熱すぎる・・・・
仕事忙しすぎて、帰ってニケやる暇がなく爆速で寝てたら、夏イベが終わってた。
まあ、ストーリーは見ましたがね!
ログボ全うできなかったけど・・・
悲しいなぁ・・・
そして来ましたな!
ミシリスイベ!
どう考えても重要なイベ!
重要過ぎて逆に見るの怖かったまである…
重要な部分が変わる可能性もありますしねー
まあ、そうなったら開き直ってパラレル時空デス!って言うしかないけども!
エリシオンに先を越された。
会議室へ入った瞬間から、どいつもこいつも同じ顔をしていやがる。
口には出さない。
俺が一番嫌う報告だと知っているからだ。
先日、待機中だったレイヴンは、個人用T.A.C.T.へ届いたエリシオンの緊急依頼を受諾した。
後退する戦線。
取り残された部隊。
救援を出す余裕のない軍。
そこへ、エリシオンが金を出した。
そしてレイヴンが飛んだ。
結果は生存者の回収、追撃戦力の排除、作戦地域からの完全離脱。
救援部隊を新たに編成するより安く、速く、確実に終わった。
エリシオンにとっては、随分と費用対効果の良い買い物だっただろう。
「それで?」
席へ座り、机の上へ投影された報告書を指で送る。
報告担当の男が、一瞬だけ呼吸を止めた。
「……当該依頼によって、エリシオンはレイヴンとの直接取引実績を獲得しました」
「見りゃ分かる」
「加えて、実戦時の行動記録、使用兵装、救援対象への対応、緊急依頼に対する受諾条件も──」
「で?」
俺が聞きたいのは、報告書を読み上げた感想じゃない。
その数字を見て、テトラが何を失ったと思っているかだ。
「エリシオンは、レイヴンが軍の正規作戦と待機と言う命令以外でも契約可能であることを、実地で証明しました」
別の男が口を開く。
事業戦略部門。
数字を見る目は悪くない。
だが数字の向こうにいる人間を見る目は、まだ足りない。
「ミシリスが最初に企業依頼を成立させ、今回のエリシオンの依頼では、軍の命令下でも依頼を受けられることを証明しました。
三大企業のうち、本人への直接依頼を行っていないのは弊社のみです」
「それで、出遅れたと?」
「少なくとも、関係構築においては」
間違ってはいない。
だが、正しくもない。
ミシリスは、分からない物を見つけたから調べた。
エリシオンは、戦場に穴が開いたから傭兵を買った。
どちらも、自分たちが昔から持っている商売の延長だ。
ミシリスは未知を解析する。
エリシオンは任務へ必要な戦力を割り当てる。
では、俺たちは何を売る?
同じ依頼を一日遅れで投げることか?
解析の真似事か?
救援任務の奪い合いか?
そんなものは、後追いでしかない。
「今回の任務で、一つ分かったことがあります」
「言ってみろ」
「レイヴンは、軍の待機命令より個人契約を優先する場合がある」
「違う」
男の言葉を切る。
「あいつは待機を仕事だと思ってねぇ。何もしない命令と、報酬が出る依頼を並べ、仕事を選んだ」
「結果として、軍命令へ違反しています」
「結果だけならな」
レイヴンは、軍へ反乱するために出たわけではない。
エリシオンへ忠誠を示したわけでもない。
取り残された兵士への善意だけで動いたとも限らない。
目の前に仕事があり、条件を確認し、自分に処理できると判断した。
それだけだ。
そこが一番重要だった。
「軍に所属していようが、ゴッデスに入れられていようが、本人へ届く契約経路があれば動く。だが、企業の看板で動くわけじゃねぇ」
「つまり、エリシオンが関係を独占したわけではないと」
「依頼を一件買っただけだ」
次の依頼もエリシオンから受ける保証はない。
より面白い仕事。
より良い報酬。
新しい武器。
本人が価値を感じるものを置いた依頼主へ行く。
あの烏は、最初に餌を置いた人間へ懐く鳥じゃない。
餌がなくなれば、別の場所へ飛ぶ。
「それでも、弊社が積極的な依頼試行を行ってこなかった事実は変わりません。
……ミシリスが最初に接触した時点で、弊社も依頼を出すことは可能でした。調査、広告、装備提供、いずれの名目でも接点は作れたはずです」
視線を上げる。
「……いつからお前は、俺の経営判断を査定する立場になった?」
男の顔から色が消えた。
「いえ、そのような意図では──」
言い切る前に口を閉ざす。
言い切る度胸もないなら、最初から口を開くな。
口を閉ざした男から視線を外し、会議室を見渡す。
揃いも揃って、同じ顔をしていやがる。
何が悪かったのかすら分かっていない。
「……馬鹿しかいねぇのか、ここは」
誰も答えない。
「出遅れたんじゃねぇ。俺が止めた」
何人かが顔を上げる。
「……危険性を懸念されたのですか?」
「危険だから商品になる物なんざ、いくらでもある」
銃。
酒。
賭博。
戦争。
危険は、人間の目を引く。
使い方さえ用意すれば、金になる。
レイヴンに感じたものは、それとは違った。
「あれは、触れた奴が怪我をする類じゃねえ。触れた事実を、後から消される類だ」
軍が企業へ隠して作っていたニケ。
だが軍自身も、なぜ生まれたのか説明できない。
V.T.C.も一緒だ。
そんなもんは、これまでの連中の行動を見れば分かる。
既存規格から外れた身体。
再現性なし。
管理不能。
それでいて、戦況を単独で変える出力を持つ。
そんなものへ企業が金を入れたら、どうなる。
「奴専用の工場を建てる。専用規格を作る。技術者を集める。名前を使って商品を売る。
そこまでやった翌日に、軍があいつを最高機密へ戻したら?」
誰も答えない。
「V.T.C.が研究封鎖を決めたら?」
設備は残る。
人件費も残る。
研究費も戻らない。
だが、商品は売れない。
技術を別へ回すこともできない。
なぜ赤字になったのか、それすら説明できない。
「売れなかった商品なら値を下げろ。改良しろ。別の客へ売れ。それでも駄目なら捨てろ」
机の上に表示されたレイヴンの映像を見る。
戦場から戻った、小さな身体。
企業と軍とV.T.C.の都合を全部抱えながら、本人だけが好き勝手に歩いている。
「だが、存在を口にすること自体が禁じられた事業は、捨てたことにすらできねえ。
儲からねえんじゃない。儲けた事実ごと、なかったことにされる」
「……投資対象として成立していなかった、と」
「市場としてもな。ありゃ、市場にしてはいけない物だった」
事業モデルには中心がある。
客。
商品。
規格。
供給。
どれか一つが欠けても、残りで支えられるように作る。
だが、専用事業は違う。
テスターも顧客も広告塔も規格の根拠も、本人が消えれば、全部が同時に死ぬ。
そんなものは投資ではない。
一人の存在へ、会社の金を賭ける博打だ。
「であるならば、現在も直接依頼は避けるべきでは?」
財務責任者は、当然の疑問を返した。
「レイヴンの政治的危険性が解消されたとは言えません。先日の無断出撃によって、むしろ軍が管理を強める可能性もあります」
「そうだな」
安全になったわけではない。
今も不発弾。
今も禁忌になり得る。
だから、触り方を変えた。
「最初に更新した腕部と脚部。開発費の内訳を出せ」
画面が切り替わる。
既存アクチュエータの転用。
従来ニケ用外装の再設計。
試験架台の改修。
複数規格へ対応する接続部品。
新規投資はある。
そしてこれらは、奴の名前が消えても使える。
次世代ニケ用の交換部品として残る。
義肢技術へ回せる。
既存兵装の保持装置として売れる。
試験設備も、別製品へ転用できる。
「あいつが明日消えても、この金は全部死なない」
「レイヴン専用事業ではなく、アセンブル市場全体への先行投資……」
「ようやく理解したか?」
安全になったからではない。
封鎖されても残る形にしたからだ。
「加えて、V.T.C.から外部装備用の共通接続案が提示されています」
「身体の中身へ触らずに済む」
「はい。生命維持、身体側接続、安全制限はV.T.C.弊社は外装、補助装備、量産、改良を担当できます」
境界ができた。
テトラが踏み込んでいい場所と、踏み込めば事業ごと燃える場所。
それが分かれば、投資額も責任も切り分けられる。
「ミシリスとエリシオンが企業依頼を成立させたことで、直接契約そのものも異例ではなくなりました」
「軍が今さら、テトラだけを接触禁止にはしねぇ。
T.A.C.Tの閲覧記録を見せろ」
市場調査部の男が、画面を切り替える。
画面には、パーツショップ更新後の閲覧経路が表示された。
最初に脚部。
次に腕部、補助推進、武器マウント。
そこで重量順へ並べ替え、消費出力を確認した後、再び脚部へ戻っている。
一つの商品を見て終わる客の動きではない。
「現状……購入手続きへは進んでいません」
「買える完成品じゃねぇからな」
「閲覧時間は脚部が最長です。ただし、個別の商品ページではなく、各カテゴリを往復しています」
軽い腕から、高出力の脚へ。
重い腕から、高積載の脚へ。
その間に補助推進と武器マウントを挟んでいる。
最も高い数字を選んでいるわけではない。
頭の中で一機分を組んでいる。
「更新翌日、さらに先日のエリシオン任務後にも再アクセスが確認されました」
「戻ってきたか」
実戦の直後なら、欲しくなった性能も鮮明に残っている。
「任務後は補助推進から閲覧を開始し、横方向の推力を重視した試作品で長時間滞在しています。その後、再び脚部へ移りました」
戦場で何かが足りなかった。
横へ動くための推力を見つけ、それを支えられる脚を探した。
スペックを眺めていたんじゃない。
どこで使う。
何を避ける。
何と組む。
頭の中で、次の戦いを始めている。
「あの烏は、新しい戦い方を探してる」
「また、弊社が三社の中で最初に腕部・脚部カテゴリを追加したことも、認識している可能性が高いかと」
当たり前だ。
どの企業が、最初に自分の欲しい物を棚へ置いたのか。
あいつはもう覚えている。
「可能性じゃねえ。覚えてる」
遅い。
何もかも遅い。
人類が滅びかけているから仕方がない?
馬鹿を言え。
客が明日死ぬかもしれないなら、今日のうちに売る。それが商売だ。
俺は机の上へ投影された三つの報告書を見比べ、そのうち二つを指先で弾いた。
ミシリスは解析中。
エリシオンは運用試験中。
どちらも随分とご立派な言葉を使っているが、要するにまだ棚へ並べられないということだ。
なら、負けだ。
戦場で引き金を引けない銃と、売り場に並んでいない商品に大した違いはない。
先に選ばれた奴が勝つ。
性能の話は、その後でいくらでもひっくり返せるからな。
あの手の顧客は、約束より実物を見る。
作ると言った企業。
実際に棚へ並べた企業。
その差を忘れない。
忠誠ではない。
好意ですらないかもしれない。
だが、仕事が早いという評価は残る。
企業にとって、それで十分だ。
「依頼を出せ」
部屋の空気が変わった。
「調査依頼でしょうか」
「御用聞きに見えるか?」
「では、試作品の実働評価を」
「それだけじゃ足りん」
軍需施設の見取り図を開く。
侵攻前から存在した開発・展示複合施設。
地上の一般展示区画は閉鎖され半地下の工房、試験架台、射撃区画だけを軍需用へ転用している。
「交換腕部、交換脚部、そして現在進めてる補助ブースター、冷却ユニット、追加装甲、武器マウント、外部センサー。今出せる物を全部並べろ」
「すべてを一度に、ですか?」
「一つ見せて感想を聞くな。選ばせろ」
「比較評価を行わせると」
「違う。遊ばせろ」
施設の見取り図を見ながらあの烏が歩く姿を想像する。
腕部、脚部、補助推進器、冷却装置、追加装甲、武器懸架装置。
足りんな。
「服を置け」
「は?」
「宝石、菓子、携帯端末、音楽、ゲーム。今売れる物を一通りだ」
「今回の目的は軍需製品の使用者評価です。それらは評価対象から外れるのでは……」
「だから置くんだろうが」
戦い方は分かっている。
分からないのは、それ以外だ。
武器を取り上げた時、あの烏に何が残る。
何を欲しがる。
誰のためなら金を使う。
空白は市場だ。
まだ名前のない欲望ほど、値段をつけやすいものはない。
「軍需施設の視察へ、生活商品を混在させるのですか?」
「契約書へ書け。需要調査だとな。無断ではなく、本人の同意を得た上で記録する。
後から契約違反だと噛みつかれちゃ、笑い話にもならねえ」
「取得範囲は」
「映像、音声、外部装備、閲覧と選択。身体の中へ手を突っ込むな。ゴッデスのことも聞くな」
テトラが欲しいのは、レイヴンの秘密ではない。
「CEO」
別の男が、おそるおそる手元の資料を開いた。
「対象との独占契約についてですが──」
「却下だ」
「しかし、軍および他社への牽制を考えれば、早期に所属を明確化する方が──」
「囲うな」
再び部屋が静かになった。
「チッ……」
分からないらしい。
こんな簡単なことが。
「檻に入れた鳥を見て、誰が空を飛びたいと思う?」
あれは、不幸のど真ん中へ落とされた。
化物と呼ばれ、兵器として値踏みされ、軍へ首輪をつけられた。
それでも檻を食い破り、自分で仕事を選び、自分で仲間を選び、自分で戦場へ戻っていく。
最高じゃねえか。
戦争という特大の不幸を舞台にして、用意された筋書きを片っ端から踏み潰してやがる。
しかも、本人に主演している自覚がない。
だから目が離せない。
◇◇◇◇◇◇
依頼が来た……!
そして、その相手は何とテトラ!
今の今まで、全然依頼を出さなかった唯一の企業。
でも私が意図している事をしっかり理解して、真っ先にパーツショップの更新をしてくれた優良企業。
いや~、全く依頼が来ないものだから、てっきり武装だけ提供するメリニットやファーロン、タキガワ的な立ち位置と思ってたからびっくりしたよ。
正直な話、テトラから依頼が来てちょっとうれしい。
ミシリスは、ず~っと準備中。
エリシオンは、検討中の項目が多い。
テトラだけは、とりあえず腕と脚を置いた。
まだ買えないし、対応している換装設備もないし、商品説明にも試作品と大きく書かれていたけど。
置いたことは置いた。
ここ!
ココの違いですよ!
《テトラという企業は、先のエリシオンやミシリスと違い最近になって出来た新規企業らしいですね》
あ、そうなの?
てっきり、昔からある企業だと思ってた。
新しいだけあって、上に立つ人の考え方が柔軟なのかな?
そう考えながら、再度依頼内容を読み返す。
この依頼も依頼で良い!!
内容は、テトラライン軍需技術展示施設における試作品評価。
交換式腕部および脚部。
補助推進装置。
冷却装置。
外部センサー。
その他、アセンブル構想に基づく関連製品。
評価者は私。
……超優良依頼すぎる。
優良すぎて、逆に不安になるくらい。
経験則上、こういう美味しい依頼って、裏がある。
でも!
裏があったとしても、美味しい依頼であることには変わりない!
なんかあっても、実力行使で解決すればいいだけの話だしね!
《……》
何かエアから物凄い圧を感じるけど、私は気にしない。
早速と思い、依頼許諾のボタンを押そうとしたその時、エアの声が私の手を止めた。
《レイヴン。約束》
……。
あぁー……そうだった。
前回の任務から帰った後、指揮官含めた三人にかなり怒られた。
用意していた言い訳で切り抜こうとしたけど、なぜか二割増しで怒られた。
そして最後の砦であるエアに助けを求めたけど、だんまりを決め込まれた。
曰く、高機動部隊の子たちの様子を見に行っていたと……。
な~にが、《様子を見に行っていたので、助けられませんでした》だ。
この裏切り者め。
《事実ですから》
敵の敵は味方というけど、私の敵は一番近いエアでした。
『エアのそういう所、きらい』
《なっ……》
エアが落胆した声を上げるが、因果応報なので、私の心は痛まない。
共犯者を逃がす私ではないよ。
まあ、とにかく。
そんなことがあって、結果として待機中に個人依頼を受ける場合は、契約前に指揮官へ提示することになった。
忘れたわけじゃないよ?
ただ、依頼内容を見た瞬間、受ける方へ気持ちがかなり傾いただけ。
事実、契約ボタンを押していないのだから、私は約束を守っている。
まだ押していない。
偉い。
自分で自分を褒めながら、私は指揮官の執務室へ向かった。
扉の前に着き、拳を上げる。
ノックは三回だったはず。
二回だと何か別の意味になると、前にドロシーから聞いた。
何の意味だったかは忘れたけど。
まあいいか。
三回叩けば間違いではない。
「どうぞ」
ノックをすると、指揮官の声が返ってきた。
中に入ると指揮官は、机に積まれた書類から顔を上げた。
私の顔を見る。
次に手元のT.A.C.T.を見る。
それから、また私の顔を見る。
なんですか、その顔は。
「……どうした?」
「依頼」
「依頼?」
「待機中に企業依頼を受ける時は、契約する前に指揮官へ見せる」
T.A.C.T.を机の上へ置く。
「だから、見せに来た」
そう言いながら、私は指揮官の前に立ちT.A.C.T.を指で操作し、依頼内容を表示させる。
しかし指揮官は、しばらく何も言わなかった。
はて?
なんか間違えてたかな?
流石に手順とかまでは無いだろうけど……
え?
まさか、指揮官忘れてる?
「……正解だ」
「その割に驚いてない?」
「いや。お前がきちんと覚えていたことに、少し感動している」
「失礼すぎない?」
《事実では?》
エアうるさい。
事実、ちゃんと実行してるから、それはもう覚えているということだよ!
めんどくさいけど……
《はぁ……》
指揮官がT.A.C.T.を手に取り、依頼書を読み進める。
私は机の前に立ったまま、返事を待った。
「……危険区域への移動なし。戦闘任務でもない。施設は軍の認可済み。緊急招集時には即時帰還。ゴッデス部隊の機密情報は提供しない」
「うん」
「評価データの利用範囲も明記されている。少なくとも、書面上は問題ないな」
「じゃあ受けていい?」
「待機命令には抵触しない」
よし!
私がT.A.C.T.へ手を伸ばすと、指揮官が端末を少しだけ遠ざけた。
「ただし」
むっ……
顔に出たらしい。
指揮官の眉間に皺が寄った。
「緊急招集には必ず応じること。
施設から別の場所へ移動する場合は連絡すること。契約内容にない試験を要求された場合、その場で受けず、一度こちらへ──」
「報酬の交渉は私がする」
「……そこまで取り上げた覚えはない」
「依頼を受けるか決めるのも私」
「軍の命令に抵触しない限りはな」
「あと、指揮官が何でも駄目って言い始めたら、約束は無効」
「そんな条件はなかった」
「今追加した」
「勝手に契約を更新するな」
駄目らしい。
自分だけ条件を追加するのは不公平だと思う。
でも今は、依頼を受けられるならそれでいいので、二つ返事で「わかった」と答えた。
私は指揮官の手からT.A.C.T.を回収し、その場で契約承認を押した。
「それじゃあ、明日行ってくる」
「……お前は本当に、決まった後だけ早いな」
「決まる前に動いたら、また怒るでしょ」
事前に報告しろと言われてすれば、驚愕の顔をされ、事前報告なしだったら、怒られる。
The 理不尽である。
◇◇◇◇◇◇
「明日、テトラの軍需施設に行ってくる」
食堂でそう言うと、リリスは手にしていたカップを置いた。
「軍需施設?」
「そ。新しいパーツを見て、好き勝手に意見を言っていい仕事」
「……随分、あなた向きですね」
向かいに座るドロシーが、少しだけ呆れたように笑う。
「それでいて報酬も出る」
「もっと向いてるわね」
リリスまで頷いた。
何だろう。
言葉自体には何の問題もないのに、二人の言い方は、私を馬鹿にしているように聞こえる。
別に軍需以外もあるからね?
興味はないけどあるからね?
「武器以外も置いてあるらしいよ」
「例えば?」
ふと、リリスに聞かれ固まる。
……。
なんだっけ……?
思考を回転させながら、依頼内容を思い出す。
アセンブル用のパーツとジェネレーター周り……
家電系だっけ?
いや、生活用品もあったような……
なんか流行ってる奴とかなんとか言ってたような……
「……お菓子?」
「なんで疑問形なの?」
目を泳がせながら、ひねり出した答えに、リリスは首を傾げる。
「興味が無さ過ぎて、覚えていないのでしょう」
ぐはっ。
ドロシーからの突如として飛んできた辛辣な一言。
事実だから、なおの事痛い。
ドロシーも私との距離に慣れて来たのか、最近は遠慮なく言ってくる。
あれ?
デジャヴ?
手慣れてくると皆こうなるのなんでなの?
《日頃の行いでしょう》
それもデジャヴだね!?
「と、とにかく! 目ぼしい物があったら、持って帰ってくるね!」
見て、美味しそうなら持って帰ろう。
前回のお詫びも含めて……。
ドロシーなら紅茶に合うか分かるだろうし、リリスは何でもおいしく食べてくれそう。雰囲気的に……。
まあ、二人が気に入らなくても、指揮官に渡せば問題なし。
疲れている時は甘い物がいいと、前にエアが言ってたからね。
うん。
無駄にはならない。
「逆に欲しい物があったら連絡して~」
「視察ですよね?」
「報酬の一部を現物に変えてもいいって書いてあった」
「……抜け目がないわね」
リリスとドロシーが、私の言葉に溜息をつきながら笑う。
ほんと、どうしてこうなった?
《……日頃の──》
『エア。しゃらっぷ』
◇◇◇◇◇◇
そして、現在。
「──ラプチャーの襲来以前に流行していたファッションを再現したものとなっており、現在でもその人気は健在です」
「な、なるほど?」
……。
話の内容がいまいち入ってこない。
意気揚々と施設に来てみれば、想像の斜め上の状況である。
案内役のテトラ社員が指し示す先には、色も形も違う大量の服が並んでいた。
裾の長い服。
妙に布の少ない服。
あちこちに紐が付いた服。
何のためにあるのか分からない金具が、たくさん付いた服。
それぞれに違いがあるのは分かる。
でも、それだけ。
いやね?
軍需以外のものについても市場調査のため、私の意見を聞きたいって確かに書いてたよ?
なんか途中から、良く分からない単語が飛び交ってて、この状況で意見を求められても、役に立たない気しかしない。
そもそも、普段からこの姿でいる私に服を勧めるのもどうなの?
身体の大部分が金属で出来ているのに、普通の服なんて着たら、動くたびに中で擦れそうだけど。
《私は良いと思います。何着か持っていても、無駄にはならないでしょうし》
それは……そうだけど。
案内役の解説を話半分に聞きながら、並べられた服へ順番に目を通していく。
確かに実際に着るかはともかく、持っていて困る物でもない。
でも、そもそもどんな服が似合うのかすら分からんのですが……?
《ふむ……。あそこにある黒い服などは、どうでしょう》
エアに言われ、少し離れた場所に飾られている服を見る。
全体的に黒い。
肩と胸元に白い布が使われていて、腰から下は大きく広がっている。
ドロシーが着ている服を小さくして、全部黒くしたような……そんな服。
……え?
あれ?
《俗にいう、ゴシック系というものらしいです》
ゴシ……なんて?
《ゴシックです》
『何それ?』
《衣服の様式の一つです。暗色を基調とし、レースやフリルなどの装飾を──》
『似合うの、あれ?』
《はい》
即答だった。
えー……
確かに服と言う服なんて、ルビコンに居る時から着てないけど、あれはちょっと違う気がする。
というか、エアのあの即答は何?
傍から見たら、似合ってるのかもしれないけど、私からしたら、あの服を着てる自分の姿が想像できない。
自分では着られないから、私を使って遊ぼうとしてない?
《そのような意図はありません》
間がなかった。
その間のなさが逆に怪しい。
もう一度、黒い服を見る。
袖が長く裾も広い。
装飾も多い。
もっと実用的な奴の方がいいんじゃないかなぁ。
《そんなことはありません。断言します。似合います》
ぐいぐいと押してくるエアの言葉。
そ、そうなのかな……?
そうなのかも?
「こちらに興味がおありですか?」
案内役のテトラ社員が、私の視線を察して声をかけてきた。
「え?
あぁ、まあ、うん」
「であれば、ぜひ試着してみませんか?」
「え? 今?」
テトラ社員の女性が、満面の笑みでそう言うと、見ていたその服を手に取り、私の前に差し出した。
圧倒的な笑顔。
圧倒的間合いの詰め方。
《レイヴン。せっかくです、試着してみてはいかがでしょうか?》
えぇ……
本来なら「興味ない」の一言で次に進むところ、エアの言葉に背中を押され、私はその服を受け取った。
受け取らざるを得ない雰囲気だった。
数十分後──
どうしてこうなった。
私の両手には、テトラのロゴが入った袋が握られている。
袋の中には、先ほど試着した黒い服が入っていた。
買っちゃったよ……
買う予定なんてないのに、買っちゃったよ……
《良い買い物でしたね。レイヴン》
企みが成功した様な声でエアが言う。
まんまとしてやられてしまった……
いやまあ、確かに【趣味】を見つけるという点では、良い買い物だったのかもしれないよ?
でもさ、これって強制的に買わされてない?
これを趣味と言い張るのは、ちょっと無理があるんじゃないかなぁ。
《何事にも、最初の第一歩が大切です》
その大切な第一歩が強制購入なのが、問題なんじゃないかって話よ。
《欲望の解放には、時に第三者からの後押しが必要なのです。レイヴンはそこがへたっぴなのです》
どこの言葉よ……それ。
《最近知った漫画ですね。面白いですよ?》
多分だけど、その漫画に影響されちゃいけない気がするのは私だけかなぁ。
手に持つ袋を複雑な気持ちで見つめながら、施設内を歩き続ける。
ちなみに、もう片方の袋には、お菓子が入っている。
ドロシーとリリス、あと指揮官の分。
もし口に合わなくても全部指揮官に渡せば問題なし!
服を購入した後も、なんやかんや色んな物を見て回った。
この服しかり、お菓子しかり……。
あとは、携帯端末や音楽、ゲームなどなど。
これじゃあ、施設の視察じゃなくて、完全にショッピングモールでのお買い物じゃない?
というか、軍需コーナーいつよ!
結構歩いたよ?
そう思ったタイミングで、歩く床の質感が変わったのに気づく。
微かに香る匂いも変わった。
お、ようやく!?
「それでは、ここから本題となる武装などの軍需品を取り扱うブースとなります」
「おぉー……」
先ほどまでの悩みや不安が、嘘のように吹き飛ぶ。
が、同時に、私の心をざわつかせるものがあった。
タイミングといい、施設を歩いてきた順路といい、すべてが計算されているような気がする。
《さすが、と言うべきでしょうか》
『できることなら、偶然であってほしいけどね……』
余り試されるという事は好きじゃない。
確かに、契約書に書かれている事以上の事はしてきていない。
全て想定内、すべて決まり通り。
ルールから逸脱していないのに、その範囲内で最大限の情報を引き出そうとしている。
『やっぱり、企業は企業だね』
《そうでもしないと生き残れないというのもあります》
この依頼を受ける直前にエアからテトラの概要を聞いたけど、こと商売と言う意味では、テトラはかなりの実力者らしい。
軍事における古株のエリシオン。
技術進化の化身であるミシリス。
その二大巨頭に割って入るのは、普通なら無理だね。
旨味を取れない市場に、わざわざ参入する企業は少ない。
でも、そこで三大企業の一角に食い込むテトラ。
ま、それで私も得をするわけだから、文句はないけどね。
企業も軍も私を利用しようとするなら、私も利用しても問題はない。
目の前に並ぶ、試作品の数々に、にやけ顔が止まらない。
「こちらにあるのが、最し──」
「解説はいいよ。こっちで勝手に見るから」
職員の言葉を遮り、足早に展示品の方へ向かう。
どれもパーツリストにある装備。
でも実物で見れるのは、やっぱり違う!
「……」
腕部・脚部。
最新武器。
ここまでは、まあ、想定内。
私の目線は、そのもう一個となりにあるものへ向かう。
「おおお……!」
ブースターだ!
テトラがブースターにも手を出してくれてる!
私何にも言ってないよ?
つまり、軍かまたはV.T.Cが、私の身体調査の結果を各企業に共有してくれたってことだよね?
はい、ありがとうございます!
丁度、今の構成だとブースターの出力が過剰すぎる気がしてたのよ!
ブースターを小型のものに出来れば、積めるジェネレーターの種類も増えるからね!
まあ、今どんなジェネレーターついてるか分からんけど。
《十中八九、コーラルジェネレーターでしょうね》
『コラジェネか……コラジェネはね……消費途中での補充速度が遅いんだよね……だからあんまり使ってこなかったわけだけど』
その分、容量がばか大きいのが利点。
まあ、コラジェネの使い道は、基本的に空中浮遊を前提としたラマ―ガイア足とかの四脚で使うわけだけど、二脚じゃ、あんまり意味ないのよね。
『問題は取り外せるか、って話なんだけどね……ニケである以上に私とエアってコーラル思念体な訳だからさ……』
《先に言っておきますが、ジェネレーターの取り外しは不可ですよ》
だよねぇ……。
分かってはいた事だけど、改めて言われると、ちょっとがっかりする。
これからアセンブルができるようになる子たちはいいよねぇ、ジェネレーターも選べて。
私は選べないし、何なら武器構成も全部コーラルになっちゃうし。
『仕方がないと割り切りたいけど……やっぱり武器ぐらいは実弾使いたい!!!』
と言うか何で、変わるんよ!
おかしいでしょ!?
はぁ、ここら辺も今度エイブに相談しよ。
武装ブースを一回りしていると、奥の方にひと際大きな展示品が置かれているのに気づく。
その展示品が何なのかを識別できた瞬間、歓喜の声が出た。
「逆関節だぁ!!」
飛びつくとはまさにこのこと。
逆関節はいい!
異形感を醸し出す、あの形状がいい!
腕部を少しゴツイ奴にして、脚部をこの逆関節。
あとは、ヘッドパーツを軽量系の皿頭かアンテナ頭あたりにして!
コアは、とがった形状の奴にして、武器は全部軽量系にすれば、完成!
あぁ~~~~好き……
「これ欲しい。ください」
「え!? で、ですが、こちらはまだ試作段階のプロトタイプでございます。販売用としては未完成で──」
「大丈夫。どうせ買うから」
「……か、かしこまりました。確認してまいります」
案内役のテトラ社員が、慌てて奥へと走っていく。
その間、私は展示されている逆関節を中心に、他で展示されている腕部やブースター周りの装備を行ったり来たりしながら、あれこれと組み合わせを考えていた。
『この逆関節、絶対に手に入れたい!!!』
《落ち着いてください。レイヴン》
『あれがまだプロトタイプなら、私がテスターになれば、完成も早い? なら今すぐにでも──』
《ダメです》
『なんでよ! 完成品をいち早くほしいなら、手伝うべきでしょ?』
《テスターとなった場合の情報とレイヴンという希少性を考慮すればこそ、安易にテスターになることは駄目ということです》
『えぇ~~~~~……』
テスターになった場合の情報量は確かに分かるよ?
でもさ?
もとより、アセンブルを発展させたい私にとっては、別段その情報ぐらい渡してもいい気がするけど……
《目の前の利益より、長期的な利益を優先すべきです》
むむむ……
まあ、言わんとしている事はわかったよ。
でも買うけどね!
《はぁ……》
そうしていると、案内役のテトラ社員が戻ってきた。
「お待たせいたしました。逆関節型脚部の販売は、弊社の方で承認されました。重量と大きさもあるので、後日改めてお届けいたします」
「よし! ありがとね」
「い、いえ、こちらこそありがとうございます」
あ~いい買い物をしたなぁ。
でも、まだまだ欲しい物はある。
あとは、テトラ以外の企業がどんな武装を出してくるかだね。
◇◇◇◇◇◇
空中空母へ帰投し、連絡橋を渡ったところで、見慣れない人影が視界を横切った。
白を基調とした作業服。
胸元には、見覚えのあるV.T.Cの紋章が縫い付けられている。
一人や二人ではない。
通路の奥から次々と現れては、大量の工具や測定機器を抱えたまま、忙しなく格納庫と艦内を行き来していた。
「……何あれ?」
足を止め、その集団を目で追う。
今日ってなんか設備とかの改修工事とかする日だっけ?
いや、そもそもV.T.Cって改修工事するの?
《技術者集団ですから、おそらく違うかと》
じゃあ違うか……
うーん。
V.T.Cと言えば、ニケ関連だけど……。
でも、ゴッデス部隊の誰かが損傷したという話は聞いていない。
そもそも、待機中なのだから、この空母が襲われているとかない限り、損傷することはないしね。
《レイヴン。あちらを》
エアに促され、連絡橋の先へ目を向ける。
数人の職員に囲まれた大きな箱が、運搬用の台車へ載せられていた。
「……おお?」
思わず声が漏れる。
私より一回りどころか、下手をすれば二回りほど大きい……箱?
……ってことは、やっぱり改修工事?
『何積んでるんだろうね』
《V.T.Cが絡む改修工事であれば、新たな武装を空母に導入するためのものかもしれませんね》
『何乗っけるの? 小型衛星砲とか?』
《……小型にしても衛星砲ほどの設備であれば、この箱では小さすぎますね》
じゃあ、それも違うか……
でも、厳重に固定された外装と側面に記載された管理番号からして、ただの荷物っぽくはない。
その箱を眺めていると、近くにいたV.T.Cの職員が私に気づいた。
「あっ……レイヴン大尉。お帰りになられたのですね」
「うん。今帰ってきたところ。これ、何?」
「先日の精密検査を基に開発された、アセンブル設備の一部です。V.T.C本部より搬入し、現在は設置と動作点検を行っております」
「!!! 。アセンブル設備……!」
思わず、手に持っていた袋を握る力が強くなる。
来た来た来た!!!
あぁ、ありがとうエイブ。
今日見てきた腕部や脚部。
買ったばかりの逆関節。
それらを自由に組み替えるための設備が、届いてくれた!
お願いしてそれほど経ってないはずなのに、長かった……
「現在、設置場所を選定しているところです。整備区画の一部を使用する案が──」
「私の部屋」
「……はい?」
「私の部屋に置いて」
職員が目を瞬いた。
予想していなかったのか、困惑した表情で私と箱を交互に見る。
本当なら、シミュレーションルームに置いてほしい。
が……
以前リリスから自室を使うように言われて以来、武装も予備部品も全部私の部屋に置いてある。
なら、設備も同じ場所に置いた方が都合がいい。
それに、わざわざ整備区画まで移動するのも面倒だ。
はぁ……まったくメンドクサイ。
「ですが、こちらは相応の重量と設置面積を必要とします。居住区画への搬入となりますと──」
「大丈夫。いける。私を信じて」
「それはどこをもって信じれば……」
「大・丈・夫。必要なら私も運ぶよ」
「い、いえ! 搬入はこちらで行いますので!」
職員は慌てて首を横に振ると、手元の端末へ何かを入力し始めた。
これで良し!
もし、また別の場所に置かれることになったら、移動も何もかもが面倒になる。
生活動線は大事。
ひとまず、作ってくれたエイブに感謝しに行こうと思い、周囲を見渡す。
……あれ?
箱の周りにいる職員を、もう一度見渡す。
本来なら、こういう時に一番先頭に立って騒いでいそうなエイブがいない。
「エイブは?」
私の問いに、職員の手が止まった。
「ああ、エイブさんでしたら、現在は別のプロジェクトへ参加しております。そちらが多忙を極めているため、今回は同行できないとのことです」
「別のプロジェクト?」
別のプロジェクト……
あぁ……そうか。
初めて会った際に、エイブが私の体を元に新型の開発に利用してもいいか? と聞いてたね。
……え?
新型のニケをエイブ一人でやんの?
《確かに研究所にはエイブしかいませんでしたからね》
やっぱりV.T.Cって変人・奇人ばっかじゃん。
狂人すぎるでしょ……
「詳細については、私どもからお伝えすることはできません。ただ……こちらをレイヴン大尉へ渡すようにと」
職員が作業服の胸元を探り、一枚の紙を取り出した。
四つ折りにされた、何の変哲もない紙。
受け取って開いてみると、数行だけ文字が書かれていた。
──壊すな。
──説明書を読め。
──説明書を読まずに壊した場合、二度と作らん。
──何かあれば連絡しろ。
「……」
短い。
ものすごく短い。
というか、もっと、こう、あったじゃん。
《実にエイブらしい手紙ですね》
「これ、手紙って言うより警告文じゃない?」
《レイヴンが説明書を読まないと確信しているのでしょう》
失礼な。
私も説明書ぐらい読むさ。
必要な部分だけ。
《最初から最後まで読んでください》
『利用規約をしっかり読み込む人の方が少ないと思うよ?』
《こと依頼になったら、しっかり読むじゃないですか》
それはそれ。
これはこれ。
《屁理屈ですね》
エアの言葉を無視し、紙を折り畳み、購入した服が入っている袋へ押し込む。
読み終わった紙は、あとで自室の机にでも置いておこう。
「レイヴン」
聞き慣れた声に振り返る。
通路の奥から、リリスがこちらへ歩いてきていた。
その隣には指揮官とドロシーもいる。
どうやら、私が帰投したという連絡を聞いて来たらしい。
「ただいま~」
「お帰りなさい。思ったより時間がかかりましたね」
「いろいろ見て回ってたからね。依頼自体は問題なく終わったよ」
三人が私の前まで来る。
指揮官は周囲を行き来するV.T.C職員と、大きな箱を見比べていた。
「いきなり、こんなバカでかい荷物とV.T.Cの職員が現れるとは思えば、「レイヴンが来るまで内容は伏せる」だとな。
それで、この箱はなんなんだ?」
「アセンブル設備だって。私の部屋に置いてもらうことにした」
「あぁ……さんざん言っていたアセンブルができる設備か……なんか、でかくないか?」
指揮官が僅かに眉を寄せる。
「うん。それは私も思ってた」
「私はてっきり、最新鋭の空母に取り付ける兵器か何かかと思ってたが……」
「うん。それも思った」
「だが、この空母に装備させる兵器としては、小さすぎるし、なにより──」
「「ロマンがない」」
指揮官と私の声が揃う。
ほうほう。
こういう所は、指揮官と気が合いそう。
「そんな、子供みたいな事は言わないでください。指揮官」
「子供じみただと? 兵器はデカければでかいほどカッコいいじゃないか」
「そういうところです。そもそも──」
あーあ。
いつもの夫婦漫才が始まった。
「それで、テトラの施設はいかがでしたか?」
そんな二人を横目に、ドロシーが興味深そうに尋ねてくる。
「面白かったよ。
服とかお菓子とか、端末とかゲームとか、いろいろあった。
最後に軍需品を見せてもらったんだけど、腕部と脚部だけじゃなくて、ブースターまで開発してた」
話しながら、記憶の中に先ほどの光景が蘇る。
ずらりと並んだ試作品。
展示されていた逆関節。
あぁ、あれは本当に良かったなぁ……
届くのは少し先になるらしいけど、早く試してみたい。
「あ、そうそう。はい、これ」
片手に持っていた袋を持ち上げる。
中から小さく包装された箱を三つ取り出し、それぞれへ手渡した。
「お菓子。リリスとドロシーと、指揮官の分」
「私たちに?」
「うん。口に合わなかったら、指揮官にあげて」
「なぜ私が処理係なんだ……」
指揮官が渋い顔をする。
でも、受け取った箱は大切そうに抱えていた。
ドロシーは包装を眺めながら、優しく目を細める。
「ありがとうございます。大切にいただきますね」
「ありがとう、レイヴン。みんなのために選んでくれたのね」
「まあね」
リリスが嬉しそうに笑う。
その顔を見られただけでも、買ってきてよかったかもしれない。
味は知らないけど。
もし不味かったら、本当に指揮官へ渡してもらおう。
さて! これで用件は終わり。
早く部屋へ戻って、アセンブル設備の設置場所を考えよう。
そう思って一歩踏み出したところで、リリスの視線が私の反対側の手へ向いた。
「ところで、レイヴン」
「何?」
「そちらの袋には、何が入っているの?」
ぴたりと足が止まった。
しまった。
やらかした。
お菓子の方だけ渡して、自然に持ち帰るつもりだったのに。
私は無意識に袋を背中へ隠した。
「……装備品」
「装備品?」
「うん。今日買った」
嘘じゃない、うん。
身体へ装着する物なのだから、広い意味では装備品と言える。
たぶん。
リリスの目が細くなる。
「その装備品は、テトラの衣料品ブランドで販売されているのかしら?」
「……」
袋の側面へ目を向ける。
うそでしょ。
テトラの企業ロゴではなく、先ほど立ち寄った服飾ブランドのロゴが、大きく印刷されていた。
何で袋にまで書くんだよ!
まったく、余計なことを。
「武装を買った時に、おまけでもらった」
「まあ。テトラは、武装を購入すると衣料品店の袋へ入れてくれるのね」
「最近はそうみたい」
「先ほど買った逆関節も、同じ袋に入っているのですか?」
……敵がもう一人増えた。
ドロシーまで話へ入ってきた。
「逆関節は後日届くって言ったでしょ。これは別の装備」
「ほう? なら、それはどんな装備だ?」
……3on1
指揮官まで参加する。
あぁーもう!
どうして三人とも、こんな時だけ連携がいいんだよ!
「まだ試験してないから分からない」
「買ったのに?」
「買ったけど、試験してない物もあるでしょ」
「では、私たちも一緒に確認しましょうか」
リリスが一歩近づく。
私は同じ分だけ後ろへ下がった。
「確認する必要ないよ。私のだから」
「そう言われると、余計に気になりますね」
ドロシーが反対側へ回り込もうとする。
それを感じ、二人との距離を取ろうとさらに後ろへ下がる。
しかし、背中が大きな箱へぶつかった。
逃げ場がない。
三人の視線が、背中へ隠した袋に集まる。
……どうしてこうなった。
ラプチャーの群れに囲まれた時より面倒なんだけど。
《素直に白状してはいかがですか?》
おい、元凶そのもの。
誰のせいでこんなことになったと思ってるんだよ!
「レイヴン」
リリスに名前を呼ばれる。
パッとリリスの方をみるが、怒っているわけではない。
むしろ、ものすごく楽しんでいる。
あぁ、より一層質が悪い。
このまま誤魔化し続けても、絶対に引いてくれない。
「……服」
小さな声で答えたが、三人は黙ったままだった。
あーもう! なんだよもう!
「服を買ったの!」
少しだけ声を張り、袋を前へ出す。
「私が服を買ったら悪い!?」
「いや……」
指揮官が、完全に言葉を失っていた。
んだよ!
聞かせろと言われて、話したら黙るとか、どんな反応だよ!
買いましたが!?
なんですか? 強化人間は服を買わないとでも思ってるんですか!?
私も元々買う気じゃなかったよ!!!
《ふふふ……》
元凶(エア)の笑いをこらえる声が聞こえる。
ほんと! 嫌いだ!
「お前が、自分で?」
「そうですけど!? 正確には、エッ、店員に勧められたけど!」
まずいまずい。
エアの名前が出そうになってた。
「レイヴンが……服を……」
「何?」
不機嫌そうな声で、指揮官・リリス・ドロシーの顔をみる。
買ったのは服。
逆関節でも武器でも、怪しい兵器でもない。
むしろ一般的な買い物のはずなのに、どうしてそっちの方が驚かれるのか。
ドロシーも目を丸くしている。
「意外ですね。レイヴンが衣服に興味を持つとは思いませんでした」
「まあ、興味を持ったというか、買わされたというか……」
「どのような服を選んだのですか?」
「……黒いやつ」
「それだけでは分かりません」
「ド、ドロシーの服を小さくして、全部黒くした感じの……ヤツ」
「まあ」
ドロシーの表情が、分かりやすく明るくなった。
やめて。
その反応は絶対に良くない。
「でしたら、戻ったあとで着て見せてください」
「嫌だよ」
ほれ見たことか。
「なぜです?」
「恥ずかしいから」
口にしてから、さらに恥ずかしくなった。
たかが、服を買っただけなのに……。
これでは本当に、普通の服を買って照れているだけみたいじゃんか!
はぁ、本当にどうしてこうなった……
「……そっか」
リリスが、ふっと表情を和らげた。
先ほどまでの茶化すような笑みではない。
もっと優しく、安心したような顔。
「何?」
無意識に睨むような顔でリリスを見返す。
「いいえ。少し嬉しくなっただけ」
「何が?」
「レイヴンが、戦い以外の物へ興味を持ってくれたことが」
「別に、そこまで興味を持ったわけじゃないよ。買っただけ」
「それでもいいの。服でも、お菓子でも、ゲームでも。これから少しずつ、好きな物を増やしていけばいいわ」
また、その顔だ。
まるで子供が初めて自分で服を選んだのを喜ぶような目で、私を見ている。
ドロシーも微笑んでいる。
指揮官に至っては、いまだに驚きから立ち直れていない。
指揮官の分のお菓子買わなきゃよかったよ。
「……もういい」
袋を抱え込み、三人へ背を向ける。
「私は部屋に戻る。設備を置く場所も決めないといけないから」
「レイヴン。試着はいつにしますか?」
「しない!」
「せっかく買ったのですから、着なければもったいないでしょう?」
「一人で着る!」
「では、着替え終わった頃に伺いますね」
「来なくていい!」
背後から聞こえてくる笑い声を振り切るように、私は足早にその場を離れた。
もう絶対に、三人の前では着ない。
絶対に。
《しかしレイヴン。着用方法について、分からない箇所があるのでは?》
『……』
装飾も多かった。
紐も多かった。
一人で正しく着られる自信は、まったくない。
《リリスたちへ手伝ってもらうのが確実でしょう》
『エアが教えて』
《私は衣服を着用した経験がありません》
『役に立たないなぁ!』
《購入を勧めたことについては、役に立てたと自負しています》
それが一番余計だったんだよ。
私は袋を胸元へ抱え込みながら、誰にも中身を見られないよう足早に自室へ向かった。
テトラという会社の起源がいつかわからんけど、総合的に判断してゴッデス時代からあるようにしたんですね?
だってアーク移住から新しい会社の立ち上げを促す必要性ないしなぁ・・・
って思ってましたが、ミシリスとエリシオンって多分エンタメできない会社だからアーク出来てからテトラ作った説がいきなり出て来て頭抱えてる。
もう登場させちゃったから、このままいきますけども!
まあ?
第一次ラプチャー進行からレッドアッシュが2年で
アーク移住からオバゾの期間が1年ちょいだから?
人生の中だと誤差だよ誤差!!
ちくしょう!!!
原作改変の度合いについて
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過度な介入は避けて通るべし
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レイヴンの行動によるものであればよし
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私はハッピーエンドを好む