私は好きだ・・・・
でもね?
4周年のガチャが怖すぎて引けないんです・・・
分かる方は多いはずだ・・・
バニー衣装は通常キャラの100倍は強い!(諸説含む)周年キャラはバニー衣装の20倍強かっただけだ!
通常キャラの何倍になるかそのスカスカの頭で計算してみろ!!
に、2000倍です!総長!
答えていないで手を動かせ!(ガチャ石貯めろの意)
理想とは違います。
けれど、悪くはありません。
朝の廊下に、規則正しい足音が響く。
窓から差し込む光の中を歩きながら、私はゴッデスで過ごしてきた日々を思い返していた。
ここへ加わって、そろそろひと月でしょうか。
ラプンツェルが来てからもう四日。
こうして歩く廊下にも、随分と馴染んだものですね。
初めの頃は確かめていた案内表示も、今では視界の端を通り過ぎるだけだった。
人類の最高戦力が揃う、誇り高い部隊。
誰もが使命を胸に、己を律し、その名にふさわしく振る舞う。
そういう場所を想像していたのですが……
いえ、使命も、律する心も、誇りも、皆さんお持ち……です。
そう言い切ろうとするが、どこかでノイズのようなものが聞こえ、眉間に皺を寄せる。
ある一人を除けば、想像していた理想に近しいのは事実。
若く、もっともらしい事を言ったかと思えば、ジョークを飛ばし、失言をしてはリリスに〆られる。
威厳とは全くもって無縁なはずなのに、頼りになる指揮官。
人類最強のニケであり、全ニケの始祖でもあるが、威圧さが無く、どこか親しみやすい。
しかし、絞めるところは絞め、この部隊をまとめる力を持つ、リリーバイス。
そして……
「はぁ……」
このことを考え出すと、どうしてもため息が出てしまいます。
嫌なことはすぐに顔へ出す。納得できなければ、相手が誰でも、はっきりと意見を言う。
かと思えば、戦場では、冷酷なまでに効率的で、戦術の天才。
挙句、単純な戦力で言うなら、リリスと同格というおまけ付き。
わがまま、自分勝手、傲慢、自己中心的、自由が服を着て歩いているような、レイヴン。
……なぜだか、レイヴンに対する情報が多いようですが、気のせいでしょう。
しかし、それだけ、レイヴンと言う存在が異常なのです。
なぜだか、目が離せない。
次に何をしでかすか分かったものではない。
目が届く範囲に居ないと、気が気ではない。
待機命令を受けているのに、依頼があるからと出撃するような方です。
大人しくしていると言われても、ええそうですかと頷けるほど、私も物覚えが悪くありません。
戦いでは、あれほど頭が回るのですから、その頭脳をもっと別のことに使えばよいのに、と思うこともあります。
その時、硬い金属音が響いた。
足が止まり、顔を上げ、音のした方へ目を向ける。
廊下に並ぶ窓の向こうには、母艦の甲板が見えていた。
……いえ。
物音がしただけで、彼女だと決めつけるのは失礼ですね。
窓へ歩み寄り、甲板を見下ろす。
見覚えのある小柄な姿に、視線が止まった。
レイヴンだった。
「……たまには、疑ったこちらを反省させていただきたいのですが」
虚空に向かって、そう呟く。
窓の向こう側、甲板の上で小柄な少女が奇怪な動きをしていた。
背中にあるブーストを吹かし、地上を滑るように移動するのは言わずもがな。
そこから一気にトップスピードまで加速し、甲板の端まで駆け抜けたかと思えば、そのまま空中へ跳躍。
着地したかと思えば、ブーストを吹かし、再び加速。
トップスピードを維持したまま、左右へのブーストを小刻みに繰り返し、甲板の端から端までを再度駆け抜ける。
一通りの動きを終えたと思えば、ブーストを吹かしながら、考え事をするように、甲板の上をぐるぐると滑り回る。
……なんなのでしょうか、本当に。
レイヴンの戦い方が普通ではないことなど、今さら確かめるまでもない。
このひと月、それを思い知らされる機会には、十分すぎるほど恵まれていた。
遮蔽を使わない。
それはつまり、回避性能に絶対的な自信があるということ。
事実、甲板で動き回るレイヴンを目で追うのが精一杯、当てようなんて考えすら無駄でしょう。
隠れる場所がなければ、動き回ればいい。
武器が冷えるまで、そのまま避け続ければいい。
言葉にするだけなら簡単ですね。
実際にできる方が、どれほどいるのかは存じませんが……
それを可能にしているのが、あの動きなのだろう。
速いだけではない。止まっていた身体が、何の前触れもなく飛び出す。
ようやく目で捉えた頃には、また違う方向へ。
……新しい脚の動作確認。
おそらくは、そういうことなのだろう。
先ほどから似たような動きを繰り返しては、足元を見下ろしている。
「まあ、そもそも【新しい脚】という時点でおかしいのですが……」
窓から覗く私のことに気づくことなく、レイヴンは再度トップスピードで甲板の端を通り過ぎ、そのまま下へ落ちる。
そうですか、落ちるのですか。
……。
落ちた?
「……レイヴン!?」
窓枠へ両手をつき、身を乗り出す。
見えるのは甲板の縁と、その向こうに広がる空だけ。先ほどまで動き回っていた姿は、どこにもない。
落ちた……!
今、この母艦から。
……何を見ているのですか、私は。
早く、助けなければ。
窓の下を覗き込み、すぐに廊下へ顔を向ける。
甲板へ出て、それから……?
いえ、私が行ったところで、もう手の届く場所には──。
指揮官。
そうです。まずは指揮官に報告を。
母艦を止めていただいて、落ちた場所を確かめて、それから──。
窓枠から手を離し、踵を返した。
しかし、その背後で轟音が響く。
振り返り、窓を再度覗き込むと、何事もなかったかのようにレイヴンが甲板に降り立っていた。
「……」
踏み出した足を、そのまま戻す。
……そうでしたね。飛べるんでしたね。
安堵の息を吐く。
そして安堵感が終われば、次に湧き上がるのは、怒りだった。
心配させた癖に、何事もなかったかのようにするその態度。
理不尽と言われれば、そうかもしれません。
ですが、事実、心配したことが無駄になったのですから、怒りを覚えるのも当然でしょう。
「これは、少々お話をする必要がありそうですね」
窓から離れ、甲板へ通じる扉へ向き直る。
すると……
「ドロシー?」
背後からの声に振り返ると、廊下の向こうからラプンツェルが歩いてきていた。
「おはようございます」
「おはようございます、ラプンツェル」
「何か、ありましたか?」
そう尋ねられ、窓へ向けかけた視線を戻す。
何かあったかと聞かれれば、ええ、ありましたとも。
ですが、それを彼女に申し上げても仕方ありませんね。
「少し、レイヴンに用がありまして」
「ああ、先ほどから甲板にいらっしゃいますね」
「ええ。随分と楽しんでいらっしゃるようです」
楽しんでいるのは、ご本人だけですが。
ラプンツェルは窓の向こうへ目を向け、小さく頷いた。
その横顔を見て、ふと足を止め直す。
そういえば、ラプンツェルが来てから、まだ四日。
私ですら落ち着かないことの多い場所なのに、彼女はどうなのだろう。
「ラプンツェル。こちらでの生活には、慣れましたか?」
「はい。まだ場所を覚えきれていないところはありますが、皆さんが教えてくださいますので」
「この母艦、思っていたより広いでしょう」
「ええ。昨日も、同じ廊下を二度通ってしまいました」
少し困ったように笑う彼女へ、私も頷く。
「私も初めはそうでした。見覚えのある場所へ出たと思ったら、先ほど出発した場所だったこともあります」
「ドロシーも?」
「……一度だけですよ」
ラプンツェルが口元に手を添える。
別に、笑っていただくためにお話ししたわけではないのですが。
まあ、そのくらいの失敗なら構いません。
問題は、場所よりも人の方ですから。
「ほかに、困っていることはありませんか? 何かあれば、遠慮なく仰ってください」
「ありがとうございます。ですが、今のところは大丈夫です。
リリスもよく声をかけてくださいますし、指揮官も、必要なものがあれば相談するようにと」
「そうですか。それなら、よかったです」
そこで一度、言葉を切る。
リリスと指揮官。
確かに、そのお二人でしたら、私も心配していません。
問題は──
「……レイヴンについては、いかがですか?」
「レイヴンですか?」
「その、少々……独特、ですから。何かに付き合わされたり、返答に困ることを言われたりは?」
口に出してから、少々という言葉では足りなかった気もする。
ですが、こちらから必要以上に身構えさせるのもよくありません。
ラプンツェルは少し考え、それから微笑んだ。
「驚くことはありますね。初めてお会いした時も、そうでしたし」
「……ええ。あれについては、本当に」
思い返すだけで、こめかみへ手を添えたくなる。
初対面の相手に、よりによってあの発言。
「ただ、少しお話しする機会があったのですが、私の話をよく聞いてくださいましたよ」
「レイヴンが、ですか?」
思わず聞き返してしまった。
話を聞けと言われて、さらに言い返していた姿なら、すぐに思い浮かぶのですが。
「はい。分からないことを、そのまま尋ねてくださって。私も、考えながらお答えしました」
「随分と、率直な聞き方をされたのではありませんか?」
「そうですね」
否定をしないところを見ると、やはり失礼な質問だったのでしょう。
あぁ、全く頭が痛い。
「ですが、答える前から決めつけられている感じはしませんでした。私がどう答えるのか、聞いてくださっているのだと」
ラプンツェルの視線が、一度だけ甲板へ向いた。
「もちろん、まだ知らないことばかりですが……また、お話しできればと思っています」
何を話したのかまでは、彼女は口にしなかった。
それでも、その穏やかな表情を見れば、無理に合わせているわけではないことくらいは分かる。
……そうですか。
話を、聞いてくださった。
そう言われれば、覚えがないとは言えませんね。
初めて会った時には、頭の先から足元まで眺められた。
そんな姿で戦うのか。邪魔にならないのか。
挨拶より先に、それですか、と。
あの時のことは、今でも覚えている。
その後に尋ねられたことも。
【何のために戦うのか】
人々を守り、過去の暮らしを取り戻したい。
そう答えた私を、レイヴンは笑わなかった。
【立派だと思う】
彼女にしては、随分と素直な返事でした。
余計な一言もなく、ただ、そう言った。
それから、お茶を飲んだ時には──
【軍や企業を、信用しすぎないように】
あの時は、ずいぶん冷めたことを仰るのだと思いました。
私たちを支える方々に対して、そこまで疑わなくてもよいのではないかと。
……ですが。
あれは彼女なりの、私たちへの気遣いだったのかもしれません。
「ドロシー?」
顔を上げる。
ラプンツェルが、少し首を傾げていた。
「……いえ。私も、似たようなことがあったものですから」
「そうでしたか」
「ええ。言い方については、もう少し考えていただきたいのですが」
それさえなければ、素直に受け取れることも増えるでしょうに。
「でも、気にかけてくださったのですね」
返事をしようとして、一度口を閉じる。
そう言い切られると、少々困ります。
先ほどまで、あれだけ文句を並べていたのですから。
「……そうなのだと、思います」
結局、それ以上の言葉は出てこなかった。
悪い方ではない。
そんなことは、私も分かっている。
分かっているからこそ、余計に──。
窓の向こうで、また噴射光が瞬いた。
そちらを見て、小さく息を吐く。
「ですが、それとこれとは別ですね……」
大切な友人であるからこそ、言わなければならないこともある。
大切な仲間であるからこそ、直せと言わなければならないこともある。
……もっとも、レイヴンに言ったところで、直るかどうかは分かりませんが。
◇◇◇◇◇◇
本日で、ラプンツェルが来てから丁度一週間。
そして本日……また新しい仲間が合流するらしい。
……週一で新しい仲間が増えるってすごい歪じゃない?
いや、喜ばしいよ?
勿論、歓迎したいし、私から言わせてもらうなら、さっさと合流して待機命令を解除してほしいところ。
そう考えると週一ですら遅いと言いたいけどね。
新人であるラプンツェルとも、少しずつ打ち解けてきたと思う。
そう考えると、私って結構社交的では?
《……ツッコミ待ちですか? レイヴン》
『いや、別に?』
《では、どの辺りをもって社交的だと?》
『自分から話しかけるし?』
《ええ》
『聞かれたことには答えるし』
《そうですね》
『相手の話も聞く』
《……時と場合によりますね》
そこは素直に頷いてよ。
そもそも、ラプンツェルとはちゃんとお話しした。
祈りについて教えてもらったし、私なりに考えもした。
十分では?
……まあ、その数日後にはドロシーと一緒になって私を叱る側に回っていたけど。
これも毎回言ってるけど馴染むの早くない?
そこまで馴染まなくてもよかったんだよ?
《皆さんと打ち解けられたようで、何よりです》
『私の味方が減った気がするんだけど』
《元からそのような陣営分けはありません》
そうかなぁ。
あの時は確実に二対一だったよ?
エアも向こう側だったから、実質三対一。
数的不利が過ぎる。
……まあいい。
過ぎたことをいつまでも気にする私ではない。
それより、今日来る子の話だ。
『んで今度は、どんな子なの?』
《名前は、スノーホワイト。武装の開発も手掛ける方のようですね》
……ほう?
今、なんと?
《武装の開発も──》
『そこ。そこだよ、エア』
思わず顔を上げる。
武装を作れる。
つまり、武器について相談できる。
前回、ラプンツェルの加入により近/中/遠の三つが揃った。
そしてニケ部隊は、基本5人で構成される。
そう考えると、他に欲しい人材として、私の様な遊撃タイプのニケが欲しいところ。
ほかについては……考えたことが無かったけど、なんだっけ、こうへい?
《工兵ですね》
そうそれ。
工兵がいれば、戦場での戦術の幅が広がる……らしい。
そう考えると、今回のスノーホワイトが工兵であるなら、残るは遊撃タイプの子が来るのかな?
《その可能性は高いですね》
でもそっか。
武器開発できる工兵……
「ふふふ……」
素晴らしい。
実に素晴らしい人選である。
今の武器に不満があるわけじゃない。
でも、それと欲しい武器があるかどうかは別のお話。
この脚に合わせた近接武装とか。
滑り込んだ勢いをそのまま叩き込める、素敵な杭とか。
そして何より……
何でか知らないけど、私が触る武器種が全部コーラル製になっちゃう原因と対策の相談ができる可能性があるってこと!!!
これはでかい!
マジでデカい!
何度も言うけど、私は実弾至上主義です!
EN武器?
あんな高負荷な武装、私の好きな脚に合わせれない!
てかなんだよあれ!?
あんな高負荷な武装をてんこ盛りにするためだけに、忌々しいスネイルのパーツ使わなきゃいけないのがなんとも嫌だ!
パーツたちが悪いわけではないのは知ってるけど、坊主憎けりゃなんとやらってこと。
《私念と私怨が入り混じってますよ。まあ、分かりますが……》
そうなると、今回こそ、確実に第一印象を良くしておかないとまずい……
仲間としてもビジネスパートナーとしても……
今後の付き合い方を考えると、第一印象は大事。
だからこそ……
苦々しい顔で自身の脚を見下ろす。
この逆関節は……やめておいた方が……いい……はず……
《無理して、元の脚に戻さなくてもよいのでは?》
『だめ、悪印象の可能性は少しでも減らさないと』
《第一印象は、相手がどう思うかですものね》
『……何が言いたいの?』
《いえ。以前、指揮官も同じことを仰っていたなと》
あー、聞こえなーい。
私は何も聞いていなーい。
アセンブル装置へ背中を預け、交換する脚部を選択する。
見慣れた二脚。
性能に不満があるわけではない。何度も言うけど、そういう話ではないのだ。
でも、今回は仕方がない。
さらば、逆関節。
また後で。
《永久の別れのようですね》
『気持ちの問題』
固定具が身体を支え、脚部との接続が切り離される。
視界の端で交換作業の進捗を眺めながら、これから会う相手への挨拶を考えた。
まずは名前。
それから、よろしく。
たったの2言。簡単だ。
余計なことを言わなければいい。
《そうですね》
『まだ何も言ってないけど?』
《ええ。ぜひ、その調子で》
……本日も絶好調のご様子で。
◇◇◇◇◇◇
「……戻したのか」
甲板へ出るなり、指揮官が私の脚を見た。
「戻したよ」
「そうか」
「うん」
そこで終わるかと思えば、まだ見ている。
脚から顔へ。
顔から脚へ。
何?
「……何かあったのか?」
「普通にしてたら心配されるの、納得いかないんだけど」
「いや、そういうつもりでは」
「じゃあ、どういうつもりなの?」
苛立ちで指揮官を睨みつける。
その隣で、リリスが小さく笑った。
「自分で考えて戻したんでしょう? それでいいじゃない」
そうそう。
その通り。
自ら考え、自ら行動する。
素晴らしい自主性じゃない?
「ところで、今日は随分と機嫌がよろしいのですね」
ドロシーがこちらを見る。
「新しい仲間が来るんだよ? 当然じゃない?」
「……そうですか」
何故か、疑わしそうな顔をされた。
……理不尽すぎる。
おかしい。
今日の私は、まだ何もしていないのに……
《「まだ」がつく時点で》
『うっさい。言葉の綾だよ』
隣に並んだラプンツェルは、何も言わず微笑んでいる。
うん。
こういう反応が一番ありがたい。
私はちゃんと考えてきたのだ。
まずは挨拶。
それから、少しずつ武器の話へ。
相手もガンスミスなら、自分の作った武器に興味を持たれて嫌な気はしない……はず。
もちろん、勝手に触ったりはしない。
変態(ムラクモ)じゃないんだから。
完璧な計画である。
やがて、遠くから輸送機の駆動音が聞こえてきた。
雲の向こうに見えた機影が、少しずつ大きくなる。
甲板へ吹きつける風に髪を押さえながら、隣のリリスを見上げた。
……なんか、嬉しそうじゃない?
普段から面倒見のいい人だけど、今日はいつも以上というか。
まだ機体から降りてないのに、もう一歩前へ出ている。
まあ、新しい仲間が来るんだし。
気持ちは分かる。
輸送機が着艦し、後部ハッチが開いていく。
そこから現れたのは、大きな荷物を背負った、小柄な少女だった。
白い髪。
幼さの残る顔立ち。
そして、その身体に対して、随分と存在感のある背中の装備。
……ほう。
少女が甲板へ降りる。
こちらへ歩いてくる間にも、自然と装備へ目が行った。
あー、うん。
いいね。
こういうのでいいんだよ。
戦場へ行く人が、戦場へ行くための装備をしている。
なんて安心感。
《顔、緩んでますよ》
『だって、まともだよ?』
《その感想は、内に留めておきましょう》
勿論。
私だって学習する。
少女は私たちを見渡すと、リリスのところで視線を止めた。
少し強張っていた顔が、ふっと緩む。
「リリス……お姉ちゃん」
……ん?
「久しぶり、スノーホワイト。待っていたわ」
リリスが歩み寄り、その白い頭へ手を乗せる。
撫でられた少女は少し肩をすくめたが、離れようとはしなかった。
お姉ちゃん?
リリスを見て、スノーホワイトを見る。
もう一度、リリスを見る。
……あぁ。
知り合いだったんだ。
そういえば、最近よく出かけていたっけ。
帰ってきた時も、何となく機嫌がよかった気がする。
なるほど。
この子のところに行ってたのね。
「それじゃあ、紹介するわね」
リリスに促され、スノーホワイトがこちらへ向き直る。
姿勢を正すと、改めて頭を下げた。
「スノーホワイトです。今日から、よろしくお願いします」
「よく来てくれた。私がこの部隊の指揮官だ。こちらこそ、よろしく頼む」
指揮官に続き、ドロシー、ラプンツェルも挨拶をする。
スノーホワイトは一人ひとりの顔を見ながら、丁寧に返事をしていた。
うん。
礼儀正しい。
装備もまとも。
武器も作れる。
いい子じゃないか。
さて、私の番。
笑顔を作り、一歩前に出る。
「レイヴンです。よろしくね、スノーホワイト」
「ああ、あなたがレイヴン……!」
……ああ?
あなたが?
スノーホワイトの顔が、ぱっと明るくなる。
「リリスお姉ちゃんから、よくお話を聞いています!」
よく?
一度ではなく?
私は笑顔のまま、リリスへ顔を向けた。
リリスも笑っていた。
「……何を?」
「色々よ。あなた、話題には困らないもの」
待って。
ストップ。
色々?
色々とは、具体的にどこからどこまで?
「新しい脚を、とても気に入っていると聞きました」
スノーホワイトの視線が、私の脚へ落ちる。
「今日は、違うものなんですね」
私も足元を見た。
見慣れた二脚。
先ほど、断腸の思いで戻してきた二脚である。
スゥ……。
「逆関節って、どんな感じなのか気になっていたんです。よければ、今度見せてもらえませんか?」
「……うん。勿論」
見せるよ。
いくらでも見せる。
なんなら、ついさっきまで付いてたよ。
《ですから、戻さなくてもよいのでは、と》
『エア、今ちょっと待って』
整理させて。
色々と。
「リリス」
「何?」
「ちょっと、こっち」
手招きすると、リリスが首を傾げながら近づいてくる。
その袖を軽く引き、声を落とした。
「どこまで話したの?」
「どこまでって?」
「私のこと。何を、どういう感じで、どの辺りまで」
大事な確認である。
これから築くはずだった関係に、すでに何かが積まれている。
何を積んだ?
土台?
それとも爆薬?
今後の武器開発(ビジネスパートナー)に関わるんだけど?
「武器が好きなこととか、新しい脚でラプンツェルを迎えようとして、指揮官と喧嘩したこととか」
「……それは、喧嘩というか」
「止められて、ずっと不機嫌だったことも」
「いや、それは理由があってね?」
「この前、甲板から落ちて、ドロシーを慌てさせたでしょう?」
そこまで!?
思わずドロシーを見る。
目が合った。
「……何か?」
「何でもないです」
今、話を広げるべきではない。
それくらいは分かる。
「でも、とても強くて、頼りになるとも話したわよ?」
リリスが、少しも悪びれずに笑う。
「武器の話なら、きっと気が合うだろうって」
……そう。
それは、ありがとう。
ありがとうなんだけどね?
その前に渡した情報が多くない?
《事実関係に、訂正はありませんね》
『そういう問題じゃない気がするんだけど』
私のいないところで。
私の話をして。
私を使って仲良くなっている。
何してくれちゃってんの?
「あの、レイヴン」
振り返ると、スノーホワイトがこちらを見ていた。
「私も武器の話ができるのを、楽しみにしていました。後で、お話ししてもいいですか?」
「……勿論。私も、そのつもりだったし」
「よかった」
嬉しそうに笑われる。
……うん。
悪印象では、ないらしい。
そこは安心した。
とても安心した。
けれど、もう一度だけ自分の脚へ目を落とす。
第一印象のために。
少しでも、よく思ってもらうために。
そう考えて、わざわざ戻してきたのは……なんだったんだろう。
そもそも、その第一印象とやらは、私が来る前に完成していたらしい。
◇◇◇◇◇◇
スノーホワイトを連れて、母艦の中を一通り案内する。
食堂、居住区、医務室。
これから暮らす上で必要になる場所を順番に回り、廊下の分かれ道ではリリスが足を止めて説明する。
その隣で、スノーホワイトは一つ一つ頷いていた。
うんうん。ちゃんと聞いておくんだぞ?
ここ、似たような廊下が多いからね。
何となくで歩くと、さっき通った場所へ戻ってくる。
……私の話ではないよ?
《まだ何も言っていませんが》
『予防線』
そして最後に辿り着いたのが、シミュレーションルームだった。
扉が開くと、スノーホワイトがリリスの隣から少しだけ前へ出る。
「ここで、訓練をするんですね」
「ああ。地形も敵の編成も変更できる。実戦で試すには危険なことも、ここなら確認できるからな」
指揮官が補足するように言った。
そうそう。
非常に素晴らしい設備。
しかし!
ちょっと補足が足りない!
シミュレーションルームの最大の特徴はスコアアタックとタイムアタックができること!
そしてそして、ランキングが実装されていることにより、他の子たちと切磋琢磨できるのだ!
……まあ、私が一番上にいるんだけどね。
切磋琢磨したい……
高機動部隊の子たちが頑張って私に追いついてくれれば、私ももっと頑張れるのに……
指揮官がここの案内を最後にしたことについても、高く評価したい。
最後に案内したほうが、印象に残るからね。
さて、見学も済んだし、せっかく来たのだから少しくらい──。
そう思っていたら、突然、指揮官が手を叩いた。
私を含めた全員の視線が、指揮官へ集まる。
「よし。それじゃあ、今から戦闘力テストを行う」
お?
おお?
「あぁ、だがテストといっても、そう身構えなくていい。
これから一緒に戦うんだ。お互いに何ができて、どう動くのか、一度確認しておきたい」
ほうほう、なるほど。
確かにそれは大事なことだね。
私も、スノーホワイトの動きは見ておきたいし、私も披露したい。
さすが指揮官。
ただ、書類に埋もれているだけの人ではなかったらしい。
《……それは褒めてるんですか?》
『褒めてる。褒めてる』
特にラプンツェルとスノーホワイト。
二人とも、まだ私の戦いを直接見ていない。
ドロシーとは一緒に出撃したことがあるけど、この二人が知っている私といえば……
ただの会話ぐらいしかない。
あとは、まあ。
少々、注意を受けているところとか。
……偏ってない?
私という存在を判断するための材料が、著しく偏っている気がする。
これはよくない。
非常によくない。
普段は少しばかり自由でも、戦場では頼りになる。
そういうところを、ちゃんと見てもらわなければ……
何より、スノーホワイトだ。
武器を作るなら、使う相手の動きは知っておいた方がいい。
私が戦う。
彼女が見る。
どういう武器が欲しいのか、話が通じやすくなる。
完璧じゃない?
「まずは市街地を想定する。敵の情報は開始前に共有するが──」
「脚、替えてくるね」
踵を返す。
指揮官が、みんなに説明している間に、逆関節に変えてこよう。
後はいつもの武装にね?
でもせっかく、見てもらう訳だし、いつぞやの時にやったチグハグ構成にするのも面白いかも。
いや、でも圧倒してるところを見せるのも大事だし、やっぱりいつもの構成でもいいなぁ……
ふふふ……楽しくなってきたぞ!
「待て、レイヴン」
「ん?」
「お前は不参加だ」
足が止まった。
ん?
今、指揮官はなんて言った?
私は不参加……だと?
い、いやいやいやいや!
流石に聞き間違いでしょ……
「今回は、リリス、ドロシー、ラプンツェル、スノーホワイト。この四人で行う」
「……私は?」
「見学だ」
……キキマチガイジャナカッタ。
え!?
なんでよ!?
今日の私は、パーフェクトコミュニケーションしてたじゃん!
問題すら起こしてなかったじゃん!!
「お互いの動きを、確認するんだよね?」
「ああ」
「私の動きも、知ってもらった方がよくない?」
「それは確かに必要だ。ただ、今回はラプンツェルとスノーホワイトの実力と、この四人での連携を先に見たい」
指揮官が操作卓へ手を置く。
「お前を入れると、ほかの四人が対応する前に片付けるだろう」
そりゃ……
敵がいたら、倒すでしょうよ。
「前に出た敵を倒す。後方の敵も倒す。側面へ回り込んだ敵まで、お前が戻ってきて倒す。それで終わったとして、俺は何を確認できる?」
私の優秀さ。
とは、さすがに言えないね。
「どこまで任せられるか。どこで援護が必要になるか。そういうところを見たいんだ。お前が全部埋めたら分からなくなる」
言っていることは分かる。
分かるけど……!
それって、つまり私が現時点で交渉しても参加できないっていう救いのない話じゃない?
やだ!
やだやだ!
良いじゃん別に! 戦場に出たら私も一緒に戦うんだしさ!
抗議の旨を吐きだそうと口を開きかけたところで、白い髪が視界に入った。
スノーホワイトが、こちらを見ている。
その隣にはラプンツェル。
言いかけた言葉を飲み込み、口を閉じる。
いや、口をとじざるを得ない。
《レイヴン》
『分かってる』
ここで言い争いはまずい。
せっかく、向こうから武器の話をしようと言ってくれたのだ。
リリスが何を話したのかは、いまだに全貌が分からないけど、とりあえず悪くは思われていない。
しかし……
この場……新人の目の前で参加させろと騒ぎ立てるのは。
……まずい。
「……」
指揮官がこちらを見る。
私も見る。
「納得したか?」
「……うん」
してない。
断固拒否し、抗議したくてたまらないけどね……!
伝われ。
この「うん」っという返事に込めたものを、全部受け取れ……!
「……今回は見学だからな?」
「う゛ん」
口をへの字に曲げ、頷く。
な、なるほど、これが大人の対応ってやつか……
《レイヴン。おそらく違うかと──》
『うるしゃい』
《……はぁ》
悶絶の如き感情を抱えていると横から、小さく息を吐く音がした。
「レイヴン」
ドロシーだった。
「……何?」
「見学なさるのでしたら、入口を空けていただけますか?」
振り返る。
四人が、私の後ろに並んでいた。
うぎぎ……。
いいな……!
羨ましいな……!
横へ退くと、リリスが通りすがりに肩を軽く叩いた。
「ちゃんと見ていてね」
「……見てるよ」
それはもう。
目に焼き付けてやりますとも……。
◇◇◇◇◇◇
肘をついて、シミュレーションルームの窓から戦場を見下ろす。
結果から言えば、可もなく不可もなく、といったところかな~。
全員生還。
指揮官も無事。
ロストなし。
結果だけを見れば、何の問題もない……と思う。
ただ、若干の違和感はある。
指揮官がいることが前提であるからこそだけど、指揮官の指示に忠実すぎるきらいがある。
勿論、悪いってわけじゃない。
ただ、指揮官の指示が無かったら危うかった点がいくつかあったのも事実。
リリスとドロシーは、実戦経験があるからこそ、まだ余裕があった。
スノーホワイトについても、自身が手掛けた武装だからこそ、動きに迷いがなかった。
問題なのは、ラプンツェルかなー。
何をするべきかは分かっている。
ただ、そのためにどこへ行けばいいのか、いつ動けばいいのか。
そこを決めるまでに、少し時間がかかっていた。
元V.T.Cだからって言うのもあるけど、司祭らしいし、戦闘経験が皆無。
まあ、でも慣れてないだけな気もするから、今後の成長に期待したいところって感じだね。
ん~……
『……何か言ってあげた方がいいかな』
《どのようなことを?》
『そうね……』
例えば、位置取りとか。
射線が重なったら横へ抜けて、敵がこっちを向く前に回り込むとか……
あ、ブーストついてないわ……。
じゃあ上から。
……それも駄目か……
……何かって言うナニかがない。
《レイヴンの戦闘スタイルとまるっきり違いますからね》
『そうなんだよねぇ……』
遮蔽に隠れて、撃つ。
次の遮蔽まで移るにも、ちゃんとその間を走らなければならない。
私なら一瞬で済むところが、みんなにとっては撃たれる時間になる。
そこを飛ばして、こうすればいいと言ったところで、できたら苦労しません、というお話。
まあ、そもそも私の場合、遮蔽使わないし……
まあ、そりゃそうか。
私がやりやすい方法を教えても、仕方ないね。
頬杖を外し、背もたれへ身体を預ける。
今回は、大人しくしとこ。
まあ、それはそれとして……
『……ねえ、エア』
《はい?》
『すっごい、今更だけどさ。あんな格好で戦闘できるドロシーとラプンツェルって、私以上に異常じゃない?』
《……それをレイヴンが言いますか?》
『???』
【おまけ:同じ穴の狢】
「わぁああ……!」
「どう? いいでしょ?」
「はい……! すごいです!」
ふふ~ん。
こうも喜ばれると、嬉しいものよね~。
私は現在、スノーホワイトに私の部屋を案内している。
とはいっても、私の部屋はほぼ武器庫そのもの。
ベットと机・椅子がある事によって辛うじて「部屋」と呼べるけど、ほとんどのスペースは武器や装備品で埋まっている。
生活動線も勿論ばっちり!
ルビコンの広いガレージをエアに頼んで最適化したのだから、武器を取り出すのも、片付けるのも、メンテナンスするのも、全てがスムーズ。
No、ストレス!
あ、でもシミュレーションルームが遠いのがちょっと残念。
まあ、もう慣れたけどね。
「それで、見たかった脚っていうのは──」
「これです!」
おうおう。
食いつきが早いねぇ……。
私が指を向けるより先に、スノーホワイトが逆関節の前へ立っていた。
さっきから、ちらちら見てたもんね。
「近くで見てもいいですか?」
「勿論。何なら、今から替えようか?」
「えっ」
「付けてるところも見たいでしょ?」
せっかくだし、接続するところから見てもらおう。
何かしらのインスピレーションにつながるかもだしね?
あと、普通に私が逆関節に変えたい。
せっかくあんな苦渋の決断して元の二脚に戻したのに意味なかったからね。
まあ、結果として、いい方向には行ったけども……。
設備を起動し、所定の位置へ身体を収める。
背中が支持具へ固定され、両脚から荷重が抜けた。
「ちょ、ちょっと待ってください」
「ん~?」
「今、ここで交換するんですか?」
「うん。そのための設備だからね」
アームが動き、脚部を支える。
接続が解除される音とともに、見慣れた脚が身体から離れた。
あとは、こちらを片付けて、逆関節を──。
「レイヴン、大丈夫ですか!?」
「ふぇ?」
取り乱したような声を上げるスノーホワイトを見る。
彼女は私の顔と、取り外された脚を交互に見ていた。
あ~……。
「痛くないよ?」
「それもですけど……その、怖くはないんですか?」
「怖い?」
「自分の脚が外れて、それを、別の形のものに替えるんですよね?」
そう言いながら、彼女は自分の脚へ手を添えた。
「感覚も変わるでしょうし、思考転換の危険も……」
ああ、そっちね。
怖いもなにも……只々変えるだけだしなぁ……
でもそっか。
初めての人からしたら、そういう感覚になるか。
「まあ、問題ないよ~……そもそも、考え方を変えてしまえば、そんなに怖がる必要ないしね」
交換用の脚が運ばれてくる。
接続部分を合わせるアームを眺めながら、言葉を続けた。
「義手とか義足と一緒。取り替える時に一々ビビる人なんていないでしょ?」
「それは……そう、ですけど」
「私は私。でも体は機械。私の友人が言ってたの。
【ニケは人間だ。義手や義足の延長線上にニケが居る。脳以外を機械の体にしただけの人間】ってね」
勿論、感覚は変わる。
だからこそのテスト。
跳びすぎたり、勢いが余ったりするから、身体に覚えさせる。
……その途中で、めっちゃ怒られたけど……。
まあ、それはそれ、これはこれ。
「それに、戦闘特化の機械(体)なのに、それを活用しないのはもったいないでしょ?」
何度も言うけど、せっかくの戦闘特化の体なのに人間的な感覚に縛られて、使わないのはナンセンス。
何のための機械だよって話。
接続が終わり、確認表示が順に切り替わっていく。
足先を動かす。
うん。問題なし。
「……そんなふうに、考えたことがありませんでした」
「まあ、この考え方は私の専任技師曰く【異常】らしいから、聞き流すぐらいでいいと思うよ?」
床へ降り顔を上げると、スノーホワイトがじっとこちらを見ていた。
「どう?」
「……本当に、平気なんですね」
「うん。格好いいでしょ?」
「あ、はい! 格好いいです!」
ふふ~ん。
でしょうとも。
彼女は頷き、改めて脚を見下ろした。
今度は接続部分から、関節、足先へ。
「……動かしてもらってもいいですか?」
「いいよ。どう動かす?」
「まずは、ゆっくり曲げていただけますか? あ、それと横からも見たいです」
「はいはい」
「ありがとうございます! ……わぁ、ここの動き、こうなってるんですね」
しゃがみ込んだスノーホワイトの顔が、また明るくなる。
さっきまでの暗い顔はなく、もう夢中だ。
うんうん。
いいよね! 下からのアングル!
分かる人に見てもらえるのは、いいね~♪
……まあ、傍から見たら、ただの変態だけど。
「この奥って、どう繋がってるんでしょう……外して見られたりは」
「今、付けたばっかりだよ?」
「……あっ。す、すみません!」
口走った言葉に気づき、スノーホワイトはアワアワしながら、慌てて頭を下げる。
感情豊かな子だなぁ……。
まあ、気持ちは分かるけど。
◇◇◇◇◇◇
「武器が変わる……ですか?」
「そそ。
形状そのものも変わる時もあれば、そのままの形なのに、出力が変わっちゃう……感じ?」
「それは、必ず発生してしまう現象なんですか?」
「うーん。ペイント銃とかは変わらないんだよね……でもニケ用の武器持っちゃうと今のところ全部変わっちゃう」
「そうなんですね……」
先ほどとは打って変わり、スノーホワイトは真剣な顔で考え込む。
武器開発をしてるからって言うだけで相談したけど、やっぱり直ぐに解決できる問題ではないよね……
「一度その武器を見せてもらってもいいですか?」
「いいよ~、って言ってもここにある武器が全部そうなんだけどね……」
そう言いながら、壁に掛けてあるラックから、私の武器を一つ取り外し、スノーホワイトの前に差し出す。
「ありがとうございます! ……これがそうなんですね」
武器を手にしたスノーホワイトは、外観を確認する。
暫くすると、私の顔を見て来た。
あぁ、分解したいのね。
無言でうなずくと、慣れた手つきで武器を分解しようとする……が。
「あ、あれ?」
テイクダウンの手順で、アッパーレシーバーを外したところで、スノーホワイトの手が止まった。
それもそのはず。
実弾武器だったものが、コーラル製に変わっているのだから、改造云々の話ですらない。
リコイルスプリングもなければ、ガスシリンダーもない。
ボルトキャリアっぽいものもあるけど、そこは冷却する時に使うだけのもの。
つまり何もかもが変わってる。
「お、おかしいです。
配備済みの量産型のはずなのに、内部構造がまるっきり……というか、何もかもが違います……」
テイクダウンした状態の武器を一度机に置き、スノーホワイトが再度悩み込む。
「エネルギー兵器にも見えますが……内蔵型のバッテリーのようなものも見当たりません……それに……」
指でなぞる先に、ひと際目立つ、シリンダーのような部品があった。
赤く光る、液体。
あぁ、そんなところにあるのね。
「この赤い液体は一体……」
う────ん。
説明してあげるべきか……そのまま答えずにいるべきか……
コーラル……エネルギー源にして情報導体。摂取もできるし、餌としても使える。
そして増殖する性質もあるという、無くならない物質。
ほんと、でたらめな物質だよね。
まあ、その反面、デメリットとしてえげつない汚染性があるけど。
そんなものが、戦時中でそれも敗戦しそうな状況の人類に知れたらどうなるかなんて、馬鹿な私でも想像できる。
《監督官の時のように、コーラルという名称とその性質を漠然とした知識として伝えるというので良いのではないでしょうか?》
『そだね。それが一番だね』
研究しようとすれば、拒めばいいし、スノーホワイトは監督官とかエイブと同じ匂いするから、問題ないかな?
「コーラルだね」
「えっ、コーラル……ですか?」
「そ、コーラル。
スノーホワイト。今から話す内容は、秘密にしてくれるか虚言癖の妄言だと思ってほしい」
いつになく真剣な顔で、スノーホワイトの目を見つめる。
スノーホワイトは一度、机の上へ視線を落とした。
分解された武器と、その中で赤く光る液体。
それから、私へ向き直る。
「……秘密にします。妄言だと思うには、目の前のものが気になりますから」
よし。
私は椅子を引き寄せ、腰を下ろす。
そして、限りなく曖昧に、しかし、確実に性質を伝える。
エネルギー源として使えること。
情報導体にもなること。
そして、私の身体も、それで動いているということ。
まずは、そのぐらいかな?
増えるだの、摂取できるだの、そういう話を始めたら、武器の相談どころじゃないしね。
私は実弾を撃ちたいのであって、新しい資源について発表したいわけじゃないのである。
「……動力だけでなく、情報も伝えられるんですか?」
「うん。だから、普通のバッテリーを探しても見つからないと思うよ」
スノーホワイトが、シリンダーの周囲を覗き込む。
何かに気づいたように顔を近づけ、別の部品を見ては首を傾げる。
「これを前提に作られた武器なら、まだ分かります。でも、元々は実弾を撃つためのものなんですよね?」
「そう。私としては、そのままでよかったんだけどね」
撃てるものは撃てる。
それも、かなり強い。
そこについて文句はない。
でもね?
欲しかったものを渡されたと思ったら、頼んでもいない別の商品になっててそれが、最悪に禁忌的な代物だった。
高性能だからいいでしょう、と言われて呪物を渡されるようなもの。
《今遠回しに私の事を厄介者みたいに言いましたか?》
『イッテナイ』
と、とにかく、困るって話。
「形まで変わるものも、あるんですよね?」
「あるよ。使いやすくはなるんだけど、中身は大体こうなっちゃう」
「使いやすく……」
スノーホワイトは、外したアッパーレシーバーを手に取った。
内側を確かめ、今度は握る部分へ目を向け、ぼそりと呟く。
「……ガッデシアム」
「ガッデ……なんて?」
「ガッデシアムです。この武器にも使われている金属ですね。私たちの身体にも使われていますよ」
知らない単語が出て来た。
そしてその知らない単語で私の身体が出来てた。
ほへぇ……
スノーホワイトによれば、ガッデシアムは加工や制御によって、用途に合わせた性質を持たせられる素材らしい。
身体と武器では、求められるものが違う。
同じ素材でも、同じように使っているわけではないということだった。
そして、私の身体と武器。
変わってしまう両方に、それが使われている。
「じゃあ、それのせい?」
「まだ分かりません。普通は、持っただけで武器の形が変わることなんてありませんから」
そこは、エイブも監督官も言ってたね。
となると……やっぱり、コーラルとの相互作用でこうなっちゃうのかな……
「すみません。現状では、原因は特定できそうにないですね……」
私がうーんと唸る姿を見たのか、
スノーホワイトは少し残念そうに肩を落とした。
良い子だ。
「気にしないで、別に今すぐに困るってわけじゃないからさ」
そうすると、今度はスノーホワイトが何かを考えるかのように、机の上に置かれた武器を見つめる。
「……レイヴンは、実弾を撃てる武器が欲しいんですよね?」
「うん。それはもう、とっても」
そこは、何度でも言います。
実弾がいい。
できれば、近くで撃つと気持ちよく敵が吹っ飛ぶやつ。
そういうのが大好きです。
「でしたら、原因を調べるのと一緒に、変わらない武器を作れないかも考えてみたいです」
……え?
椅子へ預けていた身体を起こす。
今、何て?
「作ってくれるの?」
「まだ、お約束はできませんけど……ペイント銃は、そのまま使えたんですよね?」
「うんうん」
「なら、武器なら何でも変わるというわけではないはずです。素材なのか、構造なのか、それ以外なのか。違いを調べてみれば、何か分かるかもしれません」
それって、もしかしなくても、私のために武器を作ってくれるってこと……?
歓喜と驚愕が入り混じった表情で、スノーホワイトを見つめる。
「勿論、すぐにできるとは限りません。レイヴンにも、色々と確認をお願いすることになると思います」
「いいよ!」
「試作品を使っていただいたり、使う前と後で状態を比べたり……」
「やるやる!」
「それと、使いにくいところがあれば、遠慮なく教えてください。実際に使う人に聞かないと、分からないことも多いので」
何この子……聖人? 天使?
こんないい子が、こんな世界に居て良いの?
やめてね? 死なないでね?
良い人ほど、すぐ死んじゃうからね?
嫌なことがあったらすぐに言いなよ?
敵対してるとかあったら、相手ぶっ潰すからね?
依頼達成報酬要りません。
無償デス。
《言動が過激すぎますよ、レイヴン》
『だって! エア! 良い子だよ!?』
こんな子が、私のために武器を作ってくれるんだよ!?
「では、まずペイント銃を見せてもらえますか? それと、この武器の変わる前の資料もあれば──」
「あるものは全部出すよ。足りなかったら取り寄せる。ほかには?」
スノーホワイトが、少しだけ目を丸くした。
ありゃ。
食いつきすぎたかな。
でもしょうがない。
今の話を聞いて大人しく座っていられるほど、私は我慢強くない。
「……レイヴンが、どんな武器を使いたいのかも聞かせてください」
「それもいいの!?」
「はい。そのために作るんですから」
そう言って、スノーホワイトが笑った。
この笑顔は……守護らねば……
でもそっか……聞いてくれちゃうかぁ。
私は椅子を寄せ、机へ身を乗り出す。
「まずね、欲しいものがあるんだけど」
「はい」
「杭」
「……杭?」
「そう。大きいやつ。それを、思いっきり叩き込める武器」
彼女の視線が、私の顔から腕へ移った。
少し考え、机の上の工具を脇へ寄せる。
「……詳しく、聞かせてもらってもいいですか?」
ふふふ。
いいですとも。
そのために割く時間は惜しまない!!
「そういえば、スノーホワイトって名前、長いしスノーって呼んでいい?」
「え!? ……別に、構いませんが……」
「やった! じゃあ、スノー、今後ともよろしくね!」
「あ、はい! よろしくお願いします!」
そうして、私とスノーの変形しないレイヴン専用武器の開発が始まった。
私が、スノーホワイトの事を「スノー」と呼ぶのは、すぐに他メンバーにも伝わり……
「じゃあ、ラプンツェルはラプで!」
「え!? ……ラプ、ですか?」
「うん。ラプンツェルって長いし、ラプでいいよね?」
「え、ええ……構いませんが……」
各メンバーにも愛称を付けようとしたのも束の間……
「じゃあ、ドロシーはドロで!」
「却下で」
「えぇ!? なんでよ! かわいいじゃん! ドロ!」
「可愛くありません。そもそも、私の名前自体は短いのですから、愛称で呼ぶ必要を感じません」
ある一人だけ、愛称を付けることを拒否したのだった。
ドロシーがDoroになったら、それは単なるDoroなんだよなぁ・・・
ランカー上位!AC、Doroを確認!
じょ、冗談じゃ・・・!
Doroの回避性能は、レイヴンを凌駕する(ステラ―ブレードより)
Doroの生息域は、ボーボボだから最強Tierの会議に出すなって?
それはそう・・・
原作改変の度合いについて
-
過度な介入は避けて通るべし
-
レイヴンの行動によるものであればよし
-
私はハッピーエンドを好む