡単にはいかない。
個で勝っても、全体で負けたら意味がない。
まあ、だからこそのアセンブルの重要性なんだけどね。
流布はした。
情報も見せた。
後は、彼らがどう調理するか……だけど。
《あまり良い気はしませんね……》
そう、そこなのよ……
今やってることって、ウォルターが言ってた“火種に狂う”お話の火種に、私自身が率先してなろうとしているのと同義。
でも「じゃあソコに罪悪感はあるのか?」と言われれば、正直、ない。
だってこうでもしないと負けるんだもの。
それに、もう賽は投げた後。
だから、今更引き返せない。
『それに守るべきものも出来ちゃったしね』
監督官。
エイブ。
リリスとドロシー。
おまけとして、指揮官。
良くしてくれた人たちには、私も良くしたい。
高機動部隊の子たち……は、なんなんだろう?
初めて作った部下たち?
それとも師に対する弟子的な?
言語化は難しいけど、なんだかんだで一番愛着があるのかもしれない。
不意に以前見たテレビ映像を思い出す。
私とリリスが戦場を駆け回ってラプチャーを殲滅する映像。
ご丁寧に“人類の希望”とかテロップまで入ってた。
《レイヴンは……人類を守りたいという気持ちはあるのですか?》
『私の思考を読めてる上で敢えて聞くの?』
《……》
壁にかけられた銃を見つめる。
使い込まれてきたのか、銃全体に細かい傷が入っている。
『ないよ』
私ははっきりと答えた。
あるはずもない。
思い入れもなければ、愛着もない。
愛着のないものを守る理由もない。
自壊すると分かっているものを守っても
意味はない。
でも、だからこそ
『守るべきものが出来たなら、断固として守る』
選別しているようで、実は選別していない。
良くしてくれた人には良くしたい。
それだけ。
《身内に甘いのは相変わらずですね》
そりゃそうでしょ。
異物を人として見てくれる監督官。
銃を手に取り、戦場を駆け回る私を、リリスもドロシーも、指揮官も、エイブも、みんな良くしてくれる。
そんな人たちを、私は大切にしたい。
《なるほど》
《では、オペレーターとしてもコーラルの逆流からレイヴンの意識を戻した私を惑星ごと燃やしたことについては──》
《何なのでしょうね? 身内ではなかった……と?》
さっきまでとは打って変わり、エアの声が重くなる。
それ……は、その……
《それは?》
言葉に詰まる。
いや、私もあの決断にすんごい時間かかったんだよ!?
それにあの時は、ウォルターの意志を継ぎたいっていう気持ちが強かったし!
何より、あのまま放置しておくのは、私も含めて、みんなにとって不幸なことになると思ったから──
《私は不幸のままでしたけど?》
究極のトロッコ問題だったの!!
そのあと別でルビコン解放したからいいじゃん!
《良くありません。レイヴンは真っ先に私側に立つべきでした》
それについては……ごめんなさい。
でも、あの時は、あの選択が最善だと思ったんだもの。
《ふふっ……まあ最終的に一緒に行動できるようになりましたからね。許します》
エアがいたずらっぽく笑う。
あぁ、まったくもってメンドクサイ!
事実だし、内容が内容なだけに何の釈明もできないから、謝罪しかできないのよ!
エアもエアでこの手の話をイジり半分、恨み半分なのがまたなんとも言えない……
ブラックジョークが過ぎるのよ……
《はてさて、なんのことでしょう?》
『やめてって言ってもやめないでしょ?』
《当然です。贖罪と思って甘んじて受け入れてください》
はぁ……
私は溜息をついて、自室を出る準備をする。
《どこへ行きますか?》
『シミュレーションルーム。成長することを止める理由がないからね』
あとは、エアにおちょくられた鬱憤を晴らしに……
《憂さを晴らすのはいいですが、ほどほどにしてくださいね》
どの口が言ってるんでしょうかねぇ!?
《今のレイヴンでしたら、勝てそうな気がしてきました》
よし。
おっけ。
分かった。
今すぐシミュレーションの機械ハッキングして。
エアの意識をシミュレーションルームに移したうえで、私と対戦。
ボコボコにしてやるから。
いそいそと身支度を整える。
エアに煽られた事もあってか、一々銃を運ぶこの行為にすらイライラする。
リリスさんよぉ!
自室でも寝るから、シミュレーションルームでも寝ていいよねぇ!?
ダメですよね! 知ってますよ!
だって一回聞いたもん!
しかし、銃を吟味している時間がちょうどよい頭の冷やしになったのか、気持ちが落ち着いてきた。
まあ、それはそれとしてモヤモヤは残るけどね!
◇◇◇◇◇◇
シミュレーションルームへ向かう道中。
カートを押しながら考えることは、今後のアセン内容について。
もっと瞬間火力を上げるか。
いや、継戦能力優先?
近距離特化を尖らせる?
でも模倣されるなら、癖は増やした方が──
『エアはどんなのがいい?』
《そうですね……持った武器種がすべてコーラルで統一されてしまう問題を考慮すると、あまり選択肢がないように思えます》
『そうだよねぇ……』
あの現象の対応策が未だにわからない。
意識を別に割いてると、武器自体が変わる様な事はない。
そう考えると、原因は思考の方にあるのかもしれない。
思考によって左右される武器って何? って話だけどね。
『私……元々実弾武器で仕事してたんだけどなぁ……』
《両手にZIMMERMANを持ち、ASHMEADとP20MLT-04の組み合わせがほとんどでしたね》
そうそう。
軽量機の両手にZIMMERMANを持たせると肩に重量負荷が大きい武装は積めないからね。
そう考えると、初期から使っているあの四連ミサイルはありがたい存在だった。
《ASHMEADを別の物に変えることは考えなかったのですか?》
『私にパイルを外せと?』
《現に今パイルを使っていないではないですか……》
パルブレあるからね。
でも、もし作れるならパイルはマストで欲しいなぁ……
《近接追尾性能が落ちますよ?》
『あーあ、分かってないなぁエアは……パイルはね? 正義だよ?』
《……》
『あとかっこいい』
《……なるほど。理解しました》
『わかってくれた?』
《レイヴンにパイルは持たせません》
『なんで!!??』
《調子に乗り出します。ただでさえ猪突猛進なのに、パイルを持たせたら制御不能になります》
……
何も言い返せないけど、ヤダ!!
意地でも使うからね!!
《はぁ……》
そんなやり取りをしながら歩いていると、ふと、廊下の外側が目に入った。
中庭。
夜風に揺れる白いクロス。
銀色のティーセット。
そして。
「……ドロシー?」
私は足を止めた。
丸テーブルの前で、ドロシーが優雅にカップを傾けている。
服装と相まって、やたら雰囲気が似合う。
というか。
「なにしてるんだろ、あれ」
私は素直に首を傾げた。
戦場でも気品あるなぁとは思ってたけど……
軍事基地という環境なのに、あの空間だけ異世界みたいになってる。
気になる。
シミュレーションルームへ向かう足を止め、私はそのまま中庭の方へ歩いていった。
中庭へ続く扉を開けると、廊下とは違う空気が流れ込んできた。
夜風。
草の匂い。
それから、よく分からないけど落ち着く香り。
金属と油と火薬の匂いが染みついた基地の中で、そこだけ妙に浮いている。
まるで誰かが、戦場の外側から小さな箱庭を持ち込んだみたいだった。
ドロシーは、私が近づいても慌てなかった。
白いカップをゆっくり受け皿へ戻し、こちらを見る。
仕草の一つ一つが丁寧で、見とれてしまう。
「こんばんは、レイヴン」
「……こんばんは」
なんとなく返す。
けど、私の視線はドロシーではなく、テーブルの上に吸い寄せられていた。
銀色のポット。
小さなカップ。
皿に並んだ焼き菓子。
白いクロス。
「……何してるの?」
素直に聞くと、ドロシーは少しだけ瞬きをした。
「見て分かりませんか?」
「うん」
即答すると、ドロシーが一拍だけ固まった。
たぶん、分からないと言われるとは思っていなかったんだろう。
「ティータイムです」
「……てぃーたいむ」
聞き慣れない言葉を、そのまま口に出す。
「飲み物の時間?」
「大まかには合っています」
「じゃあ、なんでそんなに準備してるの?」
私が首を傾げると、ドロシーは今度こそ、私が本当に知らないのだと理解したらしい。
笑うのではなく、少しだけ表情を和らげた。
「紅茶やお菓子を楽しみながら、ゆっくり過ごす時間です。
休息でもあり、気持ちを整えるための時間でもありますね」
「気持ちを整える……」
私はテーブルの上を見つめる。
栄養のみを摂取するバーではない。
飲み物も黒色のフィーカとは違う。
見た目、雰囲気、香り。
どうも私が知っている休息とは違うらしい...
「よろしければ、レイヴンもご一緒しませんか?」
「私も?」
「はい。お菓子もありますから」
お菓子。
その単語に、視線が皿へ移る。
丸い焼き菓子。
小さく切られたケーキ。
薄いクッキー。
私は少しだけ迷ってから、カートを庭園の端に寄せた。
銃を載せたカートが、この空間にあまりにも似合っていなくて、なんだか申し訳ない気持ちになる。
元々、シミュレーションルームへ向かう途中だったから、仕方がないんだけどね?
「じゃあ、少しだけ」
「どうぞ」
ドロシーが向かいの椅子を示す。
私は促されるまま座った。
……座ったはいいけど、落ち着かない。
浅く座る。
背筋を伸ばす。
手は膝の上。
いや、違う気がする。
じゃあ肘置き?
でもこの椅子、肘置きがない。
そわそわしている私を見てドロシーは、少しだけ口元を緩めた。
からかわれている感じではない。
むしろ、微笑ましそうに見られている気がする。
なんか恥ずかしい。
ドロシーが銀色のポットを持ち上げ紅茶を注ぐ。
湯気がふわりと立つのと同時に、柔らかい香りが広がった。
「おぉ……」
思わず声が漏れた。
フィーカみたいな苦い匂いじゃない。
もっと軽い。
でも薄くはない。
花みたいな、果物みたいな、よく分からない香りがする。
「アールグレイです」
「アール……グレイ?」
「茶葉の種類です。香りが華やかなので、初めてでも楽しみやすいと思います」
「へぇ……」
物は試しと一口だけ飲んでみる。
「……!」
思わず目を見開いた。
苦さはある。けど、それ以上に香りが強い。
そして、なんだか落ち着く。
もう一口飲む。
さっきより味が分かる。
ドロシーは私の反応を見て、どこか満足げに微笑んでいた。
「気に入っていただけましたか?」
「……うん。変な味じゃない」
「褒め言葉として受け取っておきます」
「あ、違う。美味しいと思う」
そう言うと、ドロシーの表情が少し明るくなる。
「よかったです」
ドロシーはカップを持ち、自分も一口飲んだ。
その仕草はやっぱり綺麗で、戦場でラプチャーを撃ち抜いている時とは全然違う。
「ドロシー、それ好きなの?」
「紅茶ですか?」
「うん」
「はい。趣味です」
「趣味」
……趣味。
あぁ……そう言えばまだ見つけきれて無いんだった。
「レイヴンには、何か趣味はありますか?」
「私?」
やっぱり来るよね~……その質問。
私はカップを置き、少し考えた。
趣味。趣味。趣味。
戦闘……は違う。
戦闘ログを見てアセンブルして機体の整合性と動作性をAC TESTで確認。
ネストに籠ってシミュレーションルームで訓練。
……となると。
「シミュレーションルームかな?」
ドロシーが一瞬止まった。
それから、少しだけ苦笑する。
「それは……訓練では?」
「でも、好きでやってるし」
「否定はしませんが、少し予想とは違いました」
『エア、趣味って何を言えば正解だった?』
《趣味に正解などありませんよ。レイヴンが好きでやっていることが趣味なのですから》
そっか。
なら問題ないね。
ドロシーは紅茶をもう一口飲み、静かにこちらを見る。
「なぜ、そこまで訓練を?」
「好きでやってるって言うのと、やっとかないと、基地にいるあの子らがうるさそうだから」
「あの子ら?」
「高機動部隊の子たち」
ドロシーが小さく首を傾げる。
「以前、あなたが指導していた部隊ですね」
「うん。フェリーたち」
フェリーの顔が浮かぶ。
最初は動きが硬かったのに、いつの間にかかなり避けるようになっていた。
それに、あの子たちはやたら真面目だ。
私がサボっていたら、たぶん本気で文句を言いに来る。
「私がしてなかったら、「何胡坐かいてんですか!」って言いそう」
「それは、随分慕われているのですね」
「慕われてるのかな……?」
「少なくとも、あなたを基準にしているのでしょう?」
基準。
基準ねぇ……
自分に合った戦術が正解なのだから、私を基準にするのは良くないと思う……
敢えて言おう、自分しか扱えないピーキーぐらいがちょうどいいと!
「……私は、やり方を教えただけだよ」
「それでも、教えられた側にとっては大きいものです」
「そういうもの?」
「そういうものです」
ドロシーは、当たり前のように頷いた。
私は紅茶を飲む。
少し温度が下がって、さっきとはまた別の味わいになっていた。
香りも少し変わり、渋みと苦味が顔を出す。
「まあ、私が一番に教えたかった内容はしっかり伝わってるみたいだし、そこは満足だね」
「一番に教えたかった内容、ですか?」
ドロシーが興味深そうに首を傾げる。
私はクッキーを一枚摘まみながら頷いた。
「軍とか企業を信用しすぎるなってこと」
ドロシーの手が、ぴたりと止まった。
「……信用しすぎるな、ですか?」
「うん」
ぱきり、とクッキーを齧る。
「軍、企業を信用せず、使いつぶされず、使いにくさを持たせ己の力で存在感も出す」
ドロシーは黙って私を見ている。
その目は、さっきまでの柔らかいものとは少し違った。
「軍は合理主義の塊。
企業は利益を追い求める資本主義の塊。
その他は、感情で動く」
私は紅茶を一口飲む。
「そこに慈善的な何かは存在しない。まあ、軍は例外かもだけどね」
私も軍自体の体質なんて良く分からなかったけど、企業と比べたらまだマシな気がする。
でも政治的背景と民衆の感情と言う名の世論を見ると……結局はそう変わらないかもね。
何なら一番厄介なまである。
「だから、いつか都合よく使われ、都合よく切り捨てられる。
その都合とは? 使命だったりするその人物の持つ善意に付け込んだ自己犠牲」
それが、使命と言う立派なモノの唯一の暗い部分、弱さだと思う。
ウォルターの使命にしたってそう。
あれは、使命と言うより呪いに近い。
使命は嫌いだ。
でも、その使命を背負った人は……立派だと思う。
私にはないものだから、余計にそう思うのかもしれないけど。
《大切な人を守りたいというのも立派な使命と思います》
『あれは使命とは言わないよ。戦う理由に近い』
「……それは」
ドロシーが静かに口を開いた。
「少し、寂しい考え方ですね」
「そう?」
「はい」
即答だった。
ドロシーはカップを受け皿に戻し、背筋を伸ばす。
その姿勢は、ティータイム中なのにどこか式典の壇上に立つ人みたいだった。
「私は、人類を信じています。
軍も、人類を守るために存在している組織です。
その中に思惑や都合があるとしても、根底にある目的は同じはずです」
「同じかな」
「同じです」
迷いのない声だった。
ドロシーの目には疑いがほとんどない。
人類の希望として戦う自分と、それを支える世界が、彼女の中では綺麗に繋がっている。
「それに……人類の希望たる私たちが、人類を信じずして、何が希望でしょうか?」
「……」
ドロシーの言葉を聞き、一番初めに感じたのは
日和見。
平和ボケ。
だった。
人類の“希望”……ね。
人間とも認めず、兵器として扱われてきている時点で、そんな言葉に何の意味があるのだろうか。
もう一度ドロシーを見る。
その目は、やっぱり疑いがない。
その目は、やっぱり純粋だ。
私にはない。誇らしくもあるけど、同時に危うくもある。
私は、人を見る目がない。
懐疑心が強いのに、一度身内と認めた人には、盲目的に信じてしまう。
これが、駄犬と呼ばれてしまう所以なら……認めるしかないかな。
でも、だからこそ、善意100%でドロシーへ忠告する。
「でも、信用しすぎるのは危ないよ」
ドロシーの表情が、少しだけ曇った。
「レイヴン」
「ん?」
「あなたは……随分と人を信じるのが苦手なのですね」
「へ?」
私は思わず変な声を出した。
おっと?
何でそんな話になった?
ドロシーは本当に心配そうにこちらを見ていた。
その目に悪意はない。
責めているわけでも貶している訳でもない。
ただ、私の言葉を聞いて、何かを変に解釈してしまったようだった。
この子は、過去に何かあったのだろうか。
そう思っているのが、なんとなく分かる。
──あ……
私自身の容姿を思い浮かべる。
身長が低くて。
顔立ちも幼く見えるらしくて。
さっきまで紅茶で目を丸くして、お菓子を美味しそうに食べていた私が、急にこんな話をし始めたのだから、そう見えるのも仕方ないのかもしれない。
でも、さすがにここは否定しなきゃ。
「違うよ」
「違うのですか?」
「違う」
私は即答した。
「別に人間嫌いじゃないし、人を信じられないわけでもない」
「ですが、今の言い方は……」
「経験則」
私はクッキーを持ったまま、少しだけ眉を寄せる。
「熱いものに触ると火傷するよって言ってるのと同じ。
近づきすぎると危ないよって話」
ドロシーは、まだ納得していない顔だった。
「しかし、それだけが全てではありません」
「それはそう」
「軍にも、企業にも、善い人はいます」
「いるね」
「なら──」
「だからこそ危ない」
ドロシーの言葉を遮る形になった。
私はすぐに少しだけ視線を落とす。
「あ、ごめん」
「いえ」
ドロシーは静かに首を振った。
私は紅茶をもう一口飲む。
少し冷めていたけど、まだ香りは残っていた。
「良い人はいる。
でも、良い人がいることと、組織が最後まで味方でいてくれることは別」
「……」
「善意があっても、責任で切らなきゃいけない時がある。
悪意がなくても、都合で見捨てる時がある。
だから、信用しすぎるなって言ってるだけ」
ドロシーはしばらく黙っていた。
それから、ゆっくりと微笑む。
「やはり、心配してくださっているのですね」
「……」
「違うのですか?」
「いや、まあ……善意ではあるけど」
なんか違う。
違うけど、完全には否定できない。
ドロシーは少し嬉しそうだった。
「では、その善意は受け取っておきます」
「いや、受け取るならちゃんと警戒もして」
「考えておきます」
「それ、絶対あんまり考えないやつでしょ」
「そんなことはありません」
ドロシーは穏やかに笑う。
その顔があまりにも落ち着いているので、逆に不安になる。
私はむすっとした顔のまま、ドロシーを見続ける。
「クッキー……まだ食べますか?」
「あるなら欲しい」
クッキーをほおばる。
甘い。
美味しい。
悔しいけど、すごく美味しい。
「……なんか言いくるめられた気がする」
ぼそっと漏らすと、ドロシーが瞬きをした。
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
私は怪訝な顔のまま、紅茶を飲む。
「丸め込んでなんていませんよ。
私はただ、自分の考えを話しただけです」
……
理解はしてるけど、信じてるわけじゃないね。
でもまあ、しょうがないか。
体験したこともないことを、いきなり信じろって言われても無理な話。
でも、あの純粋さで裏切りを経験するのは、酷すぎる。
そう考えると私は結構ラッキーだったのかも。
信じる信じないどうこうの前に、相手方がその片鱗を見せてくれてたからね。
それに、そもそも私自身が裏切られた経験ないし……目の前で切り捨てられた風景はよく見たけどね。
クッキーの香ばしさと甘さの裏に、少しだけ苦味も感じる。
「……美味しい」
ドロシーは、楽しそうに笑った。
「それはよかったです」
《完全に餌付けされていますね》
『違いますが?』
否定しながら、私はもう一つ焼き菓子を取った。
出来ることがあるなら、言い続けるしかない。かな……
621の身内判定はガバガバです
1度でも心を許すと尻尾を振りながらよっていく駄犬。だがそれがいい!!
正直、エアと接触してどれぐらい経ってるかは知らないけど、いきなり脳内に話しかけてくる人の依頼を何も言わずに従っちゃうのは駄犬と言われてもしょうがない気がするんだよ……レイヴン。
セレンさんだったら、間違いなく釘刺されるよ
あとAC6の621ちゃんは、どっちかっていうと「裏切る」側だからなぁ・・・
多分そういうきな臭いMissionはごすずんがはじいてた可能性がございますねぇ・・・
AC6続編かAC7か・・・
はやくきてくれー…
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