どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目)   作:bbbーb・bーbb

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儀玄たちを全く活躍させられていないの辛み。狩人だけ活躍させるのはただのヘイト創作だし……どうしようかなあ。

今回長め。


死死死。

「すまない」

 

 適当観までの道中、狩人がぽつりと呟いた言葉であった。重苦しい空気の中、一分経ったかどうかというところで、構わんさ、と儀玄が返した。

 

「ああなっては、どの道私達も戦わざるを得なかったさ」

 

「……それでも、貴公らの友人を獣呼ばわりしたことは撤回を許されたい」

 

 背中越しに呟く彼女の顔は見えなかった。夜闇の中、ただほんの少しこちらを向きかけ、そのまま微かに頷いたことだけが分かった。他は皆、無言であった。

 

 爆発金槌での狩りは、どう足掻いても凄惨なものとなる。何かを激烈に憎んでいる最中なら尚更である。

 

 殺したことに罪悪感は無かった。だだ、獣と叫んだことを悔やんでいた。彼らの見知った顔を、罵りながら叩き潰したのだ。

 

 実際、儀玄達に彼への憎しみは殆ど無いに等しかった。慣れ親しんだ顔が「コア」へと変貌する瞬間が目に焼き付いて離れなかったのだ。

 

「お兄ちゃん!」

 

「リンっ。良かった、無事だったんだな」

 

 門を開けるなり、アキラは妹と再会した。堪らず駆け寄り、深く抱き締め合う二人。良かった、良かったとアキラはしきりに口にしていた。

 

 つい先程、こちらへ着いたのだという。彼女の底なしに明るい笑顔は、淀んだ空気を少しとはいえましなものへと変えた。

 

 ──街中が、市民達の悲鳴で溢れかえるまでは。

 

 全速力で階段を駆け下りた先に広がっていたのは、そこら中に転がる死にかけの住民たちであった。解悩水のミアズマが一斉に牙を剥いたのだ。急いで救助を始める一行。

 

 これでは埒が明かない。そう判断した儀玄が狩人を除く四人に光を帯びた札を手渡す。

 

「この札を、街の四隅に。お前さんは私と来い」

 

 何をするつもりなのだろうか。建物の屋根に乗せられると、陣の中心にて儀玄が祈りを始める。すぐに、街の四隅から黄金の光柱が飛び出した。

 

 患者達の身体が、宙へと浮いていく。その口からは邪気が吐き出されていき、地面へと戻る頃には侵食が消えていた。

 

 儀玄が屋根に飛び移る。狩人の隣である。どす黒い瘴気が家一軒程の大きさをした黒い塊となって押し寄せるのを、なんと彼女は、それを両手で受け止めた。

 

「貴公っ、何を」

 

 狩人の声に耳を貸す様子も無く、腕から瘴気を吸収し始める儀玄。顔にまで侵食症状が現れ遂に限界、狩人が止めようとしたその時。狩人、と、儀玄が声を張り上げた。

 

「お前さん、死なずの身だろうっ」

 

「今さら聞くかね、もう何度も実演し──なっ」

 

 狩人が言い終えるより先に、儀玄は身体の向きを変え、あろうことか隣に居た狩人をその塊で思い切りぶん殴った。(なす)り付けたのだ。瘴気という瘴気に一瞬で全身を蝕まれ、哀れにも爆散する狩人。即死であった。

 

 真っ黒に変色した肉片も、すぐに夢の中へと溶けていった。結果は成功、住民は助かったのだ。

 失われたものといえば、儀玄の意識──数時間で回復したが──と、不死人の限りない命の内の、その一つくらいのものであった。

 

 せめて説明が欲しかった。露骨に不機嫌になった狩人だったが、意識を取り戻した儀玄から詫びといって一枚の札と道着一式をもらうとその場で両手を空へ向け「喜び」を表した。

 

 札は一種の触媒として機能するようで、胸の前で掲げると水銀弾を一発消費して黒い小鳥の幻影を飛ばすという代物だった。

 

 敵にぶつかるとその場で爆散し、神秘の墨汁によってその身体を蝕んでいく。但し貫通能力は持たず、短銃程の射程距離を越えると消滅してしまう。

 

 神秘が高いだけあってその威力は中々のものであり、訓練用の丸太程度なら一撃で木っ端微塵にできた。一応だが、かなり弱めの追尾性能というおまけつきである。

 

 惜しむらくは、彼が元々あまり秘儀を使わないことであった。せいぜい、先触れで変態且型檻頭(マジェスティックおじさん)の背骨を引っこ抜くのに使うくらいである。

 

 水銀弾は弾丸として使用し、態勢を崩させ右腕で臓物を抜いた方が強力という哲学の持ち主だったのだ。迎撃(銃パリィ)が大して得意でない癖に良くも言えたものである。

 

「気を操っている様には見えなかったが……一体どうやったんだ……?」

 

 段差に座った儀玄が首を傾げていると、アキラからの報告。敵の仮アジト、今回の騒動の首謀者が隠れている場所が明らかとなったそうだ。すぐさま皆を集合させる儀玄。そして語り始めるは、雲嶽山の昏き過去。

 

 旧都陥落。史上最大級のホロウ災害が起きたあの日、軍からの要請を受けた彼らは門下総出で対処にあたった。が、結果は惨敗。街を守る為、彼女の姉は死んだのだという。彼女の、その眼前で。

 

「我々は、もう同じ過ちを繰り返さない」

 

「えっ……それって……街の皆を見捨てるってことですか……?」

 

 福福の言葉に、場が緊張に満ちる。が、儀玄はただ軽くため息をついただけであった。

 

「阿呆。誰が見捨てると言った」

 

「それじゃあ……」

 

「不利になれば、私を残して全員撤退しろ。あの頃のように、門下生を犠牲にはさせない」

 

 燃え盛らんとする黄金色の彼女の瞳が、その覚悟を静かに語っていた。狩人が狩人装束へと着替え、道着をしまう。すぐさま、一行はホロウへ向け出発した。

 

 数十分後、儀玄は困惑を顔に浮かべていた。「顕現の法」、本来人間には知覚も干渉も出来ないエーテルを認識、顕現させる術法をアキラに教えていた最中のことである。

 

「視えるのか?」

 

 障害物と障害物の間に渡るエーテルの橋。術法無しには視認はおろか触れさえできぬそれを、さも当然かのように狩人が渡り始めたのだ。儀玄に指摘されて、初めてそれが普通の橋でないことに気付いた程である。

 

「ああ、啓蒙を減らし忘れていたのが、逆に功を奏したのだろうな」

 

 啓蒙って具体名詞だったか……? 頭痛を覚える儀玄。しかし目の前で空中歩行を決め込む狩人を見るとイメージが湧いてきたようで、アキラもすぐにそれを習得、エーテルの橋を顕現させた。

 

「なんというか……まるで、僕の中で何かが啓かれたみたいな感覚だ」

 

 狩人の方も驚いていた。彼らは、啓蒙無くしてそれを認識出来るのか。さぞ便利なことだろうと感嘆の声を上げた。これがあれば、ヤーナムの地獄も生まれなかったのだろうか。

 

 気を取り直し、アキラの修行を兼ねながら敵を追う一行。顕現の術は、偽りの壁を消すことにも使える。儀玄がアキラにコツを伝授していく。

 

 すると、私も似たようなことが出来るとたまたま話を聞いていた狩人が胸を張る。

 

「怪しい壁には、とりあえず体当たりを(ローリング)したくなるのだろう。分かるよ」

 

「お前さんは何を言っているんだ」

 

 その後もミアズマの露出したコブを見る度三分の一程の確率でアメンドーズだどうのこうのと錯乱し始める狩人を落ち着かせながら進んでいくと、ふと開けた場所へ出た。その奥にて待ち構えるは全ての元凶、司教メヴォラク。

 

「良いところに……儀式はまだ、始まったばかりです……」

 

 妖艶なその声は、女性のものであった。白装束に身を包み、金仮面で顔を隠している。

 こちらを見るなりミアズマらしきもので全身を覆い、片手剣を取り出し二メートル程空中に浮遊した。

 

 まさか、この地でも儀式を破る羽目になるとは。武器を構えた彼を置いて、鍋に乗り高速回転する藩が突撃した。慌てて追いかける狩人。

 

 儀玄の鳥が動きを牽制し、展開したノコギリ鉈の縦振りが空中に浮かぶ背中に突き刺さる。そのすぐ下で、鉄球に乗った福福が「死の駒」として哀れな被害者を食い尽くさんと待ち構えていた。

 

 福福の動きは一見するとふざけているようにしか見えないが、その実凄まじい破壊力と防御性を兼ね備えた極めて強力なものであった。

 尤も、そのあまりの扱いの難しさ故、彼女以外に使用できる者は殆ど居ないのだが。

 

 回転福福に巻き込まれ両足を失うも、すぐに空中へと離脱する司教。空を飛びながら、それは戦う相手を変えた。

 

 司教が藩を狙いインファイトを仕掛けるも、悪手であった。藩は軽快なフットステップで連撃を躱し、一瞬の隙を突いたカウンター右ストレートが司教の腹部に着弾した。それはミアズマの鎧ごと、彼女の皮膚を抉った。

 

 練り上げられた技に、圧倒的な獣の力。二つを組み合わせた彼の戦闘スタイルが、弱いはずが無かったのだ。

 

「ならばっ!」

 

 恨めしそうに叫びながら、追い詰められた司教がもう一本剣を取り出す。途端、回転。デスパラソルヘリコプターが如くヤケクソ気味にぶんぶんと回転するその軌道上に居たのは──アキラ。

 

「いけませんっ! お弟子さんが!」

 

「アキラっ」

 

「うあぁっ」

 

 慌てて彼が取り出したのは、何の変哲もない一本の刀。せめてもの護身にと儀玄が渡し、ある程度の使い方を教えたのだ。

 

 「弾く」。ステップの一つも踏めないあまりに貧弱な肉体をした彼が教わったのは、力でなく技。受け止めるのではなく、受け流す戦いであった。

 

「アキラ……やはりお前さんは、覚えが早い」

 

 ふっと笑みを浮かべる儀玄。目にも留まらぬ速度で飛ぶ斬撃の、その全てを弾いていく彼を見てのことであった。

 

 絶えることなく、火花が散った。攻撃の尽くを弾かれ、司教の「体幹」は少しずつ削られていった。

 

 福福の虎鉄球が飛ぶ。伸縮自在の尻尾糸を内蔵したそれは、空中で縦回転する彼女の遠心力でリーチを伸ばし、既に体幹が限界を迎えていた司教の攻撃を無理やりに中断させた。

 

「お弟子さん! 大丈夫ですか!?」

 

「ハァ……ハァ……大丈夫、だ……ハァ……」

 

 疲れ果てている。心配する暇もなく、司教が立ち直る。福福へ一直線、前方から超高速で突っ込んできたのだ。慌てて隣に居た狩人が彼女の小さな耳に口を近づけ囁く。

 

「ビキニほおずきたちのらんらん漁村ビーチパーティー」

 

「は?」

 

 直後福福の後頭に展開せし宇宙より飛び出した小隕石が、秒速一万メートルで司教の肩を貫いた。というよりは、吹き飛ばした。

 

 あまりの衝撃に態勢を崩し地に足をつけた司教に、狩人が距離を詰める。一瞬の内に、である。

 

 間髪入れず、内臓攻撃。肥大化した右腕を腹部にぶち込むと、その汚らわしい臓物を掴めるだけ掴み、そして思い切り引き摺り出しながら司教の身体を突き飛ばした。

 

 悍ましい悲鳴を上げるも、やはりまだくたばる様子はない。それどころか、遥か上空へと飛び立ち、持てる力の全てを解放したのだ。

 

「踏みにじらせは、せぬぞっ……!」

 

 降り立つなり、突き。広場の端から端までを一瞬の内に移動するほどの、ただひたすらに凄まじい突きだった。狩人が避け損ね、左腕を失う。

 

「アキラっ」

 

 狩人が声を荒げる。一人孤立した無防備な彼に、司教が真っすぐ飛んできたのだ。

 

 瞬間アキラの脳内に溢れ出した、()()()()()記憶。彼の生存本能が、目の前の危機を打破するべく創り上げたのだ。

 

 

 

 

 

 

 ざんっ、と刃が空を切る。土煙の晴れた中に狩人が見たものは──。

 

「アキラ……?」

 

 突きを「見切り」、剣を踏みにじるアキラの姿であった。彼自身も何が起こったのか良く分かっていないようで、その顔は驚愕を表していた。

 

 隙を逃さず、儀玄の拳がその背中を襲う。輸血液を使用した狩人が立ち上がった。倒れるアキラを、彼女が支える。

 

「大丈夫か」

 

「いいや、もう暫くは動けそうにない……すまない……」

 

「構わんさ」

 

 良くやった、と儀玄が寝そべるアキラの肩を叩く。同時に、我も我もと飛び出した福福が突如、吐血。どばっと音を立て、コンクリートにリットル単位の血液をぶち撒ける。慌てて駆け寄る狩人。

 

「なんだ、どうした。何があった」

 

「ぐっ、がふっ……もしかしてですけど、あの紫色のケーキをつまみ食いしたのが……」

 

 ケーキ……? 記憶を手繰り寄せること数秒、瞬く間に狩人の顔が青ざめた。

 

「貴公、あれを食ったのか。吐け、吐けっ」

 

 バレエツインズでの事件の後、リナに教わったこと。それを参考に適当観のキッチンにて狩人が人生初の料理を行った結果生まれた、真珠ナメクジ入りのヤーナムケーキ。それを、この小女は食らったのだ。

 

 作ってから捨てるまでの数十分間、目を離していたのがまずかった。捨てる際に箱に入れていたせいで食いかけなことに気づけなかったこともだ。

 

 狩人が必死に指を喉へと突っ込むも、彼女は遂に、その意識を手放した。

 

 またか。また、私のせいで子供が死ぬのか。こんな、こんな幼い子供が。うずくまる狩人は、直後彼女の身体から放たれた衝撃波に吹き飛ばされた。

 

 あまりの爆音に、司教も含め皆が戦闘を中断する。その視線の先には、福福が突っ立っていた。

 月を、見上げていた。死闘を繰り広げる彼らに背中を晒し、彼女はただ、月を見上げて哭いていた。

 

「アウッ、アッ、アッアッアッアッ、アゥッ……」

 

 その悍ましい嗚咽に、狩人は聞き覚えがあった。その哀れな背中に、狩人は見覚えがあった。彼の全身が、泡立っていく。

 

 深海より這い出でた、偉大なる上位者。その()()の姿こそ、狩人が幻視したものだった。

 

「隙ありっ!」

 

「おいっ!」

 

 儀玄の声など気にもせず、無防備な背中へと全速力で詰め寄る司教。少し近づいた所で福福が振り向くが、それもお構いなしである。

 

「エアァァァアアオォッッッッ!!!!」

 

 何が起きたのか、司教には一瞬分からなかった。甲高い叫び声を上げながら跳びあがった福福が、空中から虎鉄球を飛ばしてきたのだ。鉄球は、糸によりすぐさま彼女の手元へと戻っていく。

 

「ホオォォォォオオオッッ!!!」 

 

 自身の頭部、その左側で鉄球を構え、露骨に力を込め始める福福。咄嗟に司教が距離を離すも、それが失敗だった。

 

 限界まで糸を伸ばし、左から右へ、凄まじいリーチでの薙ぎ払い。もろに食らい怯んだ司教を、もう一度繰り返された薙ぎ払いが吹き飛ばした。

 

「ホワアァァァァアオ!!」

 

 司教が吹き飛んだ先へと一瞬で駆け寄ると、その勢いのまま地面へ鉄球を擦り付ける。

 追撃。至近距離での鉄球右アッパーである。衝撃により上空へ舞い上がる司教。

 

 舞い上がった司教を、地に降ろさぬまま振り上げの連撃で弄ぶ。打撃の嵐が終わる頃には、司教はもう虫の息であった。

 

「師匠、あれは……」

 

「い、今のあいつはもう橘福福(チーフーフー)ではない……『死福福(シーフーフー)』だ」

 

 ……? 首を捻るアキラ。いつの間にか、狩人が走り寄ってきていたことに彼は気が付いた。事情の説明を受け殺気立つ儀玄に、恐らくだが一時的なものだと汗だくで言い訳をする狩人。

 

 ふと、爆発音。見れば、彼女の背中から良く分からない一対の翅が飛び出しているではないか。いよいよまずいと狩人が冷や汗を垂らす。もう、全身びしょ濡れであった。

 

「おいっ、あれはどういうことだ。どうして私の愛弟子から翅が生えてるんだ」

 

「分からない、分からないんだっ」

 

 腰を抜かした狩人が声を絞り出す。

 

 絶叫を上げ、両手で掴んだ鉄球を何度も地面へ打ち付けながらの突進。

 なんとか司教が避けきると、今度は空へと飛び上がり、鉄球虎の中にしまっておいたポン菓子を取り出した。

 

「フォウッ!」

 

 福福が地面へとポン菓子をばら撒くと、どういう理屈かそれは爆散し始めた。破片に身体を貫かれる司教の悲鳴が木霊した。

 

「デ……死死死(デスデスデス)……」

 

 アキラが呟く。こうしてはいられない、と遂に儀玄が立ち上がると、せめてもの償いをさせろと狩人も起き上がった。

 

 ほぼ同時に、遂に福福も力尽きた。地面へ叩きつけられる寸前で、儀玄が彼女をキャッチした。

 

「おいっ、起きろ、起きろっ」

 

「んぅ……あたしは……どうなって……?」

 

 目を覚ました彼女は、意識こそ混濁しているものの既に正気を取り戻していた。翅もない。涙を浮かべ愛弟子を抱き締める儀玄。苦しいですよ、と福福がもがく。

 

「儀玄。詫びは後でさせてくれたまえ」

 

 狩人はそう言うと、返事も待たずにノコギリ鉈をしまい、代わりに、一本の両手剣を取り出した。

 

 至る所が刃毀れを起こした、ずたぼろの剣。包帯が巻かれていること以外は、彼の武器にしては随分凡庸な代物だなとアキラは思った。狩人が、その刀身を一撫でするまでは。

 

 司教に向き直した狩人が、福福、と声をかける。英雄譚に憧れる彼女の目が、大きく見開かれた。

 

「わぁ……!」

 

 ずたぼろの刀身が、翡翠色の昏い輝きを纏っていく。寄生虫を目に宿さぬ彼らにも視えるのは、あるいは英雄としての()の、その固い意志の表れだったろうか。

 

 それは月光だった。暗い夜、穢れと闇の中に差し込む、たった一筋のか細い光。

 

 獣に堕ち、悪夢に囚われ、絶望の底で生きたまま腐り果てようと──それはずっと、ずっと彼の導きであり続け、師であり続け、遂には一瞬とて、その穢れた身体に英雄を蘇らせたのだ。

 

「今だけでいい。私に、力を借してくれ」

 

 狩人の呟きを、背後から輝く凄まじい黄金色が掻き消した。

 

「阿呆。私の愛弟子が、このくらいで動けなくなるものか」

 

 聖剣を握る狩人の、更に数歩前へと歩みだす儀玄。顔の前に札を掲げる彼女の身体は、金色の気を纏っていた。

 狩人が構え直す。左足を前に突き出し、身体の右側で剣先を後ろに向けた、下段の構え。

 

「貴様ら……!」

 

 悪態をつく司教を、表情一つ変えずに見つめる。もう、どう戦うかしか彼らの頭には無かった。二つの光が、輝きを増していく。

 

 目を刺すような陽光の隣で、月光が静かに揺らめいていた。

 

 














けもつめは多分次回出します。多分ね。その後はカリンちゃんで2〜3話書いてアリス編です。

 ちゃんと福福は元に戻ってるのでご安心ください。藩さんが空気になっちゃってるのは赦してくれ。



おまけ集の方の更新意欲が湧いてきた。だいぶ先の話にはなるでしょうが。オルペちゃんかわいいね……
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