どこもかしこも、エーテリアスばかりだ……(涙目) 作:bbbーb・bーbb
「……う〜ん……」
冷たい、湿った地面の感触に目を覚ましたイドリーは、自身が青い浜辺に寝そべっていることに気がついた。
「あれ……? どこ、ここ……?」
困惑に少し目を見張ったが、すぐに夢の中なのだと気がついた。身に纏わりつく、現とは違う空気の感触によってである。
背後から漂う、生臭い潮の香りは、冷たくも温かい。ここでようやく、イドリーは自身が砂浜にいることに気がついた。足元に広がる黒い地面は砂であり、丸っこい石や貝殻が夜空の星のように所狭しと散らばっていた。
ほとんど無風であった。間抜けに見える程の棒立ちのまま、未だ覚めきらぬ意識に目を擦っていた。目の前に見えるのは壁、壁、壁。自然の作り出した岸壁ばかりである。
自身は海に背を向けている。そう彼女が気づくのに当然時間はかからなかった。背より這い寄る生臭さ、そして悍しいその臭いにほんの少しの躊躇いを覚えながらも、彼女は遂に振り向いた。
それが間違いだった。
殆ど何の気もなしに振り向くと同時に、彼女の脳は灼けた。吐瀉物を黒い地面に撒きながら、じゃがいもの袋のようにイドリーは倒れ伏した。そしてうめき声を上げた。けたたましいそれは、あるいは悲鳴と言う方が近いだろうか。
あれは何だ。動悸が止まらなかった。心臓は跳ね回っていた。瞳は震えていた。脳を灼く不定の狂気は考える度にその熱を強めていった。
もう少しだ。イドリーは確信した。あともう少しこの思考を続ければ、自らは狂気に飲まれ、そうしてすぐにでも死ぬだろうと。
糸が切れたように、イドリーの全身から一斉に血が噴き出した。彼女を観測するものが居れば、きっとそれを「赤い水風船が破裂したよう」と表現していたことであろう。
実際には、彼女の肌は裂けてなどいなかった。ただ、皮膚を通じて血液が噴き出したのだ。人の身に過ぎた智慧を前に。
瞬間、イドリーの脳は平静を取り戻した。頭の中に焼き込まれた筈のその御姿は、もはや朧気な記憶となって遠い記憶のようにすら感じられた。あれを記憶しておけるほど、人の脳は剛健ではないのだろう。
這いつくばったまま、黒い砂に目を向けたまま、身体の方向を変えた。最初に目を覚ました時、彼女が向いていた方角である。そうして、ようやくふらふらと起き上がった。
目の前に広がる壁に、一つの穴が空いていることに気が付いた。洞窟。その入り口である。いまだ少し痛む頭を片手で抑えながら、イドリーは遂に歩き始めたのだった。
「──そうして、ここに来たと」
「うん……」
両手で包み込むように持った白い紅茶茶碗の中で薄く柔らかい湯気を立てる、飴色の牛乳茶を見つめながら、イドリーが答えた。小さな木製の丸いテーブルの上では数枚の焼き菓子が丁寧に小皿に乗せられており、その向こう側には狩人が居た。
ふむ、と狩人は何かを考え込んだ。イドリーの話を頭の中で整理し始めていた。
モスの野郎に唆され、もう一度夢を見ようとした結果、悪夢の漁村と意識が繋がってしまい、そこで死んでこの狩人の夢へやってきたという。
疑うつもりは微塵もありはしなかった。狩人がイドリーを見つけたのも狩人の夢でのことである。
漁村のどこを探しても居ないので一旦夢に帰ってみると、涙で赤く目を腫らしたイドリーが鼻を啜りながら人形ちゃんと紅茶を飲んでいたのだ。最初はずっと泣いていたと後から人形ちゃんに聞いた。
「それにしても、貴公程の者が殺されるような場所かね、あれは」
狩人の純粋な疑問であった。イドリー程の強者なら、その辺の魚人や養殖人貝如きに殺されることなど無いだろう。囲まれて尚強いというのは新エリー都の強者の特徴である。ゴースの遺子はとっくのとうに殺してある。
「うん。最初は上手くいってたんだけどね」
「うむうむ」
「井戸に入ったら──」
「Oh……」
もう大丈夫だ、全て理解した。一瞬で全てを察する狩人。なるほどあれは死ぬだろう。あれを一度も死なずに真正面から殺すには、それこそ虚狩りでも連れてこなければ。下手すればゴースの遺子より強かった。
「それで、ここは……」
「狩人の夢だ」
本当に、何故こんなところに客が来るのだ。イゾルデの時を除いても、これで二人目である。狩人は心の中で軽く悪態をついた。カウンセラーではないのだぞ、私は。
目の前で小さなコマを回してみると、コマは永遠に止まることなく転がり続けた。夢の中だと必ずこうなる。イドリーも自身の居る場所が夢か現か分からなくなった際、良くこの方法を使うそうだ。
人形ちゃんは特にやることが無くなったので、ソファに身体を預けて上製本を開いていた。何を読んでいるのかまでは、狩人には分からなかった。
「先程も言ったが、ここでは時間の流れが速い。というより、私が速めているのだが」
後一時間もしないうちに目を覚ますだろうが、あちらでは十秒も経っていないだろう。そう伝えると、イドリーは安堵する様子を見せた。
「それで、貴公が話していたことだが」
はっ、とイドリーは顔色を変え、半ばまくしたてるように狩人へ彼女が知ったことの全てを伝えた。彼女がモスから伝えられた、忘れていた記憶を。
今よりずっと前、サラとかいう讃頌会のトップを務める女に唆されホロウに連れてこられたイドリーは、土地に染み付いた記憶を呼び起こすその能力で、かつてその場所に存在した「町」を再現した。
後に、「町」に迷い込んだ時、モスは瀕死であった。エーテルに侵食され、醜い怪物と成り果てるまであと数秒もないといったところであった。
しかしその時、「町」は動いた。「町」の作り出した「繭」が、彼を包んだのだ。
「繭」の中でエーテルによる侵食が極端に遅れ、しかし意識も無い。代わりに、繭の中のモスの記憶から生み出されたものが最初の「夢縋り」であった。
その後も「町」は迷い込んだ人間を飲み込み、次々と「夢縋り」へと変えていった。こうして、あの悍しい冒涜の土地は歴史を紡ぎ始めたのだ。
「前に、モスが試したことがあるの。繭を破れば、中にいる人は一瞬でエーテルに侵食されてしまう……」
一通り彼女が伝え終わると、紅茶茶碗を包み込むその両手にぎゅっと力が籠もった。
ではどうするというのだ。狩人は再び心の中で悪態をついた。放置していればいずれ死ぬが、連れ出そうとするとその場で死ぬ。まさに詰み、チェックメイトである。
よし。狩人の中で結論が出た。こういう難しいことはあの男に任せるに限る。何か良い案が出たのかとイドリーが息を呑む。
「貴公が起きるのを待つとしよう。アキラが何か考えついてくれるだろう」
それだけ言って牛乳茶を静かに口へ当てる狩人に、イドリーは少し肩透かしを食らった気分となった。尤も、現状それしか方法がないのは彼女にも分かっているが。
「では私は一足先に目覚めているぞ」
「えっ? ああ、うん。分かったわ」
おもむろに椅子を立ち上がる狩人に一瞬きょとんとするイドリーだったが、特段それ以上の反応は見せなかった。起きた世界でイドリーが起きるのに、一体何秒掛かろうか。
つまんだ焼き菓子を一つ口へ放り込みながら、狩人は目覚めた。突如目の前に現れた狩人に、アキラは身体を跳ねさせた。
「イドリーは無事なのか。目を覚ますのかっ」
「もちろんだ。あと十秒もかからないだろう」
軽く笑ってみせる狩人。さてさてと胸元にぶら下げた懐中時計を取り出し、眺める。一秒。二秒。三秒。
……三十秒。流石におかしい。慌て始めるアキラに「少し待っていたまえ」と伝え、狩人は再び夢へと帰った。
夢の中に入ると、イドリーは人形ちゃんと呑気にお茶会をしていた。人形ちゃんの声にただいまと返す。
「あっ、狩人さん。なんというか、ずっと目が覚めないのだけれど……」
「ああ、そうだ。もう三十秒も待っている。何ヶ月も待たせてしまって済まない」
構わない、とイドリーは笑った。人形ちゃんに色々教えてもらったり、一緒に遊んだりしていたという。おかげで人形ちゃんとはすっかり仲良くなったようである。
「狩人様、この方の小説はとても面白いのですよ」
人形ちゃんはにっこりと笑みを浮かべている。イドリーは少し照れる様子を見せていた。椅子の上でもじもじとしている。今度私にも読ませてくれないかと狩人は伝えた。イドリーは少し恥ずかしがりながらも、すぐに快諾した。
「退屈していなかったようで何よりだ」
「うん。人形ちゃんに暇潰しの方法を教えてもらったの。あっという間に一日が潰れちゃって……」
ニコニコのイドリー。暇潰しの方法とは。狩人は人形ちゃんに目をやった。何故目を逸らす。具体的に、何を教えてもらったのだとイドリーに聞く。えっとね、確か……と言葉を思い出しているようだ。
「聖杯マラソンっていう……」
なんてものを教えてくれているのだ。狩人は勢い良く人形ちゃんの顔へ向き直した。だから目を逸らすな。「いや狩人様ずっとやってましたし楽しいのかなって……」と人形ちゃんは机の下でもじもじと手を組んでいた。顔には汗が浮かんでいる。
まあ、別に良いのだが。諦めたように、狩人は空いていた椅子に座った。別に誰かが廃人になったわけでもあるまい。何なら楽しんでいたようである。
現に、今イドリーと人形ちゃんが使っている円テーブルの上にはクッキーのように数枚の血晶石が乗せられていた。これって強いの。狩人様は捨てていましたね、このサイズは。この色のやつはよく大事そうにしてました。などと楽しそうに会話をしている。人形ちゃんが楽しんでいるのなら、つまりまったくそれで良いのだ。
だがそれはそれとして、流石にそろそろ目を覚ましてもらわねば。イドリーに声を掛ける。
「そうねぇ……流石にそろそろ起きないとよね」
腰から生える蛸足すら使ってぎっちり人形ちゃんと抱き合った後、見えなくなるまで手を振り続けながら、遂にイドリーは庭へ出た。蛸足に巻き取られる人形ちゃんに得も言われぬものを感じたような、感じなかったような気が狩人にはした。
「手っ取り早く済ませるぞ。安心したまえ、夢を忘れないようにはしておく」
イドリーには今いち狩人の言葉の意味が分からなかったが、とりあえず感謝しておいた。突然だが、と狩人が言う。
「貴公、介錯を受け入れるかね」
「えっ? ああ、うん──え」
イドリーは一瞬、狩人の手元で何かが閃くのを見た。次の言葉が出るより先に、地面と空の位置が逆転した。イドリーは崩れ落ちてゆく自身の背中を見た。
「えっ」
声にならぬ声を出すイドリーが夢の中にて最期に見たものは、僅かに血のついた大鎌をしまう、逆さまとなった狩人の姿であった。
「……! イドリー! 起きたのか!」
はっと動悸を起こしながら目を覚ましたイドリーは、自身がまだ生きていることを確認した後、ようやく自身が倒れており、上半身を座り込んだアキラに抱えられていることに気が付いた。
「……おはよう……」
アキラの、その美しい両の目に思わず顔が綻ぶ。温かい体温が染みるようだった。ああ、このまま、ずっと──。
「起きたかね」
悍しい宇宙を内包せし夥しい数の脳の瞳が彼女を覗き込むと同時に、イドリーは現実へと引き戻された。一瞬身体を震わせた。
「いやはや、本当にすまない。説明すれば抵抗されるものと思ったのでな。今度改めて詫びをさせてくれたまえよ」
謝る狩人。当然である。イドリーはもう二回も死を経験したのだ。おかげでイドリーもなんだか慣れ始めた様子を見せている。別に構わないと。
そこからは話が早かった。イドリーの案内で講堂内の隠し道をぶち開け、「繭」のある部屋へと辿り着いた。
まさに「繭」だな、と狩人は思った。四方の壁に隙間なく敷き詰められた、冒涜的に赤いそれは、風船のような薄い膜で中の人間を包み込んでおり、下手に触れればそれだけで割れてしまいそうであった。
そしてイドリーが話を始めた。夢の中で狩人に伝えたことをそのままアキラにも伝えたのだ。狩人はいつも通りをローリングしてまわって暇を潰そうとしたが、「『繭』が割れたらどうする」とアキラに怒られたのでやめた。
「転がる癖があるの、あの人?」
「ああ……君ももう知っていると思うけれど、彼は中々……『個性的』な人なんだ」
言葉を濁すアキラ。イドリーもそれ以上は聞かなかった。狩人はローリング欲を必死に抑えていた。その正体さえ知らなければ、狩人はとっくにこの「繭」たちを聖堂街上層の入り口付近の壺を割りまくる要領で破壊して回っていただろう。
「けど、この『町』にはずっと前から先客が居たの。それが──」
「『ランタンベアラー』と『ワンダリングハンター』だ」
突如聞こえた第三者の声に全員が振り向くと、忌々しい紫髪、モスが居た。
「彼らは招かれざる来客にして、拒むことの出来ない恐怖……」
よく分からないことを語りだすモスだったが、全体的に何を言っているのかは分かった。つまるところ、この「町」は生きており、イドリーはその心臓のような役割を果たしているのだという。彼女がこのホロウから出れば、「繭」は全て崩壊し、当然中に居る人々も死に絶える。
「だから……待て、なんだそれは。『繭』が反応するなんて危険過ぎる。こっちに渡してもらおう」
アキラが近づけた「輝磁の匣」に一瞬ながらも反応する「繭」を見て、モスが放った言葉であった。絶対にお断りだとアキラが返す。
「そうか。そうか。なら仕方がない。仲良くなれると思ったんだが」
君たちを『繭』に入れて、同胞にした後でも話はできる。そう言い残し、モスはどこかへ消えた。そういえばあいつを殺すと誓った筈だと狩人が追って外へ飛び出した刹那、なんと銃弾に胸を貫かれた。
「なんだっ」
「狩人っ!」
アキラが叫ぶと同時に、狛野たちもやってきた。モスの一声を皮切りに、突如住民たちが襲いかかって来たのだとリュシアが口早に説明した。
「DIEEEEEEE!!」
出刃包丁片手にヤーナムめいた叫び声を上げながらアキラに飛び掛かった住民が、しかし凄まじい爆炎と氷獄によって蝿が如く叩き潰された。
理解した。それだけ言った狩人は、既に再びあの衣装へと早着替えを果たしていた。煤けたマント付きの古狩人装束にエヴェリン、そして皆大好き爆発金槌である。がちん、と炎を散らして金槌の撃鉄を起こす。イドリーも準備万端なようで、しきりに蛸足をうねらせていた。
まずは逃げねば。全員が考えを一つにしていた。特に狩人は。集団を相手取るのは苦手なのである。しかもこの住民ども、「夢縋り」という性質上何度殺しても蘇るそうだ。丁度、狩人が夢から覚めるように。
ピッチフォークや鉈、たいまつを持った住人たちから逃げ回る狩人。紐付き火炎瓶や火炎放射器で応戦している。着替えた意味が無いでは無いかと狩人は心の中で本日三度目の悪態をついた。
「ねえ、アキラ」
「! アキラくん! 危ないっ!」
突如、狛野の巨体がアキラを押し退ける。同時に響き渡る銃声。遥か数百メートル先から放たれた.50-70ガバメント弾は──狛野真斗の心臓を貫いた。
「が、はっ……」
「狛野くんっ!!」
真斗はその場で、まるで電源でも切られたようにうつ伏せになって崩れ落ちた。ライフルの射線から隠れると同時に、リュシアが叫んだ。それだけではない。アキラも狩人もイドリーも盤丘も、全員が喉を張り裂かんとするほどの声で狛野の名を叫んだ。
「クッソ、痛ってェ……!」
!?!? 胸元を抑えながらひょっこり立ち上がる狛野に目を見開く一行。そのまま狛野がすぐさま射線の外、アキラ達の隣へやってきても、狩人たちは暫く口を開けたまま固まっていた。
狛野のその些か逞しすぎる胸には、確かに心臓のある位置に指一本分の穴が空いている。覗き込めば向こう側の景色まで見渡せるのだ。恐る恐ると言った様子で、アキラがようやく口を開いた。
「えっと……狛野くん……? 生きて、いるのかい……?」
「えっ? ああ、このくらいヘーキっす。ジブン、頑丈なんで!」
不死身じゃん……こわ……狩人はドン引きした。自身のことは完全に棚に上げている。
そんなこんなで「町」から脱出した一行。道中に居た敵は狩人とイドリーとリュシア、そして盤丘が対処した。残る敵は哀れにも──あるいは幸運なことに──狛野の胸筋に挟まれて死んでいった。挟まれた頭が狛野の一息と同時に次々と西瓜よろしく弾けていく様は見ていて飽きが来なかった。
「あれ? あの顔は……」
ふとリュシアが指差した先に居たのは、あのダーク真斗であった。どうにも敵対する様子は見えず、狩人たちが呑気に横を通り過ぎようとしたその瞬間。
「オラァッ!」
「ぬぅ!?」
盤丘に向かって振り下ろされた大剣が、鋼鉄の腕により火花と共に弾かれる。な……なんだあっと1Pカラー真斗が叫ぶ。
「なんだよ真斗。オレはお前が出来ねえことを代わりにやってるんだぜ。こいつに『下がれ』って言われた時から、ずっとムカついてたもんなあっ!」
「! テメェッ!」
ぶつかり合う金属音の中に、しかし真斗は飛び込むことが出来なかった。心臓を撃ち抜かれたのはまだ良いとして、胸筋を使いすぎたのだ。
「どうした、戦えよ!」
「断る! 我は既に誓いを立てた身。みだりに力は振るわぬ!」
だったら、みだりに振るわざるをえなくしてやるよ。ダーク真斗の猛攻が始まるも、盤丘は平静さを保ちながらその全てを対処していた。明らかに動きの格が違う。
「盤丘さんは関係ねえだろッ! オレが相手になってやる!」
「怪我人が良く言うぜ。鏡見てみろよ、心ぞ──心臓撃ち抜かれてるぞ……!?」
盤丘の腕との鍔迫り合いの中、オリジナル真斗の胸目掛けて三度見を決めるダーク真斗。「なんで生きてんだよ……」と呆然と顔を青くしている。
「次来た時には元気になっといてやる! そん時にサシでケリつければいいだろ!」
オリジナル真斗の叫びが、時間を止めた。ダーク真斗と盤丘も含め、全員が彼を見つめている。闘争が止まったのだ。重たい沈黙を最初に破ったのは、ダーク真斗であった。
「……ケッ。次も怪我してたら承知しねえぞコラ」
すっと道を開けたダーク真斗の横を全員が通っていく。壁にもたれかかったまま、無言を貫いていた。
ダーク真斗の背後で握りしめていた先触れを、そっとポッケにしまう狩人であった。
インセプションは良いぞ。